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バレンタイン歩兵ほへい戦車せんしゃ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
歩兵ほへい戦車せんしゃ Mk.III バレンタイン
Velentain@kubinka
バレンタイン Mk.II
ロシア・クビンカ戦車せんしゃ博物館はくぶつかん展示てんじ車両しゃりょう
性能せいのうしょもと
全長ぜんちょう 5.4 m
全幅ぜんぷく 2.6 m
ぜんこう 2.2 m
重量じゅうりょう 16t
懸架けんか方式ほうしき ヴィッカース・スローモーション方式ほうしき
速度そくど 24 km/h整地せいち
12 km/h(整地せいち
主砲しゅほう 2ポンドほう(Mk.I~Mk.VII)
6ポンドほう(Mk.VIII~Mk.X)
QF 75mmほう(Mk.XI)
ふく武装ぶそう ベサ同軸どうじく機銃きじゅう
装甲そうこう
砲塔ほうとう
  • ぜんしゅう 65mm
  • 上面うわつら前部ぜんぶ 20mm
  • 上面うわつら後部こうぶ 15mm
車体しゃたい
  • 前面ぜんめんじょう下部かぶ 60mm
  • 前面ぜんめん傾斜けいしゃ 30mm
  • 側面そくめん 60mm
  • 側面そくめん傾斜けいしゃ 30mm
  • こうめん傾斜けいしゃ 17mmn
  • こうめん 60mm
  • 機関きかんしつ上面うわつら 10mm
  • 底面ていめん前部ぜんぶ 20mm
  • 底面ていめん中部ちゅうぶ 7mm
  • 底面ていめん後部こうぶ 17mm
エンジン AEC A190ディーゼル 131馬力ばりき(Mk.II)
GMCモデル6006 138馬力ばりき(Mk.IV)
乗員じょういん 3めい
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バレンタイン歩兵ほへい戦車せんしゃ(バレンタインほへいせんしゃ、歩兵ほへい戦車せんしゃ Mk.III バレンタイン, 英語えいご: Tank, Infantry, Mk III, Valentine)は、だい世界せかい大戦たいせんどきイギリス歩兵ほへい戦車せんしゃ(15トンきゅう)である。

「バレンタイン 〇」はニックネームであり、制式せいしき名称めいしょうではない。制式せいしき名称めいしょうは「歩兵ほへい戦車せんしゃMk.III」である。

概要がいよう

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バレンタイン歩兵ほへい戦車せんしゃは、A10巡航じゅんこう戦車せんしゃもと開発かいはつされた。ヴィッカース・アームストロングしゃ私案しあんとして設計せっけいし(このため"A"コードは付加ふかされていない)、えい陸軍りくぐんしょうにより1938ねん2がつ承認しょうにんされた。A10巡航じゅんこう戦車せんしゃ車台しゃだい部品ぶひん流用りゅうようするため、くるまじゅうを16tに制限せいげんする必要ひつようがあり、歩兵ほへい戦車せんしゃじゅんじたあつさ60mm以上いじょう装甲そうこうそなえるには、車体しゃたい小型こがたする必要ひつようがあった。このため最初さいしょのモックアップではキューポラきの3めいよう砲塔ほうとうそなえられていたが、それでは装甲そうこうあつらさないと重量じゅうりょう制限せいげんおさまらず、一時いちじ武装ぶそうを15mmベサ機銃きじゅう変更へんこうすることも検討けんとうされた。結局けっきょく度目どめのモックアップでは小型こがたの2めいよう砲塔ほうとう変更へんこうされ、この段階だんかいではまだ装甲そうこうが50mmから45mmとうすいままの予定よていだったが、1939ねん4がつなか陸軍りくぐんしょうはヴィッカースしゃに、装甲そうこうあつ60mm以上いじょうにすることを条件じょうけん当初とうしょ100りょうのちに300りょう量産りょうさんする許可きょかした。試作しさくしゃつくらずいきなりの量産りょうさんであったが、すでにA10にダミーウエイトをせた車輌しゃりょうでの試験しけんおこなっていたこともあり、1940ねん5がつにロールアウトした最初さいしょ量産りょうさんしゃ試験しけん満足まんぞくのいく性能せいのう発揮はっきした。ほんしゃはマチルダ戦車せんしゃよりは装甲そうこううすくエンジン出力しゅつりょくよわく、どう程度ていど速度そくどであったが、ていコストで、かつ大量たいりょう生産せいさんてきしていた。

バレンタインという名前なまえけられた経緯けいいについては、いくつかのせつ存在そんざいする。もっともポピュラーなものは、陸軍りくぐんしょう設計せっけい提出ていしゅつされたのがバレンタインデー2がつ14にち)だったというものだが、いくつかのソースは提出ていしゅつ2がつ10日とおかだったと主張しゅちょうしている。せつでは、A10戦車せんしゃやそのヴィッカースせい戦車せんしゃ開発かいはつ尽力じんりょくしたサー・ジョン・バレンタイン・カーデン(Sir John Valentine Carden)からられたというものがある。このほかに、Valentine は Vickers-Armstrong Ltd Elswick & Newcastle-upon-Tyne. の頭文字かしらもじったものだというせつがある。[1]

バレンタイン歩兵ほへい戦車せんしゃ1944ねん4がつまで生産せいさんされつづけ、歩兵ほへい戦車せんしゃだけでなく戦車せんしゃ全体ぜんたいとしても、イギリス最多さいた生産せいさんすうで、イギリス国内こくないで6,855りょう(ヴィッカース、MCCW (Metropolitan-Cammell Carriage and Wagon), BRC&W (Birmingham Railway Carriage and Wagon) )、カナダ国内こくないで1,420りょうである。このうちイギリスせい2,394りょうとカナダせい1,388りょうのこり32りょう訓練くんれんようにカナダ国内こくない保管ほかん)がレンドリースかたちソビエトぐん輸出ゆしゅつされた。これは生産せいさんされたバレンタインのやく半数はんすうちかくにのぼる。ソ連それん供与きょうよされた3,782りょうのうち、3,332りょうソ連それんぐんもと無事ぶじ到着とうちゃくし、450りょう輸送ゆそうちゅううしなわれた。

戦歴せんれき

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トリポリ占領せんりょう海岸かいがんちかくにあつまるイギリスぐん戦車せんしゃぐん, 1942ねん
トラックに偽装ぎそうして輸送ゆそうされるバレンタイン, 1942ねん

この戦車せんしゃ初陣ういじんクルセーダー作戦さくせんであり、これが半年はんとしきたアフリカ戦線せんせんからほぼ姿すがたすこととなる、マチルダII歩兵ほへい戦車せんしゃからの装備そうび更新こうしん契機けいきとなった。そのどう戦線せんせんにおいてひろ運用うんようされ、初期しょきころから防御ぼうぎょりょく信頼しんらいせい評価ひょうかされていた。

しかし英軍えいぐん戦車せんしゃ共通きょうつうしてかかえる弱点じゃくてんっていた。搭載とうさいしている2ポンドほう当時とうじ、マチルダII歩兵ほへい戦車せんしゃクルセーダー巡航じゅんこう戦車せんしゃ同様どうよう榴弾りゅうだん用意よういされていなかったため、てき歩兵ほへい対戦たいせんしゃほうたいする攻撃こうげきりょく、すなわち着弾ちゃくだんにおける爆発ばくはつりょくき、たい戦車せんしゃほうがたとともに時代遅じだいおくれの装備そうびとなっていた(大戦たいせん後半こうはんにはまだ2ポンドほう搭載とうさいしていたそう装甲車そうこうしゃけに、榴弾りゅうだん開発かいはつされている)。車体しゃたいはばせまさからくるちいさいターレット・リングと砲塔ほうとうが、より威力いりょくのあるほうへのかわそう困難こんなんにしており、のち6ポンドほうQF 75mmほう搭載とうさいがた開発かいはつされたが、そのころにはすでにより高性能こうせいのう戦車せんしゃ戦場せんじょう配備はいびされていた。

もうひとつの弱点じゃくてんは、ちいさい乗員じょういんコンパートメントと、2人ふたりよう砲塔ほうとうである。装填そうてんしゅ搭乗とうじょうできるようほう前方ぜんぽう移動いどうしスペースをとった3にんよう砲塔ほうとうがた開発かいはつされたが、ほう大型おおがたのものにかわそうしたバージョンでは、ふたた装填そうてんしゅのスペースがけずられた。バレンタインのターレットリングみちは57.5インチ(やく1460㎜)である。

1944ねんヨーロッパ作戦さくせん戦域せんいき(ETO)では、前線ぜんせん戦車せんしゃがたのバレンタインは完全かんぜんチャーチル歩兵ほへい戦車せんしゃ、またはアメリカせいM4ちゅう戦車せんしゃシャーマンにえられ、わずかにおなじシャーシをもちいたアーチャーはしたい戦車せんしゃほう部隊ぶたい指揮しき戦車せんしゃとして少数しょうすうのみが配備はいびされていた。太平洋たいへいよう戦域せんいき(PTO)においては、かぎられたかずのバレンタインが1945ねん5がつごろまで運用うんようされた。ニュージーランドぐん供与きょうよされた2ポンドほう装備そうびのバレンタインの一部いちぶについて、3インチ榴弾りゅうだんほう装備そうびするCSがた近接きんせつ支援しえんがた)に改造かいぞうして運用うんようした。

バレンタインはレンドリースようとして、II~V、VII、IX、Xのかくかた合計ごうけい3,332りょうソ連それんぐんたいわたされた。モスクワ攻防こうぼうせん最中さいちゅうである1941ねん11月25にちから参戦さんせん最後さいご満州まんしゅう侵攻しんこうにも参加さんかするなど、終戦しゅうせんまで使つかわれつづけた。のレンドリース車輌しゃりょう同様どうようどくせん前期ぜんきにはおも南部なんぶ地域ちいきにおいてもちいられたが、これはイラン方面ほうめんからおくまれるペルシャ補給ほきゅうせんがあったためである。とくに、カフカス方面ほうめんではこれら外国がいこくせい戦車せんしゃ戦力せんりょくの7わり以上いじょうめていたという。

ゆきちゅうでも小型こがた軽量けいりょうであることから良好りょうこう機動きどうし、氷結ひょうけつした路面ろめんくつたいにグローサーをける必要ひつようがあると指摘してきされた程度ていどで、問題もんだいなく運用うんようできた。東部とうぶ戦線せんせんではくつたい連結れんけつ強度きょうどよわさと、ボギーしきサスペンション被弾ひだんたいするよわさ、主砲しゅほう榴弾りゅうだん用意よういされていないことが問題もんだいとして報告ほうこくされていた。武装ぶそうかんしては、1941ねんまつソ連それんせいの45mm戦車せんしゃほう(F-95)とDT機銃きじゅうかわそうぼうたて外装がいそうしき変更へんこうする試験しけん(ZiS-95)がおこなわれたが、ソ連それんぐん危機ききにあった時期じきにそこまで手間てまをかけて改造かいぞうする余裕よゆうかったのと、2インチ発煙はつえんだん発射はっしゃ(2 inch bomb thrower)[2]からロシアせい50mm迫撃はくげきほうたま発射はっしゃ可能かのうだったため、結局けっきょく実施じっしされなかった[3]。また、ソ連それんぐん一部いちぶのバレンタインには車体しゃたい下部かぶ前面ぜんめんおよび車体しゃたい上部じょうぶ操縦そうじゅう区画くかく前面ぜんめんに30mm程度ていど増加ぞうか装甲そうこうばん溶接ようせつする改修かいしゅうおこなわれた[3]

ほんしゃはそのちいさいサイズと機械きかいてき信頼しんらいせい装甲そうこうしつ強度きょうどによりソ連それんへいにはこのまれ、やはり評判ひょうばんかったMk.4ペリスコープ大戦たいせん中期ちゅうき以降いこうソ連それんぐん戦車せんしゃようにコピーされて使つかわれている。のちにイギリスはあらたなレンドリースよう戦車せんしゃとしてクロムウェル巡航じゅんこう戦車せんしゃ提案ていあんしたが、ソ連それんはこれを拒否きょひし、つづきバレンタインの供与きょうよ希望きぼうしている。

また、ドイツぐんは、きたアフリカ戦線せんせん東部とうぶ戦線せんせん鹵獲ろかくしたバレンタインに Infanterie Panzerkampfwagen Mk.III 749(e)形式けいしきめいけて運用うんようした。

だい世界せかい大戦たいせん余剰よじょうしたバレンタインの一部いちぶは、農業のうぎょうようトラクターに転用てんようする目的もくてきオーストラリアおくられた。ニュージーランドぐんは1955ねんごろまでバレンタインの運用うんよう継続けいぞくした。

1960年代ねんだいキプロス内戦ないせんでは、スクラップとして輸入ゆにゅうされたバレンタインの車体しゃたいブレンけい機関きかんじゅう搭載とうさい即製そくせい装甲そうこう砲塔ほうとうせた戦闘せんとう車両しゃりょうを、ギリシャせい教徒きょうとがわ民兵みんぺいが1りょう保有ほゆうしていた。1964ねん軍事ぐんじパレードでその存在そんざい確認かくにんされた。現在げんざいもこの車両しゃりょうキプロス国家こっか防衛ぼうえいたい英語えいごばん保有ほゆうしており、今後こんご設立せつりつされる予定よていあたらしい軍事ぐんじ博物館はくぶつかん展示てんじする予定よていであるとされている[4]

バリエーション

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主要しゅよう形式けいしき

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バージョンの階層かいそう
バレンタイン I
ヴィッカースしゃタインサイド工場こうじょうで50りょう、メトロポリタン・キャメルしゃとバーミンガム・キャリッジ&ワゴンしゃで125りょうずつが量産りょうさんされた。当初とうしょくつたいはA9やA10と同型どうけいものだったが、強度きょうどてき問題もんだい発生はっせいし、耐久たいきゅうせいたかいマンガンこうせい356mmはばもの変更へんこうされた。AECせいA189ガソリンエンジン(135馬力ばりき)を搭載とうさい、オードナンスQF2ポンドほう同軸どうじく機銃きじゅうとして7.92mmベサ機関きかんじゅう搭載とうさい、レイクマンしき対空たいくうじゅうに7.7mmブレンけい機関きかんじゅう装備そうびすることもできた。2人ふたりよう砲塔ほうとうでは、くるまちょう装填そうてんしゅねることをいられた。初期しょき生産せいさんがたには、のタイプにられる砲塔ほうとう左側ひだりがわのピストルポートがかない。
バレンタイン II
このモデルは700りょう製造せいぞうされた。基本きほんてきにバレンタイン Iとおなじであるが、動力どうりょくはAECせいA190ディーゼルエンジン(131馬力ばりき)に変更へんこうされた。航続こうぞく距離きょりばすため、エンジン・コンパートメントの左側ひだりがわ外部がいぶ燃料ねんりょうタンクが増設ぞうせつされた。
バレンタイン III
砲塔ほうとうリングの直径ちょっけい大型おおがたできなかったので、ほう位置いち前進ぜんしんさせ、後部こうぶ延長えんちょうすることで戦車せんしゃちょうようのスペースをつくり、あらたにせんもん装填そうてんしゅ搭乗とうじょうできるようになった。これにより、くるまちょう負荷ふか大幅おおはば緩和かんわされ、指揮しき専念せんねんできるようになった。しかし砲塔ほうとうのサイズ自体じたいはさほどわっていないので窮屈きゅうくつではあった。重量じゅうりょう増加ぞうか軽減けいげんするため、側面そくめん装甲そうこうが60mmから50mmにらされた。
バレンタイン IV
IIのエンジンかわそうバージョンで、アメリカGMCせい6004ディーゼルエンジンと、アメリカせい変速へんそく搭載とうさいした。航続こうぞく距離きょりみじかくなったが、エンジンおんしずかになり、信頼しんらいせい向上こうじょうした。
バレンタイン V
IIIのエンジンかわそうバージョンで、IV同様どうように6004エンジンと変速へんそく搭載とうさいしたもの。
バレンタイン VI
IVのカナディアン・パシフィックしゃでの生産せいさんがた。カナダせいとアメリカせい部品ぶひん大幅おおはば使つかわれている。後期こうき製造せいぞうされたものは、装甲そうこう傾斜けいしゃがゆるやかになっている。
バレンタイン VII
おなじくカナディアン・パシフィックしゃ生産せいさんがたで、VIを基礎きそ操縦そうじゅうせきぜんはし装甲そうこう一体いったい鋳造ちゅうぞうしきに、また7.92mm ベサ同軸どうじく機銃きじゅうを7.62mm ブローニングM1919機銃きじゅう変更へんこうしたもの。
バレンタイン VII A
VIIに投棄とうき可能かのう増設ぞうせつタンク、あたらしいくつたい防護ぼうごきヘッドライトをそなえたもの。これらカナダせいバレンタインは大半たいはんソ連それんけのレンドリースにまわされている。
バレンタイン VIII
バレンタイン IIIの主砲しゅほうオードナンス QF 6ポンドほうかわそうしたもの。ほう大型おおがたのために同軸どうじく機銃きじゅうと2インチ発煙はつえんだん発射はっしゃ廃止はいし外装がいそうがたの4インチ発煙はつえんだん発射はっしゃ変更へんこう)され、内部ないぶスペースの減少げんしょうにより砲塔ほうとう乗員じょういんが2めいもどった。
バレンタイン IX
バレンタイン Vを6ポンドほう搭載とうさいばんにアップグレードしたもの。VIII同様どうよう装甲そうこうけずられている。後期こうき生産せいさんされた300りょうは、GMCせい6004の165馬力ばりきバージョンのエンジンが搭載とうさいされた。
バレンタイン X
しん設計せっけい砲塔ほうとうそなえ、165馬力ばりきのエンジンを搭載とうさいしたもの。主砲しゅほうは6ポンドほう廃止はいしされていた同軸どうじく機銃きじゅうぼうたてしをもうけてふたた搭載とうさいされ、また車体しゃたい溶接ようせつてに変更へんこうされた。
バレンタイン XI
バレンタイン Xの主砲しゅほうを、6ポンドほうおなほう搭載とうさい可能かのうオードナンス QF 75mmほうかわそうし、GMCせい6004の210馬力ばりきバージョンのエンジンを搭載とうさいしたもの。1943ねん3がつ、クロムウェルに搭載とうさいするための75mmほう試験しけんようにバレンタインがもちいられ、これが成功せいこうしバレンタインにも搭載とうさいされることになった。すでに75mmほう搭載とうさいするシャーマン戦車せんしゃやクロムウェル巡航じゅんこう戦車せんしゃ、チャーチル歩兵ほへい戦車せんしゃ配備はいびされていたため、アーチャーはしたい戦車せんしゃほう部隊ぶたい指揮しき戦車せんしゃとしてのみ使用しようされた。

特殊とくしゅ形式けいしき派生はせいがた

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ビショップはしほう (Ordnance QF 25-pdr on Carrier Valentine 25-pdr Mk 1 "Bishop")
バレンタインの砲塔ほうとう撤去てっきょし、QF 25ポンドほう密閉みっぺい戦闘せんとうしつ搭載とうさいしたはしほうがた。1941ねんから42ねんにかけて100りょう生産せいさんされ、きたアフリカ戦線せんせん運用うんようされた。運用うんようじょう制約せいやく問題もんだいてんおおく、1943ねんごろにはM7プリーストはしほうセクストンはしほうによって更新こうしんされた。
アーチャーはしたい戦車せんしゃほう (SP 17 pounder, Valentine, Mk I, Archer)
バレンタインのシャーシを延長えんちょうし、車体しゃたいたいして前後ぜんごぎゃくオードナンス QF 17ポンドほう搭載とうさいした戦車せんしゃ駆逐くちくしゃ。1943ねん以降いこうに655りょう生産せいさんされ、西部せいぶ戦線せんせんイタリア戦線せんせん運用うんようされた。
バレンタイン III CS (Close Support)
ニュージーランドぐん保有ほゆうする18りょうのバレンタインIII(資料しりょうによってはバレンタインVとするものもあり)の主砲しゅほうを2ポンドほうから3インチ榴弾りゅうだんほうかわそうした近接きんせつ支援しえんがたガダルカナルとうでの戦闘せんとう使用しようされ、1950年代ねんだいまで現役げんえきであった。
バレンタイン DD
バレンタインV、IXおよびXIを水陸すいりく両用りょうよう戦車せんしゃ (Duplex Drive) に改造かいぞうしたもの。1943ねんから44ねんにかけて625りょう改造かいぞうされた。ノルマンディー上陸じょうりく作戦さくせん使用しようするシャーマンDD乗員じょういん訓練くんれんするために使用しようされた。
バレンタイン OP / Command
砲兵ほうへい観測かんそくしゃおよび指揮しきしゃバージョンとして、ダミーの砲身ほうしんけ、追加ついか無線むせん搭載とうさいしたもの。アーチャーはしたい戦車せんしゃほう部隊ぶたい砲兵ほうへい観測かんそくしゃおよび指揮しき戦車せんしゃとしてもちいられた。
バレンタイン CDL (Valentine CDL, Canal Defence Light)
CDL(運河うんが防衛ぼうえいライト)は秘匿ひとく名称めいしょうで、通常つうじょう砲塔ほうとうわりに、装甲そうこうされた強力きょうりょくなサーチライトを搭載とうさいする特殊とくしゅ仕様しようである。最初さいしょ実用じつようされたマチルダCDL後継こうけいとして、チャーチル歩兵ほへい戦車せんしゃM3グラントなどとともにおそらく比較ひかく試験しけん評価ひょうかされ、グラントCDLが後継こうけいとして選択せんたくされた。
バレンタイン・スコーピオン
地雷じらい除去じょきょしゃ砲塔ほうとうがなく、フレイル(Flail, 地雷じらい強制きょうせいてき爆発ばくはつさせるための回転かいてんしきチェーン)がけられた。実戦じっせんでは使用しようされなかった。
バレンタイン AMRA Mk Ib (Valentine AMRA, Anti Mine Roller Attachment)
ローラーしき地雷じらい処理しょり戦車せんしゃとして開発かいはつされ、ノルマンディー上陸じょうりく作戦さくせん試験しけんてき使用しようされたとられる。
バレンタイン・スネーク
地雷じらい除去じょきょしゃ
バレンタイン架橋かきょう戦車せんしゃ
バレンタイン IIの砲塔ほうとう撤去てっきょし、34フィート×9.5フィート(やく10.4メートル×やく2.9メートル)の、中央ちゅうおうたたまれるシザーズしき架橋かきょうと、その展開てんかい装置そうち搭載とうさいした架橋かきょう戦車せんしゃ。192りょう生産せいさんされ、イタリア戦線せんせん、ノルマンディー上陸じょうりく以降いこう北西ほくせいヨーロッパ戦線せんせん、ビルマ戦線せんせんとう使用しようされた[5]。また1944ねんに25りょうソ連それん供給きょうきゅうされ、うち20りょう満州まんしゅう侵攻しんこう実戦じっせん投入とうにゅうされた[6]
バレンタイン AT
バレンタインの砲塔ほうとう撤去てっきょし、オードナンス QF 6ポンドほう搭載とうさいし、大型おおがたぼうたておよび側面そくめん防弾ぼうだんばんそなえたはしたい戦車せんしゃほうとして1りょう試作しさくされた。1942ねん以降いこう通常つうじょう戦車せんしゃがたのバレンタイン VIII、XIに6ポンドほう装備そうびされるようになり、これ以上いじょう開発かいはつ継続けいぞくされなかった[7]
バレンタイン火炎かえん放射ほうしゃ戦車せんしゃ
2りょうのバレンタイン戦車せんしゃにそれぞれことなるタイプの火炎かえん放射ほうしゃけて、火炎かえん放射ほうしゃ車両しゃりょうとしての運用うんよう試験しけん(どちらのタイプがよりすぐれているか)がおこなわれた。1りょうにはコルダイト火薬かやくもちいたシステムが搭載とうさいされ、もう1りょうには圧縮あっしゅく水素すいそガスもちいたシステムが搭載とうさいされた。試験しけん結果けっか圧縮あっしゅく水素すいそガスをもちいた火炎かえん放射ほうしゃほうすぐれていると判断はんだんされ、この技術ぎじゅつがチャーチル・クロコダイル火炎かえん放射ほうしゃ戦車せんしゃ開発かいはつ使用しようされた[8]
バレンタイン 9.75インチ火炎かえん迫撃はくげきほう搭載とうさいがた
25ポンドのTNT焼夷弾しょういだん発射はっしゃするじゅう迫撃はくげきほう搭載とうさいした試作しさく車両しゃりょう
バーマーク (Burmark)
架橋かきょう車両しゃりょう一種いっしゅで、段差だんさなどを乗越のりこえる傾斜けいしゃ(Ramp)を搭載とうさいするARK(Armoured Ramp Carrier)として計画けいかくされたが、終戦しゅうせんにより開発かいはつ中止ちゅうしされた[9]
ギャップ・ジャンピング・タンク (Gap Jumping Tank)
だい世界せかい大戦たいせんちゅうにイギリスで計画けいかくされた兵器へいきなかでももっと奇抜きばつなもののひとつで、バレンタイン戦車せんしゃ車体しゃたいりょうサイドにロケットエンジンをけ、車体しゃたいを"ジャンプ"させて地雷原じらいげん障害しょうがいぶつ塹壕ざんごうなどを突破とっぱするというアイデアである[9]実際じっさい実験じっけんではバレンタインの車体しゃたいがこのシステムでことはできず、おなじシステムをユニバーサル・キャリア車体しゃたいけた実験じっけんでは、ちゅういた車体しゃたい横転おうてんして落下らっかした、という写真しゃしんのこされている。

登場とうじょう作品さくひん

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War Thunder
イギリスのなか戦車せんしゃ歩兵ほへい戦車せんしゃ)としてMk.I・Mk.IX・Mk.XIが登場とうじょう。また、2がつ14にち(バレンタインデー)に、ソ連それんにレンドリースされたバレンタインMK.IXがソ連それんランクIIプレミアム車両しゃりょうとして登場とうじょう
World of Tanks
イギリスけい戦車せんしゃとして登場とうじょうしていたが、現在げんざい新規しんきでの入手にゅうしゅ不可ふか。また、45mmほう装備そうびし、ソ連それんけい戦車せんしゃとしても登場とうじょうしていた。
コンバットチョロQ
イギリスタンクとして登場とうじょう。また、アリーナのライトクラスの16ばんてきとして登場とうじょう
トータル・タンク・シミュレーター
バレンタイン自体じたい登場とうじょうしないがイギリスにアーチャーとビショップが登場とうじょう
バトルフィールドV
イギリスぐん戦車せんしゃとしてMk.VIIIが登場とうじょう

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Evans, Louise (2023ねん10がつ3にち). “Valentine: What's in a name?” (英語えいご). The Tank Museum. 2024ねん8がつ3にち閲覧えつらん
  2. ^ ドイツ戦車せんしゃの「Nahverteidigungswaffe」(近接きんせつ防御ぼうぎょ兵器へいき)にた、イギリス戦車せんしゃ特有とくゆう装備そうび
  3. ^ a b http://www.tankarchives.ca/2016/03/valentine-mods-in-ussr.html
  4. ^ Pierre-Olivier (7 November 2010). “Surviving Valentines”. Surviving Panzers website. 18 November 2010閲覧えつらん
  5. ^ David Boyd. (31 December 2008). “Valentine Infantry Tank”. 19 August 2011てんのオリジナルよりアーカイブ2009ねん6がつ30にち閲覧えつらん
  6. ^ Baryatinskiy 2002, p. 19.
  7. ^ White 1969, p. 17.
  8. ^ Banks 1946, p. 75.
  9. ^ a b White 1969, p. 16.

参考さんこう文献ぶんけん

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  • Banks, Sir Donald (1946). Flame Over Britain. Sampson Low, Marston and Co. OCLC 634031734.
  • Baryatinskiy, M. (2002). Пехотный танк Валентайн [Valentine Infantry Tank] (in Russian). no isbn. Бронеколлекция: Моделист-Кон*структор.
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  • Perrett, Bryan (1981). British Tanks in N. Africa 1940–42. Vanguard 23. London: Osprey. ISBN 978-0-85045-421-5.
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関連かんれん項目こうもく

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