ビショップ自じ走はし砲ほう

ビショップ自じ走はし砲ほう

性能せいのう諸しょ元もと
全長ぜんちょう	5.53 m
全幅ぜんぷく	2.63 m
全ぜん高こう	2.83 m
重量じゅうりょう	17.5 t
懸架けんか方式ほうしき	コイルスプリング式しきサスペンション付づけ3輪りんボギー式しき
速度そくど	24 km/h
行動こうどう距離きょり	145 km
主砲しゅほう	QF 25ポンド砲ほう
副ふく武装ぶそう	ブレン軽けい機関きかん銃じゅう
装甲そうこう	車体しゃたい：8~60 mm 上部じょうぶ構造こうぞう：13~51 mm
エンジン	AEC A190 直列ちょくれつ6気筒きとう ディーゼルエンジン 131馬力ばりき Meadows Type 22 トランスミッション（前進ぜんしん5速そく 後進こうしん1速そく） 後こう輪わ駆動くどう
乗員じょういん	4名めい

ビショップ自じ走はし砲ほう（ビショップじそうほう、英語えいご: Ordnance QF 25-pdr on Carrier Valentine 25-pdr Mk 1 "Bishop"）は、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん中なかのイギリスで開発かいはつされた自じ走はし砲ほうである。

バーチガン 18ポンド自じ走はし砲ほうの退役たいえき以来いらい、10年ねんぶりに開発かいはつされた、イギリス製せい自じ走はし砲ほうであった。

概要がいよう

北きたアフリカ戦線せんせんにおける戦闘せんとうは機動きどう戦せんとなり、これに対応たいおうするためにイギリスは主力しゅりょく野砲やほう兼けん榴弾りゅうだん砲ほうの25ポンド砲ほうの自じ走はし化かを必要ひつようとした。1941年ねん6月がつ、バーミンガム鉄道てつどう客車きゃくしゃ貨車かしゃ会社かいしゃ (Birmingham Railway Carriage and Wagon Company) に新型しんがた自じ走はし砲ほうの開発かいはつが委託いたくされた。

1941年ねん8月がつにはバレンタイン歩兵ほへい戦車せんしゃの車体しゃたいに25ポンド砲ほうを搭載とうさいした試作しさく車両しゃりょうが完成かんせい、11月までに100両りょうの生産せいさん命令めいれいが出だされた。新あたらしい自じ走はし砲ほうには"Ordnance QF 25-pdr on Carrier Valentine 25-pdr Mk 1"（オードナンス 25ポンド速射そくしゃ砲ほう運搬うんぱん車しゃ型がたバレンタイン Mk.1）の名前なまえが与あたえられ、一般いっぱんには“ビショップ(英語えいご: Bishop：「司教しきょう」の意い)”と呼よばれた。

1942年ねん7月がつの時点じてんでは、80両りょうのビショップが完成かんせいし、20両りょうが製造せいぞう中ちゅうだった。加くわえて50両りょうの生産せいさんが命令めいれいされ、さらに200両りょうを追加ついかする選択せんたくもあった。しかし、多おおくの欠陥けっかんを抱かかえていたため、アメリカのM7 “プリースト”自じ走はし砲ほうの導入どうにゅうを優先ゆうせんするために追加ついか生産せいさんは中止ちゅうしされ、結局けっきょく100両りょうの生産せいさんに終おわった。

ビショップは1942年ねんから1943年ねんにかけての短みじかい期間きかん運用うんようされた後のちに、M7自じ走はし砲ほうやセクストン 25ポンド自じ走はし砲ほうに置おき換かえられる形かたちで一線いっせんから退しりぞいた。

設計せっけい

北きたアフリカ戦線せんせんにおけるビショップ自じ走はし砲ほう。後部こうぶドアを開放かいほうした状態じょうたい。
1942年ねん9月がつ25日にちの撮影さつえい

ビショップはバレンタイン歩兵ほへい戦車せんしゃII型がたをベースとしている。砲塔ほうとうの代かわりに13～51mm厚あつの装甲そうこう板ばんで構成こうせいされた固定こてい式しきの箱はこ型がた上部じょうぶ構造こうぞう（回転かいてん砲塔ほうとうではないので旋回せんかいさせることはできない）が設置せっちされ、内部ないぶに25ポンド野戦やせん砲ほうの上部じょうぶ砲ほう架かと揺ゆら架か、そして砲身ほうしんがそのまま搭載とうさいされた。“ビショップ”の名なは、この大おおきく高たかさのある上部じょうぶ構造こうぞうをカトリック教会きょうかいの司教しきょう（ビショップ）が着用ちゃくようする司教しきょう冠かんむりに見立みたてたところから命名めいめいされたものである。

上部じょうぶ構造こうぞうは天井てんじょうのある密閉みっぺい式しきだが、後こう面めんはほぼ全面ぜんめんが開ひらく観音開かんのんびらき式しきのドアとなっており、戦闘せんとう中ちゅうはこのドアを大おおきく開あけ放はなち、実質じっしつ的てきには後こう面めん開放かいほう式しきのものとして用もちいられた。後こう面めんの他ほか、天面あまつら前部ぜんぶ左側ひだりがわには片かた開ひらき式しきのハッチがあり、天面あまつら後部こうぶ中央ちゅうおうにはベンチレーターがある。

主砲しゅほうの最大さいだい仰角ぎょうかくは15度ど、最大さいだい俯角ふかくは5度ど、左右さゆう旋回せんかい角かくは8度どだったが、砲ほうの搭載とうさい方式ほうしき上じょうから大おおきな仰角ぎょうかくが取とれず、更さらに後こう座ざ時じに砲ほう尾おが車体しゃたいと干渉かんしょうする事ことを防ふせぐために主砲しゅほうの仰角ぎょうかくが制限せいげんされたことで、射程しゃていは牽引けんいん式しき25ポンド砲ほうの半分はんぶんに当あたる6400ヤード（5900メートル）にまで落おち込こんだ。副ふく武装ぶそうとしては近接きんせつ戦闘せんとう用ようにブレン軽けい機関きかん銃じゅうを搭載とうさいした。

車体しゃたいは原型げんけいのバレンタイン歩兵ほへい戦車せんしゃのものがそのまま使つかわれている。車くるま重じゅうが増ましたにもかかわらず機関きかんと変速へんそく装置そうちはそのままであり、信頼しんらい性せいこそ高たかかったものの、機動きどう性せいには難なんがあった。

乗員じょういんは車くるま長ちょう、操縦そうじゅう手しゅ、砲手ほうしゅ、装填そうてん手しゅの4名めいである。

運用うんよう

射撃しゃげきを行おこなうビショップ自じ走はし砲ほう。手前てまえ側がわの地面じめんには薬莢やっきょうが積つみ上あげられている。
第だい142野戦やせん砲兵ほうへい連隊れんたいの所属しょぞく車しゃで、1943年ねん7月がつ27日にち、シシリー島とうでの撮影さつえい

ビショップは第だい二に次じエル・アラメインの戦たたかいで初陣ういじんを迎むかえ、以降いこうイタリア戦せんの初期しょきまで運用うんようされた。箱はこ型がたの上部じょうぶ構造こうぞうは内部ないぶが狭苦せまくるしく作業さぎょうがし難がたいと不評ふひょうで、高たかすぎる全ぜん高こうのため遠方えんぽうからでも目立めだちやすく、障害しょうがい物ぶつの少すくない砂漠さばくにおける戦闘せんとうでは不利ふりであった。

前述ぜんじゅつの射程しゃていの欠陥けっかんは特とくに深刻しんこくとされ「野砲やほうでありながら迫撃はくげき砲ほう程度ていどの射程しゃていしかない」と問題もんだいとされ、ビショップの乗員じょういんはしばしば主砲しゅほう本来ほんらいの仰角ぎょうかくに地面じめんの傾斜けいしゃ角かくを加くわえて射程しゃていを伸のばす目的もくてきで傾斜地けいしゃちを造成ぞうせいすることまでした。しかし、この方式ほうしきを取とると車体しゃたいを左右さゆうに自由じゆうに動うごかすことができず、搭載とうさい砲ほうの25ポンド野戦やせん砲ほうの牽引けんいん型がたは砲ほう架か下面かめんにターンテーブルを装着そうちゃくして人力じんりきで素早すばやく360度ど旋回せんかいさせることができたため、この解決かいけつ方法ほうほうは砲ほうの左右さゆう旋回せんかい範囲はんいが小ちいさいことも相あいまって「自じ走はし車体しゃたいであるにもかかわらず前方ぜんぽうの限定げんていした角度かくどにしか射い界かいが取とれず、自じ走はしできない牽引けんいん式しきの砲ほうよりもむしろ使つかい勝手がってが悪わるい」という問題もんだいを生しょうじさせている。

搭載とうさいできる弾薬だんやくも32発はつ分ぶんしかなく、継続けいぞく的てきな射撃しゃげきには弾薬だんやくを積つんだトレーラーを牽引けんいんするか弾薬だんやく運搬うんぱん車しゃが随伴ずいはんする必要ひつようがあるために“自じ走はし砲ほう部隊ぶたいとしての機動きどう的てきな運用うんよう”を阻害そがいすることが多おおく、そもそもビショップ自体じたいがエンジンの馬力ばりき不足ふそくで低速ていそくであった。

こうした点てんから、同おなじ25ポンド野戦やせん砲ほうを装そう輪わ式しきの砲ほう牽引けんいん車しゃで牽引けんいんするものに対たいしてさほどの優位ゆうい性せいがなく、ビショップに対たいする評判ひょうばんは芳かぐわしからぬものだった。それでも、ビショップは英国えいこく陸軍りくぐん砲ほう兵隊へいたいにとり、“自じ走はし砲ほう”というものの存在そんざい価値かちを認識にんしきさせることに大おおいに貢献こうけんした。

ビショップはより使つかい勝手がってのよく高性能こうせいのうなM7自じ走はし砲ほうやセクストン自じ走はし砲ほうが十分じゅうぶんな数かず揃そろうとこれらに代替だいたいされた。残のこされたビショップも砲兵ほうへい部隊ぶたいでの運用うんようからは退しりぞけられ、訓練くんれん用ように回まわされた。イギリス軍ぐんの他ほか、トルコ軍ぐんには1943年ねんに48両りょうが導入どうにゅうされている。

登場とうじょう作品さくひん

『The Tunisia Front (1943)』

Youtube、British Pathé チャンネル動画どうが。開始かいし1:18～1:26の間あいだにチュニジア配備はいび時じの砲撃ほうげき姿すがたが映うつっている。

『World of Tanks』

イギリス自じ走はし砲ほうBishopとして開発かいはつ可能かのう。

『コンバットチョロQ』

イギリスタンクとして登場とうじょう。

『トータル・タンク・シミュレーター』

英国えいこくの自じ走はし砲ほうBISHOPとして登場とうじょう。

参考さんこう文献ぶんけん

• Chris Henry, Mike Fuller - The 25-pounder Field Gun 1939-72, Osprey Publishing 2002, ISBN 1-84176-350-0.
• Trewhitt, Philip (1999). Armored Fighting Vehicles. New York, NY: Amber Books. p. 114. ISBN 0-7607-1260-3 

外部がいぶリンク

• World War II Vehicles（英語えいご）
• Bishop at AFRIKAKORPS.Org（英語えいご）
• Bishop Tri-Colors / Markings（英語えいご）