銃砲じゅうほう身み

銃砲じゅうほう身み（じゅうほうしん）は、銃じゅう砲ほうの主要しゅよう部品ぶひんの1つ。細長ほそながい円筒えんとう形がたで、その中なかを弾丸だんがんが通過つうかする。

銃じゅう（小しょう口径こうけいの銃砲じゅうほう）のものは銃身じゅうしん、砲ほう（大だい口径こうけいの銃砲じゅうほう）のものは砲身ほうしんという。英語えいごからバレル（barrel）、ガンバレル（gun barrel）とも。

語源ごげん[編集へんしゅう]

バレルは、本来ほんらいは樽たるの意味いみで、樽たるの製造せいぞう技術ぎじゅつを応用おうようして砲身ほうしんを作つくったことに由来ゆらいする。金属きんぞく板いたを円筒えんとう形がたに並ならべ箍たがをはめ、隙間すきまを溶とかした金属きんぞくで埋うめて作つくっていた。

しかしこの方式ほうしきでは強度きょうどが出でず、威力いりょく向上こうじょうの要求ようきゅうについていけなくなったため、鐘かねの製造せいぞう技術ぎじゅつで青銅せいどうの鋳造ちゅうぞうによる一体いったい成型せいけいに取とって代かわった。

役割やくわり[編集へんしゅう]

銃砲じゅうほう身みは、発射はっしゃ薬やく（火薬かやくなど）の燃焼ねんしょうガスを拡散かくさんさせずに弾丸だんがんに伝つたえる役目やくめを持もつ。

弾丸だんがんは銃砲じゅうほう身内みうちでガスの圧力あつりょくにより加速かそくする。したがって、他たの条件じょうけんが同おなじなら、銃砲じゅうほう身みが長ながいほど弾丸だんがんの初速しょそくは速はやくなり、射程しゃていは長ながくなる傾向けいこうにある。高こう初速しょそく弾だんは風ふうなど弾道だんどうの外乱がいらんも受うけにくく命中めいちゅう精度せいども増ます。このため時代じだいが進すすみ技術ぎじゅつの向上こうじょうにつれ銃砲じゅうほう身みは口径こうけい比ひでより長ながくなる傾向けいこうがある。

一方いっぽう、高こう圧あつに耐たえるため厚あつい鋼鉄こうてつで作つくられている銃砲じゅうほう身みを長ながくすれば重量じゅうりょうが大おおきくかさむ。ライフリングを含ふくめた工作こうさく難なん度ども増まし高価こうかにつく。このため高性能こうせいのうの長ちょう砲身ほうしん砲ほうは必要ひつよう最小限さいしょうげんの箇所かしょに充あてられる、軽量けいりょう安価あんかな短たん砲身ほうしん砲ほうと使つかい分わけられるようになり近きん現代げんだいの砲ほうが多種たしゅに分化ぶんかする一因いちいんとなった。

もし弾丸だんがんが銃砲じゅうほう身みの中なかを進すすんでいる途中とちゅうで火薬かやくの燃焼ねんしょうが終了しゅうりょうした場合ばあい、その時点じてんで燃焼ねんしょうガスの昇圧しょうあつが止とまるため、弾丸だんがんの加速かそくも終おわり、存そん速そくにて銃砲じゅうほう身みを離はなれることとなる。逆ぎゃくに弾丸だんがんが銃砲じゅうほう身みを離はなれる時点じてんでなお火薬かやくの燃焼ねんしょうが続つづいていた場合ばあいには、弾丸だんがんの後のちから過剰かじょうな火焔かえんが噴ふき出だすおそれがある。

各部かくぶ名称めいしょう[編集へんしゅう]

薬くすり室しつ: 銃砲じゅうほう身みの根元ねもとの、発射はっしゃ薬やくが詰つめられる部分ぶぶん。
銃砲じゅうほう腔（銃じゅう腔・砲ほう腔）: 弾丸だんがんが通過つうかする内部ないぶ空間くうかん。
銃砲じゅうほう口こう（銃口じゅうこう・砲ほう口こう、マズル）: 弾丸だんがんが射出しゃしゅつされる箇所かしょ。
銃砲じゅうほう身長しんちょう（銃身じゅうしん長ちょう・砲身ほうしん長ちょう）: 銃砲じゅうほう身みの長ながさ。
口径こうけい: 銃砲じゅうほう口こうの内径ないけい。

構造こうぞう[編集へんしゅう]

素材そざい[編集へんしゅう]

基本きほん的てきに、金属きんぞくで作つくられる。初期しょきは鋳鉄ちゅうてつ、青銅せいどう・黄銅こうどうなども使つかわれたが、近代きんだい以後いごはほとんど鋼はがね鉄てつである。高温こうおん高こう圧あつの燃焼ねんしょうガスが通過つうかするため、高こう耐たい熱ねつ性せい・高こう強度きょうど・高こう靭うつぼ性せいを備そなえた、高価こうかな特殊とくしゅ鋼こうが使つかわれる。

製造せいぞう方式ほうしき[編集へんしゅう]

銃砲じゅうほう身みには、発射はっしゃ時じに燃焼ねんしょうガスの内圧ないあつによる多大ただいな応力おうりょくがかかるので、それに拮抗きっこうするためのさまざまな工夫くふうがある。これにより、素材そざいや肉にく厚あつへの要求ようきゅうが軽減けいげんされ、コストや重量じゅうりょうが下さがる。

自己じこ緊縮きんしゅく式しき（オートフレッタージ法ほう）: 砲身ほうしん内径ないけいを最終さいしゅう的てきな口径こうけいよりやや細ほそく作つくったのち、砲身ほうしん内ないに高こう圧あつをかけて内径ないけいを膨張ぼうちょうさせる。こうすると砲身ほうしんには、内径ないけいを元もとどおり収縮しゅうしゅくさせようとする応力おうりょくが残留ざんりゅうする。現代げんだいの口径こうけい15cm以下いかの銃砲じゅうほう身みでは、ほとんどがこの方式ほうしきを採用さいようしている。
焼やき嵌はま式しき: 内うち筒つつと外そと筒とうの2層そう構造こうぞうからなる砲身ほうしん。外そと筒とうを加熱かねつして熱ねつ膨張ぼうちょうさせた中なかに内うち筒つつを挿入そうにゅうし急冷きゅうれいすると、外そと筒とうが収縮しゅうしゅくし内ない筒とうを締しめ付つけた応力おうりょく状態じょうたいで固定こていされる。構造こうぞうが複雑ふくざつになるため、現在げんざいはほとんど自己じこ緊縮きんしゅく式しきに取とって代かわられている。
鋼はがね線せん式しき: 複数ふくすう層そう構造こうぞうの砲身ほうしんで、一番いちばん内側うちがわの円筒えんとうの上うえから、高こう張力ちょうりょくをかけた鋼はがね線せん（ガンワイヤー）を巻まきつけ、さらに外そと筒とうを被かぶせる。主おもに大だい口径こうけい砲ほうで用もちいられたが、現在げんざいでは大だい口径こうけい砲ほう自体じたいが廃すたれたため、ほとんど使つかわれない。日本にっぽん海軍かいぐんの14cm以上いじょうの艦載かんさい砲ほうでは、焼やき嵌はま式しきと鋼はがね線せん式しきを併用へいようした砲身ほうしんを主おもに使つかっていた。

ライフリング[編集へんしゅう]

銃砲じゅうほう身みの断面だんめん形がた
左ひだりから滑すべり腔砲、施ほどこせ条じょう砲ほう、ポリゴナルライフル

「ライフリング」も参照さんしょう

現代げんだいの銃砲じゅうほう身みは、ライフリング（施ほどこせ条じょう・腔綫）したものが主おもで、施ほどこせ条じょう銃砲じゅうほう身み（施ほどこせ条じょう銃身じゅうしん・施ほどこせ条じょう砲身ほうしん）という。それに対たいし、ライフリングのない砲身ほうしんを滑すべり腔銃砲身ほうしん（滑すべり腔銃身じゅうしん・滑すべり腔砲身ほうしん）といい、散弾さんだん銃じゅう、迫撃はくげき砲ほう、一部いちぶの戦車せんしゃ砲ほうなどに使つかわれる。

寸法すんぽうの表現ひょうげん[編集へんしゅう]

「口径こうけい」も参照さんしょう

口径こうけいをミリメートル、センチメートル、インチなどで、「20ミリ砲ほう」のように表あらわす。かつて弾丸だんがんが球たま形かたちだったころには、また、その後ごしばらくも慣習かんしゅう的てきに、使用しようする弾丸だんがんの質量しつりょうから「6ポンド砲ほう」のような口径こうけい表現ひょうげんもあった。

単位たんいのない「～口径こうけい」は口径こうけい長ちょうの略りゃくで、銃砲じゅうほう身長しんちょうが口径こうけいの何なん倍ばいであるかを表あらわす。「50口径こうけい」は、銃砲じゅうほう身長しんちょうが口径こうけいの50倍ばいということである。ただし、拳銃けんじゅうなど小型こがたの銃じゅうでは1/100インチを単位たんいとした口径こうけいを表あらわす。「50口径こうけい」は、口径こうけい0.5インチということである。