バンダル・ビン・スルターン

バンダル بندر
全ぜん名な	バンダル・ビン・スルターン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール＝サウード بندر بن سلطان بن عبدالعزيز آل سعود
出生しゅっしょう	(1949-03-02) 1949年ねん3月2日にち（75歳さい） サウジアラビア、ターイフ
父親ちちおや	スルターン・ビン・アブドゥルアズィーズ
宗教しゅうきょう	イスラム教いすらむきょうワッハーブ派は

2002年ねん、ジョージ・W・ブッシュ大統領だいとうりょうとバンダル

バンダル・ビン・スルターン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール＝サウード（アラビア語ご: بندر بن سلطان بن عبدالعزيز آل سعود、Bandar bin Sultan、1949年ねん3月2日にち - ）は、サウジアラビアの政治せいじ家か。王族おうぞくサウード家かの一員いちいんで、元もと皇太子こうたいしスルターン・ビン・アブドゥルアズィーズの子こ、初代しょだい国王こくおうアブドゥルアズィーズ・イブン・サウードの孫まご。駐ちゅう米べいサウジアラビア大使たいし、サウジアラビア総合そうごう情報じょうほう庁ちょう長官ちょうかん、国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ事務じむ局長きょくちょうを歴任れきにんした。

略歴りゃくれき

1949年ねん、初代しょだい国王こくおうイブン・サウードの十じゅう五ご男なん（十じゅう六ろく男なんとも）のスルターンと、彼かれが所有しょゆうしており婚姻こんいんしたエチオピア系けいのメイドの間あいだに生うまれる。1968年ねんにイギリスのクランウェル王立おうりつ空軍くうぐん大学だいがくを卒業そつぎょう、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのマックスウェル空軍くうぐん基地きちで追加ついかトレーニングも行おこなった。不時着ふじちゃく時じの怪我けがにより1977年ねんに中佐ちゅうさの階級かいきゅうでサウジアラビア空軍くうぐんのキャリアに終おわりを告つげ、アメリカのジョンズ・ホプキンス大学だいがくで国際こくさい公共こうきょう政策せいさくの修士しゅうし号ごうを取得しゅとくした。

1983年ねんから2005年ねんまで20年ねん以上いじょうに渡わたって駐米ちゅうべい大使たいしを務つとめ、豊富ほうふなオイルマネーでアメリカ政界せいかいにおいて強つよい影響えいきょう力りょくを持もつサウジロビーの顔役かおやくとなる。ロナルド・レーガン政権せいけん下かでは、アメリカ最強さいきょうのロビー団体だんたいの一ひとつといわれているアメリカ・イスラエル公共こうきょう問題もんだい委員いいん会かい（AIPAC）の反対はんたいにもかかわらず、E-3早期そうき警戒けいかい管制かんせい機きのサウジへの販売はんばいを成功せいこうさせる。さらにサウジアラビアで「ミサイルの父ちち」と呼よばれるハリド・ビン・スルタンとともにアメリカには秘密ひみつで中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの準じゅん中距離ちゅうきょり弾道だんどうミサイルDF-3の購入こうにゅうにも関かかわった。ただし、ハリドとバンダルの双方そうほうが自みずからの実績じっせきと主張しゅちょうして論争ろんそうになっている。イラン・コントラ事件いらんこんとらじけんではニカラグアへの資金しきん提供ていきょうに関かかわったとされ、この時ときにアメリカ側がわの窓口まどぐちをつめた後のちに大統領だいとうりょうとなって湾岸わんがん戦争せんそうを起おこすジョージ・H・W・ブッシュ副ふく大統領だいとうりょうと親交しんこうを深ふかめたとされる。また、ベーカーがブッシュの名なを受うけ、関係かんけい国こくに対たいして中東ちゅうとう和平わへい会議かいぎへの出席しゅっせきを要請ようせいした際さい、ファハド国王こくおうを説得せっとくし、サウジの同どう会議かいぎ出席しゅっせきに同意どういさせたとされる。このブッシュ家かとバンダルとの親密しんみつさは映画えいが『華氏かし911』でも取とり上あげられ、このことからバンダル・ブッシュと渾名あだなされる。2000年代ねんだいに入はいりバンダルはジョージ・H・W・ブッシュの息子むすこのジョージ・W・ブッシュ政権せいけん時じに、軍事ぐんじ行動こうどうによるイラクのサッダーム・フセイン政権せいけんの打倒だとうを提唱ていしょうし、副ふく大統領だいとうりょうのディック・チェイニーが提唱ていしょうするイランとシリアの政権せいけん打倒だとうプログラム「The new Middle East（新しん中東ちゅうとう）」政策せいさくを支持しじ、イラク戦争せんそうなど実際じっさいに彼かれの思惑おもわく通どおりにアメリカの中東ちゅうとう政策せいさくは進すすんだ。また、イランと対立たいりつするイスラエルに接近せっきんするサウジアラビアの外交がいこう戦略せんりゃくも主導しゅどうしてきた。

2005年ねん10月がつ、第だい6代だい国王こくおうアブドゥッラー・ビン・アブドゥルアズィーズの下もとで、駐米ちゅうべい大使たいしを退しりぞき国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ事務じむ局長きょくちょうに就任しゅうにんした。駐米ちゅうべい大使たいしの後任こうにんには、バンダルが駐米ちゅうべい大使たいしだった20余よ年ねんとほぼ重複じゅうふくする時期じきに総合そうごう情報じょうほう庁ちょう長官ちょうかんを務つとめていたトゥルキー・アル＝ファイサル王子おうじが就任しゅうにんした。

2010年ねんから始はじまったアラブの春はるにおける2011年ねんバーレーン騒乱そうらんの際さいには、サウジを中心ちゅうしんとする湾岸わんがん協力きょうりょく会議かいぎは部隊ぶたいを派遣はけんして自国じこくに反はん政府せいふデモが飛とび火ひしないように初はつの域内いきない軍事ぐんじ警察けいさつ行動こうどうを行おこない、バーレーン政府せいふのデモ隊たい鎮圧ちんあつに協力きょうりょくしたが、この際さい、バンダルが友好国ゆうこうこくの中国ちゅうごくやパキスタンなどからデモ隊たい鎮圧ちんあつの支持しじをとりつけるための特使とくしとなった。サウジが同様どうようにジャスミン革命かくめいによる民主みんしゅ化かを避さけたい中国ちゅうごくと協力きょうりょく関係かんけいを深ふかめてバーレーンの反はん政府せいふデモ鎮圧ちんあつに武力ぶりょく介入かいにゅうしたことは、かつてのワルシャワ条約じょうやく機構きこうによるプラハの春はる弾圧だんあつを想起そうきさせると西側にしがわ諸国しょこくから批判ひはんされた。

2012年ねんから国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ事務じむ局長きょくちょうと兼任けんにんする形かたちで総合そうごう情報じょうほう庁ちょう長官ちょうかんに就任しゅうにん。2013年ねん7月がつにロシアに極秘ごくひ訪問ほうもんし、ウラジーミル・プーチン大統領だいとうりょうに「ロシアがシリアから手てを引ひけばチェチェンのイスラム過激かげき派はの対たい露ろテロ行為こういを止とめさせることが出来でき、ソチオリンピックも安全あんぜんに開催かいさいできる」と提案ていあんしたが、プーチンは「サウジがチェチェンのテロリストの後うしろ盾たてだと知しっている」として猛然もうぜんと提案ていあんを拒否きょひしたという。10月に、バンダルは、サウジがシリア・イラン政策せいさくで、穏健おんけん的てきな態度たいどを採とるバラク・オバマ政権せいけん下かのアメリカとは離はなれて進すすむことを言明げんめいした。

2014年ねんに「自身じしんの要求ようきゅうのため」として統合とうごう情報じょうほう庁ちょう長官ちょうかんを解任かいにんされた。アメリカの意向いこうによる圧力あつりょくと見みられ、ジョン・ケリー国務こくむ長官ちょうかんはバンダルを「問題もんだい」としていた。総合そうごう情報じょうほう庁ちょうは、イラクやシーア派はの軍事ぐんじ大国たいこくのシリアやイランを弱体じゃくたい化かさせるために過激かげき派はのアルカーイダやISILなどサラフィー・ジハード主義しゅぎ者ものを影かげで支援しえんしてきた過激かげき派はの最大さいだいのスポンサー若もしくは黒幕くろまくといわれてきたが、新しん保守ほしゅ主義しゅぎ（ネオコン）と呼よばれたブッシュ政権せいけんに比くらべて対たいシリア・イラン穏健おんけん路線ろせんを採とるオバマ政権せいけんにとっては、過去かこの政策せいさくを引ひきずるバンダルの存在そんざいが都合つごうが悪わるくなったからだと言いわれている。イラン、駐ちゅうシリアヨルダン大使たいしのバハジャト・スレイマン、一部いちぶのジャーナリスト、学者がくしゃは、バンダルこそがアルカーイダとISILの真しんの指導しどう者しゃであるとしている。

2014年ねん6月がつ、国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ事務じむ局長きょくちょうと兼任けんにんする形かたちで、国王こくおう顧問こもん、国王こくおう特使とくしにも就任しゅうにんし権力けんりょくの中枢ちゅうすうに復帰ふっきしたと見みられていたが、2015年ねん1月がつ、第だい6代だい国王こくおうアブドゥッラーの死去しきょに伴ともない即位そくいした第だい7代だい国王こくおうサルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズの内閣ないかく改造かいぞうにより、国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎ事務じむ局長きょくちょう、国王こくおう顧問こもん、国王こくおう特使とくしを解任かいにんされた。国家こっか安全あんぜん保障ほしょう会議かいぎは廃止はいしされ、ムハンマド・ビン・ナーイフ副ふく皇太子こうたいし兼けん第だい二に副ふく首相しゅしょう兼けん内務ないむ大臣だいじんを議長ぎちょうとする政治せいじ・安全あんぜん保障ほしょう評議ひょうぎ会かいが新設しんせつされた。

2020年ねん10月5日にち、サウジアラビア系けいアル＝アラビーヤのインタビューで、イスラエルとアラブ首長しゅちょう国こく連邦れんぽう・バーレーンの国交こっこう正常せいじょう化か（アブラハム合意ごうい）に対たいするパレスチナの非難ひなんは「冒おかせ瀆」であると非難ひなんし、「低級ていきゅうな言説げんせつ」は、従来じゅうらいパレスチナを支援しえんしてきた、サウジアラビアや世界せかいの支持しじを得えられるものではないとした。同時どうじに、パレスチナが、サウジアラビアと敵対てきたいするイランやトルコとの関係かんけいを深ふかめていることを非難ひなんした。また、「パレスチナの大義たいぎは正当せいとうだが、その擁護ようご者しゃは失敗しっぱいし、イスラエルの大義たいぎは不当ふとうだが、その擁護ようご者しゃは成功せいこうしている」と評ひょうした。また、パレスチナの初代しょだい大統領だいとうりょうであったヤーセル・アラファートがサウジアラビアの和平わへい努力どりょくを度々たびたび無下むげにした事実じじつを列挙れっきょし、シリアのハーフィズ・アル＝アサドがアラファートを恫喝どうかつしたことでパレスチナはキャンプ・デービッド合意ごういに参加さんかできなかったこともあったとも証言しょうげんした。そして、1940年代ねんだいのパレスチナ指導しどう者しゃの一人ひとり、アミーン・フサイニーがアドルフ・ヒトラーに協力きょうりょくした史実しじつを筆頭ひっとうに、パレスチナの指導しどう者しゃが70年ねん以上いじょうにわたり、いかに失敗しっぱいを繰くり返かえしてきたかを糾弾きゅうだんした。その上うえで、「我々われわれはイスラエル問題もんだいに関心かんしんを持もつよりも、自国じこくの安全あんぜん保障ほしょうと国益こくえきに注意ちゅういを払はらわなければならない段階だんかいに来きている」と主張しゅちょうした。