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ブラウザ戦争せんそう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』
おもなブラウザによるメジャーリリースのスケジュール

ブラウザ戦争せんそう(ブラウザせんそう)とは、ウェブブラウザ提供ていきょうする各社かくしゃかく団体だんたいによる市場いちばシェア争奪そうだつせんのことをす。一般いっぱんには、1990年代ねんだいきたInternet ExplorerNetscape Navigator猛烈もうれつ競争きょうそうだいいちブラウザ戦争せんそう[1][2]、2004ねんごろから2014ねんごろにかけてきた、Google・Apple・MicrosoftなどのIT業界ぎょうかいでのだい企業きぎょうんだ、ブラウザベンダによる最新さいしんのWeb標準ひょうじゅん実装じっそう競争きょうそう、および動作どうさ速度そくど高速こうそく競争きょうそうのことをだいブラウザ戦争せんそう[3]ぶことがおおい。

だいいちブラウザ戦争せんそう

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1996ねんから2009ねんまでの複数ふくすうのブラウザーの市場いちば占有せんゆうりつ

最初さいしょ戦争せんそうは、Internet ExplorerかNetscape Navigatorのからはじまった。

1990 - 1994ねん

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1990年代ねんだい初頭しょとう非常ひじょう簡単かんたんグラフィカルユーザインタフェース(GUI)をそなえたウェブブラウザが入手にゅうしゅ可能かのうになった。一番いちばんはじめに流行りゅうこうしたのはNCSAによってつくられたNCSA Mosaicだった[2]。Spry MosaicやSpyglass Mosaicのように、NCSAからマスターライセンスを供与きょうよされた数社すうしゃ商業しょうぎょうようブラウザとしてライセンスを販売はんばいした。

NCSA Mosaic開発かいはつしゃ1人ひとりであるマーク・アンドリーセン[2]はMosaic Communications Corporationを設立せつりつし、Mozillaというコードネームのあたらしいブラウザをつくった(これはMozilla Application Suiteとは別物べつものである)。NCSAとの法的ほうてき問題もんだい解決かいけつにあたり、社名しゃめいNetscape Communications、ブラウザめいNetscape Navigator(NN)とあらためた。NNは使つか勝手がってがNCSA Mosaicのそれに酷似こくじしていた。制限せいげん金銭きんせん支出ししゅつなしにダウンロードが可能かのうだったことこうそうし、ほどなく市場いちば支配しはいした。

1995ねん〜1998ねん、NNはもっとも幅広はばひろ使つかわれる主要しゅようなブラウザになった。

1995 - 1997ねん

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1995ねん発売はつばいされたMicrosoft Windows 95はそれまでのWindowsとのおおきなちがいの1つとしてNOS(Network Operating System)機能きのう実装じっそうしたことがげられる。ネットワークプロトコルとしてインターネットで標準ひょうじゅんとなっているTCP/IP実装じっそうされたことから、ウェブブラウザをインストールするだけでWindows 95でウェブを利用りよう可能かのうとなった。それにより、World Wide Web一般いっぱん普及ふきゅうはじめた。

このころMicrosoftInternet Explorer(IE)の基礎きそとなるNCSA MosaicのライセンスをNCSAから取得しゅとくした。IE 1.0はMicrosoft Windows 95 Plus!一部いちぶとして1995ねん8がつにWindows 95と同時どうじ発売はつばいされた。

Netscape Navigatorのしんバージョン(のNetscape Communicator)とIEははげしいシェアあらそいをひろ頻繁ひんぱんなバージョンアップをかえすこととなる。しかし、安定あんていせい安全あんぜんせい向上こうじょうより他方たほうとの差別さべつ優先ゆうせんしたため、頻繁ひんぱんクラッシュセキュリティホールウェブ標準ひょうじゅんとはことなるHTMLレンダリングエンジンユーザ混乱こんらんをもたらすこととなる。

Microsoftは1995ねん11月にIEのしんバージョン2.0を、1996ねん8がつにはバージョン3.0を無償むしょう公開こうかいし、あらたに発売はつばいされるWindowsにまれることとなる。NNは当時とうじシェアウェアとして有料ゆうりょうであったがIEは無償むしょう公開こうかいされていた。IEでは基本きほんてきげが以上いじょう、WindowsなどのMicrosoft製品せいひんげから開発かいはつているとして、Microsoft製品せいひん不当ふとう価格かかくとして批判ひはんるようになった。それにくわえ、IEをわせてWindowsを販売はんばいしているとして独占どくせん禁止きんしほう違反いはんするとして提訴ていそおこなわれるようになった。

1998 - 2000ねん

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Windows 98正確せいかくにはWindows 95の最終さいしゅうバージョン)からはInternet ExplorerがWindowsにOSのひとつの機能きのうとして搭載とうさいされるようになったこともあり、市場いちばにおけるWindowsの圧倒的あっとうてきシェアを背景はいけいにブラウザのシェアあらそ自体じたい意味いみたないものとなってしまっていった。

また、当時とうじHTML手書てがきにより制作せいさくされたサイトがおおかったが、そのようなHTMLのなかにはまさしく記述きじゅつされていないものもすくなくなかった。Netscape NavigatorはそのようなHTMLの表示ひょうじ補正ほせい積極せっきょくてきおこなわなかったが、それにたいしてIEは積極せっきょくてき補正ほせいおこなった。同時どうじに、CSS処理しょりもNNは対応たいおうおくれていた。結果けっかとして、NNではレイアウトがずれているがIEではまともに表示ひょうじできているというページがおお出現しゅつげんすることとなり、NNばなれを加速かそくする一因いちいんとなった。

また、JavaScriptについてもアクセスAPIとしてNNが採用さいようしたレイヤーは非常ひじょう使つか勝手がってわるく、IEのアクセスAPIであるDOM[note 1]比較ひかくして完全かんぜんおとっていた。この2種類しゅるいのアクセスAPIはまったく互換ごかんせいがなかったため、コストの問題もんだいからどちらかしか対応たいおうできない場合ばあいに、よりすぐれた仕様しようであるIEのDOMを制作せいさくしゃ採用さいようするようになった。

そのような理由りゆうにより2000ねん〜2004ねんにはIEが市場いちばシェアのほぼすべてを獲得かくとくしてだいいちブラウザ戦争せんそう終結しゅうけつとされる。アメリカでは独占どくせん禁止きんしほう違反いはんによる裁判さいばんおこなわれたが、裁判さいばんがNNやそののブラウザのシェア回復かいふく寄与きよすることはなかった。

だいブラウザ戦争せんそう

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StatCounterによる2009ねん以降いこうのブラウザシェアの変動へんどう

つぎ戦争せんそうは、Internet Explorer・Opera・Mozilla Firefox・Safari・Google Chromeの戦争せんそうになり、混迷こんめいきわめた。

Internet Explorer覇権はけん後退こうたい

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ウェブブラウザの市場いちばシェアをほぼ独占どくせんするにいたったMicrosoftによるInternet Explorerだが、6.0のあたりから開発かいはつ停滞ていたいし、あたらしさにける状況じょうきょうながつづことになった。また、圧倒的あっとうてきなシェアをめたことで、どうブラウザが採用さいようする技術ぎじゅつであるActiveX悪用あくようするキーロガーバックドアはじめ、どうブラウザのセキュリティホールねらったコンピュータウイルススパイウェアなどが多数たすう登場とうじょうするようになり、コンピューターセキュリティ問題もんだいがクローズアップされ、またIE専用せんようサイトの増加ぞうかによるブラウザ互換ごかんせいへの批判ひはんもされるようになった。だが、先述せんじゅつのシェア独占どくせん開発かいはつ停滞ていたいのために、IEの問題もんだい遅々ちちとして解消かいしょうされない状況じょうきょうつづいた。

そのような状況じょうきょうで、タブブラウジング機能きのうフィードリーダー機能きのうなど、多様たようしん機能きのう搭載とうさいする次世代じせだいブラウザとして、Mozilla FoundationによるMozilla FirefoxOpera SoftwareによるOpera[note 2]AppleによるSafari登場とうじょうした。これらのブラウザはしん機能きのう搭載とうさいしているだけでなく、自前じまえレンダリングエンジンっており[note 3]、IEのセキュリティホールとして問題もんだいになったActiveXを採用さいようしていないため、ActiveXに起因きいんするセキュリティ問題もんだい発生はっせいしない(各々おのおののウェブブラウザ固有こゆうのセキュリティホールは存在そんざいする)。

新興しんこうブラウザ、とくにMozilla Firefoxの人気にんきがあがり、2005ねんから2006ねんにかけてブラウザシェアが従来じゅうらいくらべておおきく変動へんどうした。2006ねん12月の時点じてんで、世界せかいてき市場いちばたIEのシェアは8わりきょう、Mozilla Firefoxのシェアは1わりきょうであった[4]市場いちばシェアが減少げんしょうしたとはいえ、依然いぜんとしてIEが圧倒的あっとうてき優位ゆうい状況じょうきょうであることにわりはなかった。また、日本にっぽんやアメリカではIEがとく独占どくせんてきなシェアをっており、ヨーロッパオーストラリアなどとくらべると他社たしゃせいブラウザのシェアはまだあまりびていなかった日本にっぽんなどの場合ばあいMicrosoft製品せいひん依存いぞんする傾向けいこうつよいため、ブラウザ以外いがいでもMicrosoft製品せいひん重視じゅうしする傾向けいこうられた)[よう出典しゅってん]

これにたいし、ヨーロッパではIEのシェアが多数たすうではあるが確実かくじつ減少げんしょう傾向けいこうにあり、Mozilla Firefoxが市場いちばシェアの20%を突破とっぱするなど(一部いちぶこくでは40%を突破とっぱ)、IE以外いがいのブラウザがシェアをばしていた[5]

IE以外いがい対応たいおうしないサイトもおおかったため、IEコンポーネントブラウザ流行りゅうこうした。

Google Chromeの躍進やくしん

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2008ねんにGoogleがGoogle Chrome発表はっぴょうすると、ブラウザ戦争せんそう徐々じょじょにChormeの優勢ゆうせいかっていった[6]2010ねん9月のNetApplicationsしゃ世界せかいブラウザシェア調査ちょうさによると、Internet Explorerは一時いちじかえしをせたもののふたた減少げんしょうし59.65%、いでMozilla Firefoxが22.96%、Google Chromeはシェアをやしやく8%になった。かつてはだい3にいたSafari(5.27%)やブラウザ競争きょうそうころから開発かいはつつづけられていたOpera(2.39%)などこちらもなやみがちになってきていたが、ユーザーすうはある程度ていどいた[7]

2011ねんになると、Internet Explorer 9正式せいしきばん3月15にちに、Mozilla Firefox 4正式せいしきばん3月22にちに、Opera 11.10が4がつ12にちにそれぞれ公開こうかいされた。しかしIE 9はWindows XPをサポートしないことや、東北とうほく地方ちほう太平洋たいへいようおき地震じしんによる日本語にほんごばん公開こうかい延期えんき影響えいきょうで、ダウンロードすうでFirefox 4にはなされた[8]

こののち、Mozilla Firefoxは「バージョンアップを頻繁ひんぱんおこなうので、数ヶ月すうかげつごとに更新こうしんおこなっていただきたい」という趣旨しゅし発表はっぴょう企業きぎょうけには、メジャーバージョンアップを1ねんごとにおこないそのあいだのマイナーアップデートをおこな延長えんちょうサポートばん(Extended Support Release)を提供ていきょうしていた[9][note 4]

SafariのWindowsばん2012ねん5月9にちリリースの5.1.7を最後さいご開発かいはつ終了しゅうりょうした。また、Windows 8のあたらしいUIは市場いちばれられず[10]、Windows XPのシェアがあまりがらず、結果けっかふるいままのIEのシェアをさらにげることにつながった。

2012ねん、Google ChromeはMozilla Firefoxにいつき、2014ねんにはそのシェアが50%を突破とっぱるぎない地位ちいおさまったことで、だいブラウザ戦争せんそう終結しゅうけつしたといわれる状況じょうきょうになった[11]

2016ねんにGoogle Chromeの市場いちば占有せんゆうりつがトップとなり、Internet Explorerを上回うわまわり、ブラウザ業界ぎょうかい君臨くんりんした[12]

2021ねん12がつ現在げんざい複数ふくすうのブラウザーのくにべつ占有せんゆうりつ
  Safari

終戦しゅうせん動向どうこう

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Mozilla FirefoxはFirefox Quantumをローンチし[13]、セキュリティやプライバシー保護ほごなどをした。

Operaは独自どくじレンダリングをやめChromiumをベースにしたものに変更へんこうし、スマートフォンけにOpera Touchをローンチした。

2014ねんまつにMicrosoftはしんブラウザの発表はっぴょう予告よこくだいさんブラウザ戦争せんそう勃発ぼっぱつかとも予測よそくされたが[14]、その登場とうじょうしたMicrosoft EdgeはChromiumベースでの開発かいはつ転換てんかん、2019ねんにはChromiumをなんらかのかたち使用しようするブラウザが75%にたっした。

もとOperaスタッフによるVivaldi、Goannaエンジン搭載とうさいPale Moon、QtWebEngine搭載とうさいOtter Browser、Dooble、FalkonもとMozillaスタッフによるBraveなどあたらしいブラウザはまれつづけているが、どれもGoogle Chromeの牙城がじょうくずせていない[15]

脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ このDOMはW3C標準ひょうじゅんDOMとは別物べつもの。ただし、W3CのDOMでは機能きのう追加ついかともなって記法きほうわった程度ていどで、設計せっけいはほぼIEのDOMを踏襲とうしゅうしている。
  2. ^ Opera自体じたいは、1995ねんにリリースされている。
  3. ^ いわゆるIEコンポーネントブラウザ自前じまえのレンダリングエンジンをっていないものがおおかった。
  4. ^ 2015ねん時点じてんでこれらの延長えんちょうサポートの恩恵おんけいあずかっている企業きぎょうがどれだけあったのかは不明ふめい。2017ねん現在げんざいは、すべてHTML5に対応たいおうしたブラウザにえている。

出典しゅってん

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  1. ^ ブラウザ戦争せんそう、HTML5の標準ひょうじゅん、ブラウザの未来みらい──歴史れきしかたくすWebブラウザ談義だんぎ後編こうへん”. ガジェット通信つうしん (2016ねん4がつ22にち). 2017ねん2がつ14にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c Firefox OSの「これまで」と「これから」”. 技術評論社ぎじゅつひょうろんしゃ (2016ねん7がつ11にち). 2017ねん2がつ14にち閲覧えつらん
  3. ^ 汎用はんようのUI技術ぎじゅつ」としてひろがるHTML5”. @IT (2012ねん2がつ2にち). 2017ねん2がつ14にち閲覧えつらん
  4. ^ Firefox Snags Over 12% of the Browser Market”. Janco Associates, Inc.. 2017ねん2がつ13にち閲覧えつらん
  5. ^ 末岡すえおか洋子ようこ (2006ねん12月11にち). “欧州おうしゅう増加ぞうかするFirefoxの利用りよう、23.2%のユーザーが利用りよう”. マイナビニュース. 2017ねん2がつ13にち閲覧えつらん
  6. ^ だいさんブラウザ戦争せんそうきる?”. エキサイトニュース (2011ねん8がつ16にち). 2011ねん8がつ16にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2018ねん5がつ4にち閲覧えつらん
  7. ^ Net Applications|Browser market share”. 2010ねん10がつ10日とおか時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2010ねん10がつ14にち閲覧えつらん
  8. ^ 佐藤さとう由紀子ゆきこ (2011ねん3がつ24にち). “Firefox 4、公開こうかい24あいだダウンロードすうはIE9のやく3ばいの710まんほん. ITmedia. https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1103/24/news018.html 2023ねん2がつ16にち閲覧えつらん 
  9. ^ 延長えんちょうサポートについて”. Mozilla Japan. 2017ねん2がつ13にち閲覧えつらん[リンク]
  10. ^ TechTargetジャパン運営うんえい事務じむきょく (2013ねん10がつ25にち). “8.1 Previewでなおす、Windowsトレンドといまじょうシスがつべき着眼ちゃくがんてん. ITmedia. https://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1310/25/news004.html 2023ねん2がつ16にち閲覧えつらん 
  11. ^ じつは2014ねん終結しゅうけつしていた?--ブラウザ戦争せんそう現状げんじょうをおさらい”. ZDNet (2014ねん12月25にち). 2023ねん2がつ16にち閲覧えつらん
  12. ^ “ブラウザーのシェア、グーグル「クローム」が首位しゅいに”. 日本経済新聞にほんけいざいしんぶん. (2016ねん5がつ3にち). https://www.nikkei.com/article/DGXLASGN03H0M_T00C16A5000000/ 2023ねん2がつ16にち閲覧えつらん 
  13. ^ Chromeよ、さらば。ベストブラウザーのは「Firefox Quantum」に交代こうたいだ:『WIRED』USばんレヴュー”. WIRED (2017ねん12月6にち). 2023ねん2がつ16にち閲覧えつらん
  14. ^ ウェブの世界せかいこるであろう2つのおおきな変化へんか”. www.aibsc.jp (2015ねん1がつ15にち). 2018ねん5がつ4にち閲覧えつらん
  15. ^ Goodbye, EdgeHTML”. blog.mozilla.org (2018ねん12月6にち). 2019ねん7がつ14にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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  • StatCounter Global Stats – tracks the market share of browsers including mobile from over 4 billion
  • W3Schools - current market share of browsers and their versions, desktop and mobile