プラスティネーション

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プラスティネーション (Plastination) とは、人間にんげん動物どうぶつ遺体いたいまたは遺体いたい一部いちぶ内臓ないぞうなど)にふくまれる水分すいぶん脂肪しぼうぶんをプラスチックなどの合成ごうせい樹脂じゅしえることで、それを保存ほぞん可能かのうにする技術ぎじゅつのことである。

近年きんねんではどう技術ぎじゅつプラストミック (Plastomic) と呼称こしょうする団体だんたいもある。

概要がいよう[編集へんしゅう]

身体しんたい構成こうせいしている水分すいぶん脂肪しぼうぶんをプラスチックなどの合成ごうせい樹脂じゅしえ、顕微鏡けんびきょうレベルでの細胞さいぼう組織そしき構成こうせいをほとんどたもったまま、素手すでれることができ、腐敗ふはいこしたり悪臭あくしゅう発生はっせいさせたりすることもない標本ひょうほんつくすことができる。

こうした、生物せいぶつ組織そしき水分すいぶん脂肪しぼうだまなどの液体えきたい部分ぶぶん固体こたい置換ちかんする技術ぎじゅつそのものは、生物せいぶつ組織そしき硬化こうかさせたのちミクロトームばれるかんなじょう機械きかいによってけずられたうす切片せっぺん顕微鏡けんびきょう観察かんさつよう標本ひょうほん(プレパラート)とするための技術ぎじゅつとしてまれ、ふるくから今日きょうまでもちいられているパラフィン切片せっぺんほうやセロイジン切片せっぺんほうから、さらには透過とうかがた電子でんし顕微鏡けんびきょうによる観察かんさつよう開発かいはつされ、光学こうがく顕微鏡けんびきょうようにも転用てんようされているエポキシ樹脂じゅしなどのプラスチックによる樹脂じゅし切片せっぺんほう発展はってんしている。この樹脂じゅし置換ちかんによる顕微鏡けんびきょうよう切片せっぺん作成さくせい技術ぎじゅつが、個体こたいあるいは器官きかんまるごとの標本ひょうほん作製さくせい技法ぎほう発展はってんしたのがこのプラスティネーション技術ぎじゅつであり、遺体いたい死体したい解剖かいぼうがくよう標本ひょうほんとしたり展示てんじかいもちいたりするためにもちいられている。

プラスティネーションの技術ぎじゅつは、ドイツハイデルベルク大学だいがくグンター・フォン・ハーゲンスにより、1978ねんされた。ハーゲンスはすうこくでプラスティネーション技術ぎじゅつ特許とっきょ取得しゅとくし、その技術ぎじゅつ紹介しょうかいするべく、プラスティネーション処理しょりほどこされた人体じんたい展示てんじする「BODY WORLDS」を1995ねんより世界せかい各国かっこく開催かいさいしてきた。日本にっぽんでは1995ねん開催かいさいの『人体じんたい世界せかい』(国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかん特別とくべつてん[1]、1996-1998ねん開催かいさいされた『人体じんたい不思議ふしぎてん』にも関与かんよした。ハーゲンスはまた、大学だいがくのあるハイデルベルクに「プラスティネーション協会きょうかい」を設立せつりつし、指導しどう監督かんとくたっている。

プロセス[編集へんしゅう]

プラスティネーション処理しょり過程かてい以下いかとおりである。前提ぜんていとして、死後しご硬直こうちょくはじまるまえ死後しごやく2あいだ)に加工かこう開始かいしする必要ひつようがあり、ゆみく・トランプをするなどのポーズをとらせる場合ばあいも、死後しごすみやかに遺体いたいをポージングさせる必要ひつようがある。

プロセス9。真空しんくうポンプであつをかける
  1. 遺体いたいを10%ホルマリン溶液ようえきに1週間しゅうかんから10にちほどひたし、組織そしき固定こていする。
  2. ホルマリン処理しょりんだ遺体いたい氷点下ひょうてんか25冷却れいきゃくしたアセトンなどの溶媒ようばいひたして密封みっぷうし、冷凍れいとう置換ちかん水分すいぶん脂肪しぼうぶんいていく。
  3. いきなり濃度のうどたかいアセトンにむと組織そしきくずれるので、最初さいしょの2日間にちかん濃度のうど70%のアセトンにむ。
  4. つぎ濃度のうどを80%にしたアセトンに、さらに2日間にちかんむ。
  5. 最後さいご濃度のうど90%のアセトンに3にちほどみ、この処置しょちによって水分すいぶん脂肪しぼうぶんをアセトンにえる。
  6. 完全かんぜん脱水だっすい脱脂だっしすすんだ段階だんかい常温じょうおんのアセトンにうつし、温度おんど常温じょうおんにまでもどす。
  7. 処理しょりんだ遺体いたい常温じょうおんにまでもどったら溶媒ようばいなかからし、シリコーンポリエステルエポキシなどの液体えきたい合成ごうせい樹脂じゅしたされた浴槽よくそうれ、1にちむ。
  8. 樹脂じゅし染込しみこんだら硬化こうかざいくわえてさらに2週間しゅうかんむ。
  9. シリコンが十分じゅうぶん浸透しんとうした遺体いたい密閉みっぺいした容器ようきなかれて1かげつ程度ていど真空しんくうポンプあつをかける。この過程かてい細胞さいぼうまくないのこっていたアセトンまで完全かんぜん気化きかし、組織そしき樹脂じゅし成分せいぶん浸透しんとうする。
  10. 容器ようきから遺体いたいし、余分よぶん樹脂じゅしのぞいて珪酸けいさんソーダを噴霧ふんむしながら3にちほど常温じょうおん乾燥かんそうさせると、標本ひょうほん完成かんせいする。

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ 人体じんたい世界せかい 国立こくりつ科学かがく博物館はくぶつかん 過去かこ特別とくべつてんアーカイブより

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]