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ペレスメジロザメ

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ペレスメジロザメ
保全ほぜんじょうきょう評価ひょうか[1]
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類ぶんるい
さかい : 動物界どうぶつかい Animalia
もん : 脊索せきさく動物どうぶつもん Chordata
つな : 軟骨なんこつぎょつな Chondrichthyes
: メジロザメ Carcharhiniformes
: メジロザメ Carcharhinidae
ぞく : メジロザメぞく Carcharhinus
たね : ペレスメジロザメ C. perezi
学名がくめい
Carcharhinus perezi (Poey1876)
シノニム
  • Eulamia springeri Bigelow & Schroeder, 1944
  • Platypodon perezi Poey, 1876
英名えいめい
Caribbean reef shark
分布ぶんぷ

ペレスメジロザメ Carcharhinus pereziメジロザメぞくぞくするサメ一種いっしゅ西部せいぶ大西おおにしひろしねつ帯域たいいきサンゴ礁さんごしょう分布ぶんぷし、とくカリブ海かりぶかいおおい。からだ頑丈がんじょう流線型りゅうせんけいで、ドタブカクロトガリザメなどの大型おおがたメジロザメるいとよくているが、ほんしゅひれ明瞭めいりょう模様もようがないこと、だい背鰭せびれ後端こうたんみじかいこと、かたちかず区別くべつできる。

最大さいだいで3m。頂点ちょうてん捕食ほしょくしゃで、様々さまざまさかなあたまあしるいべる。活動かつどうてきなメジロザメるいとしてはめずらしく、海底かいてい洞窟どうくつやす姿すがた目撃もくげきされている。胎生たいせいで、めすは2ねんごとに4-6ひきむ。バハマでは餌付えづけされており、エコツーリズム対象たいしょうとして人気にんきがある。食用しょくようとして漁獲ぎょかくされ個体こたいすう減少げんしょうしており、IUCN保全ほぜんじょうきょう絶滅ぜつめつ危惧きぐとしている。

分類ぶんるい

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1876ねん学術がくじゅつ Anales de la Sociedad Española de Historia Natural において、フェリペ・ポエによって Platypodon perezi記載きさいされた。タイプ標本ひょうほんキューバ沿岸えんがん捕獲ほかくされた6個体こたいである。そのPlatypodon ぞくCarcharhinus ぞくシノニムとされた[2]

1982ねん形態けいたい系統けいとう解析かいせきでは、ほんしゅハビレメジロザメきんえんとされたが、1988ねんにはオグロメジロザメ姉妹しまいぐんとされた。1992ねんアロザイムによる分子ぶんし系統けいとう解析かいせきでは、ガラパゴスザメドタブカヨゴレなどのたねきんえんだという結果けっかられている[3]

分布ぶんぷ

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西部せいぶ大西おおにしひろしねつ帯域たいいき全域ぜんいきられ、ノースカロライナしゅうからブラジル北部ほくぶバミューダメキシコわん北部ほくぶカリブ海かりぶかい分布ぶんぷする。だが、フロリダキーズよりきたでは非常ひじょうめずらしい。サンゴ礁さんごしょう周辺しゅうへん浅瀬あさせこのみ、ドロップオフや礁の外縁がいえんちかくでられる[4]最大さいだいで378mからられているが、通常つうじょうは30m以浅でられる[1]

形態けいたい

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大柄おおがら流線型りゅうせんけいをしており、大型おおがたメジロザメるい区別くべつすることはむずかしい。通常つうじょうは2–2.5 m程度ていどだが、最長さいちょうで3 m・さいじゅうで70 kgの記録きろくがある[5][6]背面はいめんくら灰色はいいろはい褐色かっしょくで、はらめんしろから黄白こうはくしょく体側たいそくには目立めだたないしろおびがある。ひれには明瞭めいりょう模様もようはなく、むねひれはらひれ下面かめんしりひれ尾鰭おびれ薄黒うすぐろくなる[2][4]

吻はかなりみじかく、幅広はばひろくてまるい。鼻孔びこう明瞭めいりょうぜんはなべんはない。おおきくてまるく、まどかまくつ。片側かたがわれつは、りょうあごともに11–13。かく基部きぶ幅広はばひろく、ほそとんがあたま鋸歯きょしつ。正面しょうめんの2-4ほん直立ちょくりつし、口角こうかくかうにしたがって徐々じょじょななめになる。えらきれは5ついである程度ていどながい。むねひれだい3えらきれしたからおこりはじめする[4]だいいち背鰭せびれたかかまがたで、むねひれはしよりすこ前方ぜんぽうからおこりはじめする。だい背鰭せびれ比較的ひかくてきおおきく、しりひれすこ前方ぜんぽうからおこりはじめし、こうえんみじか遊離ゆうりはしつ。2背鰭せびれあいだにはひく隆起りゅうきせんがある。むねひれながくてぼそく、先端せんたんとが[2]かわ近接きんせつしてかさなりってならび、かくかわには5ほん大型おおがた個体こたいではまれに7ほん)のひく水平すいへい隆起りゅうきえん鋸歯きょしつづ[4]

生態せいたい

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バハマのサンゴ礁さんごしょうおよ個体こたい

分布ぶんぷいきでは豊富ほうふられるにもかかわらず、ほんしゅ大型おおがたメジロザメるいとしてもっと研究けんきゅうすすんでいないたねひとつである。カリブ海かりぶかいサンゴ礁さんごしょう生態せいたいけい主要しゅよう役割やくわりたしているとられ、夜間やかん活動かつどうてきになる。ぶしてき行動こうどう変化へんか回遊かいゆう記録きろくされていない。幼体ようたい通年つうねんおな場所ばしょまる傾向けいこうがあるが、成体せいたいになると行動こうどう範囲はんいひろくなる[7]

洞窟どうくつ海底かいていしずんで休息きゅうそくすることがある。活動かつどうてきなサメのなかでは、この行動こうどうはじめて記録きろくされたものである。1975ねんユージェニー・クラークユカタン半島はんとうムヘーレスとう洞窟どうくつ有名ゆうめいな"ねむるサメ"を調査ちょうさし、これらの個体こたいがダイバーをうことから、実際じっさいにはねむっているわけではないことをあきらかにした。クラークは、洞窟どうくつないがる淡水たんすい寄生虫きせいちゅうのぞき、また、ほんしゅ淡水たんすいによる"麻薬まやく"てき効果こうかたのしんでいるのではないかと推測すいそくした[8]脅威きょういさらされると威嚇いかく行動こうどうおこなうことがある。これはみじか強張こわばったおよかたで、頻繁ひんぱんきをえながら、1-1.2秒間びょうかんむねひれろすうごきをかえす。この行動こうどうは、よくられているオグロメジロザメほど頻繁ひんぱんにはおこなわれない[8][9]

幼体ようたいイタチザメオオメジロザメのような大型おおがたのサメに捕食ほしょくされる。寄生虫きせいちゅうについてはあまりられていないが、そのひとつに、だいいち背鰭せびれえん付着ふちゃくする、くら斑点はんてんのあるウオビルのヒルがいる[4]。ブラジル北部ほくぶでは、幼体ようたい水底みなそこよこたわり、掃除そうじぎょであるハゼ一種いっしゅElacatinus randalli のクリーニングステーションを利用りようする[10]ほんしゅ周囲しゅういには、日常にちじょうてきギンガメアジぞくCaranx latusヨロイアジぞくCarangoides ruberれが存在そんざいする[11]

えさ

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アジるいかれる。

様々さまざまサンゴ礁さんごしょうせい硬骨魚こうこつぎょあたまあしるいや、マダラトビエイUrobatis jamaicensis などのいたえらるいべる[1]。もがくさかなてるてい周波しゅうはおんせられる[4]。ある2 mのゆうフエダイOcyurus chrysurus捕食ほしょくしたとき観察かんさつでは、この個体こたい獲物えものまえをゆっくりと旋回せんかいするようにせかけ、突然とつぜんそのあたまよこってあごはし獲物えものつかまえた[8]幼体ようたいしょうさかな・エビ・カニをべる[8]。また、反転はんてんさせて体外たいがいし、消化しょうかぶつ寄生虫きせいちゅう粘液ねんえきなどをあらながすことができる[11]

生活せいかつ

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胎生たいせいで、卵黄らんおう使つかたした胎児たいじ卵黄らんおう胎盤たいばん転換てんかんする。交尾こうびあきらかに攻撃こうげきてきおこなわれ、めす体側たいそくにはあときずがよくられる[4]。ブラジルのフェルナンド・デ・ノローニャロカス環礁かんしょうでは、出産しゅっさん乾季かんきわりにあたる2-4がつだが、南米なんべいほか地域ちいきでは、アマゾンのなつにあたる11-12月におこなわれる[4][12]さんすう平均へいきんで4-6、妊娠にんしん期間きかんは1ねんめすは2ねんごと妊娠にんしんする[8]出生しゅっしょうは74 cm以下いかで、ゆうは1.5–1.7 m・めすは2–3 mでせい成熟せいじゅくする[4]

ひととのかかわり

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えさむらがる個体こたい

通常つうじょう消極しょうきょくてきで、ダイバーにも反応はんのうしないが、えさ存在そんざいでは攻撃こうげきてきになり、また大型おおがたであるため潜在せんざいてき危険きけんだとかんがえられる[6]。2008ねん国際こくさいサメ被害ひがい目録もくろくは27けん攻撃こうげき記録きろくしており、そのうち4けん挑発ちょうはつ事例じれいで、死亡しぼうれいはない[13]

分布ぶんぷいき全域ぜんいき商業しょうぎょう漁業ぎょぎょう地域ちいき漁業ぎょぎょうにおいて、延縄はえなわもうによって漁獲ぎょかくされる。魚肉ぎょにくさめがわ肝油かんゆ魚粉ぎょふんなどとして利用りようされる。コロンビアでは延縄はえなわによる水揚みずありょうの39%をめるもっと水揚みずありょうおおいサメで、ひれあぶらや、鑑賞かんしょう目的もくてきあごなどが利用りようされる。ベリーズではハタフエダイねらったりによりこんされ、にく国内こくないメキシコグアテマラで"panades"というトルティーヤものかたち消費しょうひされる。ひれはアジアに輸出ゆしゅつされこう収益しゅうえきげている。ベリーズでのサメりょうは1900年代ねんだいなかばにはじまり、ぜんたね急激きゅうげき減少げんしょうした1990年代ねんだい初期しょきわった[1]ほんしゅにくこう濃度のうどメチル水銀すいぎん重金属じゅうきんぞくふく可能かのうせいがある[4]

餌付えづ

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バハマでは餌付えづけされる。

餌付えづけによってダイバーのまわりにサメをせることで、収益しゅうえきせいたかいエコツーリズム産業さんぎょう成立せいりつしている。バハマではこれは年間ねんかん600まんドル規模きぼたっしており、これをサメ1ひきあたりにならせば1.3-4まんドルになる(漁獲ぎょかくしたサメは1ひきあたり50-60ドル)[14]。この産業さんぎょう論争ろんそうまととなっており、反対はんたいしゃは、サメがえさ人間にんげん関連付かんれんづけることでひとおそわれる可能かのうせいえ、餌付えづけにもちいるえさサンゴ礁さんごしょうから採集さいしゅうすることで生態せいたいけいにダメージをあたえると主張しゅちょうする。だが支持しじしゃは、人々ひとびとがこの産業さんぎょうかね支払しはらい、サメについての理解りかいふかまることで保護ほご貢献こうけんしていると主張しゅちょうする。これまでのところ、餌付えづけによる周辺しゅうへん海域かいいきでのサメ被害ひがい増加ぞうか証拠しょうこはほとんどない[8][15]。フロリダ沿岸えんがんでは餌付えづけは違法いほうだが、カリブ海かりぶかいほか地域ちいきではつづけられている[4]

保護ほご

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IUCN保全ほぜんじょうきょうじゅん絶滅ぜつめつ危惧きぐとしている。ベリーズとキューバでは乱獲らんかくにより減少げんしょうし、地域ちいきでも同様どうよう傾向けいこうにある。サンゴ礁さんごしょう破壊はかい脅威きょういである[1]米国べいこくではほんしゅ商業しょうぎょう漁業ぎょぎょう禁止きんしされている[4]。バハマではエコツーリズムのために保護ほごされており、ブラジルや地域ちいきでもおおくの海洋かいよう保護ほご設定せっていされている。だが、これらの海域かいいきすべてで違法いほう漁業ぎょぎょうへの監視かんし適切てきせつおこなわれているわけではなく、また、ほんしゅいま豊富ほうふおおくの海域かいいきでは保護ほごおこなわれていない[1]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b c d e f Rosa, R.S., Mancini, P., Caldas, J.P. and Graham, R.T. (2006). "Carcharhinus perezii". IUCN Red List of Threatened Species. Version 2008. International Union for Conservation of Nature. 2009ねん2がつ14にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c Compagno, Leonard J.V. (1984). Sharks of the World: An Annotated and Illustrated Catalogue of Shark Species Known to Date. Rome: Food and Agricultural Organization. pp. 492–493. ISBN 92-5-101384-5 
  3. ^ Naylor, G.J.P. (1992). “The phylogenetic relationships among requiem and hammerhead sharks: inferring phylogeny when thousands of equally most parsimonious trees result”. Cladistics 8: 295–318. doi:10.1111/j.1096-0031.1992.tb00073.x. 
  4. ^ a b c d e f g h i j k l Scharfer, A. Biological Profiles: Caribbean Reef Shark. Florida Museum of Natural History Ichthyology Department. Retrieved on February 14, 2009.
  5. ^ Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2009). "Carcharhinus perezii" in FishBase. February 2009 version.
  6. ^ a b Ferrari, A. and A. (2002). Sharks. New York: Firefly Books. pp. 176–177. ISBN 1-55209-629-7 
  7. ^ Garla, R.C., Chapman, D.D., Wetherbee, B.M. and Shivji, M. (2006). “Movement patterns of young Caribbean reef sharks, Carcharhinus perezi, at Fernando de Noronha Archipelago, Brazil: the potential of marine protected areas for conservation of a nursery ground”. Marine Biology 149: 189–199. doi:10.1007/s00227-005-0201-4. 
  8. ^ a b c d e f Martin, R.A. Caribbean Reef Shark. ReefQuest Centre for Shark Research. Retrieved on February 14, 2009.
  9. ^ Martin, R.A. (March 2007). “A review of shark agonistic displays: comparison of display features and implications for shark-human interactions”. Marine and Freshwater Behaviour and Physiology 40 (1): 3–34. doi:10.1080/10236240601154872. 
  10. ^ Sazima, I. and Moura, R.L. (2000). Ross, S. T.. ed. “Shark (Carcharhinus perezi), Cleaned by the Goby (Elacatinus randalli), at Fernando de Noronha Archipelago, Western South Atlantic”. Copeia 2000 (1): 297–299. doi:10.1643/0045-8511(2000)2000[0297:SCPCBT]2.0.CO;2. 
  11. ^ a b Brunnschweiler, J.M., Andrews, P.L.R., Southall, E.J., Pickering, M., and Sims, D.W. (2005). “Rapid voluntary stomach eversion in a free-living shark”. Journal of Marine Biology, Ass. U.K. 85: 1141–1144. 
  12. ^ Garla, R.C., Chapman, D.D., Shivji, M.S., Wetherbee, B.M., and Amorim, A.F. (2006). “Habitat of juvenile Caribbean reef sharks, Carcharhinus perezi, at two oceanic insular marine protected areas in the southwestern Atlantic Ocean: Fernando de Noronha Archipelago and Atol das Rocas, Brazil”. Fisheries Research 81: 236–241. doi:10.1016/j.fishres.2006.07.003. 
  13. ^ ISAF Statistics on Attacking Species of Shark. International Shark Attack File, Florida Museum of Natural History, University of Florida. Retrieved on April 22, 2009.
  14. ^ Fowler, S.L., Reed, T.M. and Dipper, F. (2002). Elasmobranch Biodiversity, Conservation and Management: Proceedings of the International Seminar and Workshop, Sabah, Malaysia. International Union for Conservation of Nature and Natural Resources Species Survival Commission. pp. 47–48. ISBN 2-8317-0650-5 
  15. ^ Murch, A. Shark Feeding. Elasmodiver.com. Retrieved on February 14, 2009