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ホルモン療法りょうほう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ホルモン療法りょうほう(ホルモンりょうほう)は、各種かくしゅ症状しょうじょうたいしてホルモンざい、あるいはホルモンの分泌ぶんぴつ促進そくしんまたは抑制よくせいする薬剤やくざいもちいる治療ちりょうほう総称そうしょう

がんなかには、特定とくていのホルモンによって増殖ぞうしょく促進そくしんされてしまう種類しゅるいのものがある。そのため、当該とうがいホルモンを分泌ぶんぴつしている器官きかん切除せつじょしたり、分泌ぶんぴつ抑制よくせいする薬剤やくざい投与とうよする治療ちりょうおこなわれる。この療法りょうほうは、がん細胞さいぼうそのものを攻撃こうげきしてころ治療ちりょうではなく、あくまで発育はついく阻止そししてコントロールするのが特徴とくちょうで、補助ほじょ療法りょうほうとして手術しゅじゅつ化学かがく療法りょうほう併用へいようされる。

乳癌にゅうがん

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乳癌にゅうがんは、女性じょせいホルモンエストロゲンによって増悪ぞうあくする。

そのため、卵巣らんそうからのエストロゲンの分泌ぶんぴつおさなずらえ閉経へいけい状態じょうたいをもたらすLH-RHアゴニスト副腎ふくじんからの男性だんせいホルモンがエストロゲンへ転化てんかするのをおさえるアロマターゼ阻害そがいざい乳腺にゅうせんにおいてエストロゲンの作用さよう発現はつげんおさえるこうエストロゲンざいなどを投与とうよする治療ちりょうおこなわれる。

副作用ふくさようとして、更年期こうねんき障害しょうがい類似るいじ症状しょうじょうこす場合ばあいがある。また、こうエストロゲンざいタモキシフェンは、閉経へいけい使用しようでは子宮しきゅうたいがんの発生はっせいりつ上昇じょうしょうするとの報告ほうこくがある(こうエストロゲンざいは、エストロゲン受容じゅようたいさきむすいてエストロゲンの結合けつごうをブロックするが、エストロゲン類似るいじ物質ぶっしつであるため子宮しきゅうないまくたいしてエストロゲンと同様どうよう効果こうかをもたらすめんがある)。

子宮しきゅうたいがん

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子宮しきゅうたいがんは、女性じょせいホルモンエストロゲンによって増悪ぞうあくする。

そのため、ぎゃく抑制よくせいはたら女性じょせいホルモンの黄体おうたいホルモン投与とうよしてこれに対抗たいこうする。

副作用ふくさようとして、血栓けっせんしょうかん機能きのう障害しょうがいこす場合ばあいがある。

前立腺ぜんりつせんがん

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前立腺ぜんりつせんがんは、男性だんせいホルモンによって増悪ぞうあくする。

そのため、精巣せいそうからの男性だんせいホルモンの分泌ぶんぴつおさえるLH-RHアゴニスト前立腺ぜんりつせん細胞さいぼうないにおいて男性だんせいホルモンの作用さよう発現はつげんおさえるこう男性だんせいホルモンざい男性だんせいホルモンに拮抗きっこうする女性じょせいホルモンなどを投与とうよする治療ちりょうおこなわれる。

副作用ふくさようとして、勃起ぼっき障害しょうがい女性じょせい乳房ちぶさこころ疾患しっかん循環じゅんかん疾患しっかんこす場合ばあいがある。

以前いぜんはホスフェストロール製剤せいざいの「ホンバン🄬」の内服ないふくないし点滴てんてき治療ちりょうおこなわれていたが、平成へいせい20ねん2008ねん)をもち製薬せいやく会社かいしゃにおいて経過けいか措置そち品目ひんもく移行いこう翌年よくねん平成へいせい21ねん2009ねん)3がつ経過けいか措置そち満了まんりょうとなったため現在げんざい流通りゅうつうしていない[1]

婦人ふじん分野ぶんや

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月経げっけい治療ちりょう

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各種かくしゅ月経げっけい異常いじょう治療ちりょうとして、以下いかのようなホルモン療法りょうほうがある。

ゲスターゲン療法りょうほう

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排卵はいらんによる月経げっけい極度きょくどまれはつ月経げっけいなど、はなっておくと長期間ちょうきかん生理せいりないひとたいし、平均へいきんてき生理せいり周期しゅうき後半こうはん相当そうとうする時期じき黄体おうたいホルモン(ゲスターゲン)ざい投与とうよして、ホルモン成分せいぶんきえ退ずさとき月経げっけいさま出血しゅっけつこす周期しゅうき療法りょうほう

黄体おうたいホルモンは本来ほんらい排卵はいらん卵巣らんそうから分泌ぶんぴつされるホルモンであり、子宮しきゅうないまく成熟せいじゅくうながし、妊娠にんしん不成立ふせいりつ分泌ぶんぴつ終了しゅうりょうすると月経げっけいこる。ゲスターゲン療法りょうほうは、この周期しゅうき後半こうはん黄体おうたいホルモンを外部がいぶから投与とうよするかたちになる。なお、だい月経げっけい子宮しきゅうないまく増殖ぞうしょくおこなわれていない場合ばあいは、ゲスターゲンの単独たんどく投与とうよでは排出はいしゅつすべき十分じゅうぶん子宮しきゅうないまくそだっていないためきえ退ずさ出血しゅっけつきない。

カウフマン療法りょうほう(エストロゲン・ゲスターゲン周期しゅうき療法りょうほう

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おなじく、排卵はいらんなどによる周期しゅうき異常いじょう場合ばあいに、周期しゅうき前半ぜんはん子宮しきゅうないまく増殖ぞうしょくさせる卵胞らんぽうホルモン(エストロゲン)ざい投与とうよし、周期しゅうき後半こうはんからは卵胞らんぽうホルモンざい黄体おうたいホルモンざい両方りょうほう投与とうよする周期しゅうき療法りょうほう

なお、外部がいぶからホルモン補充ほじゅうおこなうことでのう体内たいないホルモンがりていると判断はんだんして分泌ぶんぴつ命令めいれいよわめ、卵巣らんそう休息きゅうそく状態じょうたい原則げんそくとして排卵はいらん停止ていししたままとなるため、早期そうき妊娠にんしん希望きぼうする女性じょせいには不向ふむきである(もっとも、にん治療ちりょうはいぜん段階だんかいとして、からだのコンディションをととのえる目的もくてきでカウフマン療法りょうほうはさむケースもある)。排卵はいらん患者かんじゃは、こらない排卵はいらんこそうとのう過剰かじょう刺激しげきホルモンで卵巣らんそう負担ふたんけている場合ばあいおおく、いったん休養きゅうようさせることで卵巣らんそう機能きのう回復かいふく期待きたいされる。カウフマン療法りょうほうすうヶ月かげつかえしたのちにホルモン補充ほじゅう中止ちゅうしすると、「リバウンド効果こうか」で体内たいないのホルモン分泌ぶんぴつうながされ、排卵はいらん復活ふっかつする可能かのうせいがある。

ピルは、卵胞らんぽうホルモンと黄体おうたいホルモンの混合こんごうざいである。

上記じょうきのような月経げっけい周期しゅうき異常いじょうのほか、月経げっけいぜん症候群しょうこうぐん(PMS)月経げっけい困難こんなんしょう不正ふせい出血しゅっけつ子宮しきゅうないまくしょう子宮しきゅう筋腫きんしゅなど、女性じょせいホルモンが関連かんれんする様々さまざま症状しょうじょう改善かいぜん対策たいさくとしてしばしばひろもちいられる。

成分せいぶんりょうおうじてこう用量ようりょうピル・ちゅう用量ようりょうピル・てい用量ようりょうピルなどがあり、治療ちりょう目的もくてきによって服用ふくよう方法ほうほうことなるが、しゅとしてやく21日間にちかん服用ふくようやく7日間にちかんきゅうやく(または偽薬ぎやく)をかえし28にち前後ぜんこう周期しゅうきまわしていく方式ほうしきがとられる。

ホルモン補充ほじゅう療法りょうほう(HRT)

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ホルモン補充ほじゅう療法りょうほう(HRT) は、更年期こうねんき急激きゅうげき女性じょせいホルモン減少げんしょうによる更年期こうねんき障害しょうがい緩和かんわとしておこな経過けいか措置そちである。また、ホルモン低下ていかによる骨粗鬆症こつそしょうしょう予防よぼうにも役立やくだつ。閉経へいけいまえ年数ねんすうなど、状況じょうきょうおうじて様々さまざま投与とうよ方法ほうほうがある。

  • ホルモン補充ほじゅう療法りょうほうによる冠動脈かんどうみゃく疾患しっかん乳癌にゅうがん発症はっしょうなどの経済けいざいてき負担ふたんが、骨折こっせつ減少げんしょうなどの有益ゆうえきせい上回うわまわると報告ほうこくされた[2]以後いご米国べいこくでのホルモン補充ほじゅう療法りょうほう下火したびとなり、352おくドルの医療いりょう軽減けいげんしたと解析かいせきされた[3]

エストロゲン製剤せいざい単独たんどく投与とうよ(ERT)

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しゅとして更年期こうねんき症状しょうじょうしょうじる原因げんいんになっている、卵胞らんぽうホルモンの低下ていかのみをおぎな方法ほうほう

卵胞らんぽうホルモン単独たんどくでの作用さようでは、子宮しきゅうたいがん発生はっせいりつげるなどエストロゲン依存いぞんせい副作用ふくさようがあるため、子宮しきゅう摘出てきしゅつした女性じょせいや、かる短期たんきていりょうでの補充ほじゅうもちいる。

エストロゲン・黄体おうたいホルモン周期しゅうきてき投与とうよ

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エストロゲン製剤せいざい単独たんどく投与とうよ欠点けってんおぎなうため、黄体おうたいホルモン製剤せいざいあわせて投与とうよする方法ほうほう黄体おうたいホルモンは、子宮しきゅうたいがんなど卵胞らんぽうホルモンによる疾患しっかんリスクの抑制よくせい作用さようする。黄体おうたいホルモン製剤せいざい併用へいようしたホルモン補充ほじゅう療法りょうほうでは、ホルモン補充ほじゅう療法りょうほうおこなわなかったひとより子宮しきゅうたいがん発生はっせいりつげる効果こうかもある[1][リンク]。ただし、投与とうよ期間きかんが5ねん以上いじょうなど長期ちょうきおよぶと、ホルモン補充ほじゅう療法りょうほうおこなわなかったひとよりも微増びぞうするとのせつもある。

黄体おうたいホルモン製剤せいざいのみ定期ていきてききゅうやく期間きかんもうける服用ふくようほうと、エストロゲン製剤せいざい黄体おうたいホルモン製剤せいざい同時どうじきゅうやくする服用ふくようほうとがあり、後者こうしゃ月経げっけい治療ちりょうでのカウフマン療法りょうほうるいする(ただしホルモン補充ほじゅうりょうはそれよりもひくめ)。いずれも黄体おうたいホルモン製剤せいざいきゅうやく通常つうじょう10~14日間にちかん)には月経げっけいさま出血しゅっけつられ、閉経へいけいまえ閉経へいけい直後ちょくご女性じょせいてきする。

エストロゲン・黄体おうたいホルモン連続れんぞく投与とうよ

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エストロゲン製剤せいざい黄体おうたいホルモン製剤せいざい併用へいよう補充ほじゅうで、きゅうやく期間きかんもうけずつね双方そうほうとも投与とうよつづける方法ほうほう。エストロゲン・黄体おうたいホルモン配合はいごうざいもちいる場合ばあいと、上記じょうき周期しゅうきてき投与とうよほうもちいる黄体おうたいホルモン製剤せいざい減量げんりょうして併用へいようする場合ばあいがある[4]

月経げっけいさま出血しゅっけつはほとんどこらず、閉経へいけいから長期間ちょうきかん経過けいか出血しゅっけつ再開さいかいのぞまない女性じょせいてきする。

体外たいがい受精じゅせいのホルモン補充ほじゅう周期しゅうき

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凍結とうけつ受精卵じゅせいらん移植いしょくさい通常つうじょう排卵はいらんによってこる黄体おうたいホルモンの放出ほうしゅついため、ホルモン補充ほじゅう療法りょうほうおこなう。エストロゲン製剤せいざい黄体おうたいホルモン製剤せいざい併用へいようしていくが、投与とうよ開始かいし時期じき期間きかんざいがた投与とうよりょう医師いし医療いりょう機関きかん)によりことなる。患者かんじゃ子宮しきゅうないまくあつさやホルモン測定そくていすることによって調整ちょうせいする。

トランスジェンダー

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トランスジェンダーもしくはせい同一どういつせい障害しょうがい現在げんざい性別せいべつごうもしくは性別せいべつ違和いわ)と診断しんだんされたひとたいして、性別せいべつ移行いこうのためにホルモン補充ほじゅう療法りょうほうおこなわれることがあり、これによって本人ほんにん体験たいけんするせい同一どういつせいちかづける[5]

出典しゅってん

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  1. ^ 経過けいか措置そち品目ひんもくのご案内あんない (PDF) - 杏林製薬きょうりんせいやく株式会社かぶしきがいしゃ平成へいせい20ねん(2008ねん)3がつ、2019ねん9がつ17にち閲覧えつらん
  2. ^ Writing Group for the Women's Health Initiative Investigators. Risks and Benefits of Estrogen Plus Progestin in Healthy Postmenopausal Women. JAMA. 2002;288(3):321-333.
  3. ^ Roth JA, et al. Economic Return From the Women's Health Initiative Estrogen Plus Progestin Clinical Trial: A Modeling Study. Ann Intern Med. 2014;160(9):594-602. doi:10.7326/M13-2348 http://annals.org/article.aspx?articleid=1867051
  4. ^ 日本にっぽん産婦人科さんふじんか学会がっかい (2016). ホルモン補充ほじゅう療法りょうほう(HRT)の実際じっさい (pdf) (Report). 日本にっぽん産婦人科さんふじんか学会がっかい. 2018ねん5がつ21にち閲覧えつらん
  5. ^ HRT: Hormone Therapy for Trans and Non-Binary Patients”. Planned Parenthood. 2024ねん4がつ24にち閲覧えつらん