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月経げっけい

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
（閉経へいけいから転送てんそう）
月経げっけい周期しゅうきにおける卵巣らんそう、基礎きそ体温たいおん、ホルモン分泌ぶんぴつ、子宮しきゅう内ない膜まくなどの変化へんか。

月経げっけい（げっけい、英えい: menstruation）は、性せい成熟せいじゅくしたヒトの女性じょせい、高等こうとう霊長れいちょう類るいのメスにおいて、子宮しきゅう内ない膜まく（子宮しきゅう壁かべの最さい内層ないそう）が周期しゅうき的てきに剥離はくり・脱落だつらくする際さいに生しょうじる生理せいり的てき出血しゅっけつである[1][2]。

思春期ししゅんきに始はじまり（初経しょけい）、個人こじん差さはあるが、閉経へいけい時期じきまでの間あいだにおよそ28日にち周期しゅうきで起おこり、通常つうじょう3～7日間にちかん続つづく（正常せいじょう月経げっけい周期しゅうき：25日にちから38日にち）[1]。月経げっけいと同時どうじかその数日すうじつ前まえから不快ふかいな症状しょうじょうを感かんじる女性じょせいが多おおく、これは「月経げっけい随伴ずいはん症状しょうじょう」や「月経げっけい前ぜん緊張きんちょう症候群しょうこうぐん」、「生理せいり痛つう（月経げっけい痛つう）」と呼よばれる。特とくに生理せいり痛つうは子宮しきゅう筋すじが収縮しゅうしゅくし剥離はくり・脱落だつらくした子宮しきゅう内ない膜まくを腟ちつへ排出はいしゅつする際さいに生しょうじる収縮しゅうしゅく痛つうである[3][4]。

正式せいしきな医学いがく用語ようごは月経げっけいだが、「生理せいり（せいり）」「女おんなの子この日ひ」「女性じょせいの日ひ」「レディースディ」「メンス」「アレ」など様々さまざまな名称めいしょうで呼よばれる。他たには「名称めいしょう」節ふしを参照さんしょう。

名称めいしょう

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『古事記こじき』の、倭やまと健けん命いのちが美び夜よる受比売うりの服ふくに経けい血ちの跡あとを見付みつけて交かわし合あった歌うたについての説明せつめいに「月経げっけい」という文字もじの並ならびが登場とうじょうし[5]、これが日本にっぽんに於おける初出しょしゅつとされている。1872年ねん、奥山おくやま虎とら章あきらが『医い語ご類聚るいじゅう』にて 「Menses」 「Menstruation」の訳語やくごとして「月経げっけい」を採用さいようする[6]。

月経げっけいという言葉ことばが普及ふきゅうする以前いぜんは「月つき水すい」「経水けいすい」などと呼よばれていたが、時代じだいや階級かいきゅうなどによって様々さまざまな名称めいしょうで呼よばれた（例れい：「おまけ」「おめぐり」「はつはな」「めぐり」「おてなし」「かりや」「おてあい」等とう[7]）。おおよそ1ヶ月かげつの周期しゅうきであることから、古ふるくから「月つきの障さわり」と呼よばれ、異称いしょうとして「月つきのもの」「月つきやく」「月つきの障さわり」「お月つき様さま」などと呼よばれた[8]。また、直接的ちょくせつてきな表現ひょうげんを忌いみ言葉ことばとして避さけ婉曲えんきょくな表現ひょうげんを用もちいることも多おおく、地方ちほうでの異称いしょうも数多かずおおく存在そんざいする[9]。

大正たいしょう期きの広告こうこくなどには「月役つきやく」の名称めいしょうも見みられる[6][10]。昭和しょうわに入はいると「生理せいり」という表現ひょうげんが用もちいられるようになり、当初とうしょは婉曲えんきょく的てきな表現ひょうげんだったものが、やがて完全かんぜんに月経げっけいの別称べっしょうとなっていった[11]。このほか同どう時期じきには、「メンス」（英えい: menstruation, menses のカタカナ表記ひょうきの省略形しょうりゃくけい）、紙かみナプキンの普及ふきゅう以降いこうは「アンネ」（生理せいり用品ようひんのメーカー名めいより）[12]、「お客きゃくさん」（ナプキンを座布団ざぶとんに見立みたてて「予あらかじめ座布団ざぶとんを敷しいてお客きゃくさんを待まつ」などともいう）、「お弁当べんとう箱ばこ」（ナプキンが梱包こんぽうされている形かたちから）などとも呼よばれるようになり、また現代げんだいでは「セーラームーン」｛月経げっけい周期しゅうきが月つきの満みち欠かけ周期しゅうき（29.5日にち）に近ちかいことから｝などと呼よぶ場合ばあいもある[要よう出典しゅってん]。また直接的ちょくせつてきな表現ひょうげんを避さける傾向けいこうは平成へいせい時代じだいに入はいってもみられ、「あれ」「あの日ひ」「女おんなの子この日ひ」「女性じょせいの日ひ」などとも呼よばれる[13][14]。

月経げっけい周期しゅうき

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詳細しょうさいは「月経げっけい周期しゅうき」および「排卵はいらん」を参照さんしょう
子宮しきゅう内ない膜まくの変化へんかの模も式しき（英語えいご版ばん）
排卵はいらん直前ちょくぜんの卵巣らんそう

月経げっけい周期しゅうきとは、月経げっけい開始かいし日びを1日にち目めとして、次つぎの月経げっけいが開始かいしする前日ぜんじつまでの日数にっすうをいう。月経げっけい周期しゅうきは個人こじん差さはあるが、およそ28日にち周期しゅうき（個人こじん差さはあるが、およそ24–38日にちが正常せいじょうの範囲はんい[15]で起おこり、医学いがく的てきには、通常つうじょう3 - 7日間にちかん続つづく（正常せいじょう月経げっけい周期しゅうき：25 - 38日にち）[1]。25 - 36日にちとする文献ぶんけんもある[2]。

月経げっけい周期しゅうきは卵胞らんぽう期き、排卵はいらん期き、黄体おうたい期きに分わけられる[16]。適切てきせつに月経げっけいが起おこるには、エストロゲン（卵胞らんぽうホルモン）とプロゲステロン（黄体おうたいホルモン）の2種類しゅるいの女性じょせいホルモンの働はたらきが重要じゅうようとなる[17]。

  • 卵胞らんぽう期き : 卵巣らんそう内ないで下垂かすい体たい前ぜん葉はが分泌ぶんぴつする卵胞らんぽう刺激しげきホルモン（FSH）の影響えいきょうで卵胞らんぽうが成長せいちょうし、子宮しきゅう内ない膜まくが厚あつくなる。エストロゲンは卵胞らんぽうが成熟せいじゅくしたことを知しらせ、卵胞らんぽうの成熟せいじゅくが止とまる[17]。分泌ぶんぴつを促うながされたエストロゲンの血ち中ちゅう濃度のうどが高たかまると下垂かすい体たい前ぜん葉はから黄体おうたい刺激しげきホルモンが分泌ぶんぴつされ、排卵はいらんが起おこり黄体おうたいが形成けいせいされる[1][16]。
  • 排卵はいらん期き : 排卵はいらん（卵子らんしの放出ほうしゅつ）が起おこる。エストロゲン濃度のうどが最大さいだい値ちとなり、プロゲステロン値ねも上昇じょうしょうを始はじめ、貯蔵ちょぞうされていた黄体おうたい形成けいせいホルモンが通常つうじょう36 - 48時じ間あいだに渡わたり大量たいりょうに放出ほうしゅつされる黄体おうたい形成けいせいホルモンサージ（LHサージ）が起おきる。プロゲステロンは子宮しきゅう内ない膜まくに柔やわらかく厚あつみのある状態じょうたいにし、受精卵じゅせいらんが着き床ゆかしやすいように子宮しきゅう内ない環境かんきょうを整ととのえる作用さようがある[17]。卵胞らんぽう刺激しげきホルモンもわずかに上昇じょうしょうする。黄体おうたい形成けいせいホルモンサージ開始かいしから約やく16 - 32時間じかん以内いないに、卵胞らんぽう壁かべの崩壊ほうかいと成熟せいじゅくした卵子らんしの放出ほうしゅつを生しょうじさせる酵素こうそが活性かっせい化かされる。また、卵たまご母はは細胞さいぼうの第だい一いち減数げんすう分裂ぶんれつが約やく36時間じかん以内いないに完了かんりょうする[16]。
  • 黄体おうたい期き : 平均へいきん14日間にちかん活動かつどうを維持いじする。しかし排卵はいらんした卵子らんしが受精じゅせいしなかった場合ばあい、やがてエストロゲンなどの分泌ぶんぴつが低下ていかし、子宮しきゅう内ない膜まくが脱落だつらくする[1]。そして血液けつえきとともに子宮しきゅう口こう、膣ちつを経由けいゆして体外たいがいに排出はいしゅつされるのが月経げっけいである。そのため妊娠にんしんすると、出産しゅっさんの数すうか月げつ後ごまで月経げっけいは停止ていしする。

初潮しょちょう

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乳房ちぶさのタナー段階だんかいIII、陰毛いんもうのタナー段階だんかいIIまたはIIIで発生はっせいすることが多おおい。

生うまれて初はじめての月経げっけいを初潮しょちょう（しょちょう、英えい: menarche）、または初経しょけい（しょけい）とも言いう。古ふるくは「初はつ花はな（はつはな）」とも言いわれた。初はつ潮時しおどきの印象いんしょうがその後ごの月経げっけい感かんに影響えいきょうし、よい印象いんしょうがなかった人ひとは月経げっけい前ぜん症候群しょうこうぐん（PMS）や月経げっけい痛つうが多おおいという研究けんきゅう結果けっかがある[18]。

年齢ねんれい
栄養えいよう状態じょうたいや健康けんこう状態じょうたいで初潮しょちょうを迎むかえる年齢ねんれいは変動へんどうし、栄養えいよう状態じょうたいと健康けんこう状態じょうたいが共ともに良好りょうこうであれば早はやく訪おとずれる[19]。初潮しょちょうの数すうヶ月かげつ前まえから透明とうめい又または白しろ色いろの帯おび下かの増加ぞうかが見みられるようになった後のち、初潮しょちょうが発生はっせいする。初潮しょちょうの平均へいきん年齢ねんれいは12.3歳さい[20]で、大だい部分ぶぶんは年齢ねんれいで10歳さいから15歳さいの間あいだ、陰毛いんもうが発育はついくし始はじめてから一定いってい後ご（タナー段階だんかいで2-3度ど）、身長しんちょうの伸のびが低ひくくなり始はじめた頃ころに発生はっせいすることが多おおい[21]。平均へいきん初潮しょちょう年齢ねんれいは栄養えいよう・健康けんこう状態じょうたいの改善かいぜんにより、19世紀せいき以降いこう全ぜん世界せかい的てきに一貫いっかんして早はやまる傾向けいこうにある。日本にっぽんも同様どうようの傾向けいこうがあり、19世紀せいき末まつには15歳さい前後ぜんこうだった平均へいきん初潮しょちょう年齢ねんれいが、1997年ねんには12歳さい2ヶ月かげつにまで低下ていかしている[22]。
  • 10歳さい未満みまん 早はや発はつ月経げっけい（思春期ししゅんき早さ発症はっしょう）[20][23][24]。
  • 15歳さい以上いじょう 遅おそ発はつ月経げっけい[20]
  • 18歳さいで初経しょけいを見みない 原発げんぱつ無む月経げっけい[20]、染色せんしょく体たい異常いじょう、性せいの発生はっせい・分化ぶんか異常いじょうが疑うたがわれる[20]。
妊娠にんしん
初潮しょちょうを迎むかえると子供こどもを産うめる身体しんたいになると受うけ取とられがちだが、始はじまっても1-2年間ねんかんは周期しゅうきは不規則ふきそくで排卵はいらんが無ない（無む排卵はいらん性せい月経げっけい）場合ばあいが多おおく[21]、妊娠にんしんの可能かのう性せいは低ひくいが、排卵はいらんがあれば妊娠にんしんの可能かのう性せいはある。
成長せいちょう
思春期ししゅんき開始かいしから初潮しょちょうの1年ねん以上いじょう前まえは乳房ちぶさの発達はったつ開始かいし（Thelarche・乳頭にゅうとう期き、後のちに乳ちち輪わ期き[25]）や外そと陰部いんぶの発達はったつし始はじめ[26]など、大人おとなの体型たいけいへ変化へんかし始はじめで、骨盤こつばんが前ぜん傾かたぶけ傾向けいこう（女児じょじ型がた）のままなど、まだ子供こどもの体型たいけいに近ちかいが、初潮しょちょうを挟はさむ前後ぜんご1年間ねんかんは乳房ちぶさ全体ぜんたいが膨ふくらみ始はじめ（第だい1乳房ちぶさ期き、後のちに第だい2乳房ちぶさ期き）、骨盤こつばんが前ぜん傾かたぶけ傾向けいこうから直立ちょくりつ傾向けいこう（女児じょじ型がたから女性じょせい成人せいじん型がた）に転換てんかんし始はじめることから腹はらがまっすぐになり、臀部でんぶが大おおきくなり始はじめるなど急激きゅうげきに体型たいけいが変化へんかし[27][28]、初潮しょちょうの1年ねん後ご以降いこうになると骨盤こつばんが直立ちょくりつ傾向けいこう（女性じょせい成人せいじん型がた）となり、大人おとなの体型たいけいに近ちかくなる（乳房ちぶさは形成けいせい期き）。乳房ちぶさは途中とちゅうで初潮しょちょうを挟はさむ約やく4年間ねんかんで発達はったつする[29][30]。初はつ潮時しおどきは身長しんちょうの伸のびのピークが過すぎており、初潮しょちょう後ごはあまり身長しんちょうが伸のびなくなる[23]。
病気びょうき
初潮しょちょう前後ぜんこうは脊椎せきつい側がわ彎症の発症はっしょうが多おおいとされている[31]。

処置しょち

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月経げっけい期間きかん中ちゅうは、子宮しきゅうから膣ちつを経へて体外たいがいに経けい血ちが排出はいしゅつされる。経けい血ちの排出はいしゅつは当人とうにんのコントロール下かにないため、排出はいしゅつされる経けい血ちを吸収きゅうしゅうするために、ナプキンやタンポン、月経げっけいカップといった生理せいり用品ようひんを使用しようする。

開発かいはつ支援しえん等ひとしでは、「女性じょせいと思春期ししゅんきの女子じょしが経けい血ちを吸収きゅうしゅうする清潔せいけつな生理せいり用品ようひんを使つかい、それをプライバシーが確保かくほされる空間くうかんで月経げっけい期間きかん中ちゅうに必要ひつようなだけ交換こうかんでき、石鹸せっけんと水みずで必要ひつような時ときに体からだを洗あらい、使用しよう済ずみの生理せいり用品ようひんを廃棄はいきするための設備せつびにアクセスできること」を月経げっけい衛生えいせい対処たいしょ（英語えいご版ばん）（Menstrual hygiene management、MHM）と呼よぶ（WHO）[32]。

UNESCOは女子じょしや女性じょせいをとりまく環境かんきょうについて、月経げっけい衛生えいせい対処たいしょには以下いかのことを整ととのえていくことが必要ひつようだと示しめしている（括弧かっこ内ないは大阪大学おおさかだいがくの杉田すぎた映うつ理りによる追記ついき）[33][32]。

  1. 正確せいかくで時とき宣せんを得えた（月経げっけいに関かんする）知識ちしき
  2. 安全あんぜんかつ手てごろな価格かかくで、入手にゅうしゅ可能かのうな生理せいり用品ようひん
  3. （安全あんぜんかつ衛生えいせい的てきでプライバシーが確保かくほされた）トイレと（手てや体からだを）洗あらうための設備せつび
  4. 生理せいり用品ようひんの安全あんぜんで衛生えいせい的てきな廃棄はいき
  5. （月経げっけいに関かんする）知識ちしきを持もち安心あんしんできる（教員きょういんやヘルスワーカー等とうの）専門せんもん家か
  6. 保健ほけんサービスへの紹介しょうかいとアクセス
  7. （月経げっけいに関かんする）ポジティブな社会しゃかい規範きはん
  8. （月経げっけいに関かんする）アドボカシーと政策せいさく[33][32]
—UNESCO（2014年ねん）

月経げっけい衛生えいせいに対たいする権利けんりは、国連こくれんの持続じぞく可能かのうな開発かいはつ目標もくひょう（SDGs）と、国連こくれんの条約じょうやくで定さだめられた権利けんりに基もとづいている[34]。貧困ひんこんや周囲しゅういの不ふ理解りかい等とうにより十分じゅうぶんな生理せいり用品ようひんが利用りようできないといった月経げっけい衛生えいせい対処たいしょが不十分ふじゅうぶんな状態じょうたいは、「生理せいりの貧困ひんこん」と呼よばれることもある。

月経げっけい異常いじょう

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期間きかんの異常いじょう、サイクルの異常いじょう、疼痛とうつうなどがあり[4]、正常せいじょう月経げっけいの範囲はんいを逸脱いつだつしたものと定義ていぎされる[20]

日本にっぽん産科さんか婦人ふじん科か学会がっかい定義ていぎによる 正常せいじょう月経げっけい[20]
月経げっけい周期しゅうき 25 - 38日にち
出血しゅっけつ持続じぞく日数にっすう 3 - 7日にち
出血しゅっけつ量りょう 20 - 140 ml
随伴ずいはん症状しょうじょう 日常にちじょう生活せいかつに支障ししょうの無ない軽度けいどのもの
  • 月経げっけい不順ふじゅん
    • 月経げっけいが始はじまった頃ころは、月経げっけい周期しゅうきは安定あんていせず、数すうか月げつ起おこらなかったりすることもよくある。
    • 月経げっけい周期しゅうき (menstrual cycle) の異常いじょう
      • 頻発ひんぱつ月経げっけい/経けい早はや/月経げっけい先さき期き：月経げっけい周期しゅうきが異常いじょうに短縮たんしゅくする（24日にち以下いか）
      • 稀まれ発はつ月経げっけい/経けい遅おそ/月経げっけい後期こうき：月経げっけい周期しゅうきが異常いじょうに長ながくなる（39日にち以上いじょう）
      • 不正ふせい周期しゅうき月経げっけい/経けい乱らん：月経げっけい周期しゅうきが不定期ふていきなもの（毎回まいかいの変動へんどうが7日にち以上いじょう）
    • 月経げっけい持続じぞく期間きかんの異常いじょう
      • 過か短たん月経げっけい (too short menstruation)：出血しゅっけつ期間きかんが異常いじょうに短縮たんしゅくする（2日にち以下いか）
      • 過か長月ながつき経けい (too long menstruation)：出血しゅっけつ期間きかんが異常いじょうに長ながくなる（8日にち以上いじょう）
    • 月経げっけい量りょうの異常いじょう
      • 過少かしょう月経げっけい (hypomenorrhea)：20ml未満みまん
      • 過多かた月経げっけい (hypermenorrhea/menorrhagia)：140ml以上いじょう
  • 無む排卵はいらん月経げっけい
    一見いっけんすると定期ていき反復はんぷく的てきな出血しゅっけつが見みられるが、周期しゅうき内ないに排卵はいらんを伴ともなわないもの。基礎きそ体温たいおんを測はかると一いち相性あいしょうになる。厳密げんみつな意味いみでの月経げっけいとはいえず、特とくに短期間たんきかんに繰くり返かえす頻発ひんぱつ月経げっけいだったり不正ふせい周期しゅうきのランダムな出血しゅっけつだったり、あるいは月経げっけいとも呼よべない程ほどの過少かしょう月経げっけいだったりする場合ばあいは、不正ふせい出血しゅっけつの一種いっしゅとして扱あつかうことも多おおい。
  • 無む月経げっけい (amenorrhoea)
    • 原発げんぱつ性せい無む月経げっけい
      18歳さいの誕生たんじょう日びまでに初潮しょちょうを見みないこと。染色せんしょく体たい異常いじょうや性せい分化ぶんか疾患しっかん、内分泌ないぶんぴつ器き系けいの異常いじょう[35]などで起因きいんすることが多おおい。
    • 二に次じ性せい無む月経げっけいまたは続発ぞくはつ性せい無む月経げっけい
      初潮しょちょう後ごある程度ていど月経げっけいを経験けいけんした女性じょせいの月経げっけいが3か月げつ以上いじょうなくなること。妊娠にんしんした場合ばあいには当然とうぜんながら続発ぞくはつ性せい無む月経げっけいとなる。また過度かどなダイエットや拒こばめ食しょく症しょう、過度かどのスポーツなどで栄養えいよう障害しょうがいを起おこした場合ばあいにしばしば起おこりうる。スポーツに起因きいんするものは運動うんどう性せい無む月経げっけいと呼よばれる事ことがある[36]。
  • 月経げっけい発はつ来らい異常いじょう
    • 早はや発はつ月経げっけい (premature menstruation)：10歳さいの誕生たんじょう日びより前まえに初経しょけいを迎むかえる[35]
    • 遅おそ発はつ月経げっけい (delayed menstruation)：16歳さいの誕生たんじょう日びより後のちに初経しょけいを迎むかえる
  • 月経げっけい困難こんなん症しょう（生理せいり痛つう dysmenorrhea）。子宮しきゅう筋すじが収縮しゅうしゅくし剥離はくり・脱落だつらくした子宮しきゅう内ない膜まくを腟ちつへ排出はいしゅつする際さいに生しょうじる収縮しゅうしゅく痛つう[4]。
    月経げっけい期間きかん中ちゅうに痙攣けいれんのような腹痛はらいたや腰こしが砕くだけそうな痛いたみ、足あしの痺しびれ、身体しんたいの麻痺まひ、下痢げり・悪心あくしんなど、日常にちじょう生活せいかつに支障ししょうをきたすような不調ふちょうが起おこること。若わかい女性じょせいに多おおい。妊娠にんしん経験けいけん後ご、痙攣けいれん性せいの腹痛はらいたを感かんじなくなる場合ばあいも少すくなくない。
  • 月経げっけい前ぜん症候群しょうこうぐん・PMS (premenstrual syndrome)
    多おおくの女性じょせいは月経げっけい前ぜん数日すうじつ、様々さまざまな不快ふかいを感かんじる（個人こじん差さはある）。腰痛ようつう・腹痛はらいた・頭痛ずつう・むくみ・悪心あくしん・食欲しょくよく不振ふしん・乳房ちぶさの緊張きんちょうなど。また精神せいしん的てきに不安定ふあんていになって、落おち込こんだり怒いかりっぽくなったりすることも多おおい。黄体おうたいホルモンの影響えいきょうによると考かんがえられる。
詳細しょうさいは「月経げっけい前ぜん症候群しょうこうぐん」を参照さんしょう

閉経へいけい

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閉経へいけいとは、卵巣らんそう機能きのうの低下ていかによる生理せいり的てきまたは医い原ばら性せいの月経げっけい停止ていし（無む月経げっけい）であり、妊にん孕性がなくなる[37][38]。月経げっけいが来こない状態じょうたいが1年ねん以上いじょう続つづいた時ときに、1年ねん前まえを振ふり返かえって閉経へいけいとする[39]。日本にっぽんでは「閉経へいけい」も漢方かんぽう系けいの「血ちの道みち」もあまり使つかわれておらず、医療いりょうでも一般いっぱんでも「更年期こうねんき」が使つかわれることが多おおい[40]。動詞どうしで「上あがる」とも称しょうする。

月経げっけいの周期しゅうきが規則きそく的てきであるためには、卵巣らんそうから十分じゅうぶんなホルモン（エストロゲンとプロゲステロン）が分泌ぶんぴつされる必要ひつようがあり（月経げっけい周期しゅうきを参照さんしょう）、閉経へいけいは、加か齢よわいにより卵巣らんそうからのホルモンの分泌ぶんぴつが停止ていしすることで起おこる[38]。閉経へいけい時期じき（更年期こうねんき）を迎むかえると、女性じょせいの体からだはホルモン分泌ぶんぴつが変かわり、月経げっけいは不規則ふきそくになり、卵巣らんそうの中なかに卵胞らんぽうがなくなり排卵はいらんが終おわることで、閉経へいけいに至いたる[41][42][43][38]。月経げっけい周期しゅうきの変化へんかは通常つうじょう40代だいで始はじまり、周期しゅうきの長ながさが変動へんどうする[37]。閉経へいけい時期じきは個人こじん差さが大おおきく、早はやい人ひとは40歳さい台だい前半ぜんはん、遅おそい人ひとは50歳さい台だい後半こうはんで、40 - 55歳さいの間あいだに迎むかえる閉経へいけいは正常せいじょうとみなされる[38][39]。アメリカ人じんの平均へいきん閉経へいけい年齢ねんれいは約やく52歳さい、日本人にっぽんじんの平均へいきん閉経へいけい年齢ねんれいは約やく50歳さいである[38][39]。

日本にっぽん産科さんか婦人ふじん科か学会がっかい定義ていぎによる 月経げっけい異常いじょうの種類しゅるい【閉止へいし】と問題もんだい点てん[20]

種類しゅるいと年令ねんれい 問題もんだい点てん
正常せいじょう 50歳さい
早期そうき閉経へいけい 40歳さい未満みまん
（早期そうき卵巣らんそう不全ふぜん）[4]		 骨粗鬆症こつそしょうしょう、動脈どうみゃく硬化こうか
遅おそ発はつ閉経へいけい 55歳さい以上いじょう 乳にゅうがん、子宮しきゅう体たいがん

閉経へいけいをはさむ前後ぜんご5年ねんほどの時期じきを「更年期こうねんき」と呼よぶ[4]。月経げっけいの停止ていし以外いがいに、ホルモンバランスの変化へんかや心理しんり影響えいきょうによって色々いろいろな自覚じかく症状しょうじょうを感かんじる女性じょせいもおり、更年期こうねんき障害しょうがいと呼よばれている。ホットフラッシュ（ほてり、のぼせ）は75 - 85％の女性じょせいが経験けいけんする[38]。閉経へいけい後ごはエストロゲンが分泌ぶんぴつされなくなることで、骨ほね密度みつどが低下ていかし、子宮しきゅう、膣ちつ等ひとしの内うち性器せいき、外そと陰部いんぶ、乳房ちぶさなどの萎縮いしゅくが起おこる[38][44]。皮膚ひふや粘膜ねんまくが薄うすくなり潤うるおいがなくなることで、腟ちつ等とうは乾かわいて抵抗ていこう力りょくが落おち炎症えんしょうが起おきやすくなり、性交せいこう時じに痛いたみを感かんじる人ひとも増ふえる[44]。

月経げっけい中ちゅうの性行為せいこうい

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月経げっけい中ちゅうの性行為せいこういはタブー視しされていることが多おおい。キリスト教きょうのカトリックでは、西にしロろーマ帝国まていこくのアウグスティヌスの結婚けっこん論ろんによって性せい倫理りんりが規定きていされ、結婚けっこんの第だい一いちの善ぜんは生殖せいしょく、生うみ育そだてることとされており、生理せいり中等ちゅうとうの生殖せいしょくが不可能ふかのうと思おもわれる時期じきのセックスは、教義きょうぎ上じょう正当せいとう化かすることが困難こんなんであった（現代げんだいでは良好りょうこうな夫婦ふうふ関係かんけいのためのセックスの意義いぎも認みとめられている）[45]。

月経げっけい中ちゅうに性欲せいよくの高たかまりを感かんじる人ひともいる[46][47]。産婦人科さんふじんか医いの河野こうの美代子みよこによれば、血液けつえきの流出りゅうしゅつに対処たいしょできるのであれば行為こうい自体じたいに問題もんだいはないという[48]。また、「生理せいり中ちゅうにセックスしてはいけない」という説せつには医学いがく的てきな根拠こんきょはないのではないかとも述のべている[48]。性行為せいこういで経けい血ちの逆流ぎゃくりゅうが起おこるとされることもあるが、英国えいこく王立おうりつ産婦人科さんふじんか医い協会きょうかい（英語えいご版ばん）によれば、経けい血ちの逆流ぎゃくりゅうは性行為せいこういの有無うむに関かかわらず月経げっけい中ちゅうの女性じょせいの90%に起おきていることであるという[49]。

しかし、月経げっけい中ちゅうの性行為せいこういでも妊娠にんしんの可能かのう性せいはあり、妊娠にんしんを避さける場合ばあいは通常つうじょう通どおり避妊ひにんが必要ひつようとなる[47][48][50]。また、子宮しきゅう頸部が広ひろがっていることにより感染かんせんのリスクが普段ふだんよりも若干じゃっかん上あがっているため、パートナーが性せい感染かんせん症しょうに罹患りかんしているかどうかわからないような場合ばあいには、コンドームなどを利用りようしてセーファーセックスを心こころがける必要ひつようがある[50]。また、ヒト免疫めんえき不全ふぜんウイルス（HIV）などの性せい感染かんせん症しょうのウイルスは血液けつえき中ちゅうに存在そんざいするため、パートナーにうつさないためにも、セーファーセックスは有用ゆうような考かんがえ方かたである[47]。インディアナ大学だいがくブルーミントン校こう公衆こうしゅう衛生えいせい学部がくぶ（英語えいご版ばん）の教授きょうじゅであるデビー・ハーベニック（英語えいご版ばん）博士はかせは、オーガズム時どきの筋すじ収縮しゅうしゅくによって月経げっけい前まえや月経げっけい時じの痛いたみや不快ふかい感かんが和やわらぐこともあるとしている[51]。ただし、生理せいり痛つうを和やわらげるためにできることは他ほかにもあるため、女性じょせいは生理せいり痛つうであるか否ひかに関かかわらず、したいときはすれば良よいし、したくないときはしなければ良よいとも述のべている[51]。

社会しゃかい的てき捉とらえ方かた

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い事わいごと

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多おおくの国くにでは、初潮しょちょうを迎むかえた女性じょせいを祝いわう風習ふうしゅうがある[52]。

日本にっぽんでは、貴重きちょうで特別とくべつな食材しょくざいである小豆あずきをい事わいごとで食たべることが多おおく、集落しゅうらくの中なかで女子じょしが初潮しょちょうを迎むかえると、結婚けっこんし子こどもを産うめる身体しんたいになったことを祝いわい、畏敬いけいの念ねんを込こめて女子じょしに自みずからの身体しんたいを大切たいせつにするよう促うながす儀礼ぎれいとして、赤飯せきはんを炊たいて祝いわい、近所きんじょの家々いえいえにもふるまう習慣しゅうかんがあった[53][54][55]。古代こだいの日本にっぽんでは、血ちには霊力れいりょくが宿やどり、豊穣ほうじょうをもたらすと考かんがえられ、月経げっけいのある女性じょせいは神聖しんせい視しされており[56][57]、月経げっけいが忌いみ嫌きらわれながらも、喜よろこびの意味いみを持もつ「初経しょけい祝いわいの赤飯せきはん」の儀礼ぎれいが行おこなわれたのは、古代こだいの神聖しんせい視しの名残なごりであるという[58]。

田辺たなべけい子こによる2015年ねんの30歳さいから80代だいの女性じょせいへのき取きとり調査ちょうさでは、ほぼすべての人ひとが「初経しょけい祝いわいの赤飯せきはん」のエピソードを語かたっているが、50代だい以下いかでは儀礼ぎれいは形骸けいがい化かし、日常にちじょうの中なかで赤飯せきはんを食たべるだけのイベントになっている[55]。

タブー

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詳細しょうさいは「月経げっけいに関かんする偏見へんけん」、「生理せいりの貧困ひんこん」、および「en:Menstrual taboo」を参照さんしょう

月経げっけいに関かんする社会しゃかい的てき、経済けいざい的てき、政治せいじ的てき、文化ぶんか的てき障壁しょうへきは、世界せかいで約やく500万まん人にんに影響えいきょうを与あたえていると言いわれる[59]。

社会しゃかいにおける月経げっけい観かんには文化ぶんか的てき側面そくめんがあり（参考さんこう：文化ぶんかと月経げっけい（英語えいご版ばん））、文化ぶんかによって見方みかたは異ことなる。月経げっけいは身体しんたい的てきな現象げんしょう、生理せいり現象げんしょうであるが、女性じょせいたちはそれぞれの地域ちいきの月経げっけいに対たいする文化ぶんか的てき・社会しゃかい的てきな価値かち観かんの中なかで月経げっけいを経験けいけんする[60]。月経げっけい中ちゅうの女性じょせいや経けい血ちを穢けがれ、畏おそれの対象たいしょうとする社会しゃかいは多おおい[61]。タブーという言葉ことばの語源ごげん自体じたい、月経げっけいを意味いみするものだと言いわれる[62]。世界せかい的てきに「血ち穢けがれ（血ちの穢けがれ）」に基もとづく「月経げっけい不浄ふじょう視し」があり、月経げっけいは、穢けがれ、不浄ふじょうなものとみなされたり、汚きたないもの、恥はずかしいものもみなされてきた[63][64]。世界せかいの主要しゅような宗教しゅうきょうでは、女性じょせいは月経げっけいがあるがために穢けがれた存在そんざいであると説とかれ、現在げんざいでも世界せかい各地かくちで、月経げっけい中ちゅうの女性じょせいを小屋こや（月経げっけい小屋こや）に隔離かくりする慣習かんしゅうや、月経げっけい中ちゅうの女性じょせいは舟ふねに乗のってはいけない、食品しょくひんを加工かこうしてはいけない、といった、月経げっけいに関かんして女性じょせいの行動こうどうを制限せいげんする決きまりが見みられる[63][61]。

ユダヤ教きょう、そこから派生はせいしたキリスト教きりすときょう、イスラム教いすらむきょうや、それ以外いがいの宗教しゅうきょう的てき伝統でんとうは、様々さまざまな方法ほうほうで世界せかい各地かくちで月経げっけいのタブーを形成けいせいしてきた[65]。ユダヤ教きょうやヒンドゥー教きょう、日本にっぽんでは、月経げっけい中ちゅうの女性じょせいを月経げっけい小屋こや（または部屋へや）に隔離かくりする習慣しゅうかんがある（もしくはあった）[40][66][67]。月経げっけい中ちゅうの女性じょせいが触ふれたものや経けい血ちが付ついた衣服いふく等とうは、穢けがれ、不浄ふじょうになるとされる[40][66]。インドで生うまれた東ひがしアジアに広ひろまった仏教ぶっきょうでは、男性だんせい修行しゅぎょう者しゃ（僧そう）にとって女性じょせい（への性欲せいよく）が修行しゅぎょうの妨さまたげであること強調きょうちょうされ、女性じょせい抑圧よくあつの傾向けいこうがあり[68]、後のちに女人にょにん五障ごしょう説せつ（女性じょせいは仏ほとけに成なれない）、変成へんせい男子だんし説せつ（女性じょせいは男性だんせいに変へんじることで成仏じょうぶつできる）が説とかれ、これが仏教ぶっきょうの女性じょせい不浄ふじょう観かん、女性じょせい罪悪ざいあく観かんにつながっている[68]。日本にっぽんでは、月経げっけい小屋こやの習慣しゅうかんは地方ちほうによっては比較的ひかくてき近年きんねんまで行おこなわれており[61]、家族かぞくと離はなれて食事しょくじを取とる風習ふうしゅうが戦後せんごまで続つづいたところもあった[67]。ネパール西部せいぶのヒンドゥー教徒きょうとが行おこなうチャウパディ（英語えいご版ばん）等ひとし、月経げっけい小屋こやの慣習かんしゅうは現在げんざいも一部いちぶで存在そんざいする[69][70]。

日本にっぽんでは、古代こだいにあった月経げっけいの神聖しんせい視しは薄うすまりながらも、平安へいあん時代じだい中頃なかごろまで続つづいていたが、平安京へいあんきょうの貴族きぞく社会しゃかいを中心ちゅうしんに穢けがれとしての月経げっけい観かんが定着ていちゃくしていった[71]。インドで生うまれ、中国ちゅうごく経由けいゆで外来がいらいした仏教ぶっきょうの一派いっぱの密教みっきょうと共ともに、こうした穢けがれ観かんが日本にっぽんに定着ていちゃくしたとも考かんがえられている[71]。日本にっぽんにおける月経げっけいの不浄ふじょう視しは、支配しはい者しゃ層そうや権力けんりょく者しゃ層そうが作つくり出だした（もしくは中国ちゅうごくから導入どうにゅうした）社会しゃかいシステムであるという説せつが現在げんざいは有力ゆうりょくなようである[72][73]。日本にっぽんでは、かつては月経げっけい中ちゅうの女性じょせいは宮参みやまいりなどの神事しんじに参加さんかすることができなかった（たとえば『落窪物語ものがたり』巻まき二に、『堤つつみ中納言ちゅうなごん物語ものがたり』「花はな桜さくら折おる中将ちゅうじょう」）。室町むろまち時代ときよ（15世紀せいき）には、中国ちゅうごくで作つくられた偽にせ経けい「血ち盆ぼん経けい」が伝つたわり、これが日本にっぽんの月経げっけいの不浄ふじょう視しに最もっとも影響えいきょうを及およぼしたと考かんがえられている[63][74]。血ち盆ぼん経けい信仰しんこうは、女性じょせいは出産しゅっさん、月経げっけいの出血しゅっけつの穢けがれの罪業ざいごうで死後しご血ちの池いけ地獄じごくに堕おちるが、血ち盆ぼん経けいを唱となえれば救済きゅうさいされるという教おしえで[63][74][61]、日本にっぽんにあった血ちを忌いむ思想しそうと仏教ぶっきょうの女性じょせい不浄ふじょう観かんが習合しゅうごうし、女性じょせいは血ちを流ながすため不浄ふじょうだと説とかれた[74]。日本にっぽんでは現在げんざいも、女人にょにん禁制きんせいの聖地せいちが存在そんざいし、一部いちぶの社寺しゃじでは女性じょせいの神事しんじの参加さんかを禁止きんししている。大相撲おおずもうの土俵どひょうは現在げんざいも女人にょにん禁制きんせいであるが、これは相撲すもうが元もとは神事しんじだった名残なごりである。

日本にっぽんでは、月経げっけいの対処たいしょ法ほうを母親ははおやから学まなぶ人ひとがほとんどいうこともあり、血ち穢けがれや血ち盆ぼん経けい信仰しんこうの影響えいきょうで長年ながねん育はぐくまれた月経げっけいに対たいするネガティブな理解りかい・態度たいど、月経げっけいに対たいする「隠かくすべきもの」「穢けがれたもの」といった意識いしきは、現在げんざいも母ははから娘むすめへと連綿れんめんと継承けいしょうされていると推測すいそくされている[75][76]。

月経げっけいのタブーとジェンダー規範きはんは深ふかく結むすびついており、女性じょせいはこう振ふる舞まうべきという規範きはんに、月経げっけいが関係かんけいしていると指摘してきされている[77][60]。文化ぶんか人類じんるい学者がくしゃの杉田すぎた映うつ理り・新本にいもと万里子まりこは、月経げっけいは「恥はずかしいもの」「秘匿ひとくすべきこと」「秘ひめごと」といった月経げっけい観かんは、女性じょせいの身体しんたいが性的せいてきなものとして見みられていること、「セクシュアルなまなざしの対象たいしょうになっていることを示しめしている。」と述のべている[64]。

月経げっけいは歴史れきし的てきに社会しゃかいにおいて、女性じょせいの劣等れっとう性せいを主張しゅちょうする手段しゅだんであり、選挙せんきょや政治せいじ、市民しみん社会しゃかいに参加さんかするには、女性じょせいは生理学せいりがく的てきに不ふ適格てきかくであることを示しめす「呪のろい」として使つかわれてきた[78]。エディンバラ・ネピア大学だいがくのカースティン・マックロードは、社会しゃかいの中なかで女性じょせいにとって月経げっけいは「ジェンダーのスティグマと社会しゃかい的てき不名誉ふめいよとして機能きのうし、その存在そんざいが恒久こうきゅう的てきに続つづく」と述のべている[79]。

2016年ねんにイギリスで、緊縮きんしゅく財政ざいせい政策せいさく（英語えいご版ばん）による市民しみんの苦境くきょうとフェミニズムの台頭たいとうの中なかで、生理せいり用品ようひんの購入こうにゅうが困難こんなんな低てい所得しょとく世帯せたいの女性じょせいと女子じょしが増加ぞうかしているという問題もんだいが注目ちゅうもくされ、「生理せいりの貧困ひんこん」と呼よばれた[80]。2010年代ねんだいにSNSの広ひろがりに伴ともない、SNSでのハッシュタグを使つかって、生理せいりにまつわる諸しょ問題もんだいの声こえと情報じょうほうが集積しゅうせきし[81]、これが後押あとおしになり、「生理せいりの貧困ひんこん」ムーブメントは一種いっしゅのフェミニズム運動うんどうと呼よべるまでに成長せいちょうし、経済けいざい的てき問題もんだいだけでなく、それ以外いがいの月経げっけいに関かんする非ひ物質ぶっしつ的てきな問題もんだいも顕在けんざい化かした[81]。「生理せいりの貧困ひんこん」の問題もんだいは、「貧困ひんこんへの偏見へんけん」と「月経げっけいへの偏見へんけん」という二に重じゅうのタブーがある[80]。生理せいりの貧困ひんこんの生活せいかつ体験たいけんを研究けんきゅうしたアリソン・ブリッグスは、生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんの援助えんじょを受うけることで着きせられる汚名おめいや、「月経げっけいに関かんする一般いっぱん的てきなタブー」、社会しゃかいが「月経げっけいは隠かくされるべきものだと決きめてかかっている」ことも加くわわり、月経げっけいのある女性じょせいにとって「実際じっさいの身体しんたい的てき不快ふかい感かんだけでなく、面目めんぼくを潰つぶされ、屈辱くつじょくを受うける体験たいけん」となる、二に重じゅう苦くであると述のべている[82]。

月経げっけいは女性じょせい特有とくゆうの生理せいり現象げんしょうであるため、男性だんせいから隠かくされていることも少すくなくない[61]。そのため、欧米おうべいや日本にっぽんでの月経げっけいをめぐる活動かつどうでも、月経げっけいについて語かたることがタブー視しされていることが、幾度いくどとなく問題もんだい視しされている[61]。

月経げっけいの穢けがれ観かんは、地域ちいきによって早はやさに差さはあるが、世界せかい的てきに希薄きはく化かが進すすんでいる[77]。

また、月経げっけい観かんはジェンダーによる差さがあり、男性だんせいの月経げっけい観かんは女性じょせいとは異ことなるという調査ちょうさ結果けっかもある[77]。

労働ろうどうと生理せいり休暇きゅうか

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「生理せいり休暇きゅうか」を参照さんしょう

就労しゅうろうしている女性じょせいは月経げっけいに伴ともなう症状しょうじょうを服薬ふくやくで抑おさえたり我慢がまんしたりして仕事しごとを続つづけるほか、病院びょういんに行いったり、生理せいり休暇きゅうかを利用りようしたりすることもあり、健康けんこう経営けいえい上うえも重要じゅうようなテーマである。日本にっぽんの経済けいざい産業さんぎょう省しょうは2019年ねん（平成へいせい31年ねん）3月がつ、月経げっけい随伴ずいはん症状しょうじょうによる労働ろうどう損失そんしつが年間ねんかん4911億おく円えん、通院つういん・医薬品いやくひん代だいを含ふくむ社会しゃかい経済けいざい的てきコストが6828億おく円えんとする推計すいけい値ちを公表こうひょうした[3]。

生理せいり休暇きゅうかは日本にっぽんの労働ろうどう基準きじゅん法ほうの第だい68条じょうで、生理せいり日びの就業しゅうぎょうがいちじるしく困難こんなんな女子じょしが取得しゅとくできる旨むねを定さだめている。

なお、近代きんだい以降いこうにおいて、生理せいり休暇きゅうかを法制ほうせい化かしたのは日本にっぽんが最初さいしょである[要よう出典しゅってん][注釈ちゅうしゃく 1]。これに対たいし、婦人ふじん差別さべつ撤廃てっぱい条約じょうやく批准ひじゅん以降いこうは「母性ぼせい保護ほご措置そちではないので、医学いがく的てきに配慮はいりょが必要ひつような場合ばあいを除のぞき廃止はいしすべきである」との指摘してきがあるが、依然いぜんとして「母性ぼせい保護ほごのため必要ひつようなので、現行げんこうのとおり存続そんぞくとすべきである」という主張しゅちょうもあり、両者りょうしゃの意見いけんは分わかれたままになっている[83]。

多おおくの職場しょくばでは男女だんじょ双方そうほうが働はたらいているが、月経げっけいについて話題わだいにすることはセクシャルハラスメント（セクハラ）と受うけ取とられることがあり、女性じょせい従業じゅうぎょう員いんを気遣きづかうつもりであっても躊躇ちゅうちょするという声こえもあると産経新聞さんけいしんぶんは報ほうじている[84]。

広告こうこく

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生理せいり用品ようひんのCMでは、経けい血ちは青色あおいろや緑色みどりいろの着色ちゃくしょく水すいで表現ひょうげんされる。無色むしょく透明とうめいではわかりにくく、赤あかだと生々なまなましいという理由りゆうからである[要よう出典しゅってん]。

脚注きゃくちゅう

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[脚注きゃくちゅうの使つかい方かた]

注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 古代こだい律令制りつりょうせいの休暇きゅうかには女官にょかんのために「淋假」が設もうけられていたので、近代きんだい以前いぜんには生理せいり休暇きゅうかは存在そんざいしていた。生理せいり休暇きゅうかの導入どうにゅう経緯けいいについては、田口たぐち亜あ紗しゃ『生理せいり休暇きゅうかの誕生たんじょう』（青あお弓ゆみ社しゃ）を参照さんしょう。

出典しゅってん

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参考さんこう文献ぶんけん

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