(Translated by https://www.hiragana.jp/)
疲労骨折 - Wikipedia コンテンツにスキップ

疲労ひろう骨折こっせつ

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

疲労ひろう骨折こっせつ(ひろうこっせつ)は、いちでは骨折こっせついたらない程度ていど応力おうりょくが、ほねどう一部いちぶかえくわわることにより発生はっせいする骨折こっせつである。また、この骨折こっせつ女性じょせい運動うんどう選手せんしゅの3しゅしるしとされる、骨粗鬆症こつそしょうしょう月経げっけい摂食せっしょく障害しょうがい徴候ちょうこうとされている。

概要がいよう

[編集へんしゅう]

転倒てんとう強打きょうだ原因げんいんになることはく、短期たんきてき集中しゅうちゅうてきなトレーニングをおこなったときにしょうじることがおおいのも特徴とくちょうである。つまり、かえくわわるちいさな負荷ふかによってしょうじるほね異常いじょう。いわば、ほねしょうじた金属きんぞく疲労ひろうのような状態じょうたいで、軽度けいど場合ばあいほねこまかなひびがしょうじる程度ていどであるが、重症じゅうしょうするとつよくない応力おうりょく外傷がいしょうせい骨折こっせつのようなだんきれいたることもある。早期そうき発見はっけん治療ちりょう開始かいしすることで、スポーツ現場げんばへの早期そうき復帰ふっき可能かのうになる[1]が、重症じゅうしょうした場合ばあいでは選手せんしゅ引退いんたい日常にちじょう生活せいかつ支障ししょうしょうじる場合ばあいもある[2]

スポーツ選手せんしゅ場合ばあい疲労ひろう骨折こっせつつかった場合ばあいただちに練習れんしゅう中止ちゅうしし、治療ちりょう開始かいしする必要ひつようがある。治療ちりょう開始かいしは、3週間しゅうかんから8週間しゅうかんほど練習れんしゅう中止ちゅうししてから医師いし指導しどうした徐々じょじょ再開さいかいをする。そのあいだはプールなどを使用しようして心肺しんぱい機能きのう維持いじ筋力きんりょく低下ていか抑制よくせいすることがのぞましいとする見解けんかいもある。また、後遺症こういしょう防止ぼうしのためにも学校がっこう学校がっこう検診けんしん医師いし専門医せんもんいあいだ連携れんけい重要じゅうようされている[3]

原因げんいん

[編集へんしゅう]

スポーツにおけるしゅ原因げんいんは、負荷ふか継続けいぞく跳躍ちょうやく長時間ちょうじかん疾走しっそう[4])、筋力きんりょく不足ふそく未熟みじゅく技術ぎじゅつからだ柔軟じゅうなんせい不足ふそく衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうりょくけるくつ用具ようぐおよび装具そうぐ使用しよう[5]など。しかし単一たんいつ要因よういんだけではく、継続けいぞくしたはげしい運動うんどうによる体重たいじゅう低下ていかカルシウム摂取せっしゅりょう不足ふそく[6]や、それにともなしょうじるほね密度みつどほねしおりょう)の低下ていか副次的ふくじてき原因げんいんとなりる。

とくに、女子じょし選手せんしゅ月経げっけいほね密度みつど低下ていかしやすく[7]疲労ひろう骨折こっせつしょうじやすいとされている[8]。つまり、疲労ひろう骨折こっせつかえ女性じょせい体重たいじゅう低下ていかによる月経げっけいにより誘発ゆうはつされる骨粗鬆症こつそしょうしょう可能かのうせいたかいとする見解けんかいがある[2][6][9]

体操たいそうなどの跳躍ちょうやくけい競技きょうぎ陸上りくじょう競技きょうぎ駅伝えきでんマラソンなどの長距離ちょうきょり競技きょうぎ野球やきゅうサッカーバレーボールなどが上位じょういめるが多岐たきわたる。

症状しょうじょう

[編集へんしゅう]

あきらかな外傷がいしょうく、運動うんどう直後ちょくごのみいたみが出現しゅつげんするものから安静あんせいでもいたみがつづくものまで、病状びょうじょうによりさまざまである。あつつう部位ぶい大腿だいたいこつ以外いがい限局げんきょくされており腫脹しゅちょうかた隆起りゅうきれることもある。

典型てんけいてき初期しょき症状しょうじょうは、運動うんどうちゅういたみで運動うんどうめると消失しょうしつする特徴とくちょうがある。症状しょうじょう進行しんこうするといたみの発現はつげん次第しだいはやまるともにつね運動うんどうさまたげる程度ていどいたみをしょうじ、体重たいじゅうがかかっていない状態じょうたいでもいたみが持続じぞくする。

こうはつ部位ぶい

[編集へんしゅう]

スポーツ種目しゅもくにより発生はっせいしやすい部位ぶいことなり、

  1. ちゅうあしこつだい2ちゅうあしこつ
  2. 脛骨けいこつ
  3. 腓骨ひこつ
  4. 肋骨あばらぼね[10]

などの下肢かし負荷ふか集中しゅうちゅうする部位ぶいおおいが、まれに、大腿だいたいこつ膝蓋骨しつがいこつ[11]骨盤こつばん[12]かかとこつ[13]などにも発生はっせいする。

診断しんだん

[編集へんしゅう]

画像がぞう診断しんだん単純たんじゅんXせん撮影さつえいでは、初期しょきには異常いじょうられないこともおおいが、2-3週間しゅうかんさい検査けんさすると骨膜こつまく反応はんのうなどの異常いじょうつかることもおおい。一方いっぽうMRIほねシンチグラフィー早期そうき診断しんだん有用ゆうようである。

治療ちりょう

[編集へんしゅう]

通常つうじょうギプス包帯ほうたい装具そうぐ選択せんたくされず安静あんせいたもつ(骨折こっせつがあり転位てんいをしているもの以外いがいそと固定こてい必要ひつようはない)。治癒ちゆには、3週間しゅうかんから12週間しゅうかん必要ひつようとされている。そして疲労ひろう骨折こっせついたった原因げんいんほねしおりょうげん偏平足へんぺいそくかいないあし柔軟じゅうなんせい低下ていかなど)を除去じょきょする必要ひつようがある。ただし大腿だいたいこつ脛骨けいこつ疲労ひろう骨折こっせつでは外科げかてき手術しゅじゅつによる治療ちりょう選択せんたくされることもある。

後遺症こういしょう

[編集へんしゅう]

発生はっせい部位ぶい大腿だいたいこつ場合ばあい骨折こっせつ完治かんじ歩行ほこう困難こんなん状態じょうたい解消かいしょうしない[14]という事例じれい報告ほうこくされている。

出典しゅってん

[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう

[編集へんしゅう]
  1. ^ 篠原しのはら 一郎いちろう, 河野こうの りゅうこれすけ, やまふじ りょう, 平野ひらの 裕司ゆうじとうにおけるスポーツによる疲労ひろう骨折こっせつ現状げんじょう」『中国ちゅうごく四国しこく整形せいけい外科げか学会がっかい雑誌ざっしだい6かんだい2ごう、1994ねん、397-399ぺーじdoi:10.11360/jcsoa1989.6.397 
  2. ^ a b 梶原かじはら洋子ようこ, 〆一郎いちろうくに女子じょしマラソンランナーの月経げっけい異常いじょう : 草創そうそう最近さいきん比較ひかく」『教育きょういく学部がくぶ紀要きようだい26かん文教大学ぶんきょうだいがく、1993ねん2がつ、118-124ぺーじCRID 1050001201688599680ISSN 0388-2144 
  3. ^ 小林こばやし 裕幸ひろゆきプライマリ・ケアのためのスポーツ傷害しょうがい上肢じょうし」『日本にっぽんプライマリ・ケア連合れんごう学会がっかいだい35かんだい3ごう、2012ねん、245-248ぺーじdoi:10.14442/generalist.35.245 
  4. ^ 白石しらいし 光一こういち, 塚崎つかさき 智雄ともお高校こうこう駅伝えきでん選手せんしゅ発生はっせいした多発たはつせい疲労ひろう骨折こっせつの1れい」『整形せいけい外科げか災害さいがい外科げかだい41かんだい1ごう、1992ねん、285-288ぺーじdoi:10.5035/nishiseisai.41.285 
  5. ^ スポーツよう装具そうぐ総論そうろん 日本にっぽん義肢ぎし装具そうぐ学会がっかい Vol.10 (1994) No.4 P256-259
  6. ^ a b スポーツ競技きょうぎしゃにおける疲労ひろう骨折こっせつ傾向けいこうとその病態びょうたい 整形せいけい外科げか災害さいがい外科げか Vol.46 (1997) No.3 P618-627
  7. ^ 鳥居とりいしゅん, 横江よこえ清司せいじ, 中嶋なかじま寛之ひろゆきMD/MSほうによる女子じょしスポーツ選手せんしゅほね密度みつど評価ひょうか」『体力たいりょく科学かがくだい42かんだい2ごう、1993ねん、183-188ぺーじdoi:10.7600/jspfsm1949.42.183 
  8. ^ 赤嶺あかみね卓哉たくや, 吉田よしだつよし一郎いちろう, 高田たかだまさる, 小山田おやまだ和行かずゆき, 坂中さかなか美郷みさと, 濱田はまだ幸二こうじ, 長島ながしま未央みお, 田口たぐち信教しんきょう大学だいがく女性じょせいスポーツ選手せんしゅにおける種目しゅもくべつ身体しんたい組成そせいほね密度みつどかんする研究けんきゅう」『整形せいけい外科げか災害さいがい外科げかだい62かんだい4ごう、2013ねん、694-696ぺーじdoi:10.5035/nishiseisai.62.694 
  9. ^ 梶原かじはら洋子ようこ, 〆一郎いちろう高校こうこう女子じょし長距離ちょうきょりランナーの月経げっけい異常いじょう・ランニング障害しょうがい発生はっせいじょうきょう」『教育きょういく学部がくぶ紀要きようだい27かん文教大学ぶんきょうだいがく、1993ねん12月、143-147ぺーじCRID 1050282676658716288ISSN 0388-2144 
  10. ^ 藤原ふじわらあきら, 坂口さかぐちみつる, 生田いくた拓也たくや, 工藤くどうおさむ, 大坂おおさか征夫いくお野球やきゅうによってしょうじた肋骨あばらぼね疲労ひろう骨折こっせつの3症例しょうれい」『整形せいけい外科げか災害さいがい外科げかだい45かんだい2ごう、1996ねん、478-481ぺーじdoi:10.5035/nishiseisai.45.478 
  11. ^ 神戸かんべ太一たいち, はら道也みちや, 緒方おがたこうかい, 江本えもとげん, 星子ほしこ一郎いちろう, 山田やまだあきらとう嗣, 佐伯さえき和彦かずひこ, 藤原ふじわらあきら膝蓋骨しつがいこつ疲労ひろう骨折こっせついち症例しょうれい」『整形せいけい外科げか災害さいがい外科げかだい46かんだい3ごう、1997ねん、605-608ぺーじdoi:10.5035/nishiseisai.46.605 
  12. ^ 安藤あんどう俊行としゆき, 原口はらぐち和史かずし, たちばなひろし, 吉田よしだ光男みつお, 清田きよた幸宏ゆきひろスポーツに起因きいんした骨盤こつばん疲労ひろう骨折こっせつの2れい」『整形せいけい外科げか災害さいがい外科げかだい37かんだい1ごう、1988ねん、182-185ぺーじdoi:10.5035/nishiseisai.37.182 
  13. ^ 衛藤えとう正雄まさお, じょうまつ敏晴としはる, 鈴木すずき良平りょうへいかかとこつ疲労ひろう骨折こっせついちれい」『整形せいけい外科げか災害さいがい外科げかだい32かんだい3ごう、1984ねん、645-647ぺーじdoi:10.5035/nishiseisai.32.645 
  14. ^ 山根やまね貞之さだゆき, 清家きよいえわたる, はたさち彦, はん仁田にったつとむ, 篠崎しのざき裕樹ゆうき, 西田にしだけん, 小柳こやなぎ俊二しゅんじ, 前山まえやまいわお, 清水しみず正人まさと成長せいちょうスポーツ傷害しょうがい最近さいきん特徴とくちょう -過去かこ10年間ねんかんのスポーツ外来がいらいより-」『整形せいけい外科げか災害さいがい外科げかだい47かんだい1ごう、1998ねん、273-277ぺーじdoi:10.5035/nishiseisai.47.273 

参考さんこう文献ぶんけん

[編集へんしゅう]
  • 標準ひょうじゅん整形せいけい外科げかがく医学書院いがくしょいん、2008ねん ISBN 978-4-260-00453-4
  • 社団しゃだん法人ほうじん全国ぜんこく柔道じゅうどう整復せいふく学校がっこう協会きょうかい教科書きょうかしょ委員いいんかい柔道じゅうどう整復せいふくがく理論りろんへん改訂かいていだい5はん)』、南江堂なんこうどう、2009ねん

外部がいぶリンク

[編集へんしゅう]