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ポピガイ・クレーター

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

座標ざひょう: 北緯ほくい7139ふん 東経とうけい11111ふん / 北緯ほくい71.650 東経とうけい111.183 / 71.650; 111.183

ポピガイ・クレーター(LANDSATによる画像がぞう)
ポピガイ・クレーターの位置(クラスノヤルスク地方内)
ポピガイ・クレーター
ポピガイ・クレーター (クラスノヤルスク地方ちほう)

ポピガイ・クレーター (えい: Popigai crater: Попигай )はロシアクラスノヤルスク地方ちほう (きゅうタイミル自治じち管区かんく) にある、直径ちょっけいやく100 kmの衝突しょうとつクレーターである。クレーターの一部いちぶサハ共和きょうわこくのアナバル地域ちいきおよぶ。地球ちきゅうじょう衝突しょうとつクレーターのなかで、マニクアガン・クレーターとともにだい4おおきさであり、ユーラシア大陸たいりくにある衝突しょうとつクレーターとしては最大さいだいである。

やく3,500まんねんまえはじめしん後期こうき直径ちょっけいすうkmの小惑星しょうわくせい衝突しょうとつしたことにより形成けいせいされた。アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく東海岸ひがしかいがん近年きんねん発見はっけんされたチェサピークわんクレーター (直径ちょっけいやく90 km) と形成けいせい地質ちしつ年代ねんだいちかいことがあきらかになっており、2つの天体てんたい衝突しょうとつ関連かんれんせいや、相次あいついだ巨大きょだい衝突しょうとつはじめしんからややしんへの生物せいぶつしょう移行いこうあたえた影響えいきょうについて、かく方面ほうめんから研究けんきゅうすすめられている。

概要がいよう

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ポピガイ・クレーターはロシア極北きょくほくシベリア中部ちゅうぶアナバルだてじょうきたえんにある。もっとちかまちはクレーターの中心ちゅうしんからおよそ400 km北西ほくせいにあるカタンガむらで、そこからヘリコプターで1あいだはんかかる[1]。クレーターはポピガイがわ中流ちゅうりゅうのほとりにあり、クレーターの南東なんとうからきたへとポピガイかわながれる。

直径ちょっけいやく100 km、最大さいだいふかさ150-200 mで、中心ちゅうしんから直径ちょっけいやく45 kmの隆起りゅうきリング、直径ちょっけいやく60 kmの環状かんじょうのへこみ、はばやく20 kmの環状かんじょう台地だいちという、ふくあい構造こうぞうをしている[2]。クレーターおよびその周囲しゅういには、衝突しょうとつかくつぶてがん (スーバイト) や衝突しょうとつ溶融ようゆうがん (タガマイト) がみとめられていて、このクレーターが隕石いんせき衝突しょうとつによってできたことをしめしている。ポピガイ構造こうぞうふくまれる衝突しょうとつ融解ゆうかいぶつそう容量ようりょうは1800 km3えると推定すいていされ、サドベリー盆地ぼんちいで地球ちきゅうじょうで2番目ばんめ規模きぼである。

衝突しょうとつ融解ゆうかいがん40Ar-39Ar年代ねんだいによって、ポピガイ・クレーターの形成けいせいは3570±20まんねんまえ (はじめしん後期こうき) だったと見積みつもられている[3]

この衝突しょうとつ構造こうぞう地表ちひょう露出ろしゅつしているにもかかわらず、わずかにしか浸食しんしょくされていないため、衝突しょうとつともな岩石がんせきがよく保存ほぞんされていて貴重きちょうである。巨大きょだいクレーターは、堆積たいせきぶつおおわれていたり (チクシュルーブ・クレーター)、おおきく変形へんけいしていたり (サドベリー盆地ぼんち)、いちじるしく浸食しんしょくされている (フレデフォート・ドーム)。ポピガイ・クレーターは特別とくべつ地質ちしつ遺産いさんとして、国際こくさい連合れんごう教育きょういく科学かがく文化ぶんか機関きかん (UNESCO) によって世界せかい地質ちしつ遺産いさん (ジオパーク) に指定していされた[4]

発見はっけん

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1940年代ねんだい前半ぜんはん極地きょくち地質ちしつ調査ちょうさしょ (НИИГА) の地質ちしつ学者がくしゃのチームがシベリアたくじょう北部ほくぶ調査ちょうさをはじめ、この直径ちょっけいやく70 kmの円形えんけいのへこみを発見はっけんした[5]。この構造こうぞう1946ねん地質ちしつ学者がくしゃのカジェヴィニム (Д. В. Кожевиным) によって報告ほうこくされた。当時とうじ、この構造こうぞうドイツネルトリンガー・リース (現在げんざいでは衝突しょうとつクレーターとかんがえられている) と地質ちしつがくてきていることは指摘してきされていたが、これらの構造こうぞう太古たいこ火山かざんカルデラ、または「せん爆発ばくはつ」によるものと解釈かいしゃくされていた[4]

1960年代ねんだいつき惑星わくせい探査たんさクレーター研究けんきゅううながし、クレーターの構造こうぞうやそれが衝突しょうとつ起源きげん形成けいせいされたことなどが確立かくりつされていった。その結果けっか地球ちきゅうじょう各地かくち衝突しょうとつクレーターが確認かくにんされていった。1964ねんには一部いちぶ研究けんきゅうしゃたちによってポピガイ構造こうぞう隕石いんせき起源きげんであることが提唱ていしょうされた[5]1970ねんレニングラード地質ちしつ学者がくしゃヴィクトル・マサイティス (В. Л. Масайтис) らによってポピガイがくわしくさい調査ちょうさされ、この構造こうぞう巨大きょだい衝突しょうとつクレーターであることがあきらかとなった[4]

当初とうしょ火山岩かざんがんかんがえられていた岩石がんせきは、衝突しょうとつ融解ゆうかいがんかんがえられるようになった。このかくつぶて衝撃しょうげきけたかたあさがん砕屑ぶつふく融解ゆうかいがんシートは、ポピガイのタガミー山脈さんみゃくにちなんでタガマイト (tagamite) とづけられている。タガマイトは、衝突しょうとつによって発生はっせいした衝撃しょうげき衝撃しょうげき岩石がんせき破片はへん融解ゆうかいぶつ粒子りゅうし混合こんごうすみつぶてがんであるスーバイトとともに、ポピガイ・クレーターが隕石いんせき衝突しょうとつによって形成けいせいされた証拠しょうこである。タガマイトとスーバイトはおも環状かんじょうのへこみ部分ぶぶん露出ろしゅつし、レンズじょうまたはシートじょういわたいとして存在そんざいし、たがいにかさなっている。タガマイトの組成そせい基盤きばんがんるいである柘榴ざくろせき-くろ雲母うんもへんあさがんている。

1972ねんにはポピガイの岩石がんせきからはじめてダイアモンド発見はっけんされた。最初さいしょ岩石がんせき試料しりょう切断せつだんするあいだに非常ひじょうかたいものがふくまれていることにづくものがいて、ダイアモンドつぶ偶然ぐうぜん発見はっけんされた。ダイアモンドはタガマイトとスーバイト両方りょうほうふくまれている。ダイアモンドが確認かくにんされた衝突しょうとつ構造こうぞうはポピガイが最初さいしょであるが、そのリース・クレーターなど衝突しょうとつクレーターからも衝突しょうとつダイアモンドが発見はっけんされている。キンバーライト以外いがいから天然てんねんダイアモンドが産出さんしゅつしたのもこれがはつであった。

なんじゅうねんにもわたってポピガイ・クレーターは惑星わくせい学者がくしゃ地質ちしつ学者がくしゃ魅了みりょうしてきた。しかしこの領域りょういき全体ぜんたいヨシフ・スターリンしたグラグ囚人しゅうじんたちによって建設けんせつされたダイアモンドと鉱山こうざんであったために、完全かんぜん制限せいげんされていた。1997ねんだい規模きぼ調査ちょうさ探検たんけんおこなわれ (IPEX 1997)、この奇妙きみょう構造こうぞう理解りかいおおきく前進ぜんしんさせた[4]。しかしロシア国内こくない経済けいざいてき理由りゆうにより、ポピガイの研究けんきゅうは10ねん以上いじょうまったままである。

衝突しょうとつダイアモンド

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ポピガイ・クレーターからは、豊富ほうふ衝突しょうとつダイアモンドが観察かんさつされている。通常つうじょう直径ちょっけい0.5-2 mmでなかには10 mmになる標本ひょうほんもある。無色むしょくであることはまれで、ほとんどは黄色おうしょく灰色はいいろ、または黒色こくしょくである。

衝突しょうとつダイアモンドはグラファイトマルテンサイトかたよう変態へんたいからしょうじ、産地さんちにおけるキンバーライトなか存在そんざいするダイアモンドとちがった特徴とくちょうつ。電子でんし顕微鏡けんびきょう観察かんさつするとグラファイトの残存ざんそんふく結晶けっしょうせい集積しゅうせきぶつであることがわかる。ダイアモンドはもとのグラファイトつぶのテーブルじょうかたちいでいるだけでなく、結晶けっしょう微細びさいなすじも保存ほぞんしている[4]

35 Gaをえる衝撃しょうげきあつ衝突しょうとつてんから半径はんけい13.6 km以内いない地中ちちゅうのグラファイトを部分ぶぶんてきにダイアモンドへとえたとかんがえられている。

ポピガイ・クレーターちゅうのダイアモンド総量そうりょうは、世界中せかいじゅうほかのダイアモンド鉱脈こうみゃく合計ごうけい埋蔵まいぞうりょうえると推定すいていされている[2]。しかし宝石ほうせき品質ひんしつとなるものは皆無かいむで、ドリルやカッターなどに使つか研磨けんまざいとしての利用りようかんがえられている。

同時どうじ衝突しょうとつ

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ポピガイ・クレーターは、おなじくやく3,500まんねんまえ形成けいせいされたとかんがえられているチェサピークわんクレーターおよびトムズ・キャニオン・クレーター英語えいごばん同時どうじ形成けいせいされた可能かのうせい指摘してきされている[6]イタリアマッシニャーノ発見はっけんされたイリジウム含有がんゆうりょう異常いじょう衝撃しょうげき石英せきえいふくそうや、各地かくち後期こうきはじめしん深海しんかい堆積たいせきぶつからつかったたんはす輝石きせきふく球状きゅうじょうたいは、ポピガイ・クレーターおよびこれらのどう時代じだい衝突しょうとつクレーターに関連かんれんづけられている。これらの同時どうじ多発たはつ衝突しょうとつが、破壊はかいされた小惑星しょうわくせい破片はへんによるものか、彗星すいせいシャワーによるものかは論争ろんそうとなっている[7][8]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Крюгер В.А., фото: Каюков А.И.. “Потерянный рай. Попигай, Попигайский кратер”. 2008ねん11月23にち閲覧えつらん
  2. ^ a b Masaitis, V. L. (2003), “Popigai Crater: General Geology”, in Plado, J. and Pesonen, L. J., Impacts in Precambrian Shields, Springer, pp. 81-85, https://books.google.co.jp/books?hl=en&lr=&id=mLfsNALR19oC&oi=fnd&pg=PA109&dq=Popigai+Chesapeake+age&ots=k1GTZnBtjO&sig=4dQ9bN1z4gYv8Rmd1KpxwKR39Pw&redir_esc=y#PPA81,M1 
  3. ^ Bottomley, R. et al. (1997). “The age of the Popigai impact event and its relation to events at the Eocene/Oligocene boundary”. Nature 388: 365-368. http://www.nature.com/nature/journal/v388/n6640/abs/388365a0.html. 
  4. ^ a b c d e Duetsch, A. et al. (2000). “Popigai, Siberia—well preserved giant impact structure, national treasury, and world’s geological heritage”. Episodes (International Union of Geological Sciences) 23 (1): 3–12. http://www.episodes.org/backissues/231/03-11%20Deutsch.pdf. 
  5. ^ a b Попигай, РФ, Краснояр.край”. Полный каталог "Импактные структуры Земли". 2008ねん12月15にち閲覧えつらん
  6. ^ Deutsch, A. and Koeberl, C. (2006). “Establishing the link between the Chesapeake Bay impact structure and the North American tektite strewn field: The Sr-Nd isotopic evidence”. Meteoritics and Planetary Science (University of Arizona) 41 (5): 689-703. 
  7. ^ Farley, K. A. et al. (1998). “Geochemical Evidence for a Comet Shower in the Late Eocene”. Science 280 (5367): 1250-1253. http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/280/5367/1250. 
  8. ^ Tagle, R. and Claeys, P. (2004). “Comet or Asteroid Shower in the Late Eocene?”. Science 305 (5683): 492. http://www.sciencemag.org/cgi/content/abstract/305/5683/492. 

外部がいぶリンク

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