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モクタチバナ Ardisia sieboldii Miq. はヤブコウジ科 か の樹木 じゅもく 。琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう では森林 しんりん の構成 こうせい 種 しゅ として普通 ふつう で、また庭木 にわき などにも使 つか われる。
常緑 じょうりょく 性 せい の低木 ていぼく だが時 とき にかなり背 せ が高 たか くなる[1] 。高 たか さは普通 ふつう は2mから数 かず m程度 ていど だが、時 とき に10mに達 たっ する例 れい もある。また幹 みき の径 みち も60cmになることがある[2] 。枝 えだ は灰 はい 褐色 かっしょく から灰 はい 赤色 あかいろ で、若 わか い間 あいだ は淡 あわ 褐色 かっしょく の鱗片 りんぺん 毛 げ がある。葉 は は互生 ごせい で、狭 せま 倒卵形 とうらんけい から倒卵形 とうらんけい 、あるいは狭 せま 倒 たおせ 卵 たまご 状 じょう 長 ちょう 楕円 だえん 形 がた など。葉 は の先端 せんたん は丸 まる く、縁 えん は滑 なめ らかで基部 きぶ は次第 しだい に狭 せま くなるか、あるいは急 きゅう に狭 せま くなり、長 なが さ5-8mmほどの葉柄 ようへい に続 つづ く。葉 は 身 み の大 おお きさは長 なが さ7-12cm、幅 はば は2.5-4cm、葉 は 質 しつ は厚 あつ くて表面 ひょうめん には光沢 こうたく がない。表面 ひょうめん は緑色 みどりいろ 、裏面 りめん は淡 あわ い緑 みどり で中 ちゅう 肋 あばら は突出 とっしゅつ し、側 がわ 脈 みゃく は大 おお きな角度 かくど で出 で て細 ぼそ く多数 たすう ある。また若 わか い間 あいだ は淡 あわ 褐色 かっしょく の鱗片 りんぺん 毛 げ がある。なお葉 は は乾 かわ くと灰色 はいいろ を帯 お びた褐色 かっしょく になる。
花期 かき は5-7月 がつ 。花序 かじょ は枝 えだ の上 うえ の方 ほう の葉腋 ようえき から出 で て散 ち 状 じょう または集散 しゅうさん 状 じょう になる。花序 かじょ の枝 えだ は太 ふと く、長 なが さは2.5-5cm、小花 こばな 柄 え は長 なが さ7-10mmで褐色 かっしょく の鱗片 りんぺん 毛 げ がある。萼 がく は先端 せんたん が5つに裂 さ け、萼 がく 裂 きれ 片 へん は筒 つつ 状 じょう 部 ぶ の約 やく 2倍 ばい の長 なが さがあり、広 こう 卵 たまご 形 がた で先端 せんたん は鈍 にぶ く尖 とが り、長 なが さ1-1.5mmで背面 はいめん には腺 せん 点 てん と鱗片 りんぺん 毛 げ が、縁 えん には細 ほそ い毛 け がある。花冠 かかん は淡紅 あわべに 色 しょく で径 みち 7mmほど。雄 お しべは花冠 かかん より短 みじか くて、雌 め しべは花冠 かかん より長 なが い。果実 かじつ は球形 きゅうけい で黒 くろ 紫色 むらさきいろ に熟 じゅく し、大 おお きさは7-8mmになる。
日本 にっぽん では四国 しこく 南部 なんぶ と九州 きゅうしゅう 、琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう と、それに小笠原 おがさわら に分布 ぶんぷ する。国外 こくがい では中国 ちゅうごく 南東 なんとう 部 ぶ と台湾 たいわん に分布 ぶんぷ する[3] 。ちなみに瀬戸内海 せとないかい における分布 ぶんぷ 北限 ほくげん は四国 しこく の佐田岬半島 さだみさきはんとう であるが、これを山口 やまぐち 県 けん 光 ひかり 市 し で実験 じっけん 的 てき に野外 やがい 栽培 さいばい したところ、樹木 じゅもく の下 した に植 う えなかったものは冬季 とうき にすべて枯死 こし し、樹下 じゅか のものも痛 いた みが激 はげ しかった[4] と云 ゆ い、耐寒 たいかん 性 せい が制限 せいげん 要因 よういん になっているようである。
常緑樹 じょうりょくじゅ 林 りん に生 は える[5] 。
一般 いっぱん 的 てき な傾向 けいこう としてはモクタチバナは湿潤 しつじゅん で土壌 どじょう が深 ふか いところを好 この むとされ、小笠原諸島 おがさわらしょとう では入植 にゅうしょく 時 じ にこの種 たね の繁茂 はんも する地域 ちいき が肥沃 ひよく な土地 とち として開墾 かいこん されたという[6] 。
屋久島 やくしま の低地 ていち 林 りん ではごく広 ひろ く見 み られるもので、筒井 つつい (2007)の調査 ちょうさ 全 ぜん プロットに出現 しゅつげん したのは本 ほん 種 たね とフカノキであったという[7] 。
小笠原諸島 おがさわらしょとう では上記 じょうき のように肥沃 ひよく な地 ち に広 ひろ く本 ほん 種 しゅ の優先 ゆうせん する森林 しんりん があり、それらは開拓 かいたく の対称 たいしょう となったが、本 ほん 種 しゅ の生態 せいたい 的 てき に幅 はば の広 ひろ さのおかげで乾性 かんせい の低木 ていぼく 林 りん で本 ほん 種 しゅ が優先 ゆうせん する林 はやし 分 ぶん は今 いま でも多 おお く存在 そんざい する[6] 。聟島列島 むこじまれっとう では低木 ていぼく 林 りん に本 ほん 種 しゅ の優 ゆう 占 うらない する林 はやし 分 ぶん が多 おお く、地域 ちいき によってはほぼ純 じゅん 林 りん 状態 じょうたい で見 み られる[8] 。
ヤブコウジ属 ぞく は日本 にっぽん に8種 しゅ ほどが知 し られるが、日本 にっぽん 本土 ほんど にあるものは本 ほん 種 しゅ 以外 いがい はヤブコウジ のようなごく背 せ の低 ひく いもの、マンリョウ のようなせいぜい1mの低木 ていぼく であり、本 ほん 種 しゅ のようなはっきりした樹木 じゅもく になるものは他 た にはない[9] 。琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう にはよく似 に たシシアクチ A. quinquegona がある。この種 たね は本 ほん 種 しゅ とよく似 に ているがより葉 は が幅 はば 狭 せま く先端 せんたん がやや尖 とが り、葉 は 裏 うら の主脈 しゅみゃく が細 ほそ い[10] 。また花序 かじょ の柄 え が本 ほん 種 たね と違 ちが って細 ほそ くてやや垂 た れ下 さ がるように出 で る。これを含 ふく めても本 ほん 種 しゅ は日本 にっぽん に産 さん する本属 ほんぞく では最 もっと も大 おお きくなる樹木 じゅもく であり、森林 しんりん の林冠 りんかん 構成 こうせい 種 しゅ にもなるものである[2] 。
種 たね 内 ない の変異 へんい としては果実 かじつ の色 いろ が異 こと なるものを品種 ひんしゅ として分 わ ける。赤 あか く熟 じゅく するものをアカミノモクタチバナ f. rubricarpa と呼 よ び、黒 くろ く熟 じゅく するものをクロミノモクタチバナf. nigrocarpa と言 い う[5] 。
沖縄 おきなわ では防風 ぼうふう 林 りん や防潮 ぼうちょう 林 りん として宅地 たくち に栽培 さいばい されることがある。生木 なまき を焼 や いた灰 はい が藍 あい 染 ぞ め の添加 てんか 剤 ざい として重宝 ちょうほう される。種子 しゅし を水鉄砲 みずでっぽう の弾 たま にしたとも[11] 。
果実 かじつ は子供 こども がおやつに食 た べたことがあり、また南西諸島 なんせいしょとう では飢饉 ききん に際 さい してこの果実 かじつ を集 あつ め、餅 もち のように突 とっ き砕 くだ き、食料 しょくりょう として利用 りよう したことがある。葉 は は家畜 かちく の冬 ふゆ の食物 しょくもつ に利用 りよう された。また材 ざい を炭 すみ にすると火持 ひも ちがよいとされた。これらの利用 りよう は現在 げんざい ではほぼ行 おこな われていない[2] 。
^ 以下 いか 、主 しゅ として佐竹 さたけ 他 た (1989),p.160
^ a b c 堀田 ほった (1997),p.28
^ 佐竹 さたけ 他 た (1989),p.160
^ 南 みなみ (1972),p.112
^ a b 佐竹 さたけ 他 た (1989),p160
^ a b 清水 しみず (1993),p.36
^ 筒井 つつい (2008),p.8
^ 清水 しみず (1993),p.14-15
^ 佐竹 さたけ 他 た (1989),p158
^ 佐竹 さたけ 他 た (1989),p161
^ 天野 あまの (1982),p.139
佐竹 さたけ 義 よし 輔・他 た (編著 へんちょ ) 『日本 にっぽん の野生 やせい 植物 しょくぶつ 木本 もくほん II』新装 しんそう 版 ばん 、(1999)、平凡社 へいぼんしゃ
天野 あまの 鉄夫 てつお 『琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう 有用 ゆうよう 樹木 じゅもく 誌 し 』、(1982)、琉球 りゅうきゅう 列島 れっとう 有用 ゆうよう 樹木 じゅもく 誌 し 刊行 かんこう 会 かい
堀田 ほった 満 みつる 、「ヤブコウジ」:『朝日 あさひ 百科 ひゃっか 植物 しょくぶつ の世界 せかい 6』、(1997)、朝日新聞社 あさひしんぶんしゃ :p.27-28
清水 しみず 善和 よしかず 、「小笠原諸島 おがさわらしょとう 聟島列島 むこじまれっとう の植生 しょくせい ―モクタチバナ型 がた 低木 ていぼく 林 りん の生態 せいたい と野生 やせい 化 か ヤギの食害 しょくがい による森林 しんりん の後退 こうたい 現象 げんしょう ―」、(1993)
南 みなみ 敦 あつし 、「光 ひかり 市 し (山口 やまぐち 県 けん )で育 そだ つ亜熱帯 あねったい 植物 しょくぶつ 」、(1972)、The Journal of Geobotaby vol.XX (4):p.110-112.
筒井 つつい 希実子 きみこ 、「屋久島 やくしま 低地 ていち 部 ぶ における森林 しんりん の構造 こうぞう と人為 じんい の影響 えいきょう について」、(2008)、東京大学 とうきょうだいがく 大学院 だいがくいん 新 しん 領域 りょういき 創造 そうぞう 科学 かがく 研究 けんきゅう 科 か 環境 かんきょう 学 がく 研究 けんきゅう 系 けい 自然 しぜん 環境 かんきょう 学 がく 専攻 せんこう 生物 せいぶつ 圏 けん 機能 きのう 学 がく 分野 ぶんや 2007年度 ねんど 修士 しゅうし 論文 ろんぶん