ヤマユリ

ヤマユリ
ヤマユリ（大阪おおさか府ふ・2007年ねん7月がつ）
分類ぶんるい
界さかい : 植物しょくぶつ界かい Plantae 階級かいきゅうなし : 被子植物ひししょくぶつ Angiosperms 階級かいきゅうなし : 単たん子葉しよう類るい Monocots 目め : ユリ目め Liliales 科か : ユリ科か Liliaceae 属ぞく : ユリ属ぞく Lilium 種たね : ヤマユリ L. auratum
学名がくめい
Lilium auratum Lindl. (1862)
和名わみょう
ヤマユリ （山百合やまゆり）
英名えいめい
gold-banded lily

ヤマユリ（山百合やまゆり、学名がくめい: Lilium auratum）とはユリ科かユリ属ぞくの多年生たねんせい植物しょくぶつ。山地さんちに生はえる日本にっぽん特産とくさんのユリで、夏なつに咲さく花はなは大型おおがたで白しろく、山中さんちゅうでもよく目立めだち、強つよい芳香ほうこうを放はなつ。鱗茎りんけいは食用しょくようのユリ根ねになり、別名べつめいリョウリユリともよばれている。

名称めいしょう

和名わみょうヤマユリは、山中さんちゅうに生はえることからつけられた。学名がくめいは「黄金おうごん色しょくのユリ」の意い。中国ちゅうごく植物しょくぶつ名めい（漢かん名めい）は、金きむ百合ゆり（きんひゃくごう）、日本にっぽん漢かん名めいでは山百合やまゆり（さんひゃくごう）とよばれる。鱗茎りんけいは食用しょくようになり、リョウリユリ（料理りょうり百ひゃく合ごう）ともいわれる。

地方ちほうによって様々さまざまな別べつの呼よび名ながあり、ヨシノユリ（吉野よしの百合ゆり、芳野よしの百合ゆり）、エイザンユリ（叡山えいざん百ひゃく合ごう）、ホウライジユリ（蓬莱ほうらい寺てら百ひゃく合ごう、鳳来ほうらい寺てら百ひゃく合ごう）、リョウリユリなどともよばれていて、各かく産地さんちに因ちなんで名付なづけられている。

花言葉はなことばは、「荘厳そうごん」である。

分布ぶんぷ・生育せいいく地ち

日本にっぽん特産とくさんのユリで、北陸ほくりく地方ちほうを除のぞく本州ほんしゅうの近畿きんき地方ちほう以北いほくの山地さんちに分布ぶんぷし、山地さんち、山野やまのの林はやし縁ゆかりや草地くさちに自生じせいする。北海道ほっかいどうや九州きゅうしゅうには栽培さいばいしていたものが野生やせい化かしたものが見みられ、観賞かんしょう用ように多おおく栽培さいばいもされる。日当ひあたりのよい原野げんや、丘陵きゅうりょうなどに生はえていて、夏なつの里山さとやまの植林しょくりん地ちなどの木漏こもれ日びが当あたるところでは、ひときわ目立めだつ白しろい花はなを咲さかせているヤマユリが見みかけられる。

特徴とくちょう

地上ちじょうの茎くきは直立ちょくりつし、草丈くさたけは1 - 1.5メートル (m) 。地下ちかの鱗茎りんけいは扁ひらた球だま形かたちで、黄色おうしょくをおびた白色はくしょく、10 cm程ほどの大おおきさである。鱗茎りんけいの上うえと下したには根ねが生はえている。葉はは深ふか緑色みどりいろをした広こう披針形ひしんけいで先さきは尖とがり、短みじかい葉柄ようへいがついて互生ごせいする。

花期かきは夏なつ（7 - 8月がつ）で、茎くきの先さきに1 - 数個すうこ、ときに20個こほどの白しろい花はなを横向よこむきに咲さかせる。花はなは6つある花はな被ひ片へんが、外そとに弧こを描えがきながら広ひろがって、花はな径みちは15 - 18センチメートル (cm) になり、ユリ科かの中なかでも最大さいだい級きゅうであり、その重おもみで茎くき全体ぜんたいが弓ゆみなりに傾かたむくほどである。花はな被ひ片へんの内側うちがわ中心ちゅうしんには黄色おうしょくの太ふとい筋すじがあり、紅べに褐色かっしょくの小ちいさな斑点はんてんが散ちらばる。ヤマユリの変かわりものには様々さまざまな呼よび名ながつけられていて、花はな被ひ片へんの中央ちゅうおうに太ふとい赤色あかいろがあるものを「紅べに筋すじ」、斑点はんてんが少すくない純白じゅんぱくの花はなを「白しろ黄き」、花はな被ひ片へんの斑点はんてんが黄色おうしょくのものを「白星しろぼし」という。褐色かっしょくの花粉かふんが出でて、花はなの香かおりは日本にっぽん自生じせいの花はなの中なかでは例外れいがい的てきともいえるほど、甘あまく濃厚のうこうでとても強つよい。発芽はつがから開花かいかまでには少すくなくとも5年ねん以上いじょうかかる。よく「1輪りん1年ねん」といわれ、株かぶの年数ねんすうが経たって古ふるいほど多おおくの花はなをつけ、大おおきな鱗茎りんけいになっている。風貌ふうぼうが豪華ごうかで華麗かれいであることから、「ユリの王様おうさま」と呼よばれる。

花はな後ごにできる果実かじつは蒴果で、長ながさ6 cmほどの円筒えんとう形がたで3室しつに分わかれている。中なかには種子しゅしが約やく300個こほど入はいっていて、熟じゅくすと果実かじつが3裂きれして、風ふうに揺ゆらされて散布さんぷされる。種子しゅしの大おおきさは、長ながさ約やく1 cmの扁平へんぺいな半円はんえん形がたで、周囲しゅういに翼つばさがついており、中心ちゅうしん部ぶに楕円だえん形がたで長ながさ約やく5ミリメートル (mm) の種子しゅし本体ほんたいがある。種子しゅしは翌年よくねんの春はるに発芽はつがせず、その年としの夏なつを越こして秋あきになってから発芽はつがする。

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  葉はは互生ごせいする。
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  蕾つぼみがついた状態じょうたいの茎葉けいよう
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  花はなと開花かいか直前ちょくぜんの蕾つぼみ（左ひだり）
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  花はなの中央ちゅうおうには、長ながく伸のび出でた褐色かっしょくの葯が目立めだつ6本ほんの雄おしべと、中央ちゅうおうに1本ほんの雌めしべがつく。
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  熟じゅくした果実かじつ。先端せんたんから3裂きれして中なかから種子しゅしが散布さんぷされる。
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  ヤマユリの花粉かふん 電子でんし顕微鏡けんびきょう画像がぞう。寸法すんぽうは80μみゅーm×60μみゅーm。

栽培さいばい

排水はいすいが良よく湿度しつどを適度てきどに保たもつ膨軟地ちを好このむ性質せいしつがあり、半はん日陰ひかげで根元ねもとが乾燥かんそうしない高こう畦あぜに植うえ栽される。繁殖はんしょくは、鱗茎りんけいを分わけて植うえるか、実生みしょうによって行おこなわれる。

ヤマユリを基もとに改良かいりょうした園芸えんげい品種ひんしゅは、オリエンタル・ハイブリッドとよばれている。

利用りよう

秋あきから春はるにかけて地下ちかの鱗茎りんけいを掘ほり採とって、食用しょくようや薬用やくように利用りようする。

食用しょくよう

鱗茎りんけいは、オニユリ等ひとしと同様どうようにユリ根ねとして食用しょくようとなる。根ねを取とり除のぞいて鱗茎りんけいをよく水洗みずあらいして、1片へんずつ剥はがしてから酒さけを加くわえて茹ゆでて下したごしらえする。きんとん、煮物にもの、生せいのまま天てんぷらにするほか、中火ちゅうびで甘煮うまににして砂糖さとうをまぶしたものはデザートになる。天てんぷらにするとホクホクした食しょく感かんになる。

鱗茎りんけいには良質りょうしつなデンプンや多た糖類とうるいの一種いっしゅであるグルコマンナン（コンニャクにも多おおく含ふくまれる）を多量たりょうに含ふくみ、縄文じょうもん時代じだいには既すでに食用しょくようにされていた。生せいのユリ根ねを煮にて調理ちょうりするとき、よく煮にると糊のり状じょうとなり、美味びみで去痰きょたんの効果こうかもある。

薬用やくよう

鱗茎りんけいは生薬きぐすりになり、中国ちゅうごくのユリの鱗茎りんけいである百ひゃく合ごう（びゃくごう）の名なを、日本にっぽん産さんヤマユリに充あてている。調整ちょうせい法ほうは、秋あきに種子しゅしが成熟せいじゅくした後のちに、鱗茎りんけいを掘ほり採とって水洗みずあらいした後のち、鱗茎りんけいの裂きれ片へんをほぐして天日てんじつ乾燥かんそうさせる、もしくは湯通ゆどおしして天日てんじつ乾燥かんそうする。鎮咳、強壮きょうそう、口腔こうくう内ないや胃い粘膜ねんまくの保護ほごに役立やくだつとされ、民間みんかん療法りょうほうでは、温あたたまるときに出でる咳せきや、微熱びねつがあり動悸どうきがあるときの不眠ふみんに、乾燥かんそうしたユリ根ね1日にち量りょう5 - 10グラムを400 ccで煎せんじて、3回かいに分わけて服用ふくようする用法ようほうが知しられている。ただし、寒気さむけや冷ひえが出でている咳せきへの使用しようは禁忌きんきとされている。またおでき、打うち身み、腫はれ物ものなどには、乾燥かんそうした百ひゃく合ごうを粉末ふんまつにして、酢すで練ねって患部かんぶに湿布しっぷする民間みんかん療法りょうほうが知しられる。

その他た

• 1873年ねん、ウィーン万博ばんぱくで日本にっぽんの他ほかのユリと共ともに紹介しょうかいされ、その美うつくしさからヨーロッパで注目ちゅうもくを浴あびる。それ以来いらい、ユリの球根きゅうこんは大正たいしょう時代じだいまで主要しゅような輸出ゆしゅつ品ひんのひとつであった。西洋せいようでは栽培さいばい品種ひんしゅの母はは株かぶとして重用じゅうようされた。

• ヤマユリは神奈川かながわ県けんの県けんの花はなに指定していされている。
• 石川いしかわ県けん鹿島かしま郡ぐん中ちゅう能登のと町まちの石動山せきどうやまでは北陸ほくりく地方ちほうにはないヤマユリが自生じせいしており、地元じもとでは「石動山せきどうさんユリ」として町まち花はなに指定していされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 大嶋おおしま敏昭としあき監修かんしゅう『花色はないろでひける山野さんや草そう・高山たかやま植物しょくぶつ』成美せいび堂どう出版しゅっぱん〈ポケット図鑑ずかん〉、2002年ねん5月がつ20日はつか、425頁ぺーじ。ISBN 4-415-01906-4。 
• 貝津かいづ好孝よしたか『日本にっぽんの薬草やくそう』小学館しょうがくかん〈小学館しょうがくかんのフィールド・ガイドシリーズ〉、1995年ねん7月がつ20日はつか、115頁ぺーじ。ISBN 4-09-208016-6。 
• 主婦しゅふと生活社せいかつしゃ編へん『野山のやまで見みつける草花くさばなガイド』主婦しゅふと生活社せいかつしゃ、2007年ねん5月がつ1日にち、121頁ぺーじ。ISBN 978-4-391-13425-4。 
• 鈴木すずき庸夫みちお・高橋たかはし冬ふゆ・安やす延のべ尚文なおふみ『草木くさきの種子しゅしと果実かじつ』誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年ねん9月がつ28日にち、222頁ぺーじ。ISBN 978-4-416-71219-1。 
• 高野たかの昭人あきと監修かんしゅう 世界文化社せかいぶんかしゃ編へん『おいしく食たべる 山菜さんさい・野草やそう』世界文化社せかいぶんかしゃ〈別冊べっさつ家庭かてい画が報ほう〉、2006年ねん4月がつ20日はつか、114-116頁ぺーじ。ISBN 4-418-06111-8。 
• 馬場ばば篤あつし『薬草やくそう500種しゅ－栽培さいばいから効用こうようまで』大貫おおぬき茂しげる（写真しゃしん）、誠まこと文ぶん堂どう新光しんこう社しゃ、1996年ねん9月がつ27日にち、112頁ぺーじ。ISBN 4-416-49618-4。 

関連かんれん項目こうもく

• サクユリ
• ササユリ

外部がいぶリンク

• ヤマユリ種子しゅしの発芽はつが促進そくしんに関かんする研究けんきゅう 山形大学やまがただいがく紀要きよう Vol.12 no.1 p.7 -14
• ユリの新しん発芽はつが法ほう「種子しゅしカット法ほう」の開発かいはつ 岩手いわて県けん環境かんきょう保健ほけん研究けんきゅうセンター (PDF)
• 高速こうそく道路どうろのり面めんにおけるヤマユリ（Lilium auratum Lindl.）の復元ふくげん状じょう況きょうについて 日本にっぽん緑化りょくか工こう学会がっかい誌し Vol.38 (2012) No.11号ごう p.208-211
• ユリの王国おうこく [その1] ヤマユリ 東ひがしアジア植物しょくぶつ記き 小杉こすぎ波留はる夫おっと 2020/07/21