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ユカテコ語ご

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア（Wikipedia）』
ユカテコ語ご
Maaya T'aan
話はなされる国くに メキシコの旗 メキシコ
ベリーズの旗 ベリーズ
地域ちいき ユカタン州しゅう 547,098人にん
キンタナ・ロー州しゅう 163,477人にん
カンペチェ州しゅう 75,847人にん
ベリーズ 5,000人にん
話者わしゃ数すう 786,113人にん（2010年ねん）[1]
言語げんご系統けいとう
マヤ語族ごぞく
  • ユカテコ語ご派は
    • ユカテコ語ご
表記ひょうき体系たいけい ラテン文字もじ
公的こうてき地位ちい
公用こうよう語ご メキシコ[2]
統制とうせい機関きかん INALI
言語げんごコード
ISO 639-3 yua – Yucateco
Linguist List yua Yukateko
Glottolog yuca1254  Yucatec Maya[3]
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ユカテコ語ご（ユカテコご、英語えいご: Yucatec Maya 、ユカテコ語ご: Màaya t'àan）は主おもにユカタン半島はんとうで話はなされる言語げんごである。マヤ語族ごぞくのユカテコ語ご群ぐんに属ぞくする。話者わしゃは主おもにメキシコのユカタン州しゅう、キンタナ・ロー州しゅう、カンペチェ州しゅうに分布ぶんぷする。ほかに、ベリーズ北部ほくぶに居住きょじゅうする。

メキシコでの正式せいしき名称めいしょうは単たんにマヤ語ご(Maya)である[4]。

国立こくりつ先住民せんじゅうみん言語げんご研究所けんきゅうじょ(INALI)によれば、2010年ねんの5歳さい以上いじょうの話者わしゃの数かずは約やく80万まん人にんで、これはメキシコの先住民せんじゅうみんの言語げんごとしてはナワトル語ごの次つぎに多おおい[1]。

2009年ねんからウィキメディア財団ざいだんはウィキメディア・インキュベーター上うえでユカテコ語ご版ばんウィキペディアを試験しけん運用うんようしている。

概要がいよう

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ユカタン半島はんとうは後こう古典こてん期きマヤ文明ぶんめいの中心ちゅうしん地ちであった。スペイン人じんによる植民しょくみん地ち時代じだいには宣教師せんきょうしがラテン文字もじでユカテコ語ごを文字もじに記しるすようになった。後のちには先住民せんじゅうみん自身じしんが自みずから伝承でんしょうや土地とち文書ぶんしょ、遺言ゆいごん書しょなどをマヤ語ごで残のこすようになった[5]。『チラム・バラムの書しょ』、『バカブの祭儀さいぎ』 (Ritual of the Bacabs) 、『ツィトバルチェの歌うた』 (Songs of Dzitbalche) のようにさまざまなジャンルの文献ぶんけんが書かかれた[6]。

19世紀せいきにはいるとサイザルアサの景気けいきによって富とみを蓄積ちくせきし、ユカタンの歴史れきしや言語げんごの書物しょもつが多数たすう書かかれるようになった[5]。1937年ねんにはユカタン・マヤ言語げんごアカデミー(ALMY)が設立せつりつされ、1980年ねんに歴史れきし的てきな語彙ごい集しゅうを集大成しゅうたいせいした『コルデメックス・マヤ語ご辞典じてん』(Diccionario Maya Cordemex)を、2003年ねんには現代げんだいマヤ語ご辞典じてん(Diccionario Maya Popular)を出版しゅっぱんしている[7]。ブリセイダ・クエバス (Briceida Cuevas) のようにユカテコ語ごで詩しを発表はっぴょうする者ものもある。

しかしながら、ユカタン半島はんとうの都市とし部ぶでは子供こどもたちはもはやユカテコ語ごで育そだっておらず、本来ほんらい保守ほしゅ的てきな地域ちいきだったユカタン州しゅう東部とうぶとキンタナ・ロー州しゅうも「マヤのリヴィエラ」の名前なまえで観光かんこう地ちとして開発かいはつされるとユカテコ語ごは子供こどもたちに伝つたえられなくなった[8]。

音声おんせい

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ユカテコ語ごには以下いかの子音しいんがある。

両りょう唇音しんおん 歯茎はぐき音おん 後部こうぶ歯茎はぐき音おん 硬かた口蓋こうがい音おん 軟口蓋なんこうがい音おん 声門せいもん音おん
破裂はれつ音おん p pʼ bʼ t tʼ k kʼ ʼ
破やぶ擦ず音おと ts tsʼ ch chʼ
摩擦音まさつおん s x j
鼻音びおん m n
流ながれ音おん l
半母音はんぼいん w y

ほかに、主おもにスペイン語ごからの借用しゃくよう語ごにrが出現しゅつげんする[9]。

植民しょくみん地ち時代じだいのユカテコ語ごでは j [χかい] と h が区別くべつされていたが、現代げんだいでは音韻おんいん的てきな区別くべつは存在そんざいしない[10]。

母音ぼいんには5つの短たん母音ぼいんa e i o uと長ちょう母音ぼいんaa ee ii oo uuがある[11]。

マヤ語族ごぞくの中なかでユカテコ語ごは声調せいちょうを持もつ代表だいひょう的てきな言語げんごである（ほかに南部なんぶラカンドン語ご、ウスパンテコ語ごにも声調せいちょうがある。モチョ語ごと一部いちぶのツォツィル語ごにも声調せいちょうがあるとされる）。声調せいちょうの区別くべつがあるのは長ちょう母音ぼいんのみで、低てい声調せいちょう、高こう声調せいちょう、高こう声調せいちょうで後半こうはんにきしみ声ごえをともなうものの3種類しゅるいがある。ライル・キャンベルによると、歴史れきし的てきには低てい声調せいちょうが本来ほんらいの長ちょう母音ぼいん、高こう声調せいちょうがCVhCから変化へんかしたもの、きしみ声ごえをともなうものはCVʔCに由来ゆらいするものである[12]。高こう声調せいちょうは実際じっさいには昇のぼり声調せいちょうである[13]。

  • chak [tʃak] 「赤あかい」
  • chaak [tʃàːk] 「煮にる」
  • cháak [tʃáːk] 「雨あめ」
  • chaʼak [tʃáa̰k] 「でんぷん」

強つよ勢いきおいは語根ごこんの最初さいしょまたは2番目ばんめの音節おんせつにある[14]。

文法ぶんぽう

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ユカテコ語ごの動詞どうしは相そう、法ほう、状態じょうたい（相そうと他動たどう性せいの組くみ合あわせによって決きまる接尾せつび辞じ）を標示ひょうじする[15]。

他たのマヤ語ごと同様どうようにユカテコ語ごは能のう格言かくげん語ごである。人称にんしょう接辞せつじにA型がた（能のう格かく）とB型がた（絶対ぜったい格かく）の区別くべつがあり、他動詞たどうしの主語しゅご(A)はA型がた、他動詞たどうしの目的もくてき語ご(O)と自動詞じどうしの主語しゅご(S)はB型がたの人称にんしょう接辞せつじで標示ひょうじされる。ユカテコ語ごは相そうを条件じょうけんとした分裂ぶんれつ能のう格かく言語げんごであり、不完全ふかんぜん相しょうでは自動詞じどうしの主語しゅごがA型がたの人称にんしょう接辞せつじで標示ひょうじされる。A型がた接辞せつじは接頭せっとう辞やめ、B型がた接辞せつじは接尾せつび辞じである[16]。

名詞めいしにA型がたの人称にんしょう接辞せつじを加くわえることで所有しょゆう構文こうぶんを作つくることができるが、このときに語根ごこんの短たん母音ぼいんが長ちょう母音ぼいんになったり、高こう声調せいちょうが低てい声調せいちょうになったりすることがある[17]。

A型がた B型がた 独立どくりつ人称にんしょう代名詞だいめいし
一人称いちにんしょう単数たんすう in(w)- -en teen
二人称ににんしょう単数たんすう a(w)- -ech teech
三人称さんにんしょう単数たんすう u(y)- -∅ letiʼ
一人称いちにんしょう複数ふくすう除外じょがい k- -oʼon toʼon
一人称いちにんしょう複数ふくすう包含ほうがん k- … -eʼex -oʼon-eʼex toʼon-eʼex
二人称ににんしょう複数ふくすう a(w) … -eʼex -eʼex teʼex
三人称さんにんしょう複数ふくすう u(y)-oʼobʼ -oʼobʼ letiʼ-oʼobʼ

態たいには能動態のうどうたい、中ちゅう動どう受動態じゅどうたい（逆ぎゃく使役しえき態たいの一種いっしゅ[18]）、逆ぎゃく受動態じゅどうたい、受動態じゅどうたいがある[19]。態たいによって語幹ごかんの母音ぼいんが変化へんかする[20]。

  • 能動態のうどうたい：k-in pʼej-ik 「私わたしはそれを砕くだく」（k- 不完全ふかんぜん相しょう、in 一人称いちにんしょう単数たんすうA型がた（目的もくてき語ご（三人称さんにんしょう単数たんすうB型がた）はゼロ）、pʼej「砕くだく」、-ik 他動詞たどうしの不完全ふかんぜん相しょう状態じょうたい接辞せつじ）
  • 受動態じゅどうたい：k-u pʼeʼej-el 「それは砕くだかれた」（u 三人称さんにんしょう単数たんすうA型がた、-el 自動詞じどうしの不完全ふかんぜん相しょう状態じょうたい接辞せつじ）
  • 中ちゅう動どう受動態じゅどうたい：k-u pʼéej-el「それは砕くだいてある」
  • 逆ぎゃく受動態じゅどうたい：k-in pʼeej「私わたしは砕くだく」

前置詞ぜんちしはtiʼがある。関係かんけい名詞めいしは形態けいたい的てきにはA型がたの人称にんしょう接辞せつじのついた名詞めいしだが、しばしば前置詞ぜんちしと同様どうように機能きのうする。tiʼと組くみ合あわせて使つかわれることが多おおい[21]。

基本きほん的てきな語順ごじゅんはVOS型がただが、現実げんじつにはSが主題しゅだい化かしたSVOの語順ごじゅんになることの方ほうが多おおい[22]。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ a b México. Lenguas indígenas nacionales en riesgo de desparación. INALI. (2012). p. 23. ISBN 9786077538578. https://site.inali.gob.mx/pdf/libro_lenguas_indigenas_nacionales_en_riesgo_de_desaparicion.pdf 
  2. ^ Ley General de Derechos Lingüisticos Indígenas Archived 2007年ねん2月がつ8日にち, at the Wayback Machine.
  3. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Yucatec Maya”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/yuca1254 
  4. ^ Catálogo de las lenguas indígenas nacionales, INALI, (2008-01-14), p. 94 (Tercera Sección), http://www.inali.gob.mx/pdf/CLIN_completo.pdf 
  5. ^ a b 八杉やすぎ(1999) pp.120-121
  6. ^ Walter Robert Thurmond Witschey; Clifford T. Brown (2012). Historical Dictionary of Mesoamerica. The Scarecrow Press. p. 187. ISBN 9780810871670 
  7. ^ Academia de la Lengua Maya de Yucatán, A. C., Yucatán identidad y cultura Maya, http://www.mayas.uady.mx/institutos/ins_04.html 
  8. ^ Romero (2017) p.387
  9. ^ Hofling (2017) p.754注ちゅう3
  10. ^ Hofling (2017) p.754注ちゅう2
  11. ^ Hofling (2017) p.686
  12. ^ England and Baird (2017) pp.176,182-185
  13. ^ England and Baird (2017) p.193
  14. ^ Hofling (2017) p.688
  15. ^ Hofling (2017) pp.706-709
  16. ^ Hofling (2017) pp.691-694,722-724
  17. ^ Hofling (2017) pp.699-700
  18. ^ Polian (2017) p.211
  19. ^ Hofling (2017) pp.729-731
  20. ^ Polian (2017) p.204
  21. ^ Hofling (2017) p.717
  22. ^ Hofling (2017) pp.731-732

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん文献ぶんけん

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外部がいぶリンク

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