ユニバーサルデザイン

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ユニバーサルデザインえい: universal designUD)とは、文化ぶんか言語げんご国籍こくせき年齢ねんれい性別せいべつ能力のうりょくなどの個人こじんちがいにかかわらず、出来できるだけおおくの人々ひとびと利用りようできることを目指めざした建築けんちく設備せつび)・製品せいひん情報じょうほうなどの設計せっけいデザイン)のことであり、またそれを実現じつげんするためのプロセス(過程かてい)である。

「改札口 WICKET」という、日本語と英語で書かれた駅の看板を映しています。
えき改札かいさつこう看板かんばんに「WICKET」と英語えいご表記ひょうきがある。(島根しまねけん出雲いずも

概説がいせつ[編集へんしゅう]

ユニバーサルデザインという概念がいねんは、べいノースカロライナ州立しゅうりつ大学だいがくユニバーサルデザインセンター Center for Universal Design)のロナルド・メイス(Ronald Mace 通称つうしょう Ron Mace)により、1985ねん公式こうしき提唱ていしょうされたものである[1]

年齢ねんれい能力のうりょく状況じょうきょうなどにかかわらず、デザインの最初さいしょから、できるだけおおくのひと利用りよう可能かのうにすること」がコンセプトである。デザイン対象たいしょう障害しょうがいしゃ高齢こうれいしゃ限定げんていしていないてんが「バリアフリー」とはことなる。これは、バリアフリーが、さまざまな利用りようしゃ考慮こうりょせずにつくってしまい、結果けっかとしてしょうじた障壁しょうへき(バリア)を「から除去じょきょする」という不合理ふごうりを、「最初さいしょからだれにとっても使つかいやすいデザインで」解消かいしょうするというロナルド・メイスのかんがえが反映はんえいされたものである。欧米おうべいでは、バリアフリーがかなりすすんでのちにユニバーサルデザインのかんがかた提唱ていしょうされたため、そのちがいは理解りかいされやすかった。しかしながら、日本にっぽん国内こくないにおいては「バリアフリー」が不十分ふじゅうぶんなうちに「ユニバーサルデザイン」のかんがえが紹介しょうかいされたため、両者りょうしゃはしばしば混同こんどうされており、ロナルド・メイスのかんがかたが、かならずしもただしく理解りかいされているとはえないてんもある。なお、同様どうよう概念がいねんとして、ヨーロッパにはDesign for Allという概念がいねんがあり、英国えいこくからは、Inclusive Design提唱ていしょうされた。現在げんざい提唱ていしょうされているSDGsなかの”No one will be left behind"(だれのこさない)も、かんがかたとしてはちか概念がいねんといえる。

ユニバーサルデザインの7原則げんそく[編集へんしゅう]

ノースカロライナ州立しゅうりつ大学だいがくユニバーサルデザインセンター[ちゅう 1]によるユニバーサルデザインの7原則げんそく以下いかとお[2]括弧かっこない英語えいご原文げんぶん表記ひょうき和訳わやく)。

  1. どんなひとでも公平こうへい使つかえること。
    Equitable use / 公平こうへい利用りよう
  2. 使つかうえでの柔軟じゅうなんせいがあること。
    Flexibility in use / 利用りようにおける柔軟じゅうなんせい
  3. 使つかかた簡単かんたん自明じめいであること。
    Simple and intuitive / 単純たんじゅん直感ちょっかんてき利用りよう
  4. 必要ひつよう情報じょうほうがすぐにかること。
    Perceptible information / 認知にんちできる情報じょうほう
  5. 簡単かんたんなミスが危険きけんにつながらないこと。
    Tolerance for error / うっかりミスの許容きょよう
  6. 身体しんたいへの過度かど負担ふたん必要ひつようとしないこと。
    Low physical effort / すくない身体しんたいてき努力どりょく
  7. 利用りようのための十分じゅうぶんおおきさと空間くうかん確保かくほされていること。
    Size and space for approach and use / 接近せっきん利用りようのためのサイズと空間くうかん

ユニバーサルデザインの具体ぐたいれい[編集へんしゅう]

  • 病院びょういんとう医療いりょうよう施設しせつけに開発かいはつされたが、おおくのひと心地ここちよいとかんじたために普及ふきゅうしたシャワートイレ。
  • 適切てきせつにデザインされた身体しんたいてき負担ふたんすくないスロープと階段かいだんわせ。状況じょうきょうおうじてエレベーターやエスカレーターともわせる。
  • 絵文字えもじピクトグラム)による視覚しかくてき直感ちょっかんてき情報じょうほう伝達でんたつ音声おんせい音響おんきょう触覚しょっかくによる情報じょうほう伝達でんたつわせ。
  • ユーザーが自由じゆう選択せんたくできる、多様たよう入力にゅうりょくおよび出力しゅつりょく装置そうちキーボードマウス、トラックパッド、ジェスチャー、音声おんせいなど)とそれらの接続せつぞく使用しようができるプラットフォームとしてのパソコンやスマホとうのハードとソフト。
  • 視認しにんせいやユーザーの感情かんじょうあたえる効果こうか配慮はいりょした配色はいしょく計画けいかく
  • 複雑ふくざつなマニュアルがなくても、直感ちょっかんてき使用しようできる製品せいひんのデザイン。
  • みやすさ、視認しにんせい向上こうじょうさせる目的もくてき開発かいはつしたフォント[3]

なお、がりやすさを優先ゆうせんして「ユニバーサルデザインに配慮はいりょしている」とうたった座席ざせきめんだかたかくなるため、身長しんちょうひくひとにとってぎゃく使つかいづらくなっているケースがあるなど、ものによっては一方いっぽうてると一方いっぽう不利益ふりえきこうむるため、完全かんぜんなユニバーサルデザインはむずかしい。そのため、座席ざせきえばめんひくいものとたかいものを併存へいそんさせるなど、えらべる環境かんきょうつくることでだれもが使つかいやすい環境かんきょうになることもある[4]

また、ユニバーサルデザインの市場いちば規模きぼは、2020ねん現在げんざいで40ちょうえんえている[5]

建築けんちく住宅じゅうたくにおけるユニバーサルデザイン[編集へんしゅう]

建築けんちくだれもが使つかえなければおかしい。これがユニバーサルデザインを最初さいしょ提唱ていしょうしたロナルド・メイスの原点げんてんだった(用語ようご初出しょしゅつはDesigners West, 1985[1])。もともとは戦争せんそう障害しょうがいった退役たいえき軍人ぐんじん出征しゅっせいまえなに問題もんだいもなく利用りようしていた建築けんちくはいることすらこばまれることが続出ぞくしゅつしたのにたいして、その問題もんだい是正ぜせいしようとしたのがバリアフリーデザインのはじまりである(ASA A117.1-1961)が、そもそも改修かいしゅうするのではなくて最初さいしょからバリアをつくらないようにできているのがたりまえ利用りよう目的もくてきたせないからべつ建築けんちくをもうひとてるということはありないだろう、というのが建築けんちくにおけるユニバーサルデザインの主張しゅちょうである。

公共こうきょう建築けんちく敷地しきちがいから接近せっきんし、なかはいって用事ようじたせるようにするには、上下じょうげ移動いどうふくめて経路けいろにバリアがなく、主要しゅよう機能きのう使つかえなければならないし、情報じょうほう提供ていきょうさいしては視覚しかく聴覚ちょうかく触覚しょっかくなどを意識いしきする必要ひつようがある。もちろんこまかいところにをやれば、これは使つかえないということがきるが、複数ふくすう用意よういされるものをことなったデザインとすればほぼ問題もんだい解決かいけつできる(たとえばくるまいす対応たいおうトイレのみぎ勝手かってひだり勝手かってなど)。

わがくにでは、前述ぜんじゅつのA117.1がおよぼした世界せかいてきながれをけて、いろいろな機会きかい場所ばしょでバリアフリー設計せっけい指針ししんるいがつくられたが、その適用てきよう任意にんいであったので実効じっこうがらなかった。それなりに機能きのうするようになったのは1994ねん成立せいりつしたハートビルほう以降いこうである。この法律ほうりつでは急速きゅうそく高齢こうれい危機きき意識いしき利用りようするかたち建築けんちくのバリアフリーをおすすめメニューとしたが、義務ぎむではなかったので一気いっきわるまでにはいたらず、効果こうかをあげるためには2002ねん法律ほうりつ改正かいせい建築けんちく確認かくにん対象たいしょうとされるまでたねばならなかった。

住宅じゅうたくのユニバーサルデザインについては、若干じゃっかんアプローチがちがってくる。なぜならある住戸じゅうこにふつうは複数ふくすう居住きょじゅうしゃがいるので、だれわせるのか、という問題もんだいしょうじるのだ。これについては、いちばん必要ひつようたか居住きょじゅうしゃ要求ようきゅう満足まんぞくさせるようにつくるべきということになる。あらかじめだれむのかまっているとはかぎらないので、おおよそこの程度ていど基本きほん原則げんそくであるとしてつくり、それ以上いじょう居住きょじゅうしゃまってから調整ちょうせいするというのが合理ごうりてきである。

わがくに長寿ちょうじゅ社会しゃかい対応たいおう住宅じゅうたく設計せっけい指針ししん[6]では、原則げんそく室内しつない段差だんさし、要所ようしょすり設置せっち準備じゅんび)、そして室内しつない移動いどう幅員ふくいん確保かくほ廊下ろうかとドア)は当初とうしょからおこなわれるべきとされた。ぞくにバリアフリー3てんセットとしょうされたが、この3つが住宅じゅうたくのユニバーサルデザインの基本きほんである。それらがなされていれば、居住きょじゅうしゃ能力のうりょく(の低下ていか)におうじての対応たいおうがやりやすい。

なお、段差だんさ解消かいしょうむずかしいと抵抗ていこうおおきいのは浴室よくしつであったが、阪神はんしん淡路あわじ大震災だいしんさい復興ふっこう住宅じゅうたく建設けんせつたって段差だんさしの浴室よくしつユニット開発かいはつ至上しじょう命題めいだいとされ、結果けっかとして民間みんかん分譲ぶんじょうマンションにもそれが普及ふきゅうした。いまでは家族かぞくようのマンション住戸じゅうこまたがないとれない浴室よくしつユニットは例外れいがいてきにしかられなくなっている。

公共こうきょう交通こうつうのユニバーサルデザイン[編集へんしゅう]

ユニバーサルデザインは「可能かのうかぎ最大限さいだいげんに」と、いままで以上いじょうのものをもとめる姿勢しせいであるが、ほう最低限さいていげん要求ようきゅう水準すいじゅんさだめるもので、もともとこのふたつはことなる方向ほうこうせいっている。しかしわがくに公共こうきょう交通こうつうのユニバーサルデザインにおいては、2005ねん国土こくど交通省こうつうしょうユニバーサルデザイン政策せいさく大綱たいこうさだめたこともあって、ほうとくにバリアフリーほう重要じゅうよう役割やくわりたしてきている。

公共こうきょう交通こうつうだれもが使つかえることが前提ぜんていとなり、ユニバーサルデザインであることがもとめられる。これには利用りようしゃのニーズを反映はんえいすることはもとより、都市としへの集中しゅうちゅう地方ちほうでの過疎かそくわえて高齢こうれいといった社会しゃかい情勢じょうせい反映はんえい重要じゅうよう要素ようそである。これまでの公共こうきょう交通こうつうは、一般いっぱんに、利用りようしゃ集団しゅうだんとして一定いってい方向ほうこうあるいは目的もくてきどういち方法ほうほうはこぶことにより、安価あんか安全あんぜんで、高速こうそく移動いどう提供ていきょうしてきた。時間じかんなくドアtoドアで移動いどうしたいというニーズは、高齢こうれいによってますますたかまっている。それはいままでの公共こうきょう交通こうつうでは実現じつげんむずかしかった。これからのユニバーサルデザインを目指めざ公共こうきょう交通こうつうは、これまでのマスとしての移動いどうともに、利用りようしゃ個々ここのニーズの実現じつげん焦点しょうてんてる必要ひつようがある。

地方ちほうでは公共こうきょう交通こうつう衰退すいたいし、高齢こうれいになって運転うんてんできなくなったら、病院びょういんにもものにもけなくなるという現実げんじつがある。これにたいしてデマンドバスや、タクシーの活用かつよう近年きんねんでは自動じどう運転うんてんバスの導入どうにゅうなど、自治体じちたい介入かいにゅうしてさまざまな検討けんとうがなされ、実際じっさい運用うんようされているところもある。都市とし周辺しゅうへんにおいても、高度こうど経済けいざい成長せいちょう大都市だいとし周辺しゅうへん丘陵きゅうりょう地帯ちたい開発かいはつしたニュータウンで、傾斜地けいしゃちにおける高齢こうれいひと移動いどうをどう確保かくほするかという課題かだいかかえている。

都市としでは、バリアフリーほう規定きていもあって、ノンステップバスやUDタクシー普及ふきゅうえきのエレベーターやくるまいす対応たいおうトイレ、えきホームからの転落てんらく防止ぼうししがらみ整備せいびすすんでいる(国土こくど交通こうつうしょう移動いどうとう円滑えんかつ促進そくしんかんする基本きほん方針ほうしん[7]」)。とりわけ大都市だいとしではラッシュ過密かみつさが問題もんだいである。この密度みつど軽減けいげんするには、テレワーク、時差じさ出勤しゅっきんといったはたらかた改革かいかくなど、鉄道てつどう以外いがい変化へんかもとめられる。また情報じょうほう通信つうしん技術ぎじゅつによってさまざまな移動いどう手段しゅだん有機ゆうきてき効率こうりつてき活用かつようするMaaS注目ちゅうもくされている。

近年きんねんは、複雑ふくざつえき構内こうない案内あんない誘導ゆうどう外国がいこくじん視覚しかく障害しょうがいのあるひと色覚しきかく少数しょうすうしゃとうにどうわかりやすくするかについても、さまざまに試行しこうされている[8]。またせっぐう係員かかりいん多様たようなニーズに理解りかいてるようにする意識いしき改革かいかくすすめられている[9]

また、よりよい公共こうきょう交通こうつうをめざして、利用りようしゃこえ反映はんえいさせるみもおこなわれてきている。中部ちゅうぶ国際こくさい空港くうこう羽田空港はねだくうこうだい3ターミナル、成田空港なりたくうこうではなんねんもかけて利用りようしゃ専門せんもん空港くうこう関係かんけいしゃとう検討けんとう作業さぎょうかさね、それを施設しせつ反映はんえいさせるみがおこなわれ、事後じご評価ひょうか継続けいぞくしているところもある。こうしたみはだい規模きぼプロジェクトならではのものだが、そこに関係かんけいしたひとたちがの、基準きじゅんづくりや事業じぎょうでこの経験けいけん活用かつようすることで、わがくに全体ぜんたいのレベルアップにつながっていくことになる。

プロダクトとユニバーサルデザイン[編集へんしゅう]

近代きんだい以降いこう工業こうぎょう製品せいひんは、大量たいりょう生産せいさん技術ぎじゅつ発達はったつとともに大衆たいしゅうし、おおくの人々ひとびと科学かがく技術ぎじゅつ成果せいか享受きょうじゅできるようになった。企業きぎょう活動かつどうとしておなじものを大量たいりょう生産せいさんする過程かていにおいて、つくるるユーザぞうは、できるだけおおくのひと使つかえるようにとかんがえると、「平均へいきんてきひと」あるいは「平均へいきんてき世帯せたい」とせざるをなかった。この結果けっか想定そうていされたユーザぞうからはずれるひとにとっては、その製品せいひんは「使つかえないモノ」あるいは「使つかいづらいモノ」でしかなかった。

デザインが排除はいじょしてきたこれらのユーザ特性とくせいたいして、デザイナがその存在そんざい意識いしきし、デザインの初期しょき段階だんかいから対応たいおうさく検討けんとうすることで、合理ごうりてき範囲はんいすこしでもおおくのひとをユーザのなか包摂ほうせつする可能かのうせいがある。あらゆる条件じょうけんひとつのデザインで対応たいおうすることはほとんど不可能ふかのうであるが、標準ひょうじゅんてきなデザインからはなれて特別とくべつなユーザニーズにこたえるデザインは、価格かかく上昇じょうしょうにつながるかあるいはだい多数たすうには不要ふよう機能きのうとなり、商品しょうひんとなりにくい。しかし、高機能こうきのうとユーザグループの拡大かくだいというふたつのベクトルの合成ごうせい方向ほうこう目指めざしたデザインをおこなうと、市場いちば原理げんり沿った製品せいひん開発かいはつ可能かのうである。たとえば、製品せいひんじょうちいさな文字もじ表示ひょうじや、難解なんかい操作そうさ方法ほうほうは、多数たすうのユーザも不満ふまんかかえていたにちがいないが、選択肢せんたくしがないため仕方しかたなしに購入こうにゅうするよりなかった。そもそもえない、こえない、使つかえないといった状態じょうたいは、障害しょうがいのあるひとだけの問題もんだいではなく、環境かんきょう条件じょうけんかれている状況じょうきょう次第しだいでは一時いちじてきにせよだれにでもきる問題もんだいである。従来じゅうらい少数しょうすうのニーズとして片付かたづけられてきたことのなかに、じつおおくのひとかかえてきた問題もんだいひそんでいることはすくなからずある。それらを解決かいけつした事例じれいとしては、温水おんすい洗浄せんじょう便座べんざ、ライター、レバーしきドアハンドルなどがある。れずになにかができるという機能きのうは、感染かんせんしょう対策たいさくじょう有効ゆうこうである。

社会しゃかい高齢こうれい急速きゅうそくすすんでいるいま人口じんこうの1/4をえる高齢こうれいしゃをユーザから除外じょがいして経営けいえいりたない。企業きぎょうとしては、ユーザ満足まんぞくたかめ、すこしでもおおくのひとをユーザとしてみ、市場いちば占有せんゆうりつたかめなければならず、今後こんご高齢こうれい急速きゅうそくすすひがしアジア市場いちばたいする戦略せんりゃくとしても重要じゅうようである。

個別こべつのユーザニーズを大量たいりょう生産せいさんされる製品せいひんれることは現実げんじつてきむずかしいが、3Dプリンティング技術ぎじゅつIoT技術ぎじゅつ個別こべつ対応たいおう可能かのうとする。大量たいりょう生産せいさんひんたいしてこれらをわせることで、個別こべつこまかなニーズへの対応たいおう可能かのうせいえてきている。たとえば、家具かぐメーカのイケアがおこなっているソファなどのめんたかくするあしの3Dデータの提供ていきょう出力しゅつりょくサービスのこころみ(ThisAbles.com)や、スマートスピーカによる家電かでん製品せいひん操作そうさなどの応用おうようがある。製品せいひんたいする改造かいぞう判断はんだんされてしまうと製造せいぞうぶつ責任せきにんほう(PLほうじょう問題もんだいとなるかもれないが、いまだにユーザとして包摂ほうせつされていない重度じゅうど障害しょうがいのあるひとにとって、ひとつの可能かのうせいとなるのではと期待きたいされることもあります。

ワークプレイスのユニバーサルデザイン[編集へんしゅう]

ユニバーサルデザインはおも特定とくてい多数たすうのユーザーが使つか公共こうきょう空間くうかん、プロダクトとう対象たいしょうであったが、ワークプレイスはたら)にも概念がいねん拡大かくだいしている。さわがいのあるワーカーやシニアワーカーの就労しゅうろう機会きかい拡大かくだい外国がいこくじんワーカーの増大ぞうだい子育こそだちゅう女性じょせい身内みうち介護かいごたずさわるひとなど、様々さまざま多様たようなワーカーがはたらくことを前提ぜんていとすべき社会しゃかいにいて、「だれでもはたらきやすい」ワークプレイスのユニバーサルデザインが必要ひつようとされている。

ワークプレイスのユニバーサルデザインには、建築けんちく空間くうかんアクセシビリティやユーザビリティばかりではなく、家具かぐ什器じゅうき情報じょうほう機器ききなどのエルゴノミクスてき視点してんふくめ、「はたらく」という行為こうい総合そうごうてきな「はたらきやすさ」が必要ひつようとなる。また、「はたらきやすさ」というゴールを実現じつげんするためには、建築けんちくから機器ききいたるまでのハードウェアが使つかいやすいだけでなく、多様たようなユーザーが「自分じぶんにとってもっと快適かいてき使つかいやすい環境かんきょう選択せんたくできる」というアプローチが有効ゆうこうであり、ワークプレイス全体ぜんたいかんがえた場合ばあいのDesign for allとなる。たとえばその時々ときどき仕事しごと内容ないようとうにより、オフィス空間くうかんなか自分じぶんもっとはたらきやすい場所ばしょ環境かんきょう選択せんたくできるABW(Activity Based Working)は、すべてのワーカーにとってメリットがおおきい。

このABWのかんがかたを、在宅ざいたく勤務きんむ、サードプレイスでの仕事しごとなどまでひろげれば、ワーカーが自分じぶんはたらかた合理ごうりてきかつ自律じりつてき選択せんたくでき、「通勤つうきん」「オフィスでの勤務きんむ」といったストレスからも自由じゆうとなる。また「はたらく」というてんからると、プレイス()への配慮はいりょとともに、情報じょうほうへのアクセス、ひとひとのコミュニケーションやコラボレーションにおけるスムースさといったソフトめんにも配慮はいりょ必要ひつようとなる。これらもひろ意味いみでワークプレイスのユニバーサルデザインといってよいものだ。

近年きんねん快適かいてきでストレスのすくないウェルビーイングたかいワーク環境かんきょうが、仕事しごと生産せいさんせい創造そうぞうせい向上こうじょうおおきな効果こうかがあることが実証じっしょうされ、また、ワーカーの満足まんぞく向上こうじょう、リクルーティングにおける優位ゆういせい期待きたいされることからも、企業きぎょうとうにおける関心かんしんたかまっている。

ころものユニバーサルデザイン[編集へんしゅう]

ころものユニバーサルデザイン(以下いかUD)」とは、衣服いふくなどができるだけおおくのひとれられ、たのしまれるためのデザインである。ころものUDに必要ひつよう要素ようそ多様たようであるが、審美しんびせい機能きのうせい有用ゆうようせい社会しゃかいせい安全あんぜんせい視認しにんせいなどが重要じゅうようである。

審美しんびせい時代じだい感覚かんかくやおしゃれかん、ファッションせい大切たいせつに>

年齢ねんれい障害しょうがいにかかわらず、おしゃれをたのしめる魅力みりょくてきなデザイン、素材そざいいろであることが重要じゅうようである。高齢こうれいしゃだから地味じみに、という固定こていてきかんがえでなく、むしろ「まごとおぞろい、いろちがい」といった感覚かんかくで、たのしみながらこなせるのがよりユニバーサルであるといえる。

機能きのうせいふくのサイズや体形たいけい不満ふまんつユーザーやくるまいす利用りようしゃなどに配慮はいりょする>

年齢ねんれいわってもファッションをたのしめるよう、多様たようなサイズをそろえる。5さいと25さいでは当然とうぜんのことながら体格たいかくわるが、大人おとなになっても25さい、45さい、そして65さいよわいともなって、骨格こっかく体形たいけい筋肉きんにく脂肪しぼうのつきかたとうわるので、それに対応たいおうした適切てきせつなパターンと多様たよう選択肢せんたくしもとめられる。着物きもの浴衣ゆかたは、その柔軟じゅうなんせい可変かへんせいというてんでは、ユニバーサルといえる。くるまいす利用りようしゃのスラックスはうし股上またがみふかくしてすわりやすくしたり、ジャケットなどのぜんたけみじかくしてすわってもかっこよくえるようにする。

有用ゆうようせい身体しんたい機能きのう低下ていかやサイズ調整ちょうせいなどに配慮はいりょする>

関節かんせつうごかしにくい、指先ゆびさきうごかしづらいなどのひとのために、これまでも、ボタンのわりにファスナー、さらにはベルクロ(商品しょうひんめいとしてはマジックテープとしてられる)といった着脱ちゃくだつたすけるための道具どうぐ開発かいはつされてきた。コートの内側うちがわにつけるはず可能かのう薄手うすで防寒ぼうかんベストは、体温たいおん調整ちょうせいむずかしいひとにはもちろん、ぶしわりにはだれにとっても有用ゆうようである。背面はいめんにかけてすくないデザインの衣服いふくは、くるまいすユーザーには必須ひっすだが、同様どうようすわ時間じかんなが運転うんてんしゅなどにも、はだれなくてい。スカートやスラックスのウエストに調整ちょうせい可能かのうなデザインをれると、年齢ねんれいわずやすさがす。

安全あんぜんせい安全あんぜんへの配慮はいりょ

災害さいがい発生はっせい着脱ちゃくだつしやすい機能きのうれる。たとえば、けがをふせぐためにフード(頭巾ずきん)に衝撃しょうげき吸収きゅうしゅうざいれる。ファスナーは緊急きんきゅう上下じょうげ開閉かいへい可能かのうなものを使用しようして、着脱ちゃくだつ素早すばやくできるようにする。また、発生はっせいのみならず、予防よぼう観点かんてん重要じゅうようである。パジャマや浴衣ゆかたはじめ、そでなどの着火ちゃっかしやすい箇所かしょには、えにくいなんもえせい素材そざい使用しようする。夜間やかん外出がいしゅつには、反射はんしゃざいもちいたくつ衣類いるい使用しようすることで事故じこ予防よぼうすることは、ども、学生がくせい高齢こうれいしゃなど多様たようひとにとって有効ゆうこうである。

社会しゃかいせい環境かんきょうへの配慮はいりょ

製造せいぞう流通りゅうつう販売はんばい過程かていにおいて、環境かんきょう持続じぞく可能かのうせいサスティナビリティ)に配慮はいりょする。オーガニックな素材そざいそだて、もちいることで、環境かんきょう配慮はいりょし、化学かがく物質ぶっしつ過敏かびんしょうひと利用りよう可能かのう衣類いるいとなる。また、だれでも使つかえるアクセシブルなためししつは、くるまいすやベビーカーユーザー、LGBTQのひとにとっても、利用りよう可能かのうなものとなる。

視認しにんせい:わかりやすさ>

衣類いるい着脱ちゃくだつ方法ほうほうが、直感ちょっかんてきにわかりやすいことは最低さいてい条件じょうけんである。どうすればそでとおせるのか理解りかいくるしむブラウスや、複雑ふくざつきわまるひもむすびのくつなどのファッションも存在そんざいするが、それらはUDからほどとおい。また、購入こうにゅうにはサイズや素材そざい利用りようには洗濯せんたく方法ほうほうなどを確認かくにんする必要ひつようがあるため、品質ひんしつ表示ひょうじ洗濯せんたく表示ひょうじ、サイズ表示ひょうじなどの文字もじやピクトグラムなどの記号きごうは、書体しょたいいろ使づかいに配慮はいりょする。

学校がっこう教育きょういくのユニバーサルデザイン[編集へんしゅう]

ユニバーサルデザインフォントのれい

米国べいこくでは1975ねんぜん障害しょうがい教育きょういくほう制定せいていし、あらゆるどもがきょうだいとおな学校がっこうき、個別こべつ支援しえんプログラム(IEP)にもとづき、個々ここのニーズを大切たいせつにした教育きょういくける制度せいど確立かくりつした。そういったながれをけて、国連こくれんは1994ねん6がつサラマンカ宣言せんげんし、障害しょうがいなど特別とくべつなニーズを児童じどう学習がくしゅうをほかのどもたちとおな環境かんきょう包摂ほうせつしていく方針ほうしんした。これにより、各国かっこくはこれまで障害しょうがいけて教育きょういくする方針ほうしん転換てんかんし、インクルーシブ教育きょういくへとかじった。一方いっぽう日本にっぽん文部もんぶ科学かがくしょうは、なが分離ぶんり政策せいさくをとっていたが、障害しょうがいしゃ権利けんり条約じょうやく批准ひじゅんともない、2015ねんより方針ほうしん転換てんかんし、インクルーシブな教育きょういく環境かんきょう実現じつげんするための研究けんきゅう提言ていげん[10]おこなってきた。この結果けっか徐々じょじょ教育きょういくのユニバーサルデザインがすすんできている

教育きょういくのユニバーサルデザインとは、障害しょうがいのあるなしにかかわらず、それぞれにとって最適さいてき教育きょういくけられることを意味いみする。ニーズのおも児童じどう学生がくせいのための配慮はいりょが、かるいニーズのひとにもメリットがある場合ばあいおおい。学校がっこう建物たてものにスロープやエレベーターがあれば障害しょうがいのある児童じどう保護ほごしゃがアクセスでき、学校がっこう避難ひなんしょになるさいにも機能きのうする。教科書きょうかしょ電子でんしされて拡大かくだい音声おんせいげが可能かのうといったアクセシビリティが確保かくほされていれば、視覚しかく障害しょうがいのみならずページをめくることがむずかしい肢体したい不自由ふじゆう識字しきじ障害しょうがい児童じどう学生がくせいにも読書どくしょけん保障ほしょうできる。発達はったつ障害しょうがい学生がくせいにわかりやすい授業じゅぎょうは、クラス全体ぜんたい理解りかいふかめることも可能かのうである。このような全体ぜんたいとしてのユニバーサルデザインと同時どうじに、授業じゅぎょう手話しゅわ通訳つうやくやスマホによる字幕じまく表示ひょうじ利用りようしたり、聴覚ちょうかく過敏かびん発達はったつ障害しょうがいがイヤーマフを利用りようしたりといった個別こべつ合理ごうりてき配慮はいりょへの対応たいおう重要じゅうようである。

高等こうとう教育きょういくにおいても、2018ねん合理ごうりてき配慮はいりょ義務ぎむされたため、かく大学だいがくとうにおいては障害しょうがい学生がくせい支援しえんしつなどをもうけ、大学だいがく全体ぜんたいのユニバーサルデザインのハード、ソフトを見直みなおしている。学生がくせい自身じしんみずからのニーズにもとづき、自分じぶん必要ひつよう合理ごうりてき配慮はいりょとはなにかを周囲しゅういつたえ、インクルーシブな学習がくしゅう雇用こよう環境かんきょうみずかつくしていく能力のうりょく開発かいはつもとめられている。

AI(人工じんこう知能ちのう)などコンピューターの技術ぎじゅつ革新かくしんによって将来しょうらいおおくの仕事しごと変革へんかくする可能かのうせいがある。もとめられる能力のうりょくわってくる。こういった社会しゃかいきるうえで、課題かだい発見はっけんし、解決かいけつさく提示ていじする資質ししつ能力のうりょく着実ちゃくじつはぐく学校がっこう教育きょういくへの転換てんかんもとめられている。大学だいがくにおいては、社会しゃかいじん基礎きそりょくをつけることが重要じゅうようであり、人生じんせい100ねん時代じだいにおいては、40だい60だい80だいでもまなつづけられるユニバーサルな教育きょういく環境かんきょう必要ひつようとなる。産官学さんかんがくみん連携れんけいし、地域ちいき社会しゃかい必要ひつよう課題かだい発見はっけん課題かだい解決かいけつおこなうなど、教育きょういく環境かんきょうにおいても、学習がくしゅう主体しゅたいである児童じどう生徒せいと学生がくせい社会しゃかいじん学生がくせいが、保護ほごしゃ地域ちいき人々ひとびととうともつくげていく発想はっそう設計せっけい思想しそう重要じゅうようである。そのさいにも、社会しゃかい構成こうせいいんである多様たよう人々ひとびと理解りかいし、ともきていくDiversity&Inclusionを理解りかいすることが重要じゅうようである。男性だんせいの20にん一人ひとりいるといわれる色覚しきかく少数しょうすうしゃ学生がくせいが、みどり黒板こくばんあかではみにくいため朱色しゅいろのUDチョークを使つかうことや、多様たよう年代ねんだいにとってみやすいUDフォントの利用りよう推奨すいしょうされている。このようなかんがかたみやすさ、視認しにんせいたかめるもので、教育きょういく現場げんばだけでなく、いまではおおくの新聞しんぶん書籍しょせき、プレゼンテーションやサイン、パッケージデザインなどでも利用りようされている[3]

うみのユニバーサルデザイン[編集へんしゅう]

海水浴かいすいよくじょうさわがいしゃ高齢こうれいしゃほうみずからがおとずれ、海水浴かいすいよくたのしめる場所ばしょではなかった。ビーチマット(アクセスマット)とばれる砂浜すなはま設置せっちすることで車椅子くるまいすユーザーやベビーカーユーザーも砂浜すなはま通行つうこうできるマットや水中すいちゅうでも適度てきどくことができる水陸すいりく両用りょうよう車椅子くるまいす活用かつようすることでうみのユニバーサルデザインうみのバリアフリー推進すいしんする。さわがいしゃ専用せんよう駐車ちゅうしゃじょう専用せんよう更衣ころもがえしつ・バリアフリートイレを行政ぎょうせいがわ協力きょうりょくして設置せっち社会しゃかい高齢こうれい海水浴かいすいよく利用りようしゃ減少げんしょうするなか環境かんきょうNPO/NGOの国際こくさい環境かんきょう教育きょういく基金ききん(FEE)が「きびしい基準きじゅんたした砂浜すなはま、ヨットハーバー、持続じぞく可能かのうふね観光かんこう事業じぎょう」にたいしておくブルーフラッグビーチ認証にんしょうとともに海岸かいがんのイメージを向上こうじょうするみとして評価ひょうかされている。須磨すま海水浴かいすいよくじょう中心ちゅうしんひろがるユニバーサルビーチプロジェクトは2019ねん国際こくさいユニヴァーサルデザイン協議きょうぎかい(IAUD)しょう受賞じゅしょうし、うごきは全国ぜんこくひろがってきている。須磨すまかい海水浴かいすいよくじょうは、2023ねんの『北半球きたはんきゅうブルーフラッグ認証にんしょうにおけるベストプラクティスしょう』で世界せかい51かこく、5,036かしょのビーチ・マリーナ・観光かんこう船舶せんぱくなかから世界せかい2えらばれた。

ユニバーサルデザインへの批判ひはん誤解ごかい[編集へんしゅう]

ユニバーサルデザインという言葉ことばは、1997ねんのグッドデザインしょう(Gマーク)において「ユニバーサルデザインしょう」が設置せっちされたのを契機けいきに、日本にっぽん国内こくないにおいて使つかわれるようになった。

グッドデザインしょうにおいて審査しんさ委員いいんちょうつとめた川崎かわさき和男かずおは、「ハートビルほう、ノーマライゼーション、バリアフリーなどの呼称こしょうは、少数しょうすうといわれてきた領域りょういきを、デザインの対象たいしょうにしているようだが、じつは、デザインそのものの本質ほんしつかたなおしただけにすぎない。デザインの本質ほんしつかびがらせるというてんにおいては、たしかに行政ぎょうせいから市場いちば経済けいざいたいして、一般いっぱんてき認識にんしきうながすことができた。しかし、流行りゅうこうとなったことで、以降いこう現在げんざいちゅう:2003ねんごろ)にいたるまで、その本質ほんしつ見失みうしなわれてしまった。[11]」と日本にっぽん国内こくないにおけるユニバーサルデザインの状況じょうきょう批判ひはんしている。

アメリカでユニバーサルデザインが誕生たんじょうした社会しゃかいてき背景はいけいとして、公民こうみんけん運動うんどうながれから施行しこうされたADA(障害しょうがいつアメリカじんほう)という法律ほうりつ存在そんざいがある。建築けんちくであり教育きょういくしゃであるロナルド・メイスは、この法律ほうりつ限界げんかいまえたうえで、あらゆるひと快適かいてきらすことができるデザインとしてユニバーサルデザインを提唱ていしょうした。一方いっぽう傷痍軍人しょういぐんじん障害しょうがいしゃといった人々ひとびと自立じりつ雇用こよう促進そくしんし、納税のうぜいしゃへとえることによってていコストな社会しゃかい実現じつげんして国力こくりょく低下ていかふせぎたいアメリカの思惑おもわくとも合致がっちしたことが、アメリカ社会しゃかいにおいてユニバーサルデザインがれられていく土壌どじょうともなった。

また、川崎かわさき和男かずおは「かれ(ロナルド・メイス)による7原則げんそくろん基本きほんかんがえられているが、それは米国べいこく中心ちゅうしんかんがかたにすぎない。日本にっぽんでは、1989ねん世界せかいデザイン会議かいぎで、NASAのデザイナーであった、マイケル・カリルがはじめて提唱ていしょうしている。元々もともとは、WHOの国際こくさい障害しょうがいしゃねん(1980ねん)のための、メイスンのレポート「バリアフリーをめざして」(1970ねん)で登場とうじょうした言葉ことばといわれているが、一方いっぽうでは、カリルによる、先進せんしん国家こっか特有とくゆう消費しょうひ経済けいざい主義しゅぎかたよった訴訟そしょう社会しゃかい批判ひはん意味いみった言葉ことばであり、メイスにも影響えいきょうあたえたとわたしかんがえている。[11]」と、ユニバーサルデザインがまれた背景はいけいについて解説かいせつしている。

バウハウス以来いらい、デザインは人々ひとびとらしをあるしゅの「規格きかく」にあてはめることによって、合理ごうり主義しゅぎ機能きのう主義しゅぎてきで、大量たいりょう生産せいさん前提ぜんていとした工業こうぎょう社会しゃかい芸術げいじゅつのありかたしめし、自由じゆうゆたかな生活せいかつ実現じつげんしてきた。反面はんめん、デザイン(とその思想しそう前提ぜんていとした社会しゃかい)は人間にんげん多様たようせい容認ようにんせず、規格きかく(モジュール)にしばりつけてしまうという逆説ぎゃくせつてきかつ重大じゅうだい欠陥けっかんかかえることになった。このことは、「自分じぶん体型たいけいったふく既成きせいひんつけることがむずかしい」という日常にちじょうてき体験たいけんえてかんがえると理解りかいしやすい。こういったデザインの理想りそう主義しゅぎてき側面そくめんは、ユニバーサルデザインにおける「だれもが使つかいやすい」という実現じつげん不可能ふかのう幻想げんそうへとつながっている。このことをまえ、川崎かわさき和男かずお日本にっぽんにおけるユニバーサルデザインの問題もんだいてんつぎのように指摘してきする。

日本にっぽんでは、高齢こうれい社会しゃかいむかえるにあたって、商業しょうぎょうてき行政ぎょうせいてきもっともふさわしい言葉ことばとして重宝ちょうほうされている。「だれもが使つかいやすいモノやコトのデザイン」という定義ていぎ一般いっぱんしてしまったことは、この言葉ことば本質ほんしつ訴求そきゅうするうえでは、おおきな誤用ごようであったと指摘してきしておきたい。(中略ちゅうりゃく)『だれもが使つかえるモノ』などあるわけがなく、高齢こうれいしゃ幼児ようじ障害しょうがいしゃすべてにたいするデザインが、いわゆるユニバーサルデザインそのものの本質ほんしつにおいて、デザインの理想りそう主義しゅぎ確信かくしん強調きょうちょうさせた意味いみっているだけである。[11]川崎かわさき和男かずおは、「必要ひつようなのは、この流行りゅうこうを、『ヒューマン・センタード・デザイン』という言葉ことばによるさい定義ていぎによって、その本質ほんしつをもっと訴求そきゅうすることである」とべている。

なお、このようなユニバーサルデザインへの誤解ごかい、すなわちひとつのものが全員ぜんいん使つかえるデザイン、および障害しょうがいしゃけのデザインというあやまった理解りかいが、日本にっぽんのプロダクトデザイナーのあいだ普及ふきゅうしてしまったために、社会しゃかい全体ぜんたいを、どもからシニア、外国がいこくじん女性じょせい左利ひだりききなど、多様たようひと不便ふべんかんじない社会しゃかいつくすというユニバーサルデザインの思想しそうは、日本にっぽんでは浸透しんとうしきれていない。

また、ユニバーサルデザインという言葉ことば誤用ごようによりに誤解ごかいしょうじたれいもある。たとえばユニバーサルスプーンという名称めいしょう流通りゅうつうしている製品せいひんは、高齢こうれいしゃ介護かいご現場げんば使つかわれることを意識いしきしてつくられたものもあり、これがかならずしも障害しょうがいしゃ全般ぜんぱん使つかいやすいとはえない状況じょうきょうである。このような、誤用ごようから誤解ごかい払拭ふっしょくすることは容易よういではない。

ユニバーサルデザインに関連かんれんする概念がいねん用語ようご[編集へんしゅう]

理論りろん手法しゅほう[編集へんしゅう]

関係かんけいする用語ようご[編集へんしゅう]

資格しかくとう[編集へんしゅう]

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

注釈ちゅうしゃく[編集へんしゅう]

  1. ^ えい: The Center for Universal Design, NC State University

出典しゅってん[編集へんしゅう]

  1. ^ a b Ron Mace (1985). “Universal Design: Barrier Free Environments forEveryone”. Designers West 33(1): 147-152. 
  2. ^ The Center for Universal Design - Universal Design Principles”. projects.ncsu.edu. 2020ねん7がつ4にち閲覧えつらん
  3. ^ a b 行方ゆくえ全国ぜんこくはつ UDフォント一体いったい導入どうにゅう 行政ぎょうせい教育きょういく文書ぶんしょ活用かつよう”. 茨城新聞いばらきしんぶん (2019ねん3がつ20日はつか). 2019ねん4がつ15にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2019ねん4がつ15にち閲覧えつらん
  4. ^ あれ、つまさきしかとどかない! 地下鉄ちかてつ新型しんがた車両しゃりょう、その座席ざせき異論いろん 「がりやすさ」と「すわりやすさ」の両立りょうりつ神戸こうべ新聞しんぶんNEXT 2021ねん5がつ22にち
  5. ^ さわがいしゃ制度せいど改革かいかく推進すいしん会議かいぎ ヒアリング項目こうもくたいする意見いけんしょ だい20かい(H22.9.27)
  6. ^ 長寿ちょうじゅ社会しゃかい対応たいおう住宅じゅうたく設計せっけい指針ししん”. www.mlit.go.jp. 建設省けんせつしょう. 2020ねん7がつ4にち閲覧えつらん
  7. ^ 移動いどうとう円滑えんかつ促進そくしんかんする基本きほん方針ほうしん”. 国土こくど交通こうつうしょう. 2022ねん7がつ6にち閲覧えつらん
  8. ^ オリンピック・パラリンピックを見据みすえたバリアフリー推進すいしんかんする調査ちょうさ研究けんきゅう空港くうこうから競技きょうぎ会場かいじょうまでのシームレスな移動いどう実現じつげんけた検討けんとう”. 国土こくど交通こうつうしょう. 2020ねん7がつ4にち閲覧えつらん
  9. ^ 公共こうきょう交通こうつう機関きかんとうにおける障害しょうがいしゃとうへの対応たいおうかか職員しょくいん教育きょういく充実じゅうじつかんする調査ちょうさ研究けんきゅう平成へいせい30ねんがつ”. 国土こくど交通省こうつうしょう総合そうごう政策せいさくきょく安心あんしん生活せいかつ政策せいさく. 2020ねん7がつ4にち閲覧えつらん
  10. ^ 障害しょうがいしゃ権利けんりかんする条約じょうやく理念りねんまえた特別とくべつ支援しえん教育きょういくかたかんする意見いけんしょhttps://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/044/attach/1298937.htm
  11. ^ a b c Kazuo KAWASAKI”. www.kazuokawasaki.jp. 2018ねん8がつ27にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]