リイ・ブラケット

リイ・ブラケット Leigh Brackett
1941年ねん
誕生たんじょう	リイ・ダグラス・ブラケット (1915-12-07) 1915年ねん12月7日にち アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく カリフォルニア州しゅうロサンゼルス
死没しぼつ	1978年ねん3月18日にち(1978-03-18)（62歳さい）
職業しょくぎょう	小説しょうせつ家か、脚本きゃくほん家か
国籍こくせき	アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく
ジャンル	SF小説しょうせつ、犯罪はんざい小説しょうせつ
代表だいひょう作さく	『長ながい明日あした』（1955年ねん） (The Long Tomorrow)
配偶はいぐう者しゃ	エドモンド・ハミルトン （1946年ねん-1977年ねん、死別しべつ）
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リイ・ブラケット（Leigh Douglass Brackett, 1915年ねん12月7日にち - 1978年ねん3月18日にち）は、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくのSF作家さっか、脚本きゃくほん家か。女性じょせいである。

生涯しょうがい

カリフォルニア州しゅうロサンゼルスで生うまれ育そだった。1946年ねん12月31日にち、31歳さいで同おなじくSF作家さっかのエドモンド・ハミルトンと結婚けっこん。結婚けっこん当初とうしょはカリフォルニア州しゅうサンガブリエルに住すんでいたが、間まもなくオハイオ州しゅうキンズマンに移住いじゅう。1978年ねん、カリフォルニア州しゅうランカスターで死去しきょ。

2005年ねんに、第だい5回かいコードウェイナー・スミス再さい発見はっけん賞しょうを贈おくられた。

小説しょうせつ家かとしての経歴けいれき

20代だい半なかばに小説しょうせつ家かとしてデビューした。デビュー作さく "Martian Quest" は『アスタウンディング』誌し1940年ねん2月がつ号ごうに掲載けいさいされた。デビュー後ご3年間ねんかんが最もっとも多作たさくな期間きかんだった。中なかには地球ちきゅうの重じゅう商しょう帝国ていこくの拡大かくだいが異い星ほしの土着どちゃく文化ぶんかに及およぼす影響えいきょうを描えがいた "The Citadel of Lost Ships" (1943) のような社会しゃかい的てきテーマの作品さくひんもある。

処女しょじょ長編ちょうへん『非情ひじょうの裁さばき』は、レイモンド・チャンドラーの流ながれを受うけ継ついだハードボイルド小説しょうせつであり、1944年ねんに出版しゅっぱんされた。この小説しょうせつをきっかけとして、大おおきな脚本きゃくほんの依頼いらいが入はいってくることになった。同おなじころブラケットのSF小説しょうせつはより野心やしん的てきなものになっていった。Shadow Over Mars (1944) は初はつの長編ちょうへんクラスの長ながいSF小説しょうせつで、荒削あらけずりだが新あらたな作風さくふうの確立かくりつを予感よかんさせるものだった。その人物じんぶつ造形ぞうけいは1940年代ねんだいの探偵たんてい小説しょうせつやフィルム・ノワールの影響えいきょうを強つよく受うけている。後のちに『恐怖きょうふの火星かせい争奪そうだつ戦せん』(1951) として単行本たんこうぼん化かされている。

エドモンド・ハミルトンと結婚けっこんした年としである1946年ねん、「赤あかい霧きりのローレライ」が Planet Stories に掲載けいさいされた。ブラケットは映画えいが『三みっつ数かぞえろ』の脚本きゃくほんにとりかかるため、この小説しょうせつの前半ぜんはんだけを書かき、残のこりをレイ・ブラッドベリに託たくした。

映画えいが脚本きゃくほん家かとしての仕事しごとからSF作家さっかに戻もどったのは1948年ねんのことである。それ以降いこう1951年ねんまで、これまでよりも長ながいSF冒険ぼうけん小説しょうせつを書かき始はじめた。この期間きかんに書かかれた作品さくひんとしては、"The Moon that Vanished"(1948) のような古典こてん的てき設定せっていのものや長編ちょうへんクラスの長ながさの Sea-Kings of Mars (1949) がある。後者こうしゃは後のちに『リアノンの魔ま剣けん』(1953) として単行本たんこうぼん化かされた。水みずが蒸発じょうはつする前まえの海うみのある火星かせいを鮮あざやかに描えがいた作品さくひんである。

"Queen of the Martian Catacombs" (1949) には後のちにブラケット作品さくひんによく使つかわれるようになるキャラクターであるエリック・ジョン・スターク (en) が初はつ登場とうじょうした。スタークは地球ちきゅう出身しゅっしんの孤児こじで水星すいせいの原住民げんじゅうみんに育そだてられたが、その育そだての親おやは後のちに地球人ちきゅうじんに殺ころされた。彼かれは地球ちきゅうの役人やくにんに救すくわれ、その役人やくにんがスタークの師しとなる。1949年ねんから1951年ねんまでスタークは3作品さくひんに登場とうじょうし、いずれも Planet Stories に掲載けいさいされた（「金星きんぼしの魔女まじょ」もその1作さく）。

その後ごブラケットの作風さくふうには哀あい感かんが伴ともなうようになり、文明ぶんめいの滅亡めつぼうを嘆なげくような内容ないようの作品さくひんが多おおくなった。プロットよりも雰囲気ふんいきを重視じゅうしするようになる。このような変化へんかは題名だいめいにも現あらわれている（「シャンダコール最期さいごの日々ひび」など）。

1955年ねん夏なつ、ブラケットのSF作品さくひんをいつも掲載けいさいしてくれていた『プラネット・ストーリーズ』誌し(Planet Stories) が廃刊はいかんとなった。同年どうねん、『スタートリング・ストーリーズ』誌しと『ワンダー・ストーリーズ』誌しも廃刊はいかんとなり、ブラケットのSFを掲載けいさいしてくれる雑誌ざっしがなくなった。このためブラケットのSF作家さっかとしての第だい1期きが終焉しゅうえんを迎むかえた。その後ご10年間ねんかんは新作しんさくがほとんど出でず、古ふるい短編たんぺんを長編ちょうへん化かして単行本たんこうぼんとして出版しゅっぱんしている。この時期じきの新作しんさく長編ちょうへん『長ながい明日あした』は評論ひょうろん家かから絶賛ぜっさんされている。核かく戦争せんそう後ごのテクノロジー恐怖症きょうふしょうに陥おちいった農耕のうこう社会しゃかいを描えがいた小説しょうせつである。

しかし、1955年ねん以降いこうのブラケットの執筆しっぴつ活動かつどうの中心ちゅうしんは映画えいがおよびテレビの脚本きゃくほんとなっていた。1963年ねんと1964年ねんには以前いぜんのようなSF作品さくひんを2作さく発表はっぴょうしている。その後ご再ふたたび約やく10年ねんのブランクを経へて、エリック・ジョン・スタークの登場とうじょうする3部ぶ作さくが出版しゅっぱんされた（1974年ねん - 1976年ねん）。

作風さくふう

ブラケットの作品さくひんの多おおくはスペースオペラまたは惑星わくせい冒険ぼうけんものに分類ぶんるいされる。ブラケットの小説しょうせつの舞台ぶたいとなるのは1930年代ねんだいから1950年代ねんだいのSFによく見みられた、架空かくうの要素ようそにあふれた太陽系たいようけいである。火星かせいはぎりぎり居住きょじゅう可能かのうな砂漠さばくの惑星わくせいで、古代こだいには退廃たいはい的てきなヒューマノイドの種族しゅぞくが住すんでいた。金星きんぼしは原始げんし的てきなジャングル惑星わくせいで、強健きょうけんで原始げんし的てきな種族しゅぞくと大型おおがた爬虫類はちゅうるいのモンスターが住すんでいる。さらに、そこにファンタジー要素ようそを持もち込こんだ作品さくひんもある。

火星かせいを舞台ぶたいにした作品さくひんはエドガー・ライス・バローズの影響えいきょうが顕著けんちょだが、火星かせいの描写びょうしゃは大おおきく異ことなる。ブラケットの描えがく火星かせいは惑星わくせい間あいだの貿易ぼうえきを行おこなっており、他たの惑星わくせいと競合きょうごうしている。ブラケットの大おおきなテーマのひとつは文明ぶんめいと文明ぶんめいの衝突しょうとつであり、植民しょくみん地ち主義しゅぎが文明ぶんめいに与あたえる影響えいきょうを描えがき、批判ひはんしている。バローズの場合ばあい、主人公しゅじんこうは自身じしんの信念しんねんに従したがって他たの世界せかいを改造かいぞうしようとする。一方いっぽうブラケットの描えがく主人公しゅじんこうは、そのような大おおきな流ながれや動うごきに対たいして批判ひはん的てきである。

脚本きゃくほん家かとしての経歴けいれき

ブラケットはSFの執筆しっぴつを開始かいしした後のち、間まもなく初はつの脚本きゃくほんを手てがけることになった。ハリウッドの監督かんとくハワード・ホークスはブラケットの長編ちょうへん『非情ひじょうの裁さばき』を気きに入いり、秘書ひしょに「このブラケットという男おとこ」を呼よび寄よせさせ、『三みっつ数かぞえろ』（1946年ねん）の脚本きゃくほんを書かいていたウィリアム・フォークナーを手伝てつだわせようとした。このハンフリー・ボガート主演しゅえんの映画えいがはハードボイルドの傑作けっさくとされている。しかし、ブラケットは結婚けっこん後ごしばらく脚本きゃくほん家かとしての活動かつどうをやめている。

1950年代ねんだい中ちゅうごろに脚本きゃくほん家かとしての活動かつどうを再開さいかいすると、テレビと映画えいがの両方りょうほうで活躍かつやくするようになった。ハワード・ホークスが再ふたたびブラケットを脚本きゃくほん家かとして雇やとうようになり、『リオ・ブラボー』(1959)、『ハタリ!』(1962)、『エル・ドラド』(1966)、『リオ・ロボ』(1970)といったジョン・ウェイン主演しゅえん作品さくひんで脚本きゃくほんを手てがけた。脚本きゃくほん家かデビューが『三みっつ数かぞえろ』だったことから、ロバート・アルトマンはレイモンド・チャンドラーの『長ながいお別わかれ』の再さい構築こうちくをブラケットに依頼いらいし、映画えいが『ロング・グッドバイ』(1973) となった。

「帝国ていこくの逆襲ぎゃくしゅう」

ブラケットは『スター・ウォーズ エピソード5/帝国ていこくの逆襲ぎゃくしゅう』の脚本きゃくほんを手てがけた。この映画えいがは1981年ねんのヒューゴー賞しょうを受賞じゅしょうしている。この脚本きゃくほんがブラケットの遺作いさくであり、SFの脚本きゃくほんもこれが最初さいしょで最後さいごだった。

ただし、この脚本きゃくほんでブラケットの果はたした役割やくわりについてはいくつか論争ろんそうもある。ジョージ・ルーカスが自身じしんのストーリー概略がいりゃくに基もとづいた脚本きゃくほんをブラケットに依頼いらいしたことは確たしかである。ブラケットが初稿しょこうを書かき上あげ、ルーカスに渡わたしたことも事実じじつである。しかし、その直後ちょくごの1978年ねん3月がつ18日にち、ブラケットは癌がんがもととなって亡なくなった。ルーカスは脚本きゃくほんを2回かい練ねり直なおした後のち、『レイダース/失うしなわれたアーク《聖せい櫃ひつ》』に引ひき続つづいてローレンス・カスダンに仕上しあげを依頼いらいした。最終さいしゅう的てきには脚本きゃくほん家かとしてブラケットとカスダンが名なを連つらねることになった。

多おおくの評者ひょうしゃが台詞せりふやスペースオペラ的てき趣向しゅこうにブラケットの影響えいきょうの痕跡こんせきがあるとしている。しかし Laurent Bouzereau の Star Wars: The Annotated Screenplays には、ルーカスがブラケット脚本きゃくほんの展開てんかいを気きに入いらず、一いちから書かき直なおしたとある。ルーカスがブラケットの名なをクレジットしたのは、病床びょうしょうのブラケットがなした仕事しごとへの敬意けいいあるいは好意こういを表あらわしたものだとか、単たんに契約けいやく上じょうの義務ぎむだったという説せつもあるが、全すべては憶測おくそくである。2000年ねんにブラケット作品さくひんの短たん編集へんしゅう Martian Quest: The Early Brackett を出版しゅっぱんした Stephen Haffner はブラケット脚本きゃくほんを読よんだことがあるとし、最終さいしゅう的てきな映画えいがには全まったくその痕跡こんせきがないと述のべている。

このブラケット脚本きゃくほんは出版しゅっぱんされたことがないが、2箇所かしょで閲覧えつらん可能かのうである。1つはポーテイルズにある東ひがしニューメキシコ大学だいがくの図書館としょかんだが、貸かし出だしやコピーはできない。もう1つはルーカスフィルム内ないの書庫しょこである。

作品さくひんリスト（日本語にほんご訳やくのあるもののみ）

長編ちょうへん

• 『文明ぶんめいの仮面かめんをはぐ』（The Big Jump (1955) 、松浦まつうら康かん有ゆう訳わけ、元々もともと社しゃ、最新さいしん科学かがく小説しょうせつ全集ぜんしゅう19） 1957
• 『地球ちきゅう生うまれの銀河ぎんが人じん』（The Galactic Breed (1952) 、関口せきぐち幸男ゆきお訳わけ、ハヤカワ文庫ぶんこSF） 1971
• 『長ながい明日あした』（The Long Tomorrow (1955) 、久保田くぼた八郎はちろう訳わけ、ハヤカワSFシリーズ） 1972
• 『恐怖きょうふの火星かせい争奪そうだつ戦せん』（The Nemesis from Terra (1951)、五味ごみ寧やすし訳わけ、久保くぼ書店しょてんQTブックス） 1976
• 『リアノンの魔ま剣けん』（The Sword of Rhiannon (1953) 、那な岐大訳わけ、ハヤカワ文庫ぶんこSF） 1976
• 『非情ひじょうの裁さばき』（No Good from a Corpse (1944) 、浅倉あさくら久志ひさし訳わけ、扶桑社ふそうしゃミステリー） 2003 ※ハードボイルド

短たん編集へんしゅう

• 『赤あかい霧きりのローレライ』（青あお心しん社しゃ文庫ぶんこ） 1991
  • 「赤あかい霧きりのローレライ」（Lorelei of the Red Mist (1946)、レイ・ブラッドベリと合作がっさく、川村かわむら哲郎てつろう訳わけ、初はつ訳やくはS-Fマガジン 1967/7 No.96）
  • 「消滅しょうめつした月つき」（The Moon that Vanished (1948) 、関口せきぐち幸男ゆきお訳やく、初はつ訳やくはS-Fマガジン 1971/12 No.154）
  • 「消きえた金星きんぼし人じん」（The Vanishing Venusians (1945) 、鎌田かまた三平さんぺい訳わけ）
  • 「金星きんぼしの魔女まじょ」（Enchantress of Venus (1949) 、鎌田かまた三平さんぺい訳やく）

短編たんぺん

• 「栄光えいこうへの脱出だっしゅつ」（Retreat to the Stars (1941) 、宇野うの輝雄てるお訳わけ、S-Fマガジン 1962/12 No.37）
• 「海賊かいぞく小惑星しょうわくせい」（No Man's Land in Space (1941) 、中上なかがみ守まもる訳わけ、日本文芸社にほんぶんげいしゃ、中上なかがみ守まもる編へん『太陽たいよう破壊はかい者しゃ』） 1978
• 「シャンダコール最期さいごの日々ひび」（The Last Days of Shandakor (1952) 、野村のむら芳夫よしお訳わけ、別冊べっさつ・奇想天外きそうてんがい『SFのSF大だい全集ぜんしゅう』 1979/4 No.7 ）
• 「アステラーの死しのベール」（The Veil of Astellar (1944) 、鎌田かまた三平さんぺい訳やく、久保くぼ書店しょてんSFノベルズ13『ルーカン戦争せんそう』） 1981
• 「逝ゆきしものの湖みずうみ」（The Lake of the Gone-Forever (1949) 、小野田おのだ和子かずこ訳わけ、S-Fマガジン 1999/9X No.520）

脚本きゃくほん

• 『三みっつ数かぞえろ』（The Big Sleep） 1946
• 『リオ・ブラボー』（Rio Bravo） 1959
• 『ハタリ!』（Hatari!） 1962
• 『エル・ドラド』（El Dorado） 1966
• 『リオ・ロボ』（Rio Lobo） 1970
• 『ロング・グッドバイ』（The Long Goodbye） 1973
• 『スター・ウォーズ エピソード5/帝国ていこくの逆襲ぎゃくしゅう』（Star Wars: Episode V - The Empire Strikes Back） 1980

外部がいぶリンク

• Leigh Brackett - Internet Speculative Fiction Database（英語えいご）
• Leigh Brackett - IMDb（英語えいご）
• Moorcock, Michael (2002年ねん6月がつ13日にち). “Queen of the Martian Mysteries: An Appreciation of Leigh Brackett”. Fantastic Metropolis website. 2009年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。
• “Leigh (Douglass) Brackett (1915-1978)”. Pegasos. 2013年ねん7月がつ17日にち時点じてんのオリジナルよりアーカイブ。2009年ねん6月がつ12日にち閲覧えつらん。
• Leigh Brackett (ology) website
• Past Masters: Gats, Six-Guns and Blasters by Bud Webster at Galactic Central