リーナスの法則ほうそく

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

リーナスの法則ほうそく(リーナスのほうそく、Linus's Law)とは、おな名前なまえけられているものの、つぎ人物じんぶつらがべた、それぞれともに内容ないようことなる経験けいけんそくす。

エリック・レイモンドによるリーナスの法則ほうそく[編集へんしゅう]

レイモンドによるリーナスの法則ほうそくは、かれのエッセイならびに書籍しょせき、『伽藍がらんとバザール』("The Cathedral and the Bazaar", 1999ねん)にて主張しゅちょうしたソフトウェア開発かいはつにおける法則ほうそくである[1][2]。リーナスに敬意けいいあらわかれ名前なまえけられている。

この法則ほうそくは、「十分じゅうぶんたまがあれば、すべてのバグあらされる」("Given enough eyeballs, all bugs are shallow")、もっと格式かくしきばってうと、「十分じゅうぶんベータテスターと共同きょうどう開発かいはつしゃがいれば、ほとんどすべての問題もんだいは、すぐさまあきらかになり、すぐさま修正しゅうせいされる」("Given a large enough beta-tester and co-developer base, almost every problem will be characterized quickly and the fix will be obvious to someone.")と主張しゅちょうしている。コードのプロジェクトへのれにかんする同意どういて、コミュニティが合意ごうい形成けいせい(コンセンサス)にいたるためには、コードを複数ふくすうのプロジェクトの開発かいはつしゃ説明せつめいすることになるが、それは、ソフトウェア・レビューの単純たんじゅん形式けいしきのひとつである。この事実じじつたいし、研究けんきゅうしゃ専門せんもんはバグやセキュリティ問題もんだい発見はっけんにおけるレビュー・プロセスの効果こうかかえしめしており[3]、そしてそれはたんにテストをおこな以上いじょう効率こうりついとされる。

オープンソース敵対てきたいしゃはこの法則ほうそく批判ひはんしており、(テスターにして)開発かいはつしゃ規模きぼ効率こうりつてき作業さぎょうおこなうのに十分じゅうぶんではないと主張しゅちょうしている。たとえば、Facts and Fallacies about Software Engineering[4]という書籍しょせきにおいて、ロバート・グラス(Robert Glass)は、リーナスの法則ほうそくを、オープンソース運動うんどうにおけるマントラ(のようなお題目だいもく)であるのは間違まちがいないが、それが誤解ごかいんでいるともべている[5]かれは、かれ研究けんきゅうにより、コードを監査かんさする人間にんげん過剰かじょうなほどおお存在そんざいする場合ばあいは、おおくのバグはつぶされていくことがかったが、同時どうじに、それはこの法則ほうそくべていることを支持しじするものではない、と主張しゅちょうしている。興味深きょうみぶかいことに、クローズドソース開発かいはつかんする専門せんもんは、ソフトウェアプロジェクトの開発かいはつにおいて、厳重げんじゅうにコードの独立どくりつせい担保たんぽするよう推進すいしんしているが、これにより法則ほうそく概念がいねん暗黙あんもくのうちに支持しじしている[6][7]

リーナス・トーバルズによるリーナスの法則ほうそく[編集へんしゅう]

"The Hacker Ethic and the Spirit of the Information Age英語えいごばん"(邦題ほうだい『リナックスの革命かくめい』、2001ねん)の序文じょぶんによると、トーバルズ自身じしんはこの法則ほうそくつぎ理由りゆう説明せつめいするために採用さいようしている。ひとなにかをさせる動機どうきつねつぎのいずれかの集合しゅうごうのうちひとつに分類ぶんるいされる。すなわち、「きること」("Survival")、「社会しゃかいにおける生活せいかつ」(社会しゃかい生活せいかつ、"Social life")、そして、「享楽きょうらく娯楽ごらく」("Entertainment")である[8]。これらはマズローの欲求よっきゅう段階だんかい酷似こくじするものである。結果けっかとして、リーナスは進歩しんぽとはよりたか次元じげんたっすることであると定義ていぎしている。それすなわち、かれひと動機どうきけについて、たん生存せいぞん目的もくてきとして行動こうどうするだけではなく、社会しゃかいでの生活せいかつ目的もくてき行動こうどうすることもあり、そしてつぎに、さらにいものとして、「ただたのしいからやる」のである、とべている。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ Raymond, Eric S.. “Release Early, Release Often (はやめのリリース、しょっちゅうリリース) - The Cathedral and the Bazaar”. catb.org. 2011ねん2がつ20日はつか閲覧えつらん
  2. ^ Raymond, Eric S. (1999). The Cathedral and the Bazaar. O'Reilly Media. p. 30. ISBN 1-56592-724-9. https://books.google.co.jp/books?id=F6qgFtLwpJgC&pg=PA30&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&f=false 
  3. ^ Pfleeger, Charles P.; Pfleeger, Shari Lawrence (2003). Security in Computing, 4th Ed.. Prentice Hall英語えいごばん PTR. pp. 154–157. ISBN 0-13-239077-9. https://books.google.co.jp/books?id=O3VB-zspJo4C&pg=PA154&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&f=false 
  4. ^ 直訳ちょくやくすると「ソフトウェア・エンジニアリングにおける事実じじつ誤謬ごびゅう」。日本語にほんご翻訳ほんやくされた書籍しょせき:「ソフトウエア開発かいはつ 55の真実しんじつと10のウソ」(ISBN 978-4822281908)
  5. ^ Glass, Robert L. (2003). Facts and Fallacies of Software Engineering. Addison-Wesley英語えいごばん. p. 174. ISBN 978-0321117427. https://books.google.co.jp/books?id=3Ntz-UJzZN0C&pg=PA174&redir_esc=y&hl=ja 
  6. ^ Howard, Michael; LeBlanc, David (2003). Writing Secure Code, 2nd. Ed.. Microsoft Press. pp. 44–45, 615. ISBN 978-0735617223. https://books.google.co.jp/books?id=_7LEW8VHZk4C&redir_esc=y&hl=ja 
  7. ^ Howard, Michael; LeBlanc, David (2003). Writing Secure Code, 2nd. Ed.. Microsoft Press. pp. 726. ISBN 978-0735617223. https://books.google.co.jp/books?id=_7LEW8VHZk4C&redir_esc=y&hl=ja 
  8. ^ Himanen, Pekka; Torvalds, Linus, Castells, Manuel (2001). The Hacker Ethic. New York: Random House. p. xiv. ISBN 0-375-50566-0. https://books.google.co.jp/books?id=4SeIQZjpzCwC&pg=PT10&redir_esc=y&hl=ja#v=onepage&q&f=false 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

法則ほうそく一覧いちらん

レイモンドの「リーナスの法則ほうそく」にかんする項目こうもく
トーバルズの「リーナスの法則ほうそく」にかんする項目こうもく