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ワイヤーアクション

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

ワイヤーアクションもしくはワイヤーワークとは、俳優はいゆうスタントマンワイヤーロープられた状態じょうたい演技えんぎする、映画えいが舞台ぶたいドラマ特殊とくしゅ撮影さつえい一種いっしゅ

なお、「ワイヤーアクション」とは和製わせい英語えいご英語えいごでは「wire-fu」(ワイヤーとカンフーをわせた造語ぞうご[1]や「wire work」(ワイヤーワーク)が一般いっぱんてきである[2]香港ほんこん台湾たいわんでは「つるしこうせん」または「はがねせんつるし」、中国ちゅうごく大陸たいりくでは「つるし钢丝」または「钢丝つるし」などとばれるが、中華ちゅうかけんでは多々たたある撮影さつえい技術ぎじゅつ一種いっしゅとみなされており、統一とういつされた名称めいしょうはない。

現在げんざい金属きんぞくせいのワイヤーではなく、おもにこう強度きょうどのポリエチレン繊維せんい「テクミロン」を素材そざいとしたテックロープが使用しようされているが、アクション撮影さつえい現場げんばでは世界せかいてきに「ワイヤー」としてかよっており[3]、ここではすべて「ワイヤー」として説明せつめいする。

概要がいよう

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俳優はいゆうスタントマン身体しんたいハーネス装着そうちゃくし、カラビナなどでロープをける。そのロープをスタッフが人力じんりきで(もしくは圧縮あっしゅく空気くうき利用りようした機械きかい使つか[4]くことで、空中くうちゅうび(フライング)、回転かいてんするといったアクション・シーンの撮影さつえい可能かのうになる。

1954ねんのミュージカル『ピーターパン』のブロードウェイ公演こうえんはじめて使用しようされた。また、元祖がんそ歌舞伎かぶきの「宙乗ちゅうのり」とするせつもある。日本にっぽん映画えいがでの初出しょしゅつ特撮とくさつ著名ちょめい円谷つぶらや英二えいじ演出えんしゅつ特技とくぎ監督かんとく)をつとめた『だい冒険ぼうけん』(1965ねん)の植木うえきひとしわれるが、生身なまみ人間にんげんげなら『地球ちきゅう防衛ぼうえいぐん』(1957ねん)のミステリアンや『宇宙うちゅう大戦たいせんそう』(1959ねん)の桐野きりの洋雄ひろおがあるほか、『そらだい怪獣かいじゅうラドン』(1956ねん)では中島なかじま春雄はるおぐるみにはいったままでワイヤーアクションをえんじている。

その香港ほんこん映画えいがたけ小説しょうせつ世界せかいにおけるけいこうなどを表現ひょうげんするためにさかんに使つかわれ、発展はってんしてきた技術ぎじゅつであった。香港ほんこんのアクション俳優はいゆうアクション監督かんとくでもあるドニー・イェン著書ちょしょ『ドニー・イェン アクション・ブック』[5]によると、香港ほんこんではワイヤーにられる人間にんげんはワイヤーようハーネス身体しんたいき、状況じょうきょうおうじて背中せなかくびまたはわきしたからワイヤーにられる。人間にんげんものかせて動作どうささせる場合ばあい滑車かっしゃもちい、がわ滑車かっしゃられる人間にんげんもの)がそれぞれ力点りきてん支点してん作用さようてんにあたる「てこの原理げんり」を利用りようしている。

人間にんげん場合ばあい、ワイヤーのサイズは直径ちょっけい1.75ミリメートルから3ミリメートルをもちい(デジタル技術でじたるぎじゅつワイヤー可能かのうになってからは、金属きんぞくせいのワイヤーロープではなくテクミロン[ちゅう 1]というこう強度きょうど高性能こうせいのうのポリエチレン繊維せんい素材そざいとした、3ミリメートル以上いじょうのテックロープがおもに使用しようされている[3])、られる人間にんげん体重たいじゅうおうじて人間にんげんかずまる。かる人間にんげんをまっすぐにげるだけなら1、2人ふたり、それにアクションがともなえば最低さいていでも2人ふたりから3にん巨体きょたいられる香港ほんこんのアクション俳優はいゆうサモ・ハン・キンポー出演しゅつえんした『SPL/おおかみしずかに』では6にんかれいたという[5]

ワイヤーのみではちぢみしないため、それとしゅとのあいだにゴムをれる。演技えんぎのタイミングはほうさきで、られる人間にんげんさきうごいてしまうとワイヤーがたわんでしまい上手うま作用さようしないので、えんじるほうかれたのをかんじてからうごくのが基本きほんである。ゴムをはさあそびをつくることにより、くのがさきであっても演者えんじゃ主体しゅたいてきうごくことができて自然しぜんえる[6]

ワイヤーを使つかってできるうごきはさまざまで、基本きほんてきには左右さゆう上下じょうげ回転かいてん移動いどうツイストなな移動いどうらし、1つの方角ほうがくから瞬時しゅんじべつ方角ほうがくへの移動いどうなどが可能かのうであり、現在げんざい功夫いさおたまき(カンフー・リング)とばれるマシンの導入どうにゅう[7]やワイヤーの本数ほんすうやすことによってもっと多岐たきにわたったうごきもできる。原理げんり単純たんじゅんだがワイヤーが蜘蛛くものようにおおられることもめずらしくなく、滑車かっしゃ位置いちによってうごきがわってくるため、担当たんとう責任せきにんしゃにとっては上手うまくいかないさいつぎ滑車かっしゃ位置いち瞬時しゅんじ見極みきわめることがむずかしい[6]

よって、がわはもちろんのことその状態じょうたい複雑ふくざつうごきをするスタントマンたちにもせんもん知識ちしき訓練くんれん必要ひつようとなり、ワイヤーがからだ圧迫あっぱくするために打撲傷だぼくしょううことがおおい。セットの関係かんけいで、られる人間にんげんえない場所ばしょ操作そうさするさいはモニターをながらとなる[5]屋外おくがいでの撮影さつえいにはクレーンしゃ使用しようし、1992ねんの『ポリス・ストーリー3』でバイクにったミシェール・キング(げんミシェル・ヨー)が列車れっしゃにジャンプするシーンにもワイヤーが使つかわれ、この技術ぎじゅつ発達はったつでアクションの設計せっけいはよりダイナミックなひろがりをせることになった[8]

デジタル技術でじたるぎじゅつでワイヤーしが可能かのうになる以前いぜんはワイヤーがうつ角度かくどおおく、1ショットでれるうごきに限界げんかいがあった。そのため、必然ひつぜんてきこまかいカットりがえ、武術ぶじゅつ経験けいけんのない俳優はいゆう女優じょゆうみじか訓練くんれん期間きかんでアクション映画えいが主役しゅやくにすることができるという利点りてんんだ[9]。なお、当時とうじ使用しようしていた金属きんぞくせいのワイヤーの場合ばあい使用しようは1かい一度いちど人間にんげんりあげたものはねじれたりしてさい利用りようには危険きけんであるため、そのものるためか廃棄はいき処分しょぶんにしていた[5]現在げんざいはテックロープを使用しようしているが、強度きょうど使用しよう頻度ひんどすう不明ふめい

VFX登場とうじょうまえはワイヤーが画面がめんうつらないよう、香港ほんこんではさまざまな工夫くふうがされてきた。そのしゅたるものが照明しょうめい対策たいさくで、かさはたをワイヤーのうえにかざしてかげつくりワイヤーがえないようにしたり、マーカーで銀色ぎんいろのワイヤーをくろりライトを部分ぶぶんてき横切よこぎっても反射はんしゃしない方法ほうほう考案こうあんされた。1980年代ねんだいから2000年代ねんだいにかけ、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』や『スウォーズマン』シリーズ、『HERO』などのアクション設計せっけいがけ、「ワイヤーワークの神様かみさま」と異名いみょうをとるアクション監督かんとくチン・シウトン[10]は、ワイヤーしのなかった時代じだい照明しょうめいをうまくずらしながらて、1ショットになんほんものワイヤーを使つかったことで有名ゆうめいである。ファインダーのぞきワイヤーがえているのにづくと、シウトンはカメラレンズの一部いちぶにワックスを景色けしきをぼやかしてワイヤーをかくしたこともあるという[5]

これはながらく香港ほんこんをはじめとする中華ちゅうかけん専門せんもん技術ぎじゅつであったが、デジタル合成ごうせい発展はってんもあって1999ねんにはハリウッド映画えいがマトリックス』が香港ほんこんのアクション監督かんとくユエン・ウーピンまね成功せいこうしたことによって注目ちゅうもくあつめ、ハリウッドや世界せかい各国かっこくさかんに使つかわれるようになった。香港ほんこんおよび中華ちゅうかけん日本にっぽん現場げんばでは手引てびしき中心ちゅうしん使つかって設置せっち安全あんぜん確認かくにんをふくめ操作そうさするがわはスタントマンがおこない、中華ちゅうかけんではワイヤーワークにかんして特別とくべつにクレジットされることはない。一方いっぽう日本にっぽん映画えいがのクレジットには「ワイヤーアクションコーディネーター」といった表記ひょうきがわずかながらられる。

アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくではコンピューターで制御せいぎょされた機械きかいしきおも使つかわれており[4]、wire work coordinator(ワイヤーワーク・コーディネーター)といったクレジットをされるケースがある。操作そうさせんもんのカンパニーがうことがおお[11]、そのクルーはStunt riggerともWire riggerともばれる。ハリウッドでは技術ぎじゅつやマシンも最先端さいせんたんきわめ、近年きんねんでは2013ねんの『ゼロ・グラビティ』で多用たようされ、主演しゅえんサンドラ・ブロックがスタジオで実際じっさいうごいてあの無重力むじゅうりょく表現ひょうげんしたことが観客かんきゃくおどろかせた[12]

ワイヤーアクションの代表だいひょう作品さくひん

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脚注きゃくちゅう

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注釈ちゅうしゃく

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  1. ^ 素材そざいのテクミロンとはちょう高分子こうぶんしりょうポリエチレンからつくられたこう強度きょうど繊維せんい材料ざいりょう。ヨットのロープ、セイルクロスなど、強度きょうど耐久たいきゅうせいもとめられる製品せいひん使つかわれている。

出典しゅってん

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  1. ^ Action - Wire-Fu Movies at the Box Office”. Box Office Mojo. 2014ねん10がつ22にち閲覧えつらん
  2. ^ Stuntwomen go full throttle”. The Christian Science Monitor. 2014ねん10がつ22にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2003ねん4がつ25にち閲覧えつらん
  3. ^ a b 谷垣たにがき健治けんじ、2015ねん、「<映画えいが秘宝ひほう>激動げきどうの20ねん」、『アクション映画えいがの20ねん』(ISBN 9784800306692)、よういずみしゃ p. 274
  4. ^ a b 坂本さかもと浩一こういち「ワイヤー・ワークの方法ほうほう」『ハリウッドアクション! ジャッキー・チェンへの挑戦ちょうせん』フィルムアートしゃ、1996ねん、137 - 138ぺーじISBN 4845996642 
  5. ^ a b c d e ドニー・イェン (2005). ドニー・イェン アクション・ブック. キネマ旬報社きねまじゅんぽうしゃ. pp. 160-167. ISBN 978-4873762593 
  6. ^ a b 「HERO ヒーロー写真しゃしんしゅう」、『「HERO」アクション解析かいせき/谷垣たにがき健治けんじ』(2003ねん)、ソニー・マガジンズ pp. 103-106
  7. ^ 西遊せいゆう3D映画えいがだい天宮てんぐう」、悟空ごくうやくドニー・イェンが体操たいそう選手せんしゅもどきの回転かいてん台湾たいわんメディア”. recordchina. 2015ねん6がつ5にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2014ねん1がつ2にち閲覧えつらん
  8. ^ 谷垣たにがき健治けんじ (1998). えよ!!スタントマン. 小学しょうがくかん. pp. 18-19. ISBN 9784093851039 
  9. ^ きも英雄えいゆうほどしょうひがし”. 网易娱乐. 2014ねん10がつ22にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2003ねん4がつ30にち閲覧えつらん
  10. ^ 沈黙ちんもく最新さいしんさく! スティーヴン・セガール主演しゅえん×チン・シウトン監督かんとく”. cinema.pia.co.jp. 2014ねん10がつ22にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2014ねん10がつ22にち閲覧えつらん
  11. ^ hollywoodstuntcoordinator.com, Wire riggers”. hollywoodstuntcoordinator.com. 2015ねん9がつ30にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2015ねん9がつ30にち閲覧えつらん
  12. ^ Alfonso Cuaron On Why He's Not Happy About 'Gravitys Success, But Relieved”. Indiewire.com. 2014ねん10がつ22にち時点じてんオリジナルよりアーカイブ。2013ねん10がつ18にち閲覧えつらん

関連かんれん項目こうもく

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