滴 しずく 定 じょう の準備 じゅんび 。この写真 しゃしん には写 うつ っていないが、ビュレット はクランプ に挟 はさ まれている。指示 しじ 薬 やく としてフェノールフタレイン を用 もち いると溶液 ようえき がピンク色 ぴんくいろ になる。
中和 ちゅうわ 滴 しずく 定 じょう (ちゅうわてきてい)は濃度 のうど 未知 みち の酸 さん や塩基 えんき を濃度 のうど 既知 きち の酸 さん や塩基 えんき で中和 ちゅうわ して酸 さん や塩基 えんき の濃度 のうど を決 き める操作 そうさ (滴 しずく 定 じょう )である。酸 さん 塩基 えんき 滴 しずく 定 じょう (さんえんきてきてい、acid-base titration)ともいう。
この操作 そうさ によって未知 みち の酸 さん や塩基 えんき の溶液 ようえき の定量 ていりょう 分析 ぶんせき を行 おこな うことができる。この滴 しずく 定 じょう には酸 さん と塩基 えんき の中和 ちゅうわ 反応 はんのう を用 もち いる。pKa (酸 さん 解離 かいり 指数 しすう )やKa(酸 さん 解離 かいり 定数 ていすう )をpH のグラフから求 もと めることもできる。また、化学 かがく 物質 ぶっしつ の純度 じゅんど を決 き めるのにも用 もち いられる。
アルカリ滴 しずく 定 じょう と酸 さん 滴 しずく 定 じょう [ 編集 へんしゅう ]
アルカリ滴 しずく 定 じょう (Alkalimetry)と酸 さん 滴 しずく 定 じょう (acidimetry)は中和 ちゅうわ 反応 はんのう に基 もと づく容量 ようりょう 分析 ぶんせき の一種 いっしゅ である。 アルカリ滴 しずく 定 じょう は塩基 えんき (アルカリ)の濃度 のうど を決定 けってい するのに特 とく 化 か した分析 ぶんせき 法 ほう である。一方 いっぽう 酸 さん 滴 しずく 定 じょう は酸 さん の濃度 のうど を決定 けってい するための分析 ぶんせき 法 ほう である[1]
滴 しずく 定 じょう に必要 ひつよう な装置 そうち は以下 いか のとおり。
滴 しずく 定 てい 前 まえ に適切 てきせつ な指示 しじ 薬 やく を選 えら ぶ必要 ひつよう がある。等量 とうりょう 点 てん (英語 えいご 版 ばん ) は滴 しずく 定 じょう に用 もち いる酸 さん と塩基 えんき の種類 しゅるい によって変 か わり、等量 とうりょう 点 てん におけるpHはおおよそ 次 つぎ のようになっている。
弱酸 じゃくさん と弱 じゃく 塩基 えんき が中和 ちゅうわ 反応 はんのう する場合 ばあい 、中和 ちゅうわ 点 てん はその酸 さん と塩基 えんき の解離 かいり 定数 ていすう の大小 だいしょう による。もし両者 りょうしゃ の平衡 へいこう 定数 ていすう が同 どう 程度 ていど なら、中和 ちゅうわ 点 てん は中性 ちゅうせい (pH=7)付近 ふきん になる。しかし、中和 ちゅうわ 点 てん 付近 ふきん の色 いろ の変化 へんか が明瞭 めいりょう ではないため弱酸 じゃくさん を弱 じゃく 塩基 えんき で(あるいは弱 じゃく 塩基 えんき を弱酸 じゃくさん で)滴 しずく 定 じょう することは稀 まれ である。
指示 しじ 薬 やく の色 いろ が変 か わる点 てん を終点 しゅうてん と呼 よ ぶ。終点 しゅうてん のpH付近 ふきん を変色 へんしょく 域 いき にもつ指示 しじ 薬 やく を使 つか うのが望 のぞ ましい。
まず、ビュレットを標準 ひょうじゅん 溶液 ようえき で、ピペットを濃度 のうど 未知 みち の溶液 ようえき で共 きょう 洗 あら い し、コニカルビーカーを蒸留 じょうりゅう 水 すい や脱 だつ イオン水 すい などの純 じゅん 水 みず で洗 あら う。
次 つぎ に、一定 いってい 体積 たいせき の濃度 のうど 未知 みち の溶液 ようえき をピペットでとり、コニカルビーカーに移 うつ す。この時 とき コニカルビーカーに少量 しょうりょう の指示 しじ 薬 やく を加 くわ える。
その後 ご 、濃度 のうど 既知 きち の溶液 ようえき をコニカルビーカーに落 お としていく。この段階 だんかい までに、未知 みち の溶液 ようえき の中和 ちゅうわ に必要 ひつよう な溶液 ようえき 量 りょう を概算 がいさん しておく。コニカルビーカー内 ない の溶液 ようえき の色 いろ が変 か わった点 てん を終点 しゅうてん とし、その点 てん でのビュレットの読 よ みを記録 きろく しておく。これを1回 かい 目 め の滴 しずく 定値 ていち とする。
同 おな じ滴 しずく 定 じょう を少 すく なくとも3回 かい 行 おこな い、平均 へいきん をとって値 ね の正確 せいかく さを向上 こうじょう させる。ビュレットの読 よ みの始点 してん と終点 しゅうてん の読 よ みを記録 きろく しておく。終点 しゅうてん の値 ね から始点 してん の値 ね を引 ひ いて滴 しずく 定 じょう に要 よう した溶液 ようえき の体積 たいせき を求 もと める。終点 しゅうてん はコニカルビーカーの液 えき の色 いろ が変 か わり、元 もと に戻 もど らなくなった点 てん とする。
指示 しじ 薬 やく は、強酸 きょうさん と強 つよし 塩基 えんき の中和 ちゅうわ 滴 しずく 定 じょう ではブロムチモールブルー 、弱酸 じゃくさん と強 つよし 塩基 えんき の中和 ちゅうわ 滴 しずく 定 じょう ではフェノールフタレイン 、強酸 きょうさん と弱 じゃく 塩基 えんき の中和 ちゅうわ 滴 しずく 定 じょう ではメチルオレンジ を用 もち いる。ただし、塩基 えんき のpHが13.5より大 おお きく、酸 さん のpHが5.5より大 おお きい場合 ばあい アリザリンイエロー が指示 しじ 薬 やく として用 もち いられる。一方 いっぽう 、酸 さん のpHが0.5より小 ちい さく、塩基 えんき のpHが8.5より小 ちい さい場合 ばあい はチモールブルー が用 もち いられる。
弱酸 じゃくさん の滴 しずく 定 じょう [ 編集 へんしゅう ]
弱酸 じゃくさん を強 つよ 塩基 えんき で滴 しずく 定 じょう した際 さい のpHのプロット
弱酸 じゃくさん の溶液 ようえき を強 つよ 塩基 えんき で滴 しずく 定 じょう した際 さい のpH変化 へんか は以下 いか の4つに分類 ぶんるい される[2]
最初 さいしょ のpH
中和 ちゅうわ 点 てん までのpH
中和 ちゅうわ 点 てん でのpH
中和 ちゅうわ 点 てん 以降 いこう でのpH
下 した の式 しき は弱酸 じゃくさん の濃度 のうど が
K
a
{\displaystyle K_{a}}
の1000倍 ばい 以上 いじょう ある場合 ばあい にのみ成立 せいりつ する。もしそうでない場合 ばあい は、近似 きんじ を用 もち いずより正確 せいかく に計算 けいさん を行 おこな うRICEチャート (英語 えいご 版 ばん ) が必要 ひつよう となる。以下 いか はRICEチャートの簡略 かんりゃく 化 か である。
1. 最初 さいしょ のpH は弱酸 じゃくさん の溶液 ようえき の場合 ばあい だいたい以下 いか の式 しき で表 あらわ される。
p
H
=
−
log
K
a
F
{\displaystyle \mathrm {pH} =-\log {\sqrt {K_{a}F}}}
K
a
{\displaystyle K_{a}}
は酸 さん 解離 かいり 定数 ていすう 、
F
{\displaystyle F}
は酸 さん 溶液 ようえき の濃度 のうど である。
2. 中和 ちゅうわ 点 てん までのpH は弱酸 じゃくさん と共役 きょうやく 塩基 えんき (英語 えいご 版 ばん )の生成 せいせい 量 りょう による。下 した の式 しき に従 したが って計算 けいさん を行 おこな うことで任意 にんい 点 てん でのpHを計算 けいさん できる(以下 いか は ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式 しき の変形 へんけい である)
pH
=
p
K
a
+
log
(
n
OH
−
added
n
HA
initial
−
n
OH
−
added
)
{\displaystyle {\ce {pH}}={\ce {p}}K_{a}+\log({\frac {n_{\ce {OH^{-}\ added}}}{n_{\ce {HA\ initial}}-n_{\ce {OH^{-}\ added}}}})}
ただし
p
K
a
{\displaystyle \mathrm {p} K_{a}}
は弱酸 じゃくさん の酸 さん 解離 かいり 定数 ていすう の対数 たいすう をとって負 まけ の記号 きごう をつけたもの(酸 さん 解離 かいり 指数 しすう )
n
O
H
−
{\displaystyle n_{OH^{-}}}
は溶液 ようえき に加 くわ えられた強 つよし 塩基 えんき のモル数 すう
n
H
A
{\displaystyle n_{HA}}
は滴 しずく 定 てい 前 まえ にあった弱酸 じゃくさん のモル数 すう
である。
対数 たいすう の真 ま 数 すう 部 ぶ の、分子 ぶんし と分母 ぶんぼ が等 ひと しい場合 ばあい (
n
OH
−
added
=
n
HA
initial
−
n
OH
−
added
{\displaystyle {n_{\ce {OH^{-}\ added}}}={n_{\ce {HA\ initial}}-{n_{\ce {OH^{-}\ added}}}}}
)、真 しん 数 すう は1に、対数 たいすう は0になる。このときのpHはpKa と等 ひと しくなり、中和 ちゅうわ 点 てん までの半分 はんぶん
塩基 えんき を滴 しずく 定 じょう 液 えき に用 もち いたときのpH変化 へんか のアニメーション
3. 中和 ちゅうわ 点 てん では 、弱酸 じゃくさん は完全 かんぜん に中和 ちゅうわ され、その共役 きょうやく 塩基 えんき に変化 へんか している。pHは7より大 おお きく、以下 いか の式 しき より求 もと められる。
p
H
+
p
O
H
=
14
{\displaystyle \mathrm {pH+pOH=14} }
K
a
K
b
=
10
−
14
{\displaystyle K_{a}K_{b}=10^{-14}}
中和 ちゅうわ 点 てん において
C
a
V
a
=
C
b
V
b
{\displaystyle C_{a}V_{a}=C_{b}V_{b}}
上 うえ の3つの関係 かんけい を用 もち いると、中和 ちゅうわ 点 てん でのpHを求 もと める式 しき は次 つぎ のようになる。
p
H
=
14
+
log
C
a
C
b
K
w
(
C
a
+
C
b
)
K
a
{\displaystyle \mathrm {pH} =14+\log {\sqrt {\frac {C_{a}C_{b}K_{w}}{(C_{a}+C_{b})K_{a}}}}}
ただし
C
a
{\displaystyle C_{a}}
は酸 さん の濃度 のうど 、
C
b
{\displaystyle C_{b}}
は塩基 えんき の濃度 のうど である。
また
K
w
{\displaystyle K_{w}}
は水 みず の電離 でんり 定数 ていすう 、
K
a
>
{\displaystyle K_{a}>}
は酸 さん 解離 かいり 定数 ていすう である。
酸 さん が塩基 えんき によって中和 ちゅうわ された際 さい のpHは酸 さん と塩基 えんき の強 つよ さに依存 いぞん する。酸 さん と塩基 えんき の強 つよ さが同 おな じ場合 ばあい は中和 ちゅうわ 点 てん のpHは7になる。
4. 中和 ちゅうわ 点 てん 以降 いこう では 溶液 ようえき には2種類 しゅるい の塩基 えんき が含 ふく まれている。酸 さん の中和 ちゅうわ によって生 しょう じた弱酸 じゃくさん の共役 きょうやく 塩基 えんき と過剰 かじょう に滴下 てきか された強 つよし 塩基 えんき である。しかし、滴 しずく 定 じょう 液 えき は中和 ちゅうわ によって生 しょう じた共役 きょうやく 塩基 えんき より強 つよ い塩基 えんき であるから、溶液 ようえき のpHは強 つよ 塩基 えんき によって決 き まる。従 したが って、溶液 ようえき のpHは下 した 式 しき によって求 もと められる。
p
H
=
14
+
log
C
b
V
b
−
C
a
V
a
(
V
a
+
V
b
)
{\displaystyle \mathrm {pH} =14+\log {\frac {C_{b}V_{b}-C_{a}V_{a}}{(V_{a}+V_{b})}}}
以上 いじょう のpH変化 へんか は正確 せいかく に一 ひと つの式 しき で表 あらわ すことができる[3] 。
ϕ
=
C
b
V
b
C
a
V
a
=
α あるふぁ
A
−
−
[
H
+
]
−
[
OH
−
]
C
a
1
+
[
H
+
]
−
[
OH
−
]
C
b
{\displaystyle \phi ={\frac {C_{b}V_{b}}{C_{a}V_{a}}}={\frac {\alpha _{{\ce {A^-}}}-{\frac {{\ce {[H^+] - [OH^-]}}}{C_{a}}}}{1+{\frac {{\ce {[H^+] - [OH^-]}}}{C_{b}}}}}}
α あるふぁ
A
−
=
K
a
[
H
+
]
+
K
a
{\displaystyle \alpha _{A^{-}}={\frac {K_{a}}{[{\ce {H}}^{+}]+K_{a}}}}
ϕ
{\displaystyle \phi }
は滴 しずく 定 じょう の進度 しんど (中和 ちゅうわ 点 てん より手前 てまえ ではφ ふぁい < 1、中和 ちゅうわ 点 てん ではφ ふぁい = 1、中和 ちゅうわ 点 てん 以降 いこう ではφ ふぁい > 1である)
C
a
,
C
b
{\displaystyle C_{a},C_{b}}
は酸 さん と塩基 えんき の濃度 のうど
V
a
,
V
b
{\displaystyle V_{a},V_{b}}
は酸 さん 溶液 ようえき と塩基 えんき 溶液 ようえき の体積 たいせき
α あるふぁ
A
−
{\displaystyle \alpha _{{\ce {A^-}}}}
は電離 でんり した弱酸 じゃくさん の割合 わりあい
K
a
{\displaystyle K_{a}}
は酸 さん の電離 でんり 定数 ていすう
[
H
+
]
,
[
OH
−
]
{\displaystyle {\ce {[H^+], [OH^-]}}}
はH+ およびOH– の濃度 のうど
この式 しき は少々 しょうしょう 複雑 ふくざつ ではあるが、中和 ちゅうわ 滴 しずく 定 じょう でのpH変化 へんか を一 ひと つの式 しき で表 あらわ している。
滴 しずく 定 てい 溶液 ようえき の色 いろ [ 編集 へんしゅう ]
終点 しゅうてん 前 まえ のメチルオレンジ
終点 しゅうてん 以降 いこう でのメチルオレンジ
滴 しずく 定 てい プロセスにおけるpHは純粋 じゅんすい な酸 さん と純粋 じゅんすい な塩基 えんき における値 ね である。プロトンを1個 いっこ しか放出 ほうしゅつ しない酸 さん と塩基 えんき の中和 ちゅうわ 反応 はんのう については比較的 ひかくてき pHが計算 けいさん しやすい。水酸化物 すいさんかぶつ イオンや水素 すいそ イオンを複数個 ふくすうこ 放出 ほうしゅつ できる酸 さん や塩基 えんき の場合 ばあい 、計算 けいさん は複雑 ふくざつ になる。平衡 へいこう グラフ(equiligraph)[4] などの理論 りろん が[5] が複数 ふくすう の平衡 へいこう の組 く み合 あ わせを説明 せつめい するために用 もち いられてきた。これらは応用 おうよう しやすいが、利用 りよう されることは少 すく ない。