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つよ塩基えんき

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つよ塩基えんき(きょうえんき、strong base)とは、塩基えんき解離かいり定数ていすうおおきい塩基えんきし、狭義きょうぎには水溶液すいようえきなかにおいて電離でんりが1にちか水酸化物すいさんかぶつイオン定量ていりょうてき生成せいせいし、塩基えんき解離かいり定数ていすうがpKb < 0 (Kb > 1 ) 程度ていどのものをいう。水溶すいようせいでかつ水溶液すいようえきちゅうにおいてつよし塩基えんきであるものはとくつよアルカリ(きょうアルカリ、strong alkali)ともばれる。このようなものはタンパク質たんぱくしつ加水かすい分解ぶんかいする性質せいしつつよく、皮膚ひふなどをつよ腐食ふしょくし、はいると失明しつめいするおそれもある。

共役きょうやく塩基えんきとしてのつよ塩基えんき[編集へんしゅう]

水溶液すいようえきちゅうにおいてさんHAがプロトンを放出ほうしゅつした共役きょうやく塩基えんきA塩基えんき解離かいり定数ていすうさん解離かいり定数ていすう以下いか関係かんけいにあり、よわさんであるほどその共役きょうやく塩基えんきつよ塩基えんきとなる[1][2]

たとえば非常ひじょうよわさんであるメタノールCH3OH(pKa=16)の共役きょうやく塩基えんきであるメトキシドイオンCH3Oつよ塩基えんきである。

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さらに通常つうじょうさんとは做されないほどいちじるしい弱酸じゃくさんであるアンモニアNH3pKa=35)、水素すいそH2pKa=35)、および水酸化物すいさんかぶつイオンOHpKa>36)の、それぞれの共役きょうやく塩基えんきであるアミドイオンNH2(pKb=−21)、水素すいそ化物ばけものイオンH(pKb=−21)、および酸化さんかぶつイオンO2−(pKb<−22)などはより強力きょうりょく塩基えんきである。

アルカンなど炭化たんか水素すいそはさらにいちじるしい弱酸じゃくさんであり、メタンCH4ではpKa=58程度ていど予測よそくされているため[3]、CH3などアルキルアニオンはよりいちじるしいつよ塩基えんきとなる。これはかげイオンのいち箇所かしょ共有きょうゆう電子でんしたい電荷でんか集中しゅうちゅうするためである。ただし、これらのよういちじるしいつよ塩基えんきであるかげイオンは、水溶液すいようえきちゅうでははげしく加水かすい分解ぶんかい定量ていりょうてき水酸化物すいさんかぶつイオンに変化へんかするため、その塩基えんきせい発揮はっきさせるには充分じゅうぶん脱水だっすいした非水ひすい溶媒ようばいもちいる必要ひつようがある。

水溶すいようなかだちちゅうにおけるつよし塩基えんき[編集へんしゅう]

水溶液すいようえきちゅうにおけるさん塩基えんき平衡へいこう概念がいねん水溶すいようなかだちちゅうにおいても適用てきようされ、塩基えんきBがプロトンせい溶媒ようばいHSちゅうにおいて以下いか平衡へいこういちじるしく右辺うへんかたより、溶媒ようばいからプロトンをかれたライエイトイオン/リエイトイオン(lyate, S)を定量ていりょうてき生成せいせいする場合ばあい塩基えんきBは溶媒ようばいHSちゅうにおいてつよし塩基えんきであると表現ひょうげんされる[2]

このようなさん塩基えんき平衡へいこう溶媒ようばいのプロトン解離かいりせいおよび誘電ゆうでんりつなどによりまる。たとえば水溶液すいようえきちゅうではじゃく塩基えんきであるアンモニアはフッ水素すいそなかではつよ塩基えんきとしてはたらく。みず分子ぶんしさえフッ水素すいそちゅうではかなりつよ塩基えんきである[4]。また、ライエイトイオンであるフッ化物ばけものイオンふくフッナトリウムもフッ水素すいそちゅうではつよ塩基えんきとしてはたらく。

水溶液すいようえきちゅうにおいてつよし塩基えんき水平すいへい効果こうかにより、塩基えんきせい強度きょうどはライエイトイオンである水酸化物すいさんかぶつイオンの強度きょうど制約せいやくされることになるが、メタノールちゅうではメトキシドイオンCH3OふくナトリウムメトキシドCH3ONa溶液ようえき液体えきたいアンモニアちゅうではアミドイオンNH2ふくナトリウムアミドNaNH2溶液ようえきと、とくにプロトン供与きょうよせいひく溶媒ようばいではさらにつよ塩基えんきせい強度きょうど実現じつげんすることが可能かのうとなる。

水溶液すいようえきちゅうにおけるつよし塩基えんき種類しゅるい[編集へんしゅう]

水溶液すいようえきちゅうにおいてもっといちじるしいつよ塩基えんきは、アルカリ金属きんぞくおよびテトラアルキルアンモニウム水酸化物すいさんかぶつである。

粒状りゅうじょう水酸化すいさんかナトリウム

これらにつよ塩基えんきとしてはアルカリるい金属きんぞくなどの水酸化物すいさんかぶつ、および分子ぶんしせいのものとしてプロトンされたイオンが共鳴きょうめい安定あんていされるグアニジンなどがある。

金属きんぞく水酸化物すいさんかぶつ塩基えんき強度きょうどは、金属きんぞくイオンの電荷でんかちいさく、イオン半径はんけいおおきいほど水酸化物すいさんかぶつイオンとの静電気せいでんきりょくよわくなり、つよ塩基えんきとなりすいたいする溶解ようかいおよび溶解ようかいせきおおきくなる。また塩基えんき強度きょうど金属きんぞく電気でんき陰性いんせいちいさいほどイオン結合けつごうせいつよくなりおおきくなる。 したがって、金属きんぞくアクアイオンさん解離かいり定数ていすうpKa電荷でんかe、イオン半径はんけいrとしてe2/rとほぼ直線ちょくせん関係かんけいにあり、金属きんぞくアクアイオンのpKaおおきく加水かすい分解ぶんかいしにくいものほど、その金属きんぞく水酸化物すいさんかぶつつよ塩基えんきであることになる。

また水酸化物すいさんかぶつおよび酸化さんかぶつをアンモニアすい溶解ようかいしてられるアンミン錯体さくたい水酸化物すいさんかぶつなどもつよ塩基えんきである。

さらにアルキルスルホニウムおよびアルキル(アリールヨードニウムなどの水酸化物すいさんかぶつつよ塩基えんきである。

  • 水酸化すいさんかトリメチルスルホニウム ()
  • 水酸化すいさんかジフェニルヨードニウム ()

ちょう塩基えんき[編集へんしゅう]

希薄きはく水溶液すいようえきちゅうにおける塩基えんきせい水平すいへい効果こうかにより水酸化物すいさんかぶつイオンの塩基えんき強度きょうど制限せいげんされるが、水溶すいようなかだちちゅうではさらにプロトンをちからつよつよ塩基えんきせい媒体ばいたい実現じつげん可能かのうである。このようなつよ塩基えんきせい媒体ばいたいちょう塩基えんき(ちょうえんき、superbase)もしくはちょうつよし塩基えんき(ちょうきょうえんき)とぶ。ただし現在げんざいのところちょう塩基えんき明確めいかく定義ていぎはない[5]一方いっぽう酸度さんど関数かんすう H > 26 のものをちょう塩基えんきとする提案ていあんもあり、これはちょうさん定義ていぎがほぼH0 > −12 と中性ちゅうせい H 0 = 7 の 1019 ばい酸性さんせいつよいことに対応たいおうし、1019 ばい以上いじょう塩基えんきせいつよいものをちょう塩基えんきぶというものである[5]

ちょう塩基えんき塩基えんきせい強度きょうどは、媒体ばいたいちゅう指示しじやくとして微量びりょう添加てんかされた弱酸じゃくさんHAのプロトン解離かいり程度ていどによるハメットの酸度さんど関数かんすうH_によりあらわされる。ここで 水素すいそイオンのかつりょう および 指示しじやくかつりょう係数けいすうあらわす。

この H数値すうちおおきいほど媒体ばいたい塩基えんきせいつよく、このなかではよりよわさんでもプロトン解離かいりこすことになる。

無機むき固体こたいちょう塩基えんき[編集へんしゅう]

固体こたいちょう塩基えんきとしては酸化さんかカルシウム CaO などがあり、これは H > 26.5 であり酸化さんかぶつイオンO2−塩基えんきてんとしてはたらく。また、酸化さんかマグネシウム MgO に金属きんぞくナトリウム添加てんかした固体こたいはさらにつよ塩基えんきせい発揮はっきし、H > 35 にもおよ[5]

アルコキシド・有機ゆうき金属きんぞくるい[編集へんしゅう]

溶液ようえきとしてはアルコキシドアルコール溶液ようえきおよび有機ゆうき溶媒ようばいアルキルリチウムなどを溶解ようかいしたものはプロトンを作用さようつよく、有機ゆうき合成ごうせいにおいてつよし塩基えんきとしてもちいられる[5]グリニャール試薬しやくもアルキルアニオンを発生はっせいさせるためちょう塩基えんき一種いっしゅ做される。

また、おな塩基えんき溶液ようえきであってもイオンかげイオンとも溶媒ようばいしやすくイオンを安定あんていさせるようなプロトンせい溶媒ようばいよりも、おもイオンのみに溶媒ようばい塩基えんきであるかげイオンにたいしてははだか状態じょうたいたもち、塩基えんきせい十分じゅうぶん発揮はっきさせるようなプロトンせい溶媒ようばい溶液ようえきほうがよりつよ塩基えんきせいとなる[5]たとえば 0.01 mol · dm−3 ナトリウムエトキシド C2H5ONa のエタノール溶液ようえきH = 13.99 であるが、どう濃度のうどのナトリウムエトキシドのエタノール (5 mol%) + ジメチルスルホキシド (95 mol%) 混合こんごう溶媒ようばい溶液ようえきでは H = 20.68 である[6]

有機ゆうきちょう塩基えんき[編集へんしゅう]

プロトン付加ふかしたイオンが共鳴きょうめい安定あんていされ、かつもとめかくせいひくジアザビシクロウンデセンおよびジアザビシクロノネンなども有機ゆうき合成ごうせいにおいてちょう塩基えんきとして有用ゆうようである。85 % エチレンジアミン水溶液すいようえきH = 19.0 であり、90 % ヒドラジン水溶液すいようえきH = 19、またじゅんエタノールアミンH = 15.35 である[4]有機ゆうき塩基えんきとしてグアニジンよりもさらに強力きょうりょくリン原子げんしをプロトン受容じゅようたいとしたフォスファゼン塩基えんきはフォスファゼンユニット N3P=N のかずが2 – 5 とおおくなるほど塩基えんきせい飛躍ひやくてき増大ぞうだいし、アセトニトリルなかにおける共役きょうやくさん HB+pKa はユニットが 1 のもので 27 程度ていど、5 のものでは pKa > 50 にもたっするものがある。またおなじくリン原子げんしをプロトン受容じゅようたいとする同様どうよう強力きょうりょく塩基えんきとしてフットボールかたプロアザフォスファトラン塩基えんき P(RNCH2CH2)3N がある。

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  • F.A. コットン, G. ウィルキンソン(ちょ)、 中原なかはら まさるげんわけ)『コットン・ウィルキンソン無機むき化学かがく培風館ばいふうかん、1987ねん 
    • F. Albert Cotton and Geoffrey Wilkinson (1980). Advanced Inorganic Chemistry : A Comprehensive Text (Fourth ed.). Interscience 
  • 田中たなか元治もとはるさん塩基えんきはなぼう基礎きそ化学かがく選書せんしょ 8〉、1971ねん 
  • G. Schwarzenbach (1936). Z. physik. Chem. 176 A (133). 
  • シャロー ちょ藤永ふじなが太一郎たいちろう佐藤さとうあきらけん やく溶液ようえきない化学かがく反応はんのう平衡へいこう丸善まるぜん、1975ねん 
  • 田部たなべ浩三こうぞう野依のより良治よしはるちょう強酸きょうさんちょうつよし塩基えんき講談社こうだんしゃ、1980ねん 
  • 日本にっぽん学会がっかい へん化学かがく便覧びんらん 基礎きそへん II』(改訂かいてい 4)丸善まるぜん、1993ねん 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]