水酸化 すいさんか バリウム (すいさんかバリウム、Barium hydroxide)は塩基 えんき 性 せい の無機 むき 化合 かごう 物 ぶつ で、バリウム の水酸化物 すいさんかぶつ であり化学 かがく 式 しき Ba(OH)2 で表 あらわ される。バリウムイオンと水酸化物 すいさんかぶつ イオン よりなるイオン結晶 けっしょう であり、粒状 りゅうじょう または粉末 ふんまつ 状 じょう の外観 がいかん を持 も つ。最 もっと も一般 いっぱん 的 てき な形 かたち として1水 みず 和物 あえもの が市販 しはん されている。一般 いっぱん の水溶 すいよう 性 せい バリウム化合 かごう 物 ぶつ と同様 どうよう に毒性 どくせい が強 つよ く劇 げき 物 ぶつ に指定 してい されている。
バリタ (baryta) とも呼 よ ばれ、飽和 ほうわ 水溶液 すいようえき (バリタ水 すい )は水酸化 すいさんか カルシウム同様 どうよう に二酸化炭素 にさんかたんそ を吹 ふ き込 こ むと炭酸 たんさん バリウム が析出 せきしゅつ し、白 しろ く濁 にご ることで知 し られる。
酸化 さんか バリウム (BaO) を水 みず に溶解 ようかい させることによって生成 せいせい する。再 さい 結晶 けっしょう すると8水 みず 和物 あえもの が得 え られ、これを空気 くうき 中 ちゅう で加熱 かねつ すると1水 みず 和物 あえもの となる。減圧 げんあつ 下 か で100℃に加熱 かねつ すると無水 むすい 物 ぶつ が得 え られる[1] 。
ただしこの水 みず 和 わ 反応 はんのう は生石灰 せいせっかい の消 しょう 和 わ よりも激 はげ しく危険 きけん を伴 ともな う。
BaO
+
H
2
O
⟶
Ba
(
OH
)
2
{\displaystyle {\ce {BaO + H2O -> Ba(OH)2}}}
,
Δ でるた
H
∘
=
−
105.4
kJ mol
−
1
{\displaystyle \Delta H^{\circ }=-105.4{\mbox{kJ mol}}^{-1}}
化学 かがく 的 てき 性質 せいしつ [ 編集 へんしゅう ]
水酸化 すいさんか カルシウムより脱水 だっすい に対 たい し安定 あんてい であり無 む 水物 みずもの は408℃で熔融 ようゆう するが、さらに加熱 かねつ すると脱水 だっすい が始 はじ まり998℃で水蒸気 すいじょうき の解離 かいり 圧 あつ が1気圧 きあつ に達 たっ する。
Ba
(
OH
)
2
→
Δ でるた
BaO
+
H
2
O
{\displaystyle {\ce {Ba(OH)2 \ ->[\Delta] \ {BaO}+ H2O}}}
無 む 水物 みずもの の水 みず に対 たい する溶解 ようかい 熱 ねつ はかなり発熱 はつねつ 的 てき である[2] 。
Ba
(
OH
)
2
(
s
)
↽
−
−
⇀
Ba
2
+
(
aq
)
+
2
OH
−
(
aq
)
{\displaystyle {\ce {Ba(OH)2(s)\ <=>\ {Ba^{2+}(aq)}+2OH^{-}(aq)}}}
,
Δ でるた
H
∘
=
−
52.93
kJ mol
−
1
{\displaystyle \Delta H^{\circ }=-52.93{\mbox{kJ mol}}^{-1}}
しかし、78℃以下 いか において水溶液 すいようえき から析出 せきしゅつ する固 かた 相 しょう は八 はち 水 みず 和物 あえもの であり、八 はち 水 みず 和物 あえもの の溶解 ようかい 熱 ねつ は著 いちじる しく吸熱的 てき であるため、溶解 ようかい 度 ど は温度 おんど の上昇 じょうしょう と伴 とも に著 いちじる しく増大 ぞうだい する。
Ba
(
OH
)
2
⋅
8
H
2
O
(
s
)
↽
−
−
⇀
Ba
2
+
(
aq
)
+
2
OH
−
(
aq
)
+
8
H
2
O
(
l
)
{\displaystyle {\ce {Ba(OH)2\cdot 8H2O(s)\ <=>\ {Ba^{2+}(aq)}+{2OH^{-}(aq)}+8H2O(l)}}}
,
Δ でるた
H
∘
=
57.93
kJ mol
−
1
{\displaystyle \Delta H^{\circ }=57.93{\mbox{kJ mol}}^{-1}}
0.05mol/dm3 (0.1N )の水溶液 すいようえき の電離 でんり 度 ど は約 やく 0.8であり強 つよ 塩基 えんき として分類 ぶんるい され、水酸化 すいさんか カルシウムよりも溶解 ようかい 度 ど は高 たか く塩基 えんき としての作用 さよう も強 つよ い。
水酸化 すいさんか バリウムを酸 さん で中和 ちゅうわ したものであるバリウム塩 しお 水溶液 すいようえき の加水 かすい 分解 ぶんかい はほとんど無視 むし し得 え る。水 みず 和 わ バリウムイオンの酸 さん 解離 かいり 定数 ていすう (pK a )は以下 いか の通 とお りである。
Ba
2
+
(
aq
)
+
H
2
O
(
l
)
↽
−
−
⇀
H
+
(
aq
)
+
BaOH
+
(
aq
)
{\displaystyle {\ce {{Ba^{2+}(aq)}+H2O(l)\ <=>\ {H^{+}(aq)}+BaOH^{+}(aq)}}}
,
p
K
a
=
13.4
{\displaystyle {\mbox{p}}K_{a}=13.4\,}
従 したが って水酸化 すいさんか バリウムの第 だい 二 に 段階 だんかい 塩基 えんき 解離 かいり 定数 ていすう は以下 いか のようになる。
BaOH
+
(
aq
)
↽
−
−
⇀
Ba
2
+
(
aq
)
+
OH
−
(
aq
)
{\displaystyle {\ce {{BaOH^{+}(aq)}\ <=>\ {Ba^{2+}(aq)}+OH^{-}(aq)}}}
,
p
K
b
2
=
0.6
{\displaystyle {\mbox{p}}K_{b2}=0.6\,}
分析 ぶんせき 化学 かがく において弱酸 じゃくさん 、特 とく に有機 ゆうき 酸 さん の滴 しずく 定 じょう に用 もち いられる。水酸化 すいさんか バリウムの水溶液 すいようえき は透明 とうめい であれば炭酸 たんさん 塩 しお を含 ふく まないことを示 しめ すが、これは水酸化 すいさんか ナトリウム や水酸化 すいさんか カリウム には見 み られない特徴 とくちょう であり、炭酸 たんさん バリウム が水 みず に不溶 ふよう なためである。この性質 せいしつ を利用 りよう すると、アルカリ性 あるかりせい で変色 へんしょく するフェノールフタレイン やチモールフタレイン を指示 しじ 薬 やく として使 つか う際 さい に、弱 じゃく 塩基 えんき である炭酸 たんさん イオンが存在 そんざい しても終点 しゅうてん 誤差 ごさ を出 だ すことなく滴 しずく 定 じょう を行 おこな うことができる[3] 。
有機 ゆうき 合成 ごうせい においては強 つよ 塩基 えんき としてエステル[4] やニトリル[5] [6] [7] の加水 かすい 分解 ぶんかい に用 もち いられる。
酸性 さんせい の物質 ぶっしつ をこぼした際 さい に、これを中和 ちゅうわ して危険 きけん 性 せい を減 へ らす目的 もくてき にも使 つか われる。
ウンデカンカルボン酸 さん ジメチルエステルのエステル基 もと のうち片方 かたがた だけを加水 かすい 分解 ぶんかい する反応 はんのう に用 もち いられている[8] 。
また、シクロペンタノン [9] 、ジアセトンアルコール (4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン)[10] 、D -グロン酸 さん -γ がんま -ラクトン[11] の合成 ごうせい にも用 もち いられる。
他 た の強 つよ 塩基 えんき や水溶 すいよう 性 せい のバリウム化合 かごう 物 ぶつ と同様 どうよう の注意 ちゅうい を要 よう する。腐食 ふしょく 性 せい があり、有毒 ゆうどく である。
日本 にっぽん では毒物 どくぶつ 及 およ び劇 げき 物 ぶつ 取締 とりしまり 法 ほう および毒物 どくぶつ 及 およ び劇 げき 物 ぶつ 指定 してい 令 れい によりバリウム化合 かごう 物 ぶつ として劇 げき 物 ぶつ に指定 してい されている。
他 た に、消防 しょうぼう 法 ほう 、労働 ろうどう 安全 あんぜん 衛生 えいせい 法 ほう 、大気 たいき 汚染 おせん 防止 ぼうし 法 ほう 、船舶 せんぱく 安全 あんぜん 法 ほう 、航空 こうくう 法 ほう 、PRTR法 ほう にも規定 きてい がある。
参考 さんこう 項目 こうもく
^ (1960). Gmelins Handbuch der anorganischen Chemie , 8. Aufl.; Verlag Chemie: Weinheim, p. 289.
^ D.D. Wagman, W.H. Evans, V.B. Parker, R.H. Schumm, I. Halow, S.M. Bailey, K.L. Churney, R.I. Nuttal, K.L. Churney and R.I. Nuttal, The NBS tables of chemical thermodynamics properties, J. Phys. Chem . Ref. Data 11 Suppl. 2 (1982).
^ Mendham, J.; Denney, R. C.; Barnes, J. D.; Thomas, M. J. K.; Denney, R. C.; Thomas, M. J. K. Vogel's Quantitative Chemical Analysis , 6th ed.; Prentice Hall: New York. ISBN 0-582-22628-7 .
^ Meyer, K.; Bloch, H. S. (1945). "Naphthoresorcinol" . Organic Syntheses (英語 えいご ). 25 : 73. ; Collective Volume , vol. 3, p. 637
^ Brown, G. B. (1946). "Methylsuccinic acid" . Organic Syntheses (英語 えいご ). 26 : 54. ; Collective Volume , vol. 3, p. 615
^ Ford, J. H. (1947). "β べーた -Alanine" . Organic Syntheses (英語 えいご ). 27 : 1. ; Collective Volume , vol. 3, p. 34
^ Anslow, W. K.; King, H.; Orten, J. M.; Hill, R. M. (1925). "Glycine" . Organic Syntheses (英語 えいご ). 4 : 31. ; Collective Volume , vol. 1, p. 298
^ Durham, L. J.; McLeod, D. J.; Cason, J. (1958). "Methyl hydrogen hendecanedioate" . Organic Syntheses (英語 えいご ). 38 : 55. ; Collective Volume , vol. 4, p. 635
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^ Conant, J. B.; Tuttle, N. (1921). "Diacetone alcohol" . Organic Syntheses (英語 えいご ). 1 : 45. ; Collective Volume , vol. 1, p. 199
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参考 さんこう 項目 こうもく