亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りん

北きたアルプスの亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りん

亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りん（あこうざんたいしんようじゅりん）は北半球きたはんきゅうの中なか緯度いど山岳さんがく地帯ちたいに成立せいりつする森林しんりんの一種いっしゅである。その名なのとおり、針葉樹しんようじゅを主体しゅたいとする針葉樹しんようじゅ林りんである。

日本にっぽんの亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんは、暖あたたかさの指数しすうで15から45の範囲はんい内ないで成立せいりつするとされている。高度こうどは、西日本にしにほんから中部ちゅうぶ地方ちほうでおよそ海抜かいばつ1500mから2500m、北海道ほっかいどうでは下限かげんは一般いっぱんには高度こうど数すう百ひゃくメートルから、道東どうとう・道北みちきたの一部いちぶでは海岸かいがん付近ふきんから、上限じょうげんは海抜かいばつ1000mから1500mに達たっする。その総そう面積めんせきはおよそ16000平方へいほうキロ、日本にっぽんの総そう面積めんせきの約やく4.4%である。大半たいはんは北海道ほっかいどう（11000平方へいほうキロ以上いじょう）に集中しゅうちゅうし、中部ちゅうぶ山岳さんがく地帯ちたい（約やく2900平方へいほうキロ）がそれに次つぐ。西日本にしにほんでは、四国しこくの石鎚山いしづちさん・剣山けんざん周辺しゅうへんと紀伊きい半島はんとうの大峰たいほう・大台おおだいヶ原げん一帯いったいに分布ぶんぷするが、その面積めんせきはきわめて小ちいさく、関東かんとうや東北とうほく地方ちほうの亜あ高山こうざん帯たい林りんもそれほど規模きぼは大おおきくない。

高木たかぎの樹き種しゅは、針葉樹しんようじゅは北海道ほっかいどうではモミ属ぞくのトドマツとトウヒ属ぞくのエゾマツとアカエゾマツ、本州ほんしゅうではモミ属ぞくのシラビソとオオシラビソ、トウヒ属ぞくのトウヒほかと、コメツガ、カラマツが中心ちゅうしんである。ただし、これらの種類しゅるいがすべて出でそろうのは中部ちゅうぶ地方ちほうから東北とうほく南部なんぶにかけてに限かぎられ、四国しこく・紀伊きい半島はんとう・東北とうほく北部ほくぶの針葉樹しんようじゅ林りんではいずれかの種類しゅるいが欠落けつらくする。広葉樹こうようじゅは北海道ほっかいどうも本州ほんしゅうもほぼ共通きょうつうで、ダケカンバを中心ちゅうしんにドロノキ（ハコヤナギ属ぞく）その他たのヤナギ類るいやハンノキ類るいが混まざる。特とくに亜あ高山こうざん帯たいの上限じょうげん、ハイマツ帯おび（後述こうじゅつ）との境界きょうかい線せん（森林しんりん限界げんかい）付近ふきんでは、ダケカンバの比率ひりつが高たかくなるため、「ダケカンバ帯たい」と呼よばれることもある。

本州ほんしゅうと北海道ほっかいどうの亜あ高山こうざん帯たい林りんは、樹き種しゅも外観がいかんもかなり似にかよっているが、以下いかのような違ちがいがある。

• 本州ほんしゅうの針葉樹しんようじゅ林りんはモミ属ぞくが圧倒的あっとうてきに中心ちゅうしんで、コメツガがそれに次つぎ、トウヒ属ぞくは少すくないのに対たいして、北海道ほっかいどうの針葉樹しんようじゅ林りんではモミ属ぞくとトウヒ属ぞくが互角ごかくに近ちかい勢力せいりょくである。
• 本州ほんしゅうでは落葉らくよう広葉樹こうようじゅ林りんと針葉樹しんようじゅ林りんの境界きょうかいは比較的ひかくてき明瞭めいりょうで、両者りょうしゃの混在こんざいする地域ちいきはあまり広ひろくないが、北海道ほっかいどうでは両者りょうしゃの混在こんざい域いき（針はり広こう混交こんこう林りん）がきわめて広大こうだいで、純粋じゅんすいの亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんより広ひろい。高山こうざん帯たいとの境界きょうかい線せんまで混交こんこう林りんが続つづく場所ばしょも少すくなくない。
• 本州ほんしゅうの亜あ高山こうざん帯たい林りんは高たかい山やまに分布ぶんぷが限かぎられるため、急峻きゅうしゅんな地形ちけいと貧弱ひんじゃくな土壌どじょうにより大木たいぼくがあまり多おおくないが、北海道ほっかいどうでは平地ひらちにも分布ぶんぷするため、大木たいぼくが多おおい。

亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんは、日本にっぽんの以外いがいにも、ヨーロッパアルプス・ピレネー山脈さんみゃく・ヒマラヤ山脈ひまらやさんみゃく・ロッキー山脈さんみゃくなど北半球きたはんきゅうの中なか緯度いど地帯ちたいに広ひろく分布ぶんぷしており、その南端なんたんはアジアでは台湾たいわん・ヒマラヤ・ビルマ北部ほくぶの山岳さんがく地帯ちたい、アメリカ大陸あめりかたいりくではメキシコにまで達たっする。樹き種しゅは針葉樹しんようじゅのトウヒ属ぞく・モミ属ぞく・マツ属ぞく・カラマツ属ぞくと、広葉樹こうようじゅのカバノキ属ぞく・ハコヤナギ属ぞくなどが中心ちゅうしんである。東ひがしアジアと北米ほくべいでは、北方ほっぽう針葉樹しんようじゅ林りんにはない独自どくじの主あるじとしてツガ属ぞくの針葉樹しんようじゅが加くわわる場合ばあいがある。

中ちゅう緯度いど山岳さんがく地帯ちたいに分布ぶんぷするこれらの亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんは、シベリアやカナダなど高緯度こういどに分布ぶんぷする北方ほっぽう針葉樹しんようじゅ林りん（タイガ）と基本きほん的てきな構成こうせいに類似るいじ性せいがある。これは、氷こおり期きに南下なんかしてきた北方ほっぽう針葉樹しんようじゅ林りんが、氷こおり期きの終おわりとともに取とり残のこされて、気温きおんの低ひくい高地こうちに逃にげ込こんだものが亜あ高山こうざん帯たい林りんの起源きげんとなっているからである。（ただし、主しゅとして降雪こうせつ量りょうの変化へんかにより、日本にっぽんの氷こおり期きの針葉樹しんようじゅ林りんと現在げんざいの亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんでは各かく樹き種しゅの勢力せいりょく関係かんけいに違ちがいがある）

偽にせ高山こうざん帯たい

針葉樹しんようじゅは、ハイマツを例外れいがいとして、直立ちょくりつ的てきな樹き形がたのために極端きょくたんな多た雪ゆきに対たいして弱よわい。東北とうほく地方ちほうに亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんが少すくないのは、この地域ちいきが世界せかいでも屈指くっしの多た雪ゆき地帯ちたいだからと考かんがえられている。特とくに降雪こうせつ量りょうの多おおい日本海にほんかい沿ぞいの山やま（飯豊山いいでさん・朝日あさひ連峰れんぽう・月山がっさん・鳥海山ちょうかいざんなど）では亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんがほとんど、あるいはまったく欠落けつらくしており、太平洋たいへいよう側がわの山やま（八甲田山はっこうださん・八幡平やわただいら・早池峰山はやちねさんなど）では、針葉樹しんようじゅの中なかでは比較的ひかくてき多た雪ゆき環境かんきょうに強つよいオオシラビソだけ、あるいはそれにコメツガを交まじえた針葉樹しんようじゅ林りんが成立せいりつする。針葉樹しんようじゅ林りんの欠落けつらくしている山やまでは、ミズナラ・ダケカンバ・ブナなどの落葉らくよう広葉樹こうようじゅが低木ていぼく化かした森もりが森林しんりん限界げんかいまで続つづいている。この森林しんりん帯たいを偽にせ高山こうざん帯たいと呼よぶ場合ばあいもある。

ハイマツ林りん

白山はくさん山頂さんちょう部ぶの高山たかやま帯たいに分布ぶんぷするハイマツ林りんの一いち例れい

ハイマツも針葉樹しんようじゅの一種いっしゅであり、亜あ高山こうざん帯たい林りんの上部じょうぶに群落ぐんらくを作つくる。しかしその樹き形がたが一般いっぱんの針葉樹しんようじゅとはまったく違ちがうこと、林内りんないの景観けいかんが亜あ高山こうざん帯たい林りんとはまったく一変いっぺんしていることから、ハイマツ林りんは高山たかやま帯たいの一部いちぶと見みられることが多おおい。しかし、ハイマツの分布ぶんぷの中心ちゅうしんである東ひがしシベリアではハイマツは多おおくの場合ばあいグイマツ（カラマツの一種いっしゅ）林はやしの林はやし床ゆかに分布ぶんぷすること、ハイマツ林りんに伴ともなうその他たの林はやし床ゆか植物しょくぶつが亜あ高山こうざん帯たい林りんと共通きょうつうであること、実際じっさいにハイマツ林りんに入はいってみると、シラビソ・オオシラビソなどが低木ていぼく化かして混入こんにゅうしていることが多おおいことなどから、現在げんざいはハイマツ林りんは亜あ高山こうざん帯たい林りんの一部いちぶであるという考かんがえが主流しゅりゅうになっている。

関連かんれん項目こうもく

• 針葉樹しんようじゅ林りん
• タイガ
• 里山さとやま

外部がいぶリンク

日本にっぽんにおける亜あ高山こうざん帯たい針葉樹しんようじゅ林りんの分布ぶんぷ（環境庁かんきょうちょう第だい４回かい自然しぜん環境かんきょう保全ほぜん基礎きそ調査ちょうさ・植生しょくせい調査ちょうさ報告ほうこく書しょより）[1]