今井いまい兼平かねひら

凡例はんれい 今井いまい 兼平かねひら
今井いまい兼平かねひら（徳とく音おん寺てら所蔵しょぞう）
時代じだい	平安へいあん時代じだい末期まっき
生誕せいたん	仁平にだいら2年ねん（1152年ねん）
死没しぼつ	寿ことぶき永ひさし3年ねん1月がつ20日はつか（1184年ねん3月4日にち） 享年きょうねん33
別名べつめい	四郎しろう（通称つうしょう）、中原なかはら兼平かねひら
墓所はかしょ	長野ながの県けん木曽きそ郡ぐん木曽きそ町まち日義ひよしの徳とく音おん寺てら、 北橘きたたちばな村むら、大津おおつ市し、木祖きそ村むら、長野ながの市し、川中島かわなかじま
主君しゅくん	源義仲みなもとのよしなか
氏族しぞく	木曽きそ中原なかはら氏し
父母ちちはは	父ちち：中原なかはら兼けん遠とお
兄弟きょうだい	樋口ひぐち兼光かねみつ、兼平かねひら、今井いまい兼光かねみつ?、巴ともえ御前ごぜん?
子こ	兼けん連れん、兼けん之これ、熊くま丸まる

今井いまい 兼平かねひら（いまい かねひら）は、平安へいあん時代じだい末期まっきの武将ぶしょう。正式せいしきな名なのりは中原なかはら 兼平かねひら（なかはら の かねひら）。父ちちは中原なかはら兼けん遠とお。木曾きそ義仲よしなかの乳母うば子こで義仲よしなか四天王してんのうの一人ひとり。兄あにに樋口ひぐち兼光かねみつがいる。現在げんざいの長野ながの県けんにあたる信濃しなの国こく今井いまいの地ちを領りょうして今井いまいを称しょうした。

義仲よしなかの乳母子うばことして共ともに育そだち、兄あにの兼けん光こうと共ともに側近そっきんとして仕つかえる。治ち承うけたまわ・寿ことぶき永ひさしの乱らんでは治ち承うけたまわ4年ねん（1180年ねん）の義仲よしなか挙兵きょへいに従したがい、養和ようわ元年がんねん（1181年ねん）5月がつ、横田よこた河原かわはらの戦たたかいで城しろ助すけ職しょくを破やぶる。寿ことぶき永ひさし2年ねん（1183年ねん）、般若はんにゃ野のの戦たたかい・倶利伽羅峠くりからとうげの戦たたかい・篠原しのはらの戦たたかいで平家へいけ軍ぐんを破やぶり、7月がつには平家へいけを都落みやこおちさせて義仲よしなかと共ともに入京にゅうきょう。10月、福ぶく隆たかし寺てら縄手なわての戦たたかいで妹尾せのお兼けん康やすしを破やぶる。11月、後こう白河しらかわ法皇ほうおうと義仲よしなかが対立たいりつした法ほう住じゅう寺てら合戦かっせんでは、兼平かねひら・兼光かねみつ兄弟きょうだいの活躍かつやくが著いちじるしかった。元もと暦こよみ元年がんねん（1184年ねん）正月しょうがつ20日にち、鎌倉かまくら軍ぐんに追おわれ敗走はいそうする義仲よしなかに従したがい、粟津あわづの戦たたかいで討うち死じにした義仲よしなかの後のちを追おって自害じがいした。享年きょうねん33。

その壮絶そうぜつな最期さいごは、『平家ひらか物語ものがたり』あるいは『源平げんぺい盛衰せいすい記き』の「木曾きそ殿どの最期さいご」の山場やまばとしての乳兄弟ちきょうだいの絆きずなの強つよさを示しめす逸話いつわとして知しられる。

木曾きそ殿どの最期さいご

『平家ひらか物語ものがたり』の「木曾きそ殿どの最期さいご」の段だんの義仲よしなかと兼平かねひらの最期さいごは、悲壮ひそう美びに満みちている。また、この場面ばめんの兼平かねひらの矛盾むじゅんしたい方いかたや、「弓矢ゆみや取とりは、年頃としごろ日頃ひごろ如何いかなる高名こうみょう候こうへども、最後さいごに不覚ふかくしぬれば、永ながき瑕きず（きず）にて候こうなり。（武士ぶしは、常つね日頃ひごろからいかなる名誉めいよを得えたとしても、最後さいごに不覚ふかくを取とっては、後世こうせい長ながい間あいだにわたり名なに傷きずがつきます）」の武士ぶしたる心構こころがまえを伝つたえる言げんに、その情況じょうきょうに応おうじての、兼平かねひらの義仲よしなかへの苦くるしいいたわりの気持きもち、美うつくしい主従しゅうじゅうの絆きずなが書かかれている。

「日頃ひごろは何なんとも覚おぼえぬ鎧よろいが、今日きょうは重おもうなったるぞや（いつもは何なんともない鎧よろいが、きょうは重おもくなったぞ）」と言いう義仲よしなかに対たいし、

「それは御方おかた（みかた）に続つづく勢いきおいが候こうはねば、臆病おくびょうでこそさは思おぼし召めし候こうらめ。兼平かねひら一いち騎きをば、余よの武者むしゃ千せん騎きと思おぼし召めし候こうべし。ここに射い残のこしたる矢や七ななつ八やっつ候こうへば、暫しばらく防ぼう矢や（ふせぎや）仕つかまつり候こうはん。あれに見みえ候こうは、粟津あわづの松原まつばらと申もうし候こう。君くんはあの松まつの中なかへ入はいらせ給きゅうひて、静しずかに御ご自害じがい候こうへ（それは殿しんがりに続つづく軍勢ぐんぜいがないので、臆病おくびょうになられたのでしょう。兼平かねひら一いち騎きを、殿しんがりの武者むしゃ千せん騎きと思おもってくださいませ。ここに矢やの七なな本ほんや八はち本ほんが残のこってございますので、これでしばらくは防ふせぎ矢やを放はなつこともできましょう。あちらは粟津あわづの松原まつばらと申もうします。殿しんがりはあの松原まつばらの中なかに入はいられ静しずかに御ご自害じがいなさいませ）」と述のべ、

義仲よしなかが「所々しょしょで討うたれんより、一所いっしょでこそ討死うちじにもせめ（ばらばらで討うち死じにするより、一緒いっしょに討うち死じにしよう）」と言いうと、

「弓矢ゆみや取とりは、年頃としごろ日頃ひごろ如何いかなる高名こうみょう候こうへども、最後さいごに不覚ふかくしぬれば、永ながき瑕きず（きず）にて候こうなり。御身おんみも労ろう（つか）れさせ給きゅうひ候こうひぬ。御ご馬うまも弱よわって候こう。云うんふ甲斐かいなき人ひとの郎等ろうどうに組くみ落おとされて、討うたれさせ給きゅうひ候こうひなば、さしも日本にっぽん国こくに鬼神きじんと聞きこえさせ給きゅうひつる木曾きそ殿どのをば、某ぼうが郎等ろうどうの手てに懸かけて、討うち奉たてまつったりなんぞ申もうされん事こと、口惜くやしかるべし。唯ただ理りを枉まげて、あの松まつの中なかに入はいらせ給きゅうへ（武士ぶしは、常つね日頃ひごろからいかなる名誉めいよを得えたとしても、最後さいごに不覚ふかくを取とっては、後世こうせい長ながい間あいだにわたり名なに傷きずがつきます。殿しんがりはお疲つかれでございます。御ご馬うまも弱よわってございます。ふがいない者ものが郎党ろうとうに組くみ落おとされて、討うたれたりしたら、さしも日本にっぽん国こくに鬼神きじんと言いわれた木曽きそ義仲よしなかを、だれかの郎党ろうとうの手てにかかって討うち取とったりと言いわれることは悔くやしいことです。そこは無理むりを承知しょうちであの松原まつばらにお入いりくださいませ）」と述のべた。

義仲よしなかが討うたれると、「今いまは誰だれをかかばはんとて、軍ぐんをばすべき。これ見み給きゅうへ、東国とうごくの殿しんがりばら、日本一にっぽんいちの剛こうの者ものの自害じがいする手本てほんよ（いまは誰だれをかばうために戦せんをすべきであろうか。東国とうごくの武士ぶしどもよ、これを見みよ。日本一にっぽんいちの剛こうの者ものの自害じがいの仕方しかたよ）」と言いい、太刀たちの先さきを口くちの中なかに含ふくみ、馬上もうえから飛とび降おり、太刀たちに貫つらぬかれ自害じがいした。

（現代げんだい語ご簡訳：戦前せんぜんは義仲よしなかに「武士ぶしらしく強気つよきになれ」と助言じょげんをし、戦中せんちゅうは死しを共ともにしようとする義仲よしなかに「疲つかれているのだから潔いさぎよく自害じがいしなさい」と冷静れいせいに助言じょげんし、義仲よしなかが自害じがいする時間じかん稼かせぎをした。義仲よしなかが討うち取とられたと知しった直後ちょくご、「東国とうごくの方々かたがた、これが日本一にっぽんいちの強者きょうしゃの自害じがいする手本てほんだ」と言いった。）

兼平かねひらの築城ちくじょうとされる城しろ

今井いまい兼平かねひらの築城ちくじょうとする伝承でんしょうをもつ城郭じょうかく（砦とりで）が各地かくちに存在そんざいする。

• 東京とうきょう都と
  • 今井いまい城じょう（東京とうきょう都と麻布あざぶ区く今井いまい町まち、現在げんざいの六本木ろっぽんぎ）
• 神奈川かながわ県けん
  • 今井いまい城しろ（横浜よこはま市し保土ケ谷ほどがや区く）
• 新潟にいがた県けん
  • 今井いまい城じょう（新潟にいがた県けん糸魚川いといがわ市し今井いまい）
  • 今井いまい城しろ（新潟にいがた県けん中魚沼なかうおぬま郡ぐん津南つなん町まち）
• 富山とやま県けん
  • 白鳥はくちょう城じょう（富山とやま市し呉羽くれは町まち）
• 福井ふくい県けん
  • 今井いまい城じょう（福井ふくい市し小羽おば町まち）

墓所はかしょ・神社じんじゃ

今井いまい兼平かねひらの墓はか（滋賀しが県けん大津おおつ市し晴嵐せいらん二に丁目ちょうめ）

北橘きたたちばな村むら、木祖きそ村むら、長野ながの市し、川中島かわなかじまに「兼けん平塚ひらつか」がある。また、滋賀しが県けん大津おおつ市しにも墓所はかしょがある。

長野ながの市し川中島かわなかじまの奉たてまつ斎とき神社じんじゃ、松本まつもと市し今井いまい鎮座ちんざの今井いまい神社じんじゃ、群馬ぐんま県けん渋川しぶかわ市し北橘きたたちばな村むら箱田はこだの木曾きそ三さん社しゃ神社じんじゃ・木曾きそ三さん柱はしら神社じんじゃで主祭しゅさい神しんとして祀まつられている。

系譜けいふ

• 父ちち：中原なかはら兼けん遠とお
• 母はは：不ふ詳しょう
• 妻つま：不ふ詳しょう
  • 長男ちょうなん：兼けん連れん
  • 次男じなん：兼けん之これ
  • 三男さんなん：熊くま丸まる

子孫しそん

• 北佐久きたさく郡ぐん立科たてしな町まち芦田あしだ、与あずか惣そう塚づか - 兼平かねひらの長男ちょうなん＝兼けん連れんの墓はか
• 長野ながの市し御厨みくりや戸部とべ、今井いまい山さん讃さん楽らく寺てら - 兼平かねひらの次男じなん＝兼けん之これが創建そうけん
• 長野ながの市し鬼無里きなさ山さん角かく、山やま角かく城じょう - 兼平かねひらの三男さんなん＝幼少ようしょう名めい・熊くま丸まるが築城ちくじょう
• 文献ぶんけんによると、元もと暦こよみ元年がんねん（1184年ねん）の粟津あわづの戦たたかいで木曾きそ義仲よしなかと兼平かねひらが戦死せんしすると、兼平かねひらの次男じなん今井いまい兼けん之これ・ 高梨たかなし氏し・楯だて氏し・根井ねい氏し・町田まちだ・小野沢おのざわ・萩原はぎはら・串くし渕ふち・諸田もろた等ひとしが義仲よしなかと巴ともえ御前ごぜんの子こである三男さんなん木曾きそ義よし基もとを匿かくまい、群馬ぐんま県けん渋川しぶかわ市し北橘きたたちばな村むら箱田はこだに落おち延のびたとされる。義仲よしなかの崇敬すうけい社しゃである岡田おかだ神社じんじゃ、沙すな田神たがみ社しゃ、阿禮あれい神社じんじゃの分霊ぶんれいを勧請かんじょうし木曾きそ三さん社しゃ神社じんじゃ・木曾きそ三さん柱はしら神社じんじゃを創建そうけん。箱田はこだに住居じゅうきょを構かまえたことが始はじまりとされる。のちに箱田はこだ城じょうを自みずから築城ちくじょうし箱はこ田地たじ衆しゅう（国くに衆しゅ）として活動かつどうするが、戦国せんごく時代じだいに入はいり有力ゆうりょく大名だいみょうである白井しらい長尾ちょうび家か、上杉うえすぎ氏し、武田たけだ氏し、北条ほうじょう氏し、酒井さかい氏し、松平まつだいら氏しに仕つかえた。

参考さんこう文献ぶんけん

• 今井いまい善よし兵衛ひょうえ『更生こうせい農村のうそん：北橘きたたちばな村むらの実情じつじょう』日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ、1935年ねん。 
• 今井いまい善一郎ぜんいちろう『赤城あかぎの神かみ』煥乎堂どう、1974年ねん。 
• 今井いまい善一郎ぜんいちろう『習俗しゅうぞく歳時記さいじき』煥乎堂どう、1975年ねん。 
• 児玉こだま幸みゆき多た、北島きたじま正ただし元もと『藩はん史し総覧そうらん』新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1977年ねん。 
• 『別冊べっさつ歴史れきし読本とくほん24 江戸えど三さん百ひゃく藩はん 藩主はんしゅ総覧そうらん 歴代れきだい藩主はんしゅでたどる藩政はんせい史し』 （新人物往来社しんじんぶつおうらいしゃ、1977年ねん）
• 山崎やまざき一はじめ『群馬ぐんま県けん古城こじょう塁るい址しの研究けんきゅう』（群馬ぐんま県けん文化ぶんか事業じぎょう振興しんこう会かい、1971年ねん-1972年ねん）

関連かんれん項目こうもく

• 今井いまい氏し
• 木曾きそ三さん柱はしら神社じんじゃ
• 木曾きそ三さん社しゃ神社じんじゃ

外部がいぶリンク

• 木曾きそ三さん柱はしら神社じんじゃ 将軍しょうぐん塚づか古墳こふん・朝日あさひ塚づか古墳こふん
• 木曾きそ三さん柱はしら神社じんじゃ①
• 木曾きそ三さん柱はしら神社じんじゃ② - ウェイバックマシン（2019年ねん3月がつ30日にちアーカイブ分ぶん）
• 木曾きそ三さん柱はしら神社じんじゃ③
• 木曾きそ三さん社しゃ神社じんじゃ①
• 木曾きそ三さん社しゃ神社じんじゃ②