今井いまい善よし衛まもる

今井いまい 善よし衛まもる（いまい ぜんえい、1913年ねん10月5日にち - 1996年ねん4月がつ19日にち）は、日本にっぽんの官僚かんりょう。元もと通商つうしょう産業さんぎょう事務次官じむじかん。

略歴りゃくれき・人物じんぶつ

1931年ねん、東京とうきょう府立ふりつ第だい一いち中学校ちゅうがっこう卒業そつぎょう、第一高等学校だいちこうとうがっこうを経へて、1937年ねん、東京とうきょう帝国ていこく大学だいがく法学部ほうがくぶ政治せいじ学科がっか卒業そつぎょう、商工しょうこう省しょう入省にゅうしょう。入省にゅうしょう同期どうきに、佐橋さはし滋しげる（通産つうさん事務次官じむじかん）、松村まつむら敬一けいいち（経けい企くわだて事務次官じむじかん、通商つうしょう局きょく長ちょう、繊維せんい局長きょくちょう）、樋詰ひづめ誠まこと明あきら（大丸だいまる副ふく社長しゃちょう、中小企業庁ちゅうしょうきぎょうちょう長官ちょうかん）、川瀨かわせ健治けんじ（東京とうきょう通産局つうさんきょく長ちょう）など。佐橋さはし、今井いまい、樋詰ひづめで「昭和しょうわ12年ねん入省にゅうしょう組ぐみの3羽わ烏がらす」と呼よばれていた。

外務省がいむしょう出向しゅっこう（在ざい米国べいこく大使館たいしかん）、通商つうしょう局きょく通商つうしょう政策せいさく課長かちょう、大臣だいじん官房かんぼう総務そうむ課長かちょう、中小企業庁ちゅうしょうきぎょうちょう振興しんこう部長ぶちょうなどを経へて、1958年ねん8月がつ5日にち、繊維せんい局長きょくちょうに就任しゅうにん。1959年ねん2月がつ、日米にちべい綿めん製品せいひん交渉こうしょうのため、今井いまい・牛うし場じょう信彦のぶひこ外務省がいむしょう経済けいざい局長きょくちょう・ヘンリー・カーンズ米べい商務しょうむ次官補じかんほらの三さん者しゃ間あいだで意見いけん交渉こうしょうを持もつ。12月、繊維せんい原料げんりょうである羊毛ようもう・原綿げんめん輸入ゆにゅうの自由じゆう化かを言明げんめいし、綿花めんかの輸入ゆにゅう割当わりあてを骨子こっしとした繊維せんい工業こうぎょう設備せつび臨時りんじ措置そち法ほう（1956年ねん9月がつ成立せいりつ）を改正かいせいした。池田いけだ勇人はやと通産つうさん大臣だいじんの在任ざいにん期間きかんと重かさなる中なかでの自由じゆう化か措置そちは佐藤さとう栄作えいさくの“資金しきん源げん”のひとつを絶たつ形かたちとなり、佐橋さはしと次官じかんレースを戦たたかっていた今井いまいが佐藤さとう栄作えいさく通産つうさん大臣だいじんによって特許庁とっきょちょう長官ちょうかんに出だされるのを決定的けっていてきにしたとも言いわれている。

1961年ねん2月がつ3日にち、通商つうしょう局きょく長ちょうに就任しゅうにん。香港ほんこん綿めん製品せいひんなどの対たい米べい輸出ゆしゅつ割合わりあいが伸のびる中なか、島しま重信しげのぶ外務がいむ審議しんぎ官かん、関守せきもり三郎さぶろう外務省がいむしょう経済けいざい局長きょくちょう、今井いまい通商つうしょう局長きょくちょう、松村まつむら敬一けいいち繊維せんい局長きょくちょうらで引ひき続つづいて、日米にちべい綿めん製品せいひん5ヵ年かねん協定きょうてい（1957年ねん ~ ）に基もとづき自主じしゅ規制きせいを敢あえて続行ぞっこうした。1961年ねん7月がつ13日にち、1963年ねん4月がつからの自由じゆう化か目標もくひょうを半年はんとし繰くり上あげると発言はつげんし波紋はもんを広ひろげた。また、GATTによるIMF八はち条じょう国こく移行いこう勧告かんこくを延期えんきさせるため、自由じゆう化か率りつを引ひき上あげ、利率りりつの大おおきい石油せきゆ・石炭せきたんを自由じゆう化か品目ひんもくに組くみ入いれた（合あわせた自由じゆう化か率りつは65% → 93%に）。

1962年ねん7月がつ、特許庁とっきょちょう長官ちょうかんに就任しゅうにんするも、福田ふくだ一はじめ通産つうさん大臣だいじんの下したで1963年ねん7月がつ23日にちに通産つうさん事務次官じむじかんの座ざに着ついた。福田ふくだの人事じんじ介入かいにゅうにより、金融きんゆう・産業さんぎょう界かいによるスポンサー無なき経済けいざい統制とうせい法案ほうあん・特とく振ふ法ほうで鳴ならす同期どうきの統制とうせい派はの代表だいひょう格かくかつ省内しょうない主流しゅりゅうとなっていた佐橋さはし滋しげるを押おしのける恰好かっこうで特許庁とっきょちょう長官ちょうかんから横滑よこすべりした。理由りゆうとして、居丈高いたけだかな佐橋さはしよりも人当ひとあたりのいい今井いまいが、“サービス官庁かんちょうの時代じだい”に適かなった人物じんぶつだったと喧伝けんでんされたが、佐橋さはしが特とく振ふ法ほうの成立せいりつを急いそぐあまり、佐藤さとう栄作えいさくに近ちかづきすぎたのが池田いけだ派はや党人とうじん派はの逆鱗げきりんに触ふれ、大野おおの派はの福田ふくだが次官じかん人事じんじに断だんを下くだしたとされている。

この人事じんじは当時とうじの松尾まつお金蔵きんぞう次官じかん、渡辺わたなべ弥栄やさか司つかさ官房かんぼう長ちょう（1962年ねん7月がつ10日とおかまで。官房かんぼう付づけを経へて、1965年ねん4月がつ1日にちから貿易ぼうえき振興しんこう局長きょくちょう、同年どうねん6月がつから通商つうしょう局長きょくちょう、のち弁護士べんごし。1939年ねん入省にゅうしょう）ら事務じむ方かたの了承りょうしょうを得えずに行おこなわれたことから、省内しょうないの「佐橋さはし連隊れんたい」らの動揺どうようもあり、巻まき返かえしが策さくされたりしたが、同年どうねん7月がつ21日にちに今井いまい次官じかんが内定ないていした。次官じかん内定ないていまでに20日間にちかん要ようした。もっとも1964年ねん10月23日にちには、佐橋さはしに次官じかんの座ざを譲ゆずることとなる。退官たいかん後ごの1965年ねん9月、日本石油化学にほんせきゆかがく常務じょうむに。1970年ねん12月、同社どうしゃ社長しゃちょうとして日本石油化学にほんせきゆかがくが経営けいえい困難こんなんに陥おちいった最大さいだい株主かぶぬしの古河ふるかわ化学かがくから全ぜん株式かぶしきを譲ゆずり受うけ、吸収きゅうしゅう合併がっぺいした。

入省にゅうしょう当初とうしょから通産つうさん官僚かんりょう（商工しょうこう官僚かんりょう）のホープとして、本流ほんりゅうラインだけを歩あゆみ、常つねにライバルの佐橋さはしに一いち歩ほリードしていた。こうした経歴けいれきからか、頭あたまが切きれるから先さきが見みえすぎて部下ぶかに任まかせず、部下ぶかにとっては多少たしょう煙けむたい一いち面めんを持もっていたと評ひょうされている。

佐橋さはしと対比たいひして、今井いまいは「国際こくさい派は」、「通商つうしょう派は」あるいは「自主じしゅ調整ちょうせい派は」とされ、早期そうきの市場いちばの自由じゆう化かを唱となえた。自動車じどうしゃ産業さんぎょうなどの驚異きょうい的てき発展はってんを見みた現在げんざいでは、今井いまいに先見せんけんの明あかりがあったとも評価ひょうかされている。城山しろやま三郎さぶろう・「官僚かんりょうたちの夏なつ」にて風越かざこし（佐橋さはし滋しげる）と同期どうきで次官じかんを争あらそう玉木たまきのモデル。生前せいぜん、この作品さくひんに関かんする取材しゅざいなどは一切いっさい断ことわっていたという。以後いご、日本石油化学にほんせきゆかがく社長しゃちょう・顧問こもん。1996年ねん4月がつ、脳のう梗塞こうそくで永眠えいみん。

経団連けいだんれん会長かいちょうであった今井いまい敬たかしは弟おとうとにあたる。甥おいに経けい産さん官僚かんりょうの今井いまい尚しょう哉（安倍晋三あべしんぞう内閣ないかく総理そうり大臣だいじん政務せいむ秘書官ひしょかん）。妻つまは山崎やまざき種しゅ二にの娘むすめ。間あいだに1男なん2女じょがおり、長男ちょうなんは元もと山下やました汽船きせん社長しゃちょう・山下やました太郎たろうの孫娘まごむすめと結婚けっこんしている。

囲碁いごが趣味しゅみで、父親ちちおやはアマ日本一にっぽんいちにもなった。善ぜん衛まもるは1985年ねん頃ごろ石田いしだ芳夫よしおとの初はつ手合てあわせの3子し置おきの真剣しんけん勝負しょうぶで勝かち「アマチュア七なな段だん格かく」と言いわれた。その後ご代々木上原よよぎうえはらにある石田いしだの道場どうじょうに通かよう。。

脚注きゃくちゅう

先代せんだい 小室こむろ恒夫つねお

通商産業省つうしょうさんぎょうしょう通商つうしょう局長きょくちょう 1961年ねん - 1962年ねん

次代じだい 松村まつむら敬一けいいち

先代せんだい 松尾まつお金蔵きんぞう

通商つうしょう産業さんぎょう事務次官じむじかん 1963年ねん - 1964年ねん

次代じだい 佐橋さはし滋しげる