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充填じゅうてんざい

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充填じゅうてんざい(じゅうてんざい、えい: filler)は、樹脂じゅしやバインダー(プラスチックふくあい材料ざいりょうコンクリート)に添加てんかされる粒子りゅうしであり、添加てんか物質ぶっしつ特定とくてい性質せいしつ向上こうじょうさせたり、製品せいひん安価あんかにしたり、あるいはその両方りょうほう達成たっせいすることができる[1]

概要がいよう[編集へんしゅう]

分野ぶんやべつプラスチック消費しょうひ用途ようと

充填じゅうてんざい使用しようにおける2だい分野ぶんやは、エラストマーとプラスチックである[2]世界せかい全体ぜんたいでは、5,300まんトン以上いじょう充填じゅうてんざい総額そうがくやく180おくあめりかドル)が、かみ、プラスチック、ゴム、塗料とりょう、コーティングざい接着せっちゃくざいシーラントなどの用途ようと分野ぶんや毎年まいとし使用しようされている。このように、700をえる企業きぎょうによって生産せいさんされる充填じゅうてんざいは、世界せかい主要しゅよう原材料げんざいりょうのひとつにかぞえられており、日常にちじょう消費しょうひしゃ必要ひつようとするさまざまな商品しょうひんふくまれている。使用しようされる充填じゅうてんざいのトップは、粉砕ふんさい炭酸たんさんカルシウム(GCC)、沈殿ちんでん炭酸たんさんカルシウム(PCC)、カオリンタルクカーボンブラックである[3]充填じゅうてんざい使用しよう好例こうれいは、ポリプロピレンへのタルクの添加てんかである[4]。プラスチックに使用しようされる充填じゅうてんざいのほとんどは、鉱物こうぶつまたはガラスベースの充填じゅうてんざいである[4]粒子りゅうし繊維せんいは、充填じゅうてんざいおもなサブグループで、微粒子びりゅうしは、マトリックスちゅう混合こんごうされる充填じゅうてんざいしょう粒子りゅうしであり、サイズとアスペクト重要じゅうようである。繊維せんいちいさな円形えんけい連続れんぞくしたくさりじょう構造こうぞうであり、非常ひじょうながくなり、アスペクト非常ひじょうたかくなる[5]

主要しゅよう充填じゅうてんざい[編集へんしゅう]

もっとも広範こうはん使つかわれている充填じゅうてんざいである炭酸たんさんカルシウム(CaCO3)。

炭酸たんさんカルシウム(CaCO3[編集へんしゅう]

炭酸たんさんカルシウムは、石灰岩せっかいがん大理石だいりせきからられる。プラスチック業界ぎょうかいでは「チョーク」とばれ、ポリ塩化えんかビニル(塩化えんかビニル樹脂じゅし、polyvinyl chloride(PVC))や飽和ほうわポリエステルふくおおくの用途ようと使用しようされ、90%もの炭酸たんさんカルシウムをふくあい材料ざいりょう使用しようすることができる。これらの添加てんかぶつは、冷却れいきゃく速度そくど低下ていかさせることによって成形せいけい生産せいさんせい向上こうじょうさせることができる。また、材料ざいりょう動作どうさ可能かのう温度おんど範囲はんい上限じょうげんひろげ、電気でんき配線はいせん絶縁ぜつえん性能せいのう維持いじすることにもする[6]炭酸たんさんカルシウムは、組成そせいぶつちゅうおおきな割合わりあい使用しようされている。組成そせいぶつの97%をめる炭酸たんさんカルシウム粉末ふんまつは、白色はくしょく/不透明ふとうめい製品せいひん白色はくしょくたかめるので、メーカーは白色はくしょくしゅ原料げんりょう使用しようりょうらすことができる。また、割合わりあいすくないと、炭酸たんさんカルシウム粉末ふんまつはカラー製品せいひん使用しようできるほか、最終さいしゅうプラスチック製品せいひん表面ひょうめんをよりあかるく、より光沢こうたくのあるものにする[7]

カオリン[編集へんしゅう]

カオリンはおもに、そのアンチブロッキング特性とくせいやレーザーマーキングにおける赤外線せきがいせん吸収きゅうしゅうざいのためにプラスチックに使用しようされている[6]。メタコリナイトはPVCの安定あんてい使用しようされている[6]。また、カオリンはたい摩耗まもうせい向上こうじょうさせることがしめされており、充填じゅうてんざいとしてカーボンブラックにってわり、ガラス強化きょうか物質ぶっしつ流動りゅうどう特性とくせい改善かいぜんすることができる[6]

水酸化すいさんかマグネシウム(タルク)[編集へんしゅう]

タルクはやわらかい鉱物こうぶつで、一般いっぱん炭酸たんさんカルシウムよりも高価こうかである。水酸化すいさんかマグネシウムとシリカのシートをかさねたものである。プラスチック産業さんぎょうでは、長期ちょうきてきねつ安定あんていせいがあるため、包装ほうそう食品しょくひん用途ようと使用しようされている[5][6]

珪灰せき(CaSiO3[編集へんしゅう]

ウォラストナイトはアシキュラー構造こうぞうち、比重ひじゅう比較的ひかくてきおおきく硬度こうどたかい。このフィラーは、含水りつたい摩耗まもうせいねつ安定あんていせいたか絶縁ぜつえんたいりょく向上こうじょうさせることができる。ウオラストナイトは、マイカやタルクのようないたじょうフィラー物質ぶっしつ競合きょうごうし、ねつ可塑かそせいプラスチックやねつ硬化こうかせい樹脂じゅし製造せいぞうするさいにガラス繊維せんいわりに使用しようすることもできる[5]

ガラス[編集へんしゅう]

ガラス微小びしょうだま英語えいごばん充填じゅうてんざいひだり)とガラス繊維せんい充填じゅうてんざいみぎ)。

ガラス充填じゅうてんざいには、ガラス微小びしょうだま英語えいごばん、ガラスたん繊維せんい、ガラスちょう繊維せんいなど、いくつかの多様たよう形態けいたいがある。ガラス繊維せんいは、弾性だんせいりつ引張ひっぱ強度きょうどなどがたかいため、ねつ可塑かそせい樹脂じゅしまたはねつ硬化こうかせい樹脂じゅし機械きかいてき特性とくせい向上こうじょうさせるために使用しようされることがある。ただし、通常つうじょう充填じゅうてんざいとしてガラスを添加てんかすることに経済けいざいてき利点りてんはない。マトリックスにガラスを使用しようすることの欠点けってんとしては、表面ひょうめん品質ひんしつ低下ていか溶融ようゆうねばたびたかさ、溶接ようせつせいわるさ、りがげられる[5]。ガラス微小びしょうだま添加てんかすると、吸油きゅうゆせいたい薬品やくひんせい向上こうじょうする[6]

フライアッシュ[編集へんしゅう]

石炭せきたんやシェールオイルのフライアッシュ(Fly ash)は、射出しゃしゅつ成形せいけい用途ようと使用しようできるねつ可塑かそせいプラスチックの充填じゅうてんざいとして使用しようされてきた[8]。また、かつては産業さんぎょう廃棄はいきぶつであったが、コンクリート相性あいしょうく、ほねざいにすると耐久たいきゅうせい施工しこうせい流動りゅうどうせい向上こうじょうさせることが着目ちゃくもくされたことから、工業こうぎょう製品せいひんとして位置いちづけられるようになった。たとえば、コンクリートないでセメントないのアルカリ成分せいぶんとの反応はんのうによって珪酸けいさんソーダ発生はっせいし、周囲しゅういからみず吸収きゅうしゅう膨張ぼうちょうして圧力あつりょくによるひびれが発生はっせいする、アルカリシリカ反応はんのう抑制よくせい可能かのうとしている。

ナノフィラー[編集へんしゅう]

ナノフィラーの粒子りゅうしみちは100ナノメートル未満みまんである。ナノフィラーは、ナノプレート、ナノファイバー、ナノ粒子りゅうしの3つのグループにけられる。ナノ粒子りゅうしはナノプレートやナノファイバーよりもひろ使用しようされているが、ナノプレートはよりひろ使用しようされはじめている。ナノプレートは、あつみがはるかにちいさいことをのぞけば、タルクや雲母うんものような従来じゅうらいいたじょうフィラーにている。ナノフィラーを添加てんかする利点りてんには、ガスバリアの形成けいせいなんもえせいなどがある[5]

ポリマー発泡はっぽうビーズ[編集へんしゅう]

ポリマー発泡はっぽうビーズのかさ密度みつどは0.011g/ccとひくく、おおきさは45ミクロンから8mm以上いじょうである。ポリマー発泡はっぽうビーズを配合はいごうけい使用しようするさい一般いっぱんてき欠点けってんとしては、静電気せいでんき温度おんどたい薬品やくひんせい制限せいげんや、かさみ密度みつどきわめてひくいために配合はいごうけいない均質きんしつなブレンドを達成たっせいすることが困難こんなんであることがげられる。しかし、これらの限界げんかいは、製剤せいざい改良かいりょう添加てんかざい、その表面ひょうめん処理しょり使用しようにより、完全かんぜんではないにしても、ほとんど克服こくふくすることができる。このような潜在せんざいてき課題かだいにもかかわらず、ポリマー発泡はっぽうビーズは、最終さいしゅう製品せいひん軽量けいりょうやコスト削減さくげん必要ひつよう場合ばあいに、配合はいごうけいくわえることができる。

くみせきづくり充填じゅうてんざい[編集へんしゅう]

くみせきづくり充填じゅうてんざい外壁がいへき亀裂きれつあな修復しゅうふくするために使用しようされ、通常つうじょうはセメントと消石灰しょうせっかい使用しようしてつくられる[9]

その充填じゅうてんざい[編集へんしゅう]

コンクリート充填じゅうてんざいには、砂利じゃりいしすな鉄筋てっきんなどがある。コンクリートのコストを削減さくげんするために、砂利じゃりいしすな使用しようされる。鉄筋てっきんりょくつよく、コンクリートのりょくよわ弱点じゃくてんおぎな役割やくわりたす[10]

物理ぶつりてき特性とくせい[編集へんしゅう]

充填じゅうてんざい物理ぶつりてき特性とくせい[11]
充填じゅうてんざい種別しゅべつ 密度みつど

(g/cm3)

モース硬度こうど 平均へいきんサイズ

(ミクロン)

アスペクト/形状けいじょう
Calcium Carbonate 2.7 3-4 0.02-30 1-3 Blocky
Talc 2.7-2.8 1 0.5-20 5-40 Plate
Wollastonite 2.9 4.5 1-500 5-30 Fiber
Mica 2.8-2.9 2.5-4 5-1000 20-100 Plate
Kaolin 2.6 2 0.2-8 10-30 Plate
Silica (Precipitated) 1.9-2.1 5.5 0.005-0.1 ~1 Round
Carbon Black 1.7-1.9 2-3 0.014-0.25 ~1 Round
Dolomite 2.85 3.5-4 1-30 ~1 Round
Barium Sulfate 4.0-4.5 3-3.5 0.1-30 ~1 Round
ATH Al(OH)3 2.42 2.5-3 5-80 1-10 Plate
MDH Mg(OH)2 2.4 2.5-3 0.5-8 1-10 Plate
Diatomaceous earth 2-2.5 5.5-6 4-30 2-10 Disc
Magnetite/Hematite 5.2 5.5-6 1-50 ~1 Blocky
Halloysite 2.54 2.5 1-20 5-20 Tube
Zinc Oxide 5.6 4.5 0.05-10 1 Round
Titanium Dioxide 4.23 6 0.1-10 1 Round

強度きょうど[編集へんしゅう]

弾性だんせいりつ[編集へんしゅう]

たい摩耗まもうせい[編集へんしゅう]

たい疲労ひろうせい[編集へんしゅう]

ねつ変形へんけい[編集へんしゅう]

クリープ[編集へんしゅう]

プラスチック充填じゅうてんざい溶着ようちゃくせい[編集へんしゅう]

充填じゅうてんざい添加てんかは、プラスチックの溶着ようちゃくせいおおきな 影響えいきょうあたえる。これはまた、使用しようされる 溶着ようちゃく過程かてい種類しゅるいによってもことなる。ちょう音波おんぱ接合せつごう場合ばあい炭酸たんさんカルシウムやカオ リンのような充填じゅうてんざいは、ちょう音波おんぱ伝達でんたつする樹脂じゅし能力のうりょくたかめることができる[12]電磁でんじ溶着ようちゃくねつばん溶着ようちゃく場合ばあい、タルクやガラスの添加てんか溶着ようちゃく強度きょうどを32%も低下ていかさせる[13]研磨けんませい充填じゅうてんざいは、たとえばプラスチックとせっ さわするちょう音波おんぱホーンの表面ひょうめんなど、溶接ようせつ工具こうぐをよりはや劣化れっかさせる。充填じゅうてんざい溶接ようせつせい試験しけんする最良さいりょう方法ほうほうは、 溶接ようせつ強度きょうど樹脂じゅし強度きょうど比較ひかくすることである[14]おお くの充填じゅうてんざいには、機械きかいてき挙動きょどう変化へんかさせるさまざまなレベルの添加てんかざいふくまれているため、こ れをおこなうのは困難こんなんである。

プラスチック産業さんぎょうにおける充填じゅうてんざい応用おうよう[編集へんしゅう]

充填じゅうてんざいはプラスチック製品せいひん製造せいぞう工程こうていひろ使用しようされている。充填じゅうてんざいは、もとのプラスチックの特性とくせいえるために使用しようされる。プラスチック充填じゅうてんざい使用しようすることにより、メーカーは原材料げんざいりょうだけでなく、生産せいさんコストを節約せつやくすることができる。とくにコストと生産せいさん効率こうりつ最小限さいしょうげんおさえ、プラスチックの物理ぶつりてき特性とくせい向上こうじょうさせるじょう充填じゅうてんざいマスターバッチの重要じゅうようせい否定ひていできない。価格かかく安定あんていせい利点りてんで、プラスチック充填じゅうてんざい生産せいさんをサポートしている。

・ブロー成形せいけい

・ ブローフィルム&ラミネート

押出おしだし成形せいけい(パイプ、シート)

射出しゃしゅつ成形せいけい

不織布ふしょくふ

・ラフィア

ねつ成形せいけい

分析ぶんせき化学かがく分野ぶんや[編集へんしゅう]

なお、分析ぶんせき化学かがく分野ぶんやでは、カラムクロマトグラフィーにおいて化合かごうぶつ分離ぶんりするためにカラム(つつじょう容器ようき)に充填じゅうてんされるためしざいのことをす。分離ぶんりする対象たいしょうによってシリカゲルアルミナセファデックスなどが使つかけられる。表面ひょうめん処理しょりしたり化学かがく修飾しゅうしょくした充填じゅうてんざいや、それらをめたカラムかん市販しはんされている。

脚注きゃくちゅう参考さんこう文献ぶんけん[編集へんしゅう]

  1. ^ Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Weinheim: Wiley-VCH, 2005
  2. ^ Fillers Market Report: Global Industry Analysis, 2024”. www.ceresana.com. 2019ねん2がつ14にち閲覧えつらん
  3. ^ Market Study: Fillers (3rd edition)”. Ceresana (2014ねん1がつ). 2015ねん9がつ7にち閲覧えつらん
  4. ^ a b Shrivastava, Anshuman (2018-05-15). Introduction to Plastics Engineering. William Andrew. ISBN 9780323396196. https://books.google.com/books?id=BbXNCgAAQBAJ&q=Introduction+to+plastic+engineering 
  5. ^ a b c d e Gilbert, Marianne (2016-09-27). Brydson's Plastics Materials. William Andrew. ISBN 9780323370226. https://books.google.com/books?id=ERWKCgAAQBAJ&q=plastic+filler+materials 
  6. ^ a b c d e f Murphy, John (2001), “Modifying Specific Properties: Mechanical Properties – Fillers”, Additives for Plastics Handbook, Elsevier, pp. 19–35, doi:10.1016/b978-185617370-4/50006-3, ISBN 9781856173704, https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9781856173704500063 2019ねん2がつ14にち閲覧えつらん 
  7. ^ European Plastic, Company (2019ねん6がつ5にち). “About Calcium Carbonate in filler masterbatch”. 2023ねん12月1にち閲覧えつらん
  8. ^ Krasnou, I. (2021). “Physical–mechanical properties and morphology of filled low‐density polypropylene: Comparative study on calcium carbonate with oil shale and coal ashes”. Journal of Vinyl and Additive Technology 28: 94–103. doi:10.1002/vnl.21869. 
  9. ^ Buildbase https://www.buildbase.co.uk/link/1/3434147_31669_t.pdf
  10. ^ Filler materials Used In Concrete”. www.engineeringcivil.com (2008ねん3がつ16にち). 2019ねん4がつ3にち閲覧えつらん
  11. ^ Functional Fillers and Specialty Minerals for Plastics”. Phantom Plastics. 2019ねん2がつ20日はつか閲覧えつらん
  12. ^ Malloy, Robert A. (2010-10-07). “Plastic Part Design for Injection Molding”. Plastic Part Design for Injection Molding: An Introduction. I–XIV. doi:10.3139/9783446433748.fm. ISBN 978-3-446-40468-7 
  13. ^ Stewart, Richard (March 2007). “ANTEC™ 2007 & Plastics Encounter @ ANTEC”. Plastics Engineering 63 (3): 24–38. doi:10.1002/j.1941-9635.2007.tb00070.x. ISSN 0091-9578. 
  14. ^ “ANTEC® 2011”. Plastics Engineering 67 (4): 25. (April 2011). doi:10.1002/j.1941-9635.2011.tb01931.x. ISSN 0091-9578. 

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]