初穂はつほ

初穂はつほ（はつほ）とは、日本にっぽんにおいて秋あきの稲いねの収おさむ獲えに先立さきだって神かみに献けんじる熟じゅくした稲穂いなほのことである。早さ穂ほ、荷に前まえ、最さい華はなとも書がき、いずれも「はつほ」と読よむ。

概説がいせつ

古代こだいにおいては、祭祀さいしを主導しゅどうした豪族ごうぞくがその費用ひようや供物くもつとするために支配しはい民みんから徴収ちょうしゅうしたものが初穂はつほであったという。後のちに豪族ごうぞくの政治せいじ・宗教しゅうきょう権限けんげんがヤマト王権おうけんに剥奪はくだつされて律令りつりょう政府せいふが確立かくりつされると、初穂はつほは律令りつりょう政府せいふを代理だいりする国府こくふに納おさめられる田租でんそ（でんそ・「租」）へと転換てんかんして、後ごの租庸調そようちょう制せいを構成こうせいする1つとなったとされている。

今日きょう、伊勢神宮いせじんぐうでは神嘗祭かんなめさいに先立さきだって抜穂祭さいが行おこなわれており、その他たの神社じんじゃや一部いちぶ地域ちいきの民間みんかんでも秋あきの収おさむ獲え祭さいより以前いぜん（八朔はっさく、重陽ちょうようなど）に抜穂の行事ぎょうじを行おこなう所ところがある。これが初穂はつほの元来がんらいの形かたちと考かんがえられる。元々もともとは文字通もじどおり稲いね（を含ふくむ穀物こくもつ）の穂ほであったが、後のちに穀物こくもつ以外いがいのものにも拡大かくだいされ、その年とし初はじめて獲えれた野菜やさいや海産物かいさんぶつ、狩かりの獲物えものを神仏しんぶつに供そなえるものも初穂はつほと呼よぶようになった。さらには、そのような初物はつものの代かわりとして献けんじられる金銭きんせんをも指さすようになった。今日きょう、神社じんじゃに納おさめる金銭きんせんのことを「初穂はつほ料りょう」と呼よぶのはこれに由来ゆらいする。米こめを納おさめる場合ばあいでも、稲穂いなほが米べい粒つぶに代かわり、「散米さんまい」と称しょうして撒まいたり、白紙はくしに包つつんで「おひねり」として供そなえたりした。さらには、炊たいた飯めしや餅もちとして供そなえるものも現あらわれた。

このような、その年とし初はじめてのものを神かみに供そなえるという初穂はつほの習慣しゅうかんが、後のちに、「初物はつもの」と呼よんでそれを貴たっとんだり、近隣きんりんや知人ちじんの間あいだで初物はつものを贈おくりあったりする習慣しゅうかんに発展はってんした。

関連かんれん項目こうもく

• 田租でんそ
• 玉串たまぐし料りょう
• 神宮じんぐう大麻たいま

外部がいぶリンク

• 『初穂はつほ』 - コトバンク
• 『御ご初穂はつほ』 - コトバンク
• 『初穂はつほ・早さ穂ほ・最さい花はな』 - コトバンク
• 『初穂はつほ料りょう』 - コトバンク