南みなみ嶺みね山脈さんみゃく

南みなみ嶺みね山脈さんみゃく

中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく内ないでの位置いち

南みなみ嶺みね山脈さんみゃく（なんれいさんみゃく、ナンリン山脈さんみゃく、Nanling, 簡体字かんたいじ: 南みなみ岭、拼音: Nánlǐng）は、中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの南部なんぶを東西とうざいに伸のびる山脈さんみゃく。広西ひろせチワン族ぞく自治じち区くおよび広東かんとん省しょうの北部ほくぶ、湖南こなん省しょうおよび江西えにし省しょうの南部なんぶを走はしる中国ちゅうごく南部なんぶ最大さいだいの褶曲しゅうきょく山脈さんみゃくで、長江ながえ水系すいけいと珠江たまえ水系すいけいの分水嶺ぶんすいれいであり、華中かちゅうと華南かなんの境界きょうかいをなしている。南みなみ嶺みね山脈さんみゃくの南側みなみがわ（嶺みね南みなみ、華南かなん）は亜熱帯あねったいの気候きこうで、稲いねの二期作にきさくが盛さかんになっている。

別名べつめいは五ご嶺みね山脈さんみゃく（ごれいさんみゃく、五ご嶺みね）といい、西にしから東ひがしの順じゅんに、越えつ城じょう嶺みね（えつじょうれい）、都と龐嶺（とほうれい）、萌もえ渚なぎさ嶺みね（ほうしょれい）、騎き田た嶺みね（きでんれい）、大だい庾嶺（だいゆれい）の五いつつの山並やまなみが組くみ合あわさっているためこの名ながある。

南みなみ嶺みね山脈さんみゃくは歴史れきし的てきに天然てんねんの障壁しょうへきとなっており、嶺みね南みなみ（広東かんとん省しょうおよび広西ひろせチワン族ぞく自治じち区く）と中原なかはらの間あいだの交通こうつうの妨さまたげであった。嶺みね南みなみには中原なかはらの政治せいじ的てき支配しはいや文化ぶんかが十分じゅうぶんに及およばない時期じきもあり、華北かほくの人間にんげんは嶺みね南みなみを「蛮夷ばんいの地ち」と呼よんできた。唐とう朝あさの宰相さいしょう・張ちょう九きゅう齢よわいが大だい庾嶺を切きり開ひらいて「梅うめ関せき古道ふるみち」を築きずいて以後いご、嶺みね南みなみ地区ちくの開発かいはつがようやく進すすんできた。また古代こだい以来いらいの中国ちゅうごくの統治とうち者しゃたちは南みなみ嶺みねを行政ぎょうせい区画くかくを作つくる上じょうで利用りようしてきており、南みなみ嶺みねは諸しょ省しょう区くの境界きょうかい線せんおよび辺あたり縁えんの地ちとなってきた。

地質ちしつ[編集へんしゅう]

南みなみ嶺みね山脈さんみゃくの構造こうぞうの中心ちゅうしんは花崗岩かこうがんであり、その上うえを覆おおう岩いわ層そうはデボン紀きの硬かた砂岩さがんと石炭せきたん紀きの灰はい岩がんが中心ちゅうしんになっている。南みなみ嶺みねを構成こうせいする山やま体たいはそれぞれ北東ほくとうから南西なんせい方向ほうこうへ走はしるが、山脈さんみゃく全体ぜんたいとしては東西とうざい方向ほうこうへ伸のびている。

南みなみ嶺みねの地勢ちせいは高たかくなく、最高峰さいこうほうは越えつ城じょう嶺みねの猫ねこ児山こやま（「華南かなん第だい一いち峰みね」の別名べつめいがある）で海抜かいばつは2,142メートルである。その他たの主要しゅような山やま峰ほうには、萌もえ渚なぎさ嶺みねの馬うま塘頂（海抜かいばつ1,787メートル）、都と龐嶺の韭にら菜さい嶺みね（海抜かいばつ2,009メートル）、瑤よう山さん（大だい瑤よう山さん）の石いし坑あな崆（海抜かいばつ1,902メートル）などがある。

広東かんとん省しょう北部ほくぶ・仁じん化か県けんにある丹たん霞かすみ山さんは紅あかい断崖だんがいの峰々みねみねが続つづく景勝けいしょう地ちである。赤あかい砂礫されき岩がんの地層ちそうがはっきりと見みえる地ち貌は中国ちゅうごく南部なんぶを中心ちゅうしんに各地かくちで見みられるが、丹たん霞かすみ山さんの名なをとり丹たん霞かすみ地ち貌と呼よばれる。丹たん霞かすみ山さんは国家こっか級きゅう自然しぜん保護ほご区く・国家こっか重点じゅうてん風景ふうけい名勝めいしょう区く・国家こっか地質ちしつ公園こうえんに指定していされており、ユネスコの世界せかい地質ちしつ公園こうえん（ジオパーク）および世界せかい遺産いさん（「中国ちゅうごく丹たん霞かすみ」・自然しぜん遺産いさん）にも登録とうろくされている。

気候きこうと水みず文学ぶんがく[編集へんしゅう]

南みなみ嶺みねは、南北なんぼく方向ほうこうの気流きりゅうを遮さえぎるのに一定いっていの役割やくわりを果はたしており、これにより嶺みね南みなみと嶺みね北きたでは気候きこうなどに一定いっていの相違そういがある。ただし、北きたからの寒気さむけは南みなみ嶺みね山脈さんみゃくの間あいだを通とおっている低ひくい谷たにや峠とうげを超こえて嶺みね南みなみに進入しんにゅうし、嶺みね南みなみに冬ふゆの寒さむさをもたらしている。

南みなみ嶺みね山脈さんみゃく地方ちほうの降水こうすい量りょうは豊富ほうふで、春はると初夏しょかには停滞ていたい前線ぜんせんが山脈さんみゃくの上うえにあり、長ながい時ときでは二にか月げつにわたり前線ぜんせんが居座いすわることもある。これが長ながい梅雨つゆをもたらしている。夏なつから秋あきにかけては台風たいふうの襲来しゅうらいで降水こうすい量りょうは増大ぞうだいし、冬ふゆも前線ぜんせんの通過つうかの影響えいきょうで雨あめが降ふる。

こうした降水こうすい量りょうの多おおさにより無数むすうの河川かせんが南みなみ嶺みね山脈さんみゃくに発はっしている。主おもな川かわには、長江ちょうこう水系すいけいの湘江・贛江、珠江たまえ水系すいけいの桂かつら江こう・北江ほっこう・東江あがりえ・連れん江こう等ひとしがある。

動植物どうしょくぶつ[編集へんしゅう]

南みなみ嶺みね山脈さんみゃくの植生しょくせいは亜熱帯あねったいの常緑じょうりょく広葉樹こうようじゅ林りん（照葉樹しょうようじゅ林りん）を主おもとする。その多おおくは海抜かいばつ800メートル以下いかの山地さんちにあり、主おもな樹き種しゅにはクスノキ、ツバキ、ツツジなどがある。しかし馬尾ばび松まつやコウヨウザンなどの人工じんこう林りんが現在げんざいでは広ひろがっている。

南みなみ嶺みねは野生やせい動物どうぶつも多おおく、トラの一種いっしゅアモイトラ（華南かなん虎とら、現在げんざい野生やせいでは絶滅ぜつめつ状態じょうたい）、ヒョウ、アカオオカミ、ニホンジカ、センザンコウなどが生息せいそくする。主おもな鳥類ちょうるいにはガビチョウ（画が眉まゆ鳥とり）、コウライキジ、シロガシラ（白頭翁はくとうおう）など、主おもな両生類りょうせいるいにはチュウゴクオオサンショウウオ、ヒキガエル、主おもな爬虫類はちゅうるいにはミスジハコガメなどがいる。しかし野生やせい動物どうぶつの乱獲らんかくは絶たえず、多おおくの動物どうぶつが既すでに絶滅ぜつめつしている。

鉱物こうぶつ[編集へんしゅう]

南みなみ嶺みねは鉱産こうさん資源しげんも豊富ほうふで、中国ちゅうごくの非鉄ひてつ金属きんぞく採掘さいくつの中心ちゅうしん地ちである。タングステン、モリブデン、スズ、鉛なまり、亜鉛あえんの埋蔵まいぞう量りょうはとりわけ多おおい。その他た比較的ひかくてき多おおいものには、タンタル、ジルコニウム、イットリウム、ニオブ、スカンジウム、チタンなどの希土類きどるい元素げんそ（レアアース）がある。