在ざい間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかん

在ざい間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかん（ざいかんとうにほんそうりょうじかん、英語えいご: Consulate-General of Japan in Jiandao）は、1909年ねん 9月4日にちに日本にっぽんと清朝せいちょうとの間あいだで結むすばれた間島まじま協約きょうやくにより、同年どうねん11月がつ2日にち、清きよしの延吉のぶよし県けん龍りゅう井村いむら（現在げんざいの中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく吉林きつりん省しょう延のべ辺べ朝鮮ちょうせん族ぞく自治じち州しゅう龍りゅう井い市し）に設置せっちされた日本にっぽんの領事館りょうじかん。1938年ねんに閉鎖へいさされた。

沿革えんかく

日本にっぽんは、間島まじま協約きょうやくで清きよしの間島まじま領有りょうゆう権けんを認みとめる一方いっぽう、朝鮮ちょうせん人じんの間あいだ島とうでの居住きょじゅう権けん、間島まじま総領事館そうりょうじかんを龍りゅう井いに開設かいせつ（および分館ぶんかんを他たに3箇所かしょ）して警察官けいさつかんを駐在ちゅうざいさせる権利けんり、吉よし林りんと朝鮮ちょうせんの会かい寧やすしを結むすぶ鉄道てつどうの敷設ふせつ権けんを手てに入いれた。これに基もとづき、1909年ねんに設置せっちされた。

前史ぜんし

1906年ねん5月がつ1日にちに、日本にっぽんは清きよしの安東あんどう（現げん・丹たん東ひがし）に領事館りょうじかんを開設かいせつした。翌よく6月がつ1日にちには奉天ほうてん（現げん・瀋陽しんよう）に総領事館そうりょうじかんを開館かいかんする^[1]。このあと、11月15日にちには奉天ほうてん総領事館そうりょうじかんの新しん民みん府ふ分館ぶんかんと長春ちょうしゅん分館ぶんかんを^[1]、翌よく1907年ねん3月がつ10日とおかには吉よし林りんに領事館りょうじかんを開設かいせつするなど、短期間たんきかんに複数ふくすうの在外ざいがい公館こうかんを設置せっちした。

吉林きつりん領事館りょうじかん開設かいせつと前後ぜんごして朝鮮ちょうせん駐箚ちゅうさつ軍ぐん司令しれい部ぶ付づけの斉藤さいとう季き治郎じろう中佐ちゅうさが京きょう城じょう（現げん・ソウル特別とくべつ市し）に到着とうちゃくし、4月がつに間島まじま各地かくちを視察しさつした。

1907年ねん8月がつ19日にち、日本にっぽんは延吉のぶよし県けん龍りゅう井村いむらに韓国かんこく統監とうかん府ふ臨時りんじ間島まじま派出所はしゅつじょを設置せっちした。派出所はしゅつじょ長ちょうには斉藤さいとう季き治郎じろうが任命にんめいされる。局きょく子こ街がい・頭あたま道どう溝みぞなど6か所しょに分遣ぶんけん所しょを置おき、憲兵けんぺいと警察官けいさつかんを配属はいぞくした。派遣はけんされたは憲兵けんぺい46名めい、巡検じゅんけん（警察官けいさつかん）10名めいだった。

日本にっぽんは清きよしに対たいし、「該地居住きょじゅうノ韓国かんこく臣民しんみんハ其数已やめニ十じゅう余あまり万まんニ達たちシ彼等かれらハ馬賊ばぞく其他無頼ぶらいノ徒とノ凌しのげ虐しいたげヲ受ケ生命せいめい財産ざいさんノ安やす固かたヲ保ほツ能のうハス韓国かんこく政府せいふニ向こうツテ保護ほごヲ乞フ事ごと切きり」なので、「今こんヤ韓国かんこくノ対外たいがい関係かんけい及韓国かんこく臣民しんみんノ保護ほごニ任にんスルハ帝国ていこく政府せいふノ責務せきむ」として、「韓国かんこくノ懇請こんせい」に応こたえて統監とうかん府ふ吏員りいんを派遣はけんすると通告つうこくした^[2]

10月がつ上旬じょうじゅん、韓国かんこく統監とうかん府ふ臨時りんじ間島まじま派出所はしゅつじょは会かい寧やすし、六道ろくどう溝みぞ（龍りゅう井い）間あいだに里程りてい標しるべを建たてる。だが、1908年ねん3月がつ9日にちに督とく辦吉林りん辺あたり務つとむ大臣だいじんの呉ご禄ろく貞さだが統監とうかん府ふ派出所はしゅつじょが建たてた里程りてい標しるべを抜ぬき去ざり、派出所はしゅつじょはこれに抗議こうぎした。

領事館りょうじかん開設かいせつ

1909年ねん11月1日にち、韓国かんこく統監とうかん府ふ臨時りんじ間島まじま派出所はしゅつじょを廃止はいしし、その翌日よくじつに間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかんが龍りゅう井いに設置せっちされた。鈴木すずき要太郎ようたろうが代理だいり総領事そうりょうじ。初代しょだい総領事そうりょうじは永滝えいたき久吉ひさよし。また間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかん分館ぶんかんを局きょく子こ街がい（現げん・延吉のぶよし）に、11月9日にちに間島まじま総領事館そうりょうじかん頭あたま道どう溝みぞ分館ぶんかんを設置せっちした。1910年ねん2月がつには百草もぐさ溝みぞに間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかん出張所しゅっちょうしょが置おかれた。2018年ねん現在げんざい、頭あたま道どう溝みぞ消防署しょうぼうしょの裏うらに朽くち果はてた頭あたま道どう溝みぞ日本にっぽん領事館りょうじかん分館ぶんかんを見みることが出来できる。

頭あたま道どう溝みぞ日本にっぽん領事館りょうじかん分館ぶんかん
アーチ状じょうの窓まど
屋根やねは日本にっぽん風ふう

領事りょうじ裁判さいばん権けん

日にち清しん間あいだの協約きょうやくで、間島まじま在住ざいじゅうの朝鮮ちょうせん人じんの裁判さいばん権けんは、日本にっぽん側がわが持もつことになった^[3]。1910年ねん4月がつ5日にち、明治めいじ43年ねん法律ほうりつ第だい40号ごう「間島まじまに於おける領事りょうじ官かんの裁判さいばんに関かんする法律ほうりつ」が公布こうふ・施行しこうされる^[3]。それまで、間島まじまにおける裁判さいばんの管轄かんかつ権けんは韓国かんこく統監とうかん府ふ裁判所さいばんしょが保有ほゆうしていた^[3]。この法律ほうりつは日にち韓かん併合へいごう後ごの1911年ねん3月がつに、些少さしょうな語句ごくの変更へんこうのみで明治めいじ44年ねん法律ほうりつ第だい51号ごう「間島まじまにおける領事りょうじ官かんの裁判さいばんに関かんする件けん」に改正かいせいされた^[3]。これらの中なかでは、間島まじま在住ざいじゅうの朝鮮ちょうせん人じんについては、「必要ひつようと認みとめられる場合ばあい」に被疑ひぎ者しゃを朝鮮ちょうせんに移うつすことができ、その場合ばあいは朝鮮ちょうせん総督そうとく府ふ地方裁判所ちほうさいばんしょが裁判さいばん権けんを持もつと規定きていされていた^[3]。

1911年ねん5月がつ9日にち深夜しんや、総領事館そうりょうじかんと90戸こ以上いじょうの日本人にっぽんじん住宅じゅうたくで火災かさいが起おきた。

1916年ねん1月がつ16日にち、朝鮮ちょうせん総督そうとく府ふ裁判所さいばんしょ令れい改正かいせいにより、日本にっぽん間島まじま総領事館そうりょうじかん管轄かんかつの裁判さいばんを咸興地方ちほう法ほう院いんと京きょう城じょう覆審ふくしん法ほう院いんへ移管いかんする。

1919年ねんの三さん・一いち運動うんどうに際さいしては、間島まじまで独立どくりつ運動うんどう首謀しゅぼう者しゃを検挙けんきょした場合ばあい、身柄みがらを朝鮮ちょうせんに送おくることが領事館りょうじかんや朝鮮ちょうせん総督そうとく府ふ、外務省がいむしょうの間あいだで合意ごういされていた^[3]。5月、鈴木すずき要太郎ようたろう・間島まじま総領事そうりょうじは朝鮮ちょうせん軍ぐんの間島まじま派遣はけんを要請ようせいした。5月5日にち、領事館りょうじかんは放火ほうかで一部いちぶを焼失しょうしつした。

閉鎖へいさまで

1920年ねん10月がつ2日にち、第だい2次じ琿春事件じけん（間島まじま事件じけん）が起おき、中国人ちゅうごくじんの馬賊ばぞくが琿春の日本にっぽん領事館りょうじかんを破壊はかいし、日本人にっぽんじん13人にんと朝鮮ちょうせん人じん7人にんを射殺しゃさつした。

1922年ねん6月がつ28日にちには、朝鮮ちょうせん人じん独立どくりつ運動うんどう家かが間あいだ島頭しまがしら道どう溝みぞの日本にっぽん領事館りょうじかん分館ぶんかんを破壊はかいして独立どくりつ運動うんどう家かを脱走だっそうさせる（頭あたま道どう溝みぞ事件じけん）。日本人にっぽんじん2名めいが死亡しぼうし、3名めいが重傷じゅうしょうを負おった。7月12日にちに日本にっぽんは警官けいかん300名めいを派遣はけんする。9月、北京ぺきん政府せいふの外交がいこう部ぶは、間島まじまにおける日本にっぽんの警察けいさつ力りょく拡大かくだいに抗議こうぎするなど、緊張きんちょうが高たかまった。

1922年ねん11月27日にち、龍りゅう井いの間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかんで火災かさいが発生はっせいする。このため、総領事館そうりょうじかんが再建さいけんされ、1926年ねん5月がつに竣工しゅんこうした（現在げんざいは龍りゅう井い市し人民じんみん政府せいふの庁舎ちょうしゃ）。

1927年ねんから1930年ねんには、治安ちあん維持いじ法ほうによって朝鮮ちょうせん共産党きょうさんとう関係かんけい者しゃを検挙けんきょする「間島まじま共産党きょうさんとう事件じけん」が五ご度どにわたって起おきた^[3]。1930年ねん12月、間島まじま領事館りょうじかんは警官けいかんを45名めいに増員ぞういんした。

1932年ねんに日本にっぽんの関東軍かんとうぐんによって満州まんしゅう国こくが建国けんこくされると、間島まじまの地位ちいは新あらたな局面きょくめんを迎むかえた。第だい5次じ間島まじま共産党きょうさんとう事件じけん（間島まじま共産党きょうさんとう暴動ぼうどう）に際さいして、朝鮮ちょうせん側がわの司法しほうに不信ふしん感かんを持もっていた領事館りょうじかんは、残存ざんそんしていた間島まじまの治外法権ちがいほうけんを将来しょうらいは撤廃てっぱいすべきだとも主張しゅちょうした^[3]。

1934年ねん12月、満州まんしゅう国こく政府せいふは、吉林きつりん省しょうに属ぞくしていた延吉のぶよし県けん、汪ひろし清しん県けん、和かず龍りゅう県けん、琿春県けんの４県けんに奉天ほうてん省しょうに属ぞくしていた安やす図ず県けんを加くわえ間島まじま省しょうを創設そうせつ。図ず們市は延吉のぶよし県けんから分離ぶんり独立どくりつし、図ず們に間島まじま日本にっぽん領事館りょうじかん分館ぶんかんが新設しんせつされた。

1937年ねん、間島まじまに対たいする治外法権ちがいほうけんが撤廃てっぱいされる^[3]。1938年ねん3月がつ11日にち、間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかんのほか、通つう化か、敦あつし化か、図ず們の各かく分館ぶんかんを閉鎖へいさし、在ざい間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかん延吉のぶよし分館ぶんかんを領事館りょうじかんに昇格しょうかくさせた。これにより、間島まじま日本にっぽん総領事館そうりょうじかんは開設かいせつから29年ねんで閉鎖へいさされた。

民間みんかん説話せつわ

龍りゅう井いの日本にっぽん総領事館そうりょうじかんを巡めぐっては、中国ちゅうごく朝鮮ちょうせん族ぞくの民間みんかん説話せつわとして「牛うしの皮かわ一いち枚まい」伝説でんせつが知しられている。日本にっぽん領事りょうじが清きよしの長官ちょうかんに対たいし、領事館りょうじかんを建たてるために牛うしの皮かわ一いち枚まい分ぶんの土地とちを求もとめ、長官ちょうかんがわずかな土地とちと思おもってそれを認みとめると、日本人にっぽんじんは牛うしの皮かわを細ほそく切きった革かわ紐ひもにして広ひろい土地とちを囲かこい込こみ豪壮ごうそうな総領事館そうりょうじかんを建たてたというものである。これはカルタゴの建国けんこく神話しんわと同類どうるいの伝説でんせつであり、ヨーロッパだけでなく、フィリピン、台湾たいわん、中国ちゅうごく、日本にっぽんなど世界中せかいじゅうに類るい話ばなしが見みられる^[4]。