月岡つきおか耕こう漁りょう

月岡つきおか 耕こう漁りょう（つきおか こうぎょ、明治めいじ2年ねん3月7日にち〈1869年ねん4月がつ18日にち〉 - 昭和しょうわ2年ねん〈1927年ねん〉2月がつ25日にち）は、明治めいじ時代じだいから大正たいしょう時代じだいにかけての浮世絵うきよえ師し・日本にっぽん画家がか。能のう版画はんが家かとして知しられている。

来歴らいれき

「都みやこの錦にしき　母衣ほろ引」　明治めいじ34年ねん（1901年ねん）。耕こう漁りょう画が。

月岡つきおか芳年よしとし、尾形おがた月耕げっこうおよび松本まつもと楓湖ふうこの門人もんじん。姓せいは羽生はぶ、後のちに坂巻さかまき、名なは弁べん之の助すけ。坂巻さかまきは母方ははかたの姓せいである。東京とうきょう日本橋にほんばしの旅籠はたご屋や近江おうみ屋やを営いとなむ羽生はぶ善よし兵衛ひょうえと母はは、坂巻さかまき泰やすしの次男じなんに生うまれる。初はじめ12歳さいで、横浜よこはまで輸出ゆしゅつ品ひんを生業せいぎょうとする伯父おじの宮内くない林谷はやしだにに陶器とうきの絵付えつけを3年間ねんかん学まなび、さらに東京とうきょう府ふ画が学がく伝習でんしゅう所しょに入はいって結城ゆうき正明まさあきにも学まなぶ。明治めいじ20年ねん（1887年ねん）母ははの泰たいが芳年ほうねんと再婚さいこんをしたため芳年ほうねんの門もんに入はいり年ねん久ひさと号ごうし、次ついで明治めいじ22年ねん（1889年ねん）ごろ尾形おがた月耕げっこうに師事しじし耕こう漁りょうの名なを、松本まつもと楓湖ふうこに師事しじし湖畔こはんの名なを受うけている。

明治めいじ23年ねん（1890年ねん）日本にっぽん美術びじゅつ協会きょうかいに「反魂香はんごんこう図ず」を出品しゅっぴんし褒状ほうじょう、以後いご毎年まいとし展覧てんらん会かいに出品しゅっぴんししばしば賞しょうを受うけている。明治めいじ27年ねん（1894年ねん）、日にち清しん戦争せんそうの辺あたりから錦絵にしきえも手掛てがけ始はじめ、能楽のうがく関係かんけいの作品さくひんを多おおく描えがいた。浮世絵うきよえといえば歌舞伎かぶき役者やくしゃ絵えが主流しゅりゅうを占しめる中なか、能のう「融とおる」、「二人静ふたりしずか」、「敦盛あつもり」などの舞台ぶたい風景ふうけいに取材しゅざいした能楽のうがく画がを描えがいており、水彩すいさい画がのような表情ひょうじょうを持もち、上質じょうしつな紙かみ、絵具えのぐ、金銀きんぎん泥どろをも使用しようする贅ぜいを尽つくした優美ゆうびな作品さくひんが多おおい。木版もくはんの能楽のうがく絵え「能楽のうがく百ひゃく番ばん」や「能楽のうがく図絵ずえ」、「能楽のうがく大鑑たいかん」が有名ゆうめいである。また肉筆にくひつでも人物じんぶつ画が、花鳥かちょう画がを得意とくいとし、日月じつげつ会かいや日本にっぽん画会がかいなどに加くわわり活躍かつやくした。明治めいじ40年ねん（1907年ねん）の文展ぶんてん開設かいせつ時じには、旧派きゅうはの正せい派は同志どうし会かいに参加さんかしている。明治めいじ44年ねん（1911年ねん）ごろ母親ははおやの遺言ゆいごんにより、義父ぎふの芳年ほうねんの跡あとを継つぎ月岡つきおかの姓せいを名乗なのる。昭和しょうわ2年ねん（1927年ねん）、宇都宮うつのみやの能のう舞台ぶたい開びらきの帰かえりに倒たおれ、同年どうねん2月がつ25日にち死去しきょ。享年きょうねん59。墓所はかしょは東京とうきょう都と新宿しんじゅく区く新宿しんじゅくの専福寺せんぷくじ。法名ほうみょうは天てん祥さち院いん耕こう漁りょう日び賢けん信士しんじ。なお、長女ちょうじょの月岡つきおか玉たま瀞とろも能のう画がを得意とくいとした。弟子でしに松野まつの奏そう風ふうなど。

明治めいじ大正たいしょう期きに活躍かつやくした能のう画がの名手めいしゅであった。耕こう漁りょうには「能楽のうがくを題材だいざいとせる絵画かいが」と題だいして大正たいしょう元年がんねん（1912年ねん）10月がつの『書画しょが骨董こっとう雑誌ざっし』に能楽のうがく絵えについて語かたった一文いちぶんがある。それは「能楽のうがく絵えは能のうの決きまりを守まもらなければならないが、細部さいぶにあまりこだわるべきではなく、写生しゃせい一点張いってんばりではいけない、自分じぶんが能のう画がを描えがくのも能のうのもつ典雅てんがな趣味しゅみに強つよく惹ひかれるからだ」と、能のう画がにおける誇ほこりを込こめて語かたっている。

作品さくひん

• 「謡曲ようきょく竹ちく雪ゆき図ず」　絹本けんぽん着色ちゃくしょく　東京とうきょう国立こくりつ博物館はくぶつかん所蔵しょぞう
• 「紅葉狩もみじがり」　絹本けんぽん着色ちゃくしょく　常楽寺じょうらくじ美術館びじゅつかん所蔵しょぞう　大正たいしょう13年ねん（1924年ねん）　2年ねん後ご常楽寺じょうらくじへ奉納ほうのう
• 「道成寺どうじょうじ鱗うろこ落之図ず」　絹本けんぽん着色ちゃくしょく　道成寺どうじょうじ所蔵しょぞう　製作せいさく年ねん不明ふめい　昭和しょうわ2年ねん正月しょうがつに耕たがやせ漁りょう自身じしんが奉納ほうのう
• 「道成寺どうじょうじ能面のうめん図ず」　紙かみ本ほん着色ちゃくしょく　道成寺どうじょうじ所蔵しょぞう　絶筆ぜっぴつ
• 「奉天ほうてん府ふ城ぐすく外がい我わが将校しょうこう勇いさむ力つとむ之これ図ず」　大だい錦にしき3枚まい続つづけ　明治めいじ27年ねん(1894年ねん)　大だい英えい図書館としょかん所蔵しょぞう
• 「大だい日本にっぽん名誉めいよ奇談きだん」　大だい錦にしき3枚まい続つづけ　明治めいじ27年ねん
• 「日本にっぽん歴史れきし抜撰　美濃みの樵きこり夫おっと」　大だい錦にしき3枚まい続つづけ　明治めいじ28年ねん（1895年ねん）
• 「奠都てんと三さん十じゅう年ねん祝賀会しゅくがかい丸まるの内うち式場しきじょうの図ず」　大だい錦にしき3枚まい続つづけ　明治めいじ31年ねん（1898年ねん）
• 「能楽のうがく図絵ずえ」250番ばん 木版もくはん画が 明治めいじ32年ねん（1899年ねん）から明治めいじ34年ねん（1901年ねん）
• 「能楽のうがく百ひゃく番ばん」　木版もくはん画が　大正たいしょう11年ねん（1922年ねん）から大正たいしょう14年ねん（1925年ねん）
• 「能楽のうがく大鑑たいかん」全ぜん5巻かん　木版もくはん画が　大正たいしょう14年ねんから昭和しょうわ5年ねん（1930年ねん） 精美せいび書院しょいん版ばん
• 「狂言きょうげん五ご十じゅう番ばん」1冊さつ（木版もくはん画が全ぜん50枚まい・目録もくろく） 昭和しょうわ初期しょき 大黒屋だいこくや版ばん ※月岡つきおか玉たま瀞とろと共とも画が
• 「能面のうめん 般若はんにゃ」 銀ぎん彩いろどり 絵葉書えはがき
• 「能面のうめん 翁おきな」 銀ぎん彩いろどり 絵葉書えはがき

参考さんこう文献ぶんけん

• 日本にっぽん浮世絵うきよえ協会きょうかい編へん　『原色げんしょく浮世絵うきよえ大だい百科ひゃっか事典じてん』第だい2巻かん　 大修館書店たいしゅうかんしょてん、1982年ねん
• 吉田よしだ漱　『浮世絵うきよえの見方みかた事典じてん』　北辰ほくしん堂どう、1987年ねん
• 城西国際大学じょうさいこくさいだいがく水田すいでん美術館びじゅつかん編集へんしゅう・発行はっこう　『近代きんだいの能のう画家がか 月岡つきおか耕こう漁りょう展てん』　2005年ねん9月がつ　※展覧てんらん会かい図録ずろく
• 美術びじゅつ誌し『Bien（美よし庵あん）』Vol.45（2007年ねん秋あき号ごう　藝術げいじゅつ出版しゅっぱん社しゃ）　特集とくしゅう「尾形おがた月耕げっこうとその一門いちもん」　岩切いわきり信一郎しんいちろう・悳とく俊彦としひこ・瀬木せき慎一しんいち・福富ふくとみ太郎たろう・桃もも投とう伸二しんじ　恵比寿えびす堂どうギャラリー／ギャラリー紅屋べにや　http://geijutsu.la.coocan.jp/japanesebian_backissue.html　　ISBN-978-4-434-10956-0
• 堀川ほりかわ浩之ひろゆき 「仙台せんだいの浮世絵うきよえ師し・熊耳くまがみ耕こう年ねんの“月岡つきおか芳年よしとし塾じゅく入門にゅうもん記き”」　国際こくさい浮世絵うきよえ学会がっかい 『浮世絵うきよえ芸術げいじゅつ』 171号ごう所収しょしゅう、2016年ねん1月がつ

外部がいぶリンク

• 描えがかれた日にち清しん戦争せんそう ～錦絵にしきえ・年ねん画がと公文書こうぶんしょ～(ギャラリーページ) アジア歴史れきし資料しりょうセンター・大だい英えい図書館としょかん共同きょうどうインターネット特別とくべつ展てん