基壇きだん

法隆寺ほうりゅうじ金堂こんどう。階段かいだんが付ついている石いし貼ばり部分ぶぶんが基壇きだん。切石きりいし積せき二に重じゅう基壇きだん。

基壇きだん（きだん）とは、主おもに伝統でんとう的てきな礎石そせき建築けんちくにみられる建物たてものの荷重かじゅうを地面じめんに伝つたえる部位ぶい。基壇きだんと礎石そせきは、現代げんだい建築けんちくの基礎きそに相当そうとうする。本ほん記事きじは亀かめ腹はら（かめばら）についても触ふれる。

概説がいせつ

日本にっぽんには飛鳥あすか時代ときよに寺院じいん建築けんちくの技術ぎじゅつとして大陸たいりくから伝来でんらいした。古墳こふん時代じだいまでの日本にっぽんの建築けんちくは草葺くさぶきや板葺いたぶきの屋根やねで重量じゅうりょうが軽かるく、掘立柱ほったてばしら建物たてものがほとんどであった。しかし仏教ぶっきょう寺院じいんは重おもい瓦かわらを屋根やねに載のせるため、この荷重かじゅうを支ささえるために地面じめんを固かためたうえで礎石そせきを据すえ、その上うえに柱はしらを立たてた。これを礎石そせき建築けんちくという。なかでも仏教ぶっきょう寺院じいんの金堂こんどうや仏塔ぶっとう、宮殿きゅうでんの大極殿たいきょくでん、官衙かんがの正殿せいでんなど主要しゅような建築けんちく物ぶつでは地面じめんよりも高たかく土どを盛もって締しめ固かため、建物たてもの内部ないぶへの水みずの侵入しんにゅうを防ふせぎつつ見栄みばえを良よくした。この土どを高たかく盛もった部分ぶぶんが基壇きだんである。版はん築ちくで作つくられる基壇きだんは強固きょうこであるため、古代こだい寺院じいんの発掘はっくつで基壇きだんが検出けんしゅつされることが少すくなくない。

8世紀せいき以降いこうに登場とうじょうする床ゆか貼ばりの建物たてものでは、基壇きだんは亀かめ腹はらに変化へんかした。中世ちゅうせい以降いこうでも床ゆかが土間どま仕上しあげである禅宗ぜんしゅう寺院じいんでは基壇きだんが作つくられたが、他宗たしゅうの本堂ほんどうなどでは床ゆか張ばりになったため少すくなくなっていった。

造つくり方かた

基壇きだんの摸式もしき断面だんめん（壇だん上積うわづみ）

解体かいたい修理しゅうり中ちゅうに基壇きだん外装がいそうが外はずされた薬師寺やくしじ東ひがし塔とうの基壇きだん

基壇きだんは砂すな質しつ土どと粘ねば質しつ土どを交互こうごに突とっき固かためる版はん築ちくによって造つくられる。軟弱なんじゃくな地盤じばんの場合ばあいは基壇きだんの範囲はんいを掘ほって地下ちかから版はん築ちくを積つみ固かためていた。この地下ちか部分ぶぶんを堀込ほりごみ地ち業ぎょうと呼よび、地上ちじょう部分ぶぶんの基壇きだんと区別くべつされる。堀込ほりごみ地ち業ぎょうは奈良なら時代じだい以前いぜんに多おおく見みられ、より古ふるい時代じだいのほうが丁寧ていねいに行おこなわれる傾向けいこうがある。たとえば吉備きび池ち廃寺はいじ（639年ねん発願ほつがん）では堀込ほりごみ地ち業ぎょう内ないに入はいり込こんだ雨水あまみず・湧水わきみずを排水はいすいするための溝みぞが基壇きだん周囲しゅういに掘ほられ、近ちかくの排水溝はいすいこうまで接続せつぞくされていた。

基壇きだん部分ぶぶんを造つくる際さいは、外縁がいえん部分ぶぶんはなだらかな斜面しゃめん状じょうに突とっき固かためるが、建物たてものの完成かんせい後ごにほぼ垂直すいちょくに削けずり落おとして基壇きだん外装がいそう（基壇きだん化粧けしょう）で仕上しあげる。外装がいそう材ざいと版はん築ちくの間あいだには裏うら込こみ土どを入いれ、外装がいそうを固定こていする。この垂直すいちょく部分ぶぶんの外装がいそうをどのような素材そざいで作つくるかによって、基壇きだんは壇上だんじょう（正ただし）積せき・切石きりいし積せき・乱らん石積いしつみ・瓦かわら積せき・木製もくせいなどに分類ぶんるいされる。このうち壇だん上積うわづみは束たば石せき・羽目はめ石せき・地ち覆くつがえ石いしなどからなり、最もっとも格式かくしきが高たかい仕上しあげである。飛鳥あすか時代じだいの建築けんちくで現存げんそんする壇だん上積うわづみは無ないが、これから束たば石せきを除のぞいた切石きりいし積せきには法隆寺ほうりゅうじ金堂こんどう・薬師寺やくしじ金堂こんどうなどがある。また法隆寺ほうりゅうじ金堂こんどうのように、基壇きだんが2段だん（上成うえなし・下成しもなり）で構成こうせいされるものを二に重じゅう基壇きだんという。二に重じゅう基壇きだんは飛鳥あすか地方ちほうを中心ちゅうしんに多おおく、下成しもなり部ぶを玉石ぎょくせきで簡略かんりゃく化かしたものも少すくなくない。また基壇きだんの上面うわつらも切石きりいし・塼・瓦かわら・漆喰しっくい・叩はたき床ゆかなどで仕上しあげられる。

基壇きだんに礎石そせきを据すえるタイミングは、築造ちくぞう中ちゅうに据すえる場合ばあいと、一度いちど築きずいた基壇きだんに穴あなを掘ほって据すえる場合ばあいがある。いずれの場合ばあいも礎石そせきを据すえる高たかさよりも基壇きだんの仕上しあげ高たかさの方ほうを高たかく仕上しあげることが多おおい。また法ほう塔とうの心しん柱ばしらを支ささえる心しん礎いしずえは完全かんぜんに基壇きだん下かに埋うまっている場合ばあい（地下ちか式しき）もある。地下ちか式しき心こころ礎いしずえは7世紀せいきが中心ちゅうしんで、現存げんそんするのは法隆寺ほうりゅうじ五重塔ごじゅうのとうのみである。

基壇きだんを持もつ建物たてものの内部ないぶは土間どま（土足どそく）だが、8世紀せいきごろから建物たてもの内ないに床ゆかが張はられるようになると基壇きだんは床下ゆかしたに隠かくれるように設もうけられ、白しろ漆喰しっくいで固かためられるようになった。これを亀かめ腹ばらという。亀かめ腹はらは、建物たてもの周囲しゅういをめぐる縁えんで保護ほごされており、基壇きだん外装がいそうを省略しょうりゃくした形式けいしきと考かんがえられる。併あわせて外縁がいえん部分ぶぶんを削けずり落おとさずなだらかに仕上しあげられる事ことが多おおく、全体ぜんたいが饅頭まんじゅう型がたを呈ていするものもある。

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  百済寺くだらでらの東ひがし塔とうの壇だん上積うわづみ基壇きだん
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  美濃みの国分寺こくぶんじの金堂こんどうの塼積基壇きだん
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  三河みかわ国分こくぶ尼寺あまでらの金堂こんどうの乱らん石積いしつみ基壇きだん
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  西条さいじょう廃寺はいじの塔とうの瓦かわら積せき基壇きだん
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  法隆寺ほうりゅうじ聖霊せいれい院いん（左ひだり手前てまえ）の亀かめ腹はら

参考さんこう文献ぶんけん

• 海野うみの聡さとし 著ちょ「基礎きそ」、平井ひらい聖きよし 編へん『日本にっぽんの建築けんちく文化ぶんか事典じてん』丸善まるぜん出版しゅっぱん、2020年ねん。ISBN 978-4-621-30408-2。 
• 箱はこ﨑和久かずひさ 著ちょ「基壇きだんとその構造こうぞう」、坂本さかもと功いさお 編へん『図説ずせつ日本にっぽん木造もくぞう建築けんちく事典じてん-構法の歴史れきし』朝倉書店あさくらしょてん、2018年ねん。ISBN 978-4-254-26645-0。