大神おおがみ虎とら主ぬし

凡例はんれい 大神おおがみ虎とら主ぬし
時代じだい	平安へいあん時代じだい初期しょき - 前期ぜんき
生誕せいたん	延のべ暦れき17年ねん（798年ねん）
死没しぼつ	貞さだ観かん2年ねん12月29日にち（861年ねん2月がつ12日にち）
官位かんい	従したがえ五ご位い下か・内うち薬くすり正ただし
主君しゅくん	仁明天皇にんみょうてんのう→文徳ふみのり天皇てんのう→清和せいわ天皇てんのう
氏族しぞく	神かみ直ただし→大神おおがみ朝臣あそん

大神おおがみ 虎とら主ぬし（おおみわ の とらぬし）は、平安へいあん時代じだい初期しょきから前期ぜんきにかけての貴族きぞく・医師いし。姓せいは神かみ直ただしのち大神おおがみ朝臣あそん。官位かんいは従したがえ五ご位い下か・内うち薬くすり正ただし。

経歴けいれき

承うけたまわ和わ2年ねん（835年ねん）左ひだり近衛このえ医師いしに任にんぜられ、のち仁明天皇にんみょうてんのうの侍医じいとなった。仁明にんみょう朝ちょう末まつの承うけたまわ和わ15年ねん（848年ねん）外そと従したがえ五ご位い下かに叙じょせられる。

文徳ふみのり朝あさでも引ひき続つづき侍医じいを務つとめる傍かたわら、斉ひとし衡元年がんねん（854年ねん）三河みかわ掾じょう、斉ひとし衡2年ねん（855年ねん）備後びんご介かい、天てん安やす元年がんねん（857年ねん）伊予いよ権けん掾じょうと地方ちほう官かんを兼帯けんたいし、斉ひとし衡3年ねん（856年ねん）内うち位いの従したがえ五ご位い下かに叙じょせられる。また、斉ひとし衡元年がんねん（854年ねん）には、一族いちぞくの木き並なみ・己おのれ井いらと共ともに、神かみ直ただしから大神おおがみ朝臣あそんへ改姓かいせいしている。

清和せいわ朝ちょうに入はいり、貞さだ観かん2年ねん11月（861年ねん1月がつ）侍医じいから内うち薬やく正まさに転てんじるが、同年どうねん12月がつ29日にち卒去そっきょ。享年きょうねん63。最終さいしゅう官位かんいは従したがえ五ご位い下か行内こうない薬やく正せい。

仁明にんみょう・文徳ふみのり・清和せいわの三さん朝あさに亘わたって侍医じいを務つとめ、物部ものべ広ひろ泉いずみ・菅原すがわら峯みね嗣らと共ともに『金きむ蘭方らんぽう』50巻かんを編纂へんさんした。

人物じんぶつ

幼おさない頃ころから才知さいちが優すぐれ物事ものごとを良よく理解りかいしていた。医学いがくを学まなび、鍼や薬くすりの技術ぎじゅつについて殆ほとんどその奥義おうぎを究きわめたという。虎とら主ぬしの処置しょちはき目きめがあり、人々ひとびとは皆みなその治療ちりょうを求もとめたなどの逸話いつわがあり、名医めいいであった物部ものべ広ひろ泉いずみの死後しご、虎とら主ぬしはその後ごを継ついで医療いりょう技術ぎじゅつの声望せいぼうが高たかかった。

戯じゃれが好すきな性格せいかくで、良よく冗談じょうだんを言いっていた。ある時とき、禁中きんちゅうを退出たいしゅつして地黄じおう煎せんじを作つくる場所ばしょに向むかう途中とちゅうで友人ゆうじんと出会であった。その友人ゆうじんがどこに行いくのかと問とうたところ、虎とら主ぬしは「天皇てんのうの命いのちを奉ほうじて地黄じおうの所ところへ向むかう」と答こたえたという。

官かん歴れき

『六ろく国史こくし』による。

• 承うけたまわ和わ2年ねん（835年ねん） 日付ひづけ不ふ詳しょう：左ひだり近衛このえ医師いし
• 時期じき不ふ詳しょう：侍医じい
• 時期じき不ふ詳しょう：正せい六ろく位い上じょう
• 承うけたまわ和わ15年ねん（848年ねん） 正月しょうがつ7日にち：外そと従したがえ五ご位い下か
• 斉ひとし衡元年がんねん（854年ねん） 3月がつ14日にち：三河みかわ掾じょう。10月22日にち：神かみ直ただしから大神おおがみ朝臣あそんへ改姓かいせい
• 斉ひとし衡2年ねん（855年ねん） 2月がつ15日にち：兼けん備後びんご介かい
• 斉ひとし衡3年ねん（856年ねん） 正月しょうがつ7日にち：従したがえ五ご位い下か
• 天てん安やす元年がんねん（857年ねん） 正月しょうがつ14日にち：兼けん伊予いよ権けん掾じょう
• 貞さだ観かん2年ねん（860年ねん） 11月17日にち：内うち薬くすり正ただし、止とめ侍医じい。12月29日にち：卒去そっきょ（従したがえ五ご位い下か行内こうない薬やく正ただし）

参考さんこう文献ぶんけん

• 武田たけだ祐吉ゆうきち、佐藤さとう謙三けんぞう訳わけ『読よみ下くだし 日本にっぽん三さん代だい実録じつろく 上巻じょうかん』戎えびす光ひかり祥さち出版しゅっぱん、2009年ねん