如宝

如宝（にょほう、生年せいねん不ふ詳しょう - 弘ひろし仁ひとし6年ねん1月がつ7日にち（815年ねん2月がつ19日にち））は、奈良なら時代じだいから平安へいあん時代じだいにかけての律りつ宗むねの渡来とらい僧そう。胡えびす国こく（西域せいいきか）の人ひとで、鑑真がんじんの随員ずいいんとして日本にっぽんを訪おとずれた。鑑真がんじん死し後ごに唐招提寺とうしょうだいじの長老ちょうろうとなり、その発展はってんに尽力じんりょくした。安やす如宝ともいう。

生涯しょうがい

出生しゅっしょうから来日らいにちまで

『唐から大和やまと上じょう東征とうせい伝でん』によれば胡えびす国こくの人ひと。「胡えびす」は多おおくの場合ばあい西域せいいきを指さすが、唐とうの人ひとから異境いきょうの民みんを指さす総称そうしょうであるため、特定とくていできない。後述こうじゅつのように彼かれは「安やす如宝」とも呼よばれており、「安やす」は俗姓ぞくせいとされる。このことから中央ちゅうおうアジアのサマルカンド地方ちほうの安国やすくに（現在げんざいのブハラ。ソグド系けいの国くに）出身しゅっしんとする説せつ、あるいは安息あんそく国こく（パルティア）出身しゅっしんの可能かのう性せいを考慮こうりょする説せつがある。

生年せいねんも不明ふめいであるが、『招提千載せんざい伝記でんき』には「居きょ扶桑ふそう六ろく十じゅう余よ年ねん、齢よわい迨八旬しゅん云うん」とあり、仮かりに80歳さいちょうどで遷化せんげしたとすれば開ひらき元もと24年ねん/天平てんぺい8年ねん（736年ねん）の生うまれとなる。

父母ちちははと「胡えびす」から唐とうに渡わたったか、「胡えびす」出身しゅっしんの父母ちちははが唐とうに至いたって如宝を儲もうけたかは不明ふめいであるが、唐とうで幼少ようしょう期きを過すごしたと見みられる。いつの頃ころよりか、楊州を中心ちゅうしんに活動かつどうしていた律りつ宗むねの僧そう鑑真がんじんに師事しじするようになった。ここで「如宝」ないしは「安やす如宝」という法名ほうみょうで呼よばれるようになった。ただし唐とうでは正規せいきの僧そうではなく、沙弥さやもしくは優ゆう婆ばば塞ふさがであったろうとされる。

天宝てんぽう12載の（753年ねん）、鑑真がんじんは6度目どめの日本にっぽん渡航とこうに挑いどんだ。如宝は随員ずいいんに加くわわり、唐とうを離はなれた。

日本にっぽんにおいて

天平てんぴょう勝かち宝たから6年ねん（754年ねん）2月がつ、鑑真がんじんと平城京へいじょうきょうに入はいった。同年どうねん4月がつ、東大寺とうだいじ大仏殿だいぶつでん前まえで盛大せいだいな受戒じゅかいの儀ぎが行おこなわれた際さい、如宝も受戒じゅかいして正規せいきの僧そうとなり、僧籍そうせきは薬師寺やくしじに置おかれた。

天平てんぴょう勝かち宝たから7歳さい（755年ねん）より鑑真がんじんは東大寺とうだいじ戒壇かいだん院いんの北きたの唐から禅ぜん院いんに住じゅうしたが、天平てんぴょう宝たから字じ3年ねん（759年ねん）に唐から禅ぜん院いんを弟子でしの法ほう進すすむに譲ゆずり、平城京へいじょうきょう右京うきょうの新しん田部たなべ親王しんのう旧きゅう邸やしき地ちを与あたえられて戒院を興おこし、「唐から律りつ招提」の名なを掲かかげた（のちの唐招提寺とうしょうだいじ）。如宝もこの時とき、鑑真がんじんと東大寺とうだいじを去さった。天平てんぴょう宝たから字じ7年ねん（763年ねん）、鑑真がんじんは唐招提寺とうしょうだいじで没ぼっする。

鑑真がんじんが没ぼっするまでの如宝の所在しょざいははっきりしない。『招提千載せんざい伝記でんき』によれば、下野しもの薬師寺やくしじにあり、鑑真がんじんの臨終りんじゅうに際さいして呼よび寄よせられたという。ただし「薬師寺やくしじ僧そう」とあるのを下野げや薬師寺やくしじと誤認ごにんされたとして下野げや下向げこうを否定ひていする説せつもある。斉藤さいとう孝たかしは、鑑真がんじんの側がわ近ちかくにあって平城京へいじょうきょうで帰依きえ者しゃを増ふやしていたのではないかとする。

唐招提寺とうしょうだいじ造営ぞうえい

唐招提寺とうしょうだいじ金堂こんどうは如宝のもとで造営ぞうえいされた。

『招提寺てら建立こんりゅう縁起えんぎ』には、如宝が鑑真がんじんの跡あとを継ついで伽藍がらんを造営ぞうえいしたように描えがかれているが、『招提寺てら建立こんりゅう縁起えんぎ』を編纂へんさんした豊安とよやすは如宝の弟子でしである点てんに注意ちゅういが必要ひつようである。『三国仏法伝通縁起』『律りつ苑えん僧そう宝伝ほうでん』『招提千載せんざい伝記でんき』では、如宝が鑑真がんじんより親したしく寺てらを託たくされたと記しるすが、同時どうじに義ぎ静せい・法ほう載のにも後事こうじを託たくし、3人にんの協力きょうりょくによって経営けいえいが行おこなわれたとも記しるす。

如宝は、唐招提寺とうしょうだいじの外そと護まもる者しゃを獲得かくとくし、唐招提寺とうしょうだいじの伽藍がらんを造営ぞうえいした。鑑真がんじん生前せいぜんの唐招提寺とうしょうだいじは教学きょうがくの研鑽けんさんに必要ひつような講堂こうどうのみ（それも内裏だいりの古こ材ざいを譲ゆずり受うけたもの）であり、現代げんだい見みられる唐招提寺とうしょうだいじの伽藍がらんは如宝によって整備せいびされている。また、東大寺とうだいじと唐招提寺とうしょうだいじの和解わかいや、唐招提寺とうしょうだいじの官かん寺てら化かに成功せいこう。律りつ宗むねの高揚こうように尽力じんりょくした。

延のべ暦れき16年ねん（797年ねん）、律師りっしに任にんじられる。延のべ暦れき23年ねん（804年ねん）正月しょうがつ23日にちには「如宝言上ごんじょう」を提出ていしゅつ、戒律かいりつ道場どうじょうとしての唐招提寺とうしょうだいじの復興ふっこうを求もとめ、朝廷ちょうていから封ふう戸ど50戸こを獲得かくとくしている。大同だいどう元年がんねん（806年ねん）、少しょう僧都そうずに任にんじられた。

弘ひろ仁じん6年ねん（815年ねん）正月しょうがつ7日にち没ぼつ。唐招提寺とうしょうだいじは弟子でしの豊安とよやすに譲ゆずられた。「日本にっぽん後ご紀き」の卒そつ伝でんによれば、戒律かいりつを厳守げんしゅし、大国たいこくの風格ふうかくがあったという。

交友こうゆうと影響えいきょう

40歳さいほど年少ねんしょうの空海くうかいとは親したしい間柄あいだがらであった。封ふう戸ど50戸こを得えた際さいのお礼れいの表おもて文ぶんを、空海くうかいが如宝に代かわって執筆しっぴつしており、これ以前いぜんより空海くうかいは唐招提寺とうしょうだいじと朝廷ちょうていとを仲介ちゅうかいする役割やくわりを果はたしていたと見みられる。

鑑真がんじんは一般いっぱんに律りつ宗むねの僧そうとして知しられるが、天台てんだい三さん部ぶ経けい（法華ほっけ玄げん義よし・法華ほっけ文句もんく・摩ま訶止観かん）も将来しょうらいしており、鑑真がんじんの教学きょうがくは律りつと天台てんだいの二に本ほん柱ばしらからなっていた（このほか、禅ぜんの法門ほうもんも伝つたえている）。如宝も律りつ学がくの忠実ちゅうじつな信奉しんぽう者しゃであり、律りつの弘通ぐずうに身みを捧ささげたが、のちには鑑真がんじんやその弟子でしら共々ともども天台てんだい学がくの広通ひろみち者しゃとして評価ひょうかされている。

参考さんこう文献ぶんけん

• 斉藤さいとう孝たかし「唐招提寺とうしょうだいじと如宝 : その美術びじゅつ史し的てき意義いぎ」『人文じんぶん論究ろんきゅう』第だい16巻かん第だい4号ごう、1966年ねん、2020年ねん2月がつ5日にち閲覧えつらん。 

関連かんれん作品さくひん

• 唐招提寺とうしょうだいじ1200年ねんの謎なぞ〜天平てんぴょうを駆かけぬけた男おとこと女おんなたち - テレビドラマ、2009年ねん、TBS、演えんじ：中村なかむら獅童しどう

関連かんれん項目こうもく

• 有史ゆうし時代じだいにおける各国かっこくの出身しゅっしん人物じんぶつによる最初さいしょ期きの来日らいにちの年表ねんぴょう