学習がくしゅう館かん

学習がくしゅう館かん（がくしゅうかん）は、江戸えど時代じだい後期こうきに紀伊きい国こく紀州きしゅう藩はんに設もうけられた藩校はんこう。現存げんそんはしておらず、株式会社かぶしきがいしゃ世界せかい一統いっとう和歌山わかやま本社ほんしゃの敷地しきち内ないに碑いしぶみが建たてられている。

沿革えんかく[編集へんしゅう]

紀州きしゅう藩はんでの儒学じゅがく教育きょういくの開始かいし[編集へんしゅう]

徳川とくがわ頼宣よりのぶが登用とうようした那な波は活かつ所しょにより、寛永かんえい12年ねん（1635年ねん）以降いこうには紀州きしゅう藩はんでの家臣かしんに対たいする儒学じゅがく教育きょういくが始はじまっている。しかし、好こう学者がくしゃが儒者じゅしゃの家いえに出向でむいて教おしえを乞こうという形式けいしきであった。

講堂こうどう[編集へんしゅう]

正徳まさのり3年ねん（1713年ねん）、徳川とくがわ吉宗よしむねが一般いっぱん的てきな儒学じゅがく振興しんこうのために湊みなとに講堂こうどうを開設かいせつした。仁斎じんさい学がく者もの・蔭山かげやま東門ひがしもんや朱子学しゅしがく者もの・祇園ぎおん南海なんかいが講義こうぎを行おこない、庶民しょみんを含ふくめて170～180人にんが聴衆ちょうしゅうとして訪おとずれたという。『紀州きしゅう政事せいじ草そう』や『紀州きしゅう政事せいじ鏡きょう』も講堂こうどうについて記しるしているが、一般いっぱん的てきに偽書ぎしょとされ内容ないように信頼しんらい性せいがないため、詳細しょうさいは不明ふめいである。その後ご、講堂こうどうは荒廃こうはいしたという。

城内きうち・評定ひょうじょう所しょでの講釈こうしゃく[編集へんしゅう]

安永やすなが5年ねん（1776年ねん）、徳川とくがわ治貞はるさだは藩政はんせい改革かいかくに際さいし、家臣かしん団だんに思想しそう的てき統制とうせいを行おこなうために和歌山わかやま城じょう内うちと評定ひょうじょう所しょでの学問がくもん講釈こうしゃくを触ふれ出だし、仁斎じんさい学者がくしゃ・伊藤いとう蘭嵎らんぐうや朱子学しゅしがく者しゃ・祇園ぎおん餐霞などの講釈こうしゃく日割ひわりを定さだめた。学問がくもんに精進しょうじんした者ものには褒美ほうびが下くだされるようになっていたが、天明てんめいの大だい飢饉ききんにより治貞はるさだの藩政はんせい改革かいかくは挫折ざせつし、講堂こうどうの復興ふっこうはならなかった。

学習がくしゅう館かん[編集へんしゅう]

寛政かんせい2年ねん（1790年ねん）、徳川とくがわ治寶はるとみは藩政はんせい改革かいかくの一環いっかんとして、湊みなとの講堂こうどうの増ぞう改築かいちくに着手ちゃくしゅし、翌よく寛政かんせい3年ねん（1791年ねん）に完成かんせいし学習がくしゅう館かんに改名かいめいした。試験しけんはこの頃ころから始はじまったらしいが、詳細しょうさいは不明ふめいである。

寛政かんせい4年ねん（1792年ねん）、国学こくがく者もの・本ほん居きょ宣長のりながが登用とうようされ、以後いごも宣せん長ちょうの子孫しそんには禄ろくが与あたえられて講釈こうしゃくが行おこなわれた。しかし、それは御前ごぜん講義こうぎにすぎなかった。

寛政かんせい5年ねん（1793年ねん）、学習がくしゅう館かん規則きそくを定さだめ、藩学はんがくを朱子学しゅしがくを含ふくんだ広ひろい定義ていぎの宋そう学まなぶに決定けっていした。実際じっさい、学習がくしゅう館かんには力ちからのある朱子学しゅしがく者しゃは呼よばれず、徂徠そらい学がく者もの・菊池きくち衝岳や折衷せっちゅう学がく者もの・山本やまもと東籬とうり、折衷せっちゅう学者がくしゃ・仁井田にいだ南陽なんようらが重用じゅうようされた。同年どうねん、江戸えどに明あかり教きょう館かんが開設かいせつされた。

享とおる和わ3年ねん（1803年ねん）、学習がくしゅう館かんの試験しけん規則きそくを改定かいていし、学問がくもん御ご試ためし規則きそくを制定せいていした。無む役やくの下級かきゅう家臣かしんを成績せいせき次第しだいで役付やくづきにすることなどが定さだめられており、家臣かしんに対たいする儒学じゅがく奨励しょうれいと思想しそう統制とうせいが目的もくてきであった。

文化ぶんか元年がんねん（1804年ねん）、伊勢いせ国こく松坂まつさかに松坂まつさか学問がくもん所しょを開設かいせつした。

学習がくしゅう館かん文武ぶんぶ場じょう[編集へんしゅう]

安政あんせい3年ねん（1856年ねん）、海防かいぼう強化きょうかのために和歌山わかやま城じょうの南隣みなみどなりに岡山おかやま文武ぶんぶ場じょうが開設かいせつされた。

慶応けいおう2年ねん（1866年ねん）、徳川とくがわ茂承もちつぐが行おこなった軍制ぐんせい改革かいかくに伴ともない藩校はんこう改革かいかくも行おこなわれ、学習がくしゅう館かんを岡山おかやま文武ぶんぶ場じょうへ移転いてんさせて全体ぜんたいを学習がくしゅう館かん文武ぶんぶ場じょうと称しょうした。修業しゅうぎょう年齢ねんれいを従来じゅうらいの30歳さいから50歳さいへ引ひき上あげるなどを行おこなったため、200～600人にんだった生徒せいと数すうが数すう倍ばいになったという。また、特筆とくひつすべき点てんは漢文かんぶんの素読そどく試験しけんに限かぎり、百姓ひゃくしょうや町人ちょうにんも参加さんかできるようになったことである。