安永やすなが大だい噴火ふんか

安永やすなが大だい噴火ふんか
流下りゅうかした「安永やすなが溶岩ようがん」（紫色むらさきいろ）の分布ぶんぷ図ず
火山かざん	桜島さくらじま
年月日ねんがっぴ	1779年ねん11月8日にち - 1782年ねん
噴火ふんか様式ようしき	プリニー式しき噴火ふんか
場所ばしょ	日本にっぽん 大隅おおすみ国こく大隅おおすみ郡ぐん桜島さくらじま郷きょう 北緯ほくい31度ど35分ふん19秒びょう 東経とうけい130度ど39分ふん17秒びょう
火山かざん爆発ばくはつ指数しすう	4
影響えいきょう	死者ししゃ153名めい、死し馬ば285頭とう、永えい損そん高だか約やく1万まん520石せき、当とう損そん高だか約やく1万まん3,041石せき
プロジェクト:地球ちきゅう科学かがく、プロジェクト:災害さいがい

安永やすなが大だい噴火ふんか（あんえいだいふんか）は、江戸えど時代じだい中期ちゅうきの安永やすなが8年ねん10月がつ1日にち（1779年ねん11月8日にち）から天明てんめい2年ねん（1782年ねん）にかけてに発生はっせいしたとされる桜島さくらじまの噴火ふんかである。噴火ふんか場所ばしょは（南岳みなみだけ山頂さんちょう）、南岳みなみだけ南みなみ山腹さんぷく、北きた岳だけの北東ほくとう山腹さんぷくから北東ほくとう沖合おきあいの海底かいてい（1780、1781年ねん）であった。

この噴火ふんか活動かつどうにより8つの島しまが形成けいせいされたが、後ごの合体がったい・侵食しんしょくなどにより、現在げんざいは新島にいじまを含ふくむ4島とうのみが残のこる。火山かざん爆発ばくはつ指数しすうはVEI4で、死者ししゃ150余よ名めいを出だした。

概要がいよう

桜島さくらじま周辺しゅうへんでは、1779年ねん11月7日にち（安永やすなが8年ねん9月がつ29日にち）の夕方ゆうがた頃ごろから有ゆう感かん地震じしんが頻発ひんぱつし、翌よく11月がつ8日にち（10月がつ1日にち）の朝あさから、井戸いど水みずが沸わき立たったり海水かいすいが紫むらさきに変色へんしょくしたりするなどの異変いへんが観察かんさつされた。11時じ頃ごろから南岳みなみだけ山頂さんちょう火口かこうから白しろ煙けむりが上あがった。14時じ頃ごろに南岳みなみだけ南側みなみがわ中腹ちゅうふくから黒くろ煙けむりが上あがり、その直後ちょくごに桜島さくらじま北東ほくとう部ぶからも噴火ふんかが始はじまった。夕方ゆうがたには南側みなみがわ火口かこう付近ふきんから火砕流かさいりゅうが流下りゅうかした。夕方ゆうがたから翌朝よくあさにかけて大量たいりょうの軽石かるいしや火山灰かざんばいを噴出ふんしゅつし、遠地おんちの江戸えどや長崎ながさきでも降灰こうかいがあった。

11月9日にち（10月がつ2日にち）には北きた岳だけの北東ほくとう部ぶ山腹さんぷくおよび南みなみ岳だけの南側みなみがわ山腹さんぷくから溶岩ようがん流出りゅうしゅつが始はじまり、翌よく11月がつ10日とおか（10月がつ3日にち）には海岸かいがんに達たっした（安永やすなが溶岩ようがん）。翌年よくねん1780年ねん8月がつ6日にち（安永やすなが9年ねん7月がつ6日にち）には桜島さくらじま北東ほくとう海上かいじょうで海底かいてい噴火ふんかが発生はっせい、続つづいて1781年ねん4月がつ11日にち（安永やすなが10年ねん3月がつ18日にち）にもほぼ同おなじ場所ばしょで海底かいてい噴火ふんかおよびそれに伴ともなう津波つなみが発生はっせいし被害ひがいが報告ほうこくされている。

噴火ふんか後ごに鹿児島湾かごしまわん北部ほくぶ沿岸えんがんの海水かいすい面めんが1.5–1.8 m上昇じょうしょうしたという記録きろくがあり、噴火ふんかに伴ともなう地盤じばんの沈降ちんこうが起おきたと考かんがえられている。一連いちれんの火山かざん活動かつどうによる噴出ふんしゅつ物量ぶつりょうは溶岩ようがんが約やく1.7立方りっぽうkm、軽石かるいしが約やく0.4立方りっぽうkmにのぼった。

(津久井つくい 2011)は降灰こうかいの多おおくは太平洋たいへいようであったが、一部いちぶは偏西風へんせいふうによって紀伊きい半島はんとう、東海とうかい地域ちいき、関東平野かんとうへいや、宮城みやぎ県けん牡鹿半島おしかはんとうにまで及およんだと報告ほうこくした。

安永やすなが諸島しょとう

安永やすなが大だい噴火ふんかによって形成けいせいされた新島にいじま（2021年ねん撮影さつえい）

一連いちれんの海底かいてい火山かざん活動かつどうによって桜島さくらじま北東ほくとうの高免こうめん村むら（現在げんざいの高免こうめん町まち）の沖合おきあいに燃もえ島しま、硫黄いおう島とう、猪ノ子島いのこじまなど6つの火山かざん島とうが形成けいせいされ、「安永やすなが諸島しょとう」と名付なづけられた。島々しまじまのうちいくつかは間まもなく水没すいぼつしたり、隣接りんせつする島しまと結合けつごうしたりして、『薩藩名勝めいしょう志こころざし』には八番はちばん島とうまでが記しるされているという。ただし現存げんそんするのは4島とうのみである。最もっとも大おおきい燃もえ島しま（現げん・新島にいじま）には1800年ねん（寛政かんせい12年ねん）から人ひとが住すむようになった。

被害ひがい

薩摩さつま藩はんが幕府ばくふに報告ほうこくした被害ひがい状況じょうきょうは「永えい損そん高だか約やく1万まん520石せき・当とう損そん高だか約やく1万まん3,041石せき・死者ししゃ153人にん・死し馬ば285頭とう」となっている。

桜さくら島とうの三さん大だい噴火ふんか

安永やすなが大だい噴火ふんかは、「桜さくら島とうの三さん大だい噴火ふんか」の1つであり、他たの2つは文ぶん明大めいだい噴火ふんか（15世紀せいき）と大正大たいしょうだい噴火ふんか（1914年ねん）である。これらはいずれもVEI4の大だい規模きぼなマグマ噴火ふんかであった。

桜さくら島とうの三さん大だい噴火ふんかの比較ひかく

噴火ふんかの名称めいしょう	噴火ふんか年代ねんだい	マグマ噴出ふんしゅつ量りょう	火山かざん爆発ばくはつ指数しすう	死者ししゃ
文ぶん明大めいだい噴火ふんか	1471年ねん-1476年ねん	0.77 DRE km3	VEI 4	多数たすう
安永やすなが大だい噴火ふんか	1779年ねん-1782年ねん	1.86 DRE km3	VEI 4	150余よ名めい
大正大たいしょうだい噴火ふんか	1914年ねん-1915年ねん	1.58 DRE km3	VEI 4	58名めい

参考さんこう文献ぶんけん

• 島村しまむら英紀ひでのり『完全かんぜん解説かいせつ 日本にっぽんの火山かざん噴火ふんか』秀和しゅうわシステム、2017年ねん。ISBN 9784798050089。 
• 山本やまもと博文ひろぶみ『見みる・読よむ・調しらべる 江戸えど時代じだい年表ねんぴょう』小学館しょうがくかん、2007年ねん。ISBN 9784096266069。 
• 桜島さくらじま町まち郷土きょうど誌し編へんさん委員いいん会かい『桜島さくらじま町まち郷土きょうど誌し』桜島さくらじま町長ちょうちょう 横山よこやま金きん盛もり、1988年ねん。http://www.city.kagoshima.lg.jp/kikakuzaisei/kikaku/seisaku-s/shise/shokai/shishi/sakurajima.html。 
• 井村いむら隆介りゅうすけ「史料しりょうからみた桜島さくらじま火山かざん安永やすなが噴火ふんかの推移すいい」『火山かざん』第だい43巻かん第だい5号ごう、日本にっぽん火山かざん学会がっかい、1998年ねん、373-383頁ぺーじ、doi:10.18940/kazan.43.5_373、ISSN 0453-4360、NAID 110003041143。 
• 津久井つくい雅志まさし「史料しりょうにもとづく桜島さくらじま火山かざん1779年ねん安永やすなが噴火ふんかの降灰こうかい分布ぶんぷ」『火山かざん』第だい56巻かん第だい2-3号ごう、日本にっぽん火山かざん学会がっかい、2011年ねん、89-94頁ぺーじ、doi:10.18940/kazan.56.2-3_89、ISSN 0453-4360、NAID 110008687463。