宮崎みやざき定じょう範はん

宮崎みやざき 定じょう範はん（みやざき さだのり、生年せいねん不明ふめい - 承うけたまわ久ひさし3年ねん（1221年ねん））は、鎌倉かまくら時代ときよの越えつ中国ちゅうごくの武将ぶしょう。越中えっちゅう宮崎みやざき城じょう主おも。諱いみなは「時政ときまさ」とも「親おや成なり」とも伝つたわるものの、鎌倉かまくら幕府ばくふの公式こうしき記録きろくとも言いうべき『吾妻あづま鏡きょう』では「定てい範はん」とされている。後鳥羽ごとば天皇てんのうの朝あさに出仕しゅっしして左衛門尉さえもんのじょうに任にんぜられ、承うけたまわ久ひさし3年ねんの承久じょうきゅうの乱らんにおいては北陸ほくりく道どうの守備しゅびに当あたった。

人物じんぶつと事跡じせき

藤原ふじわら北きた家か利り仁ひとし流ながれ斎藤さいとう氏しの庶流で『平家ひらか物語ものがたり』長門ながと本ほんに「越えつ中国ちゅうごくの住人じゅうにん」として登場とうじょうする宮崎みやざき太郎たろうの嫡孫ちゃくそんとする説せつもあるものの、富山とやま県けん朝日あさひ町まちが昭和しょうわ59年ねん（1984年ねん）に編纂へんさんした『朝日町あさひまち誌し 歴史れきし編へん』では別べつ流りゅうとしており、定さだかではない（詳くわしくは「宮崎みやざき太郎たろう#系譜けいふをめぐる異説いせつ」参照さんしょう）。『吾妻あづま鏡きょう』『承うけたまわ久ひさ記き』『鎌倉かまくら北条ほうじょう九きゅう代だい記き』などによれば、承久じょうきゅうの乱らんにおいて北陸ほくりく道どうを攻せめ上のぼる北条ほうじょう朝ちょう時じ率ひきいる幕府ばくふ軍ぐんを越後えちごと越中えっちゅうの国境こっきょうである蒲原かんばらで迎むかえ撃うち、破やぶられた後のちは後鳥羽上皇ごとばじょうこうに西にし面めん武士ぶしとして仕つかえた仁科にしな盛遠もりとおらとともに越えつ中ちゅうと加賀かがの国境こっきょうである礪波山となみやまで戦たたかった。

六月ろくがつ八はち日にちのくれほどに、はんにやのにつき給きゅうふ。こゝにかゞとゑつ中ちゅうとの堺さかいにとなみ山さんといふ山やまあり。ふもとにくろさか・しほとて二にのみちあり。この所ところに京きょうがたよりぐんぜいをむけられたり。となみ山さんをばにしなの二郎じろうもりとを・みやざきさゑもんさだのり二に千せんきにてかためたり。しほにはかすやさゑもんあり久ひさ・いわうさゑもん・かゞのとがし・井上いのうえ・つばた・ゑつ中ちゅうののじり・河上かわかみ・いしぐろのものどもをあひしたがへてかためゐたり。しきぶのぜう、まだあけがたの事ことなるに、うんかのせいをもてをしよせ、時ときをどつとつくりければ、じやうのうちよりも出合であい、さん／＼にたゝかひけるが、かたきうんかのせいをもて入いれかえ／＼せめければ、つゐにせめおとされて、ちり／＼におちて行くだり。

—作者さくしゃ未み詳しょう、『承うけたまわ久ひさ軍ぐんものがたり』巻まき第だい三さん

また、北条ほうじょう義よし時ときの承うけたまわ久ひさし3年ねん6月がつ6日にち付づけ御教書みぎょうしょには宮崎みやざき定じょう範はんの名前なまえが朝廷ちょうてい軍ぐん側がわの将官しょうかんの筆頭ひっとうとして記しるされている。

ほくろくたうのてにむかひたるよしきこえ候こうハ、みやさきのさゑもん、にしなの二郎じろう、かすやのありいしさゑもん、くわさのゐんのとうさゑもん、又またしなのけんし一いち人にん候こうときゝ候こう、いかにもして一人ひとりももらさすうたるへく候こう也

—『市河いちかわ家か文書ぶんしょ』

その生死せいしについては『承うけたまわ久ひさ記き』などにも記しるされていないものの、『富山とやま県けん大だい百科ひゃっか事典じてん』では承うけたまわ久ひさし3年ねんを没年ぼつねんとしており、『宮崎みやざき定じょう範はん事ごと歴れき』でも「此戦に定てい範はん血戦けっせん奮闘ふんとうし数すう創そうを蒙こうむり身みを忠義ちゅうぎの血潮ちしおに染そめて、仁科にしな盛遠もりとおと共ともに名誉めいよの戦死せんしを遂とげ礪波山となみやまの露ろと散ちり果はてたり」としている。

大正たいしょう6年ねん（1917年ねん）、大正天皇たいしょうてんのうの陸軍りくぐん特別とくべつ大だい演習えんしゅう統裁とうさいのための滋賀しが県けん下したへの行幸ぎょうこうを機きとし、特旨とくしを以もって正せい五ご位いを追贈ついぞうされた。『贈位ぞうい諸賢しょけん伝でん』に曰いわく「定てい範はん更さらに盛遠もりとおと礪波山となみやまを守まもりて之これを拒ふせぎ軍ぐん利りあらずして散ちる、後こう其終おわる所ところを知しらずと云うんふ」。

定てい範はんの「忠勤ちゅうきん」と朝あさ時じの「遅参ちさん」

幕府ばくふ軍ぐんと朝廷ちょうてい軍ぐんが礪波山となみやまで激突げきとつしたのは6月がつ9日にち。そして『承うけたまわ久ひさ軍ぐん物語ものがたり』等とうの記載きさいを踏ふまえるならば、戦たたかいは幕府ばくふ軍ぐんの圧勝あっしょうに終おわったように見みえる。しかし、北陸ほくりく道どう軍ぐんが入京にゅうきょうを果はたしたのは、『承うけたまわ久ひさ記き』慈光寺じこうじ本ほんでは6月がつ17日にち、『百ひゃく練ねり抄しょう』では20日はつか、『武家ぶけ年代ねんだい記き』では24日にち。文献ぶんけんによって相当そうとうに幅はばがあるものの、礪波山となみやまの戦たたかいからは8日にち〜15日にち後ごということになる。一方いっぽう、幕府ばくふ軍ぐん本隊ほんたいである東海道とうかいどう軍ぐんが入京にゅうきょうを果はたしたのは6月がつ15日にち。豪雨ごううによる増水ぞうすいもあって宇治川うじがわの渡河とかに手てこずり、多大ただいな犠牲ぎせい者しゃを出だしながらようやく敵前てきぜん渡河とかに成功せいこうしたのが14日にち。そして同日どうじつ夜よるには京きょうへなだれ込こんだという流ながれ。こうなると、北陸ほくりく道どう軍ぐんの入京にゅうきょうは『承うけたまわ久ひさ記き』慈光寺じこうじ本ほんの6月がつ17日にちという説せつを採とったとしても戦たたかいには遅おくれたということになる。これを踏ふまえ『宮崎みやざき定じょう範はん事ごと歴れき』ではこんなことを書かいている。

朝あさ時じが、事こと穏になりて漸ようやく北陸ほくりく道どうを経へて京都きょうとに入はいりしは、定てい範はんの忠勤ちゅうきんに胚胎はいたいす。大敵たいてきを恐おそれず殊こと死しして奮闘ふんとうせし至いたり忠ちゅうの精神せいしん其気魄きはく、実じつに後世こうせい忠臣ちゅうしんの鑑かんにして、英雄えいゆう骨こつ朽くちて遺のこ烈れつ赫々かくかく天下でんかをして欣仰おおせしむ。

—「第だい四よん 礪波山となみやまの奮闘ふんとう」

宮崎みやざき定じょう範はんら朝廷ちょうてい軍ぐん側がわの必死ひっしの抵抗ていこうのために北条ほうじょう朝ちょう時じの入京にゅうきょうが遅おくれたという見方みかた。あたかも関ヶ原せきがはらの戦たたかいにおける徳川とくがわ秀忠ひでただの「遅参ちさん」を彷彿ほうふつとさせるようなエピソード。

史跡しせき

富山とやま県けん朝日あさひ町まち宮崎みやざきの鹿嶋かしま神社じんじゃに「宮崎みやざき定じょう範はん卿きょう之の碑いしぶみ」がある。

また『宮崎みやざき定じょう範はん事ごと歴れき』には「境さかい村むらに現存げんそんする御ご人ひと塚づかは、定てい範はんの墳墓ふんぼと傳つてふ」とあるものの、現在げんざい、「御ご人ひと塚づか」という名前なまえの塚づかは知しられていない。よく似にた名前なまえの「行人こうじん塚づか」ならあるものの、宮崎みやざき定じょう範はんとのゆかりは伝つたえられていない。

参考さんこう文献ぶんけん

• 小柴こしば直ただし矩のり; 九里くのり愛雄よしお『宮崎みやざき定じょう範はん事ごと歴れき』宮崎みやざき村むら、1917年ねん11月。 
• 田尻たじり佐たすく『贈位ぞうい諸賢しょけん伝でん』国友くにとも社しゃ、1927年ねん7月がつ。 

関連かんれん項目こうもく

• 承久じょうきゅうの乱らん
• 石黒いしぐろ浄きよし覚さとし（同おなじく承久じょうきゅうの乱らんで京きょう方かたについた石黒いしぐろ三郎さぶろうに比定ひていされる）

外部がいぶリンク

• 一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん 宮崎みやざき文庫ぶんこ記念きねん館かん 尊みこと史し庵あん