小泉こいずみ斐

小泉こいずみ 斐（こいずみ あやる、明和めいわ7年ねん3月がつ（1770年ねん4月がつ） - 嘉よしみ永ひさし7年ねん7月がつ5日にち（1854年ねん7月がつ29日にち））は、江戸えど時代じだい後期こうきの絵師えしである。とくに鮎あゆ図ずが有名ゆうめい。

本姓ほんせいは木村きむら。幼名ようみょうを勝かち、諱いみなは光ひかり定じょう、字じを桑くわ甫はじめ・子こ章しょうとし、檀だん山やま・青あお鸞・檀だん森もり斎ひとし・非ひ文ぶん道人どうじんなどと号ごうした。下野げや国こくの人ひと。

略伝りゃくでん

下野げや国こく芳賀はが郡ぐん益子ましこ（現在げんざいの栃木とちぎ県けん芳賀はが郡ぐん益子ましこ町まち）に生うまれる。父ちちは鹿島かしま神社じんじゃ神官しんかんの木村きむら一正かずまさ、母ははは片岡かたおか氏し。幼少ようしょうより絵えを好このみ、11歳さいで高田たかだ敬たかし輔の門人もんじん・島崎しまざき雲くも圃に入門にゅうもん。唐から美人びじん図ず・鮎あゆ図ずなどを習ならう。師しとの関係かんけいから近江おうみに頻繁ひんぱんに出向でむき、日野ひの祭さいの山車だしの見送みおくり幕まくの製作せいさくなどをしている。

30歳さい頃ごろ、那須なす郡ぐん両郷りょうごう村むら（現在げんざいの栃木とちぎ県けん那須なす郡ぐん黒羽くろばね町まち）温泉おんせん神社じんじゃの小泉こいずみ光秀みつひでの養子ようしとなり同社どうしゃの神官しんかんを継ついだ。立原たちはら翠軒すいけんに就ついて経学けいがくや詩文しぶんを修おさめ、その子こ立原たちはら杏あんず所しょに画がを教おしえた。また和歌わか、音楽おんがくを嗜たしなんだともいう。享とおる和わ元年がんねん（1801年ねん）に、甲斐守かいのかみに任にんぜられ従したがえ五ご位いに叙じょされる。

50歳さいの時ときに黒羽くろは藩はん主あるじ大関おおぜき増ぞう業ぎょうより城北しろきたの鎮国社しゃ宮司ぐうじ職しょくを与あたえられ、その後ごは旺盛おうせいに画がの創作そうさくを行おこなった。

画がは唐とうの王おう維を敬慕けいぼした。各地かくちから門弟もんていが雲集うんしゅうし30年ねんもの間あいだ、画が技わざを伝つたえたという。「小泉こいずみ檀まゆみ山門さんもん人じん録ろく」には100名めいもの人名じんめいが記しるされ島崎しまざき玉たま淵ふち・宇佐美うさみ太ふとし奇きなどが育そだつ。高久たかく靄厓も画が技わざを受うけたひとりという。鮎あゆ図ずに猫ねこが飛とびついたというエピソードが伝つたわる。

斐は立原たちはら翠軒すいけんの従者じゅうしゃとして寛政かんせい7年ねん（1795年ねん）に藤田ふじた幽谷ゆうこくなどと吉原よしはら口くちから富士ふじ登山とざんに成功せいこうしている。このときを元もとに製作せいさくした「富嶽ふがく写真しゃしん」は富岡とみおか鉄斎てっさいが富士ふじ図ず製作せいさくに携たずさわるとき大おおいに参考さんこうにした。

代表だいひょう作さく

作品さくひん名めい	技法ぎほう	形状けいじょう・員数いんずう	寸法すんぽう（縦たてx横よこcm）	所有しょゆう者しゃ	年代ねんだい	落款らっかん・印章いんしょう	文化財ぶんかざい指定してい	備考びこう
楊柳ようりゅう観音かんのん図ず	紙かみ本ほん墨画ぼくが	1幅ぶく	173.4x88.6	大雄たいゆう寺てら	1806年ねん	款記「文化ぶんか丙へい寅とら秋日しゅうじつ那須なす惣社そうしゃ社司しゃし／甲斐かい守まもる従したがえ五位下藤原朝臣光定於神宮寺謹寫」/白文はくぶん方かた印しるし・朱しゅ文ぶん方かた印しるし	栃木とちぎ県けん指定してい文化財ぶんかざい
鮎あゆ図ず					1813年ねん		栃木とちぎ県けん指定してい文化財ぶんかざい
鮎あゆ図ず					1833年ねん		栃木とちぎ県けん指定してい文化財ぶんかざい
鮎あゆ図ず					1847年ねん		栃木とちぎ県けん指定してい文化財ぶんかざい
唐から美人びじん図ず					1811年ねん		栃木とちぎ県けん指定してい文化財ぶんかざい
月下げっか弾琴だんきん図ず				栃木とちぎ県立けんりつ博物館はくぶつかん
龍りゅうに馬うま師し皇すめらぎ図ず				明王寺みょうじ			栃木とちぎ県けん指定してい文化財ぶんかざい
群ぐん仙せん図ず				上野うえの記念きねん館かん	1817年ねん
嘉よしみ寿ことぶき天良てんら頂戴ちょうだい図ず	紙かみ本ほん淡彩たんさい	1幅ぶく	40.0x28.2		1837年ねん	款記「源みなもと國こく女おんな十じゅう二月嘉寿天良頂戴圖／檀だん山やま老人ろうじん斐筆」/白文はくぶん方かた印しるし・朱しゅ文ぶん方かた印しるし		羽はね藩主はんしゅ主ぬし・大関おおぜき増ぞう業ぎょうからカステラを頂いただく孫娘まごむすめと、同席どうせきしてこれを喜よろこぶ斐自身じしんの像ぞう。
富士ふじ写真しゃしん				栃木とちぎ県立けんりつ博物館はくぶつかん	1846年ねん

参考さんこう文献ぶんけん

• 図録ずろく『高田たかだ敬たかし輔と小泉こいずみ斐』滋賀しが県立けんりつ近代きんだい美術館びじゅつかん 2005年ねん
• 小山田おやまだ榮重えいじゅう『檀まゆみ山やま先生せんせい伝でん略りゃく』
• 古筆こひつ了りょう仲なか『扶桑ふそう名画めいが伝でん』