山内やまうちリエ

山内やまうち リエ（やまうち リエ、1922年ねん2月がつ15日にち - 2000年ねん10月8日にち）は、日本にっぽんの陸上りくじょう競技きょうぎ選手せんしゅ。女子じょし三段跳さんだんとび、走高跳はしりたかとび、走幅跳はしりはばとびの三さん種目しゅもくの元もと・日本にっぽん記録きろく保持ほじ者しゃ。戦中せんちゅう、戦後せんごに世界せかい的てきな好こう記録きろくを連発れんぱつしながら、戦争せんそうによってオリンピック参加さんかの道みちを閉とざされた悲運ひうんの女性じょせいアスリートである。広島ひろしま県けん呉くれ市し出身しゅっしん。

来歴らいれき

小学校しょうがっこう5年ねんの春はる、陸上りくじょう競技きょうぎを始はじめる。呉ご精華せいか高だか女おんなに進学しんがくするが、当時とうじこの学校がっこうのグラウンドは狭せまく、走高跳はしりたかとびの助走じょそうを取とるスペースもなく、近ちかくの小学校しょうがっこうで我流がりゅうで練習れんしゅうを積つむ。跳躍ちょうやく技わざについての正式せいしきな指導しどうを受うけたのは女学校じょがっこう4年ねんの時とき、郷土きょうどの先輩せんぱい・織田おだ幹雄みきおの講習こうしゅう会かいに参加さんかしたのが最初さいしょ。

1936年ねん、女学校じょがっこう3年ねん15歳さいの夏なつを過すぎると、恵めぐまれたバネで飛躍ひやく的てきに記録きろくが伸のび、11月に広島ひろしま市しで行おこなわれた大会たいかいで、走高跳はしりたかとびの当時とうじ日本にっぽん最高さいこう記録きろく1m52を楽々らくらくと飛とび、1m55の日本にっぽん新しん記録きろくをマーク。前年ぜんねん1935年ねんの記録きろくは全まったくなく、彗星すいせいのように現あらわれた名なもない地方ちほうの一いち女学生じょがくせいが全日本ぜんにほんの覇は座ざに座すわったことで、その出現しゅつげんは次期じきオリンピック東京とうきょう大会たいかい(1940年ねん)のホープとして騒さわがれる。

以降いこう、三段跳さんだんとび、走高跳はしりたかとび、走幅跳はしりはばとびの日本にっぽん記録きろくを次々つぎつぎに樹立じゅりつ。呉ごの生うんだ"スーパーウーマン"と称しょうされたが、坐骨ざこつ神経痛しんけいつうの治療ちりょうもあって1938年ねん誘さそわれて愛知あいち県けんの中京ちゅうきょう高等こうとう女学校じょがっこうに転校てんこうし、中京ちゅうきょう女子じょし体育たいいく専門せんもん学校がっこう（現げん・至いたり学がく館かん大学だいがく）を1939年ねん卒業そつぎょう。卒業そつぎょう後ご、同校どうこうの教員きょういんを務つとめた後のち、戦中せんちゅうは一時期いちじき、呉くれ市しに帰郷ききょうし終戦しゅうせん後ごの1945年ねん9月、社員しゃいんの3分ぶんの1を原爆げんばくで失うしなった中国新聞社ちゅうごくしんぶんしゃに入社にゅうしゃし文化ぶんか部ぶ記者きしゃとして健筆けんぴつを振ふるう。同年どうねん12月がつに東京とうきょうで行おこなわれた日本にっぽん陸上りくじょう競技きょうぎ選手権せんしゅけん戦後せんごの復活ふっかつ大会たいかいは広島ひろしま代表だいひょうとして参加さんかした。

1946年ねん、京都きょうとの菊花きっか女子じょし専門せんもん学校がっこうに移うつり同校どうこうの教師きょうしを務つとめる。この後のち、1947年ねん12月から1960年ねん10月がつまで毎日新聞まいにちしんぶん大阪おおさか本社ほんしゃ運動うんどう部ぶに新聞しんぶん記者きしゃとして勤務きんむした。このため1948年ねん以降いこうの所属しょぞくは京都きょうとアスリートクラブ。

この間あいだ、1939年ねん走高跳はしりたかとびで日本にっぽんの女子じょし選手せんしゅとして初はじめて1m60を突破とっぱ。第だい二に次じ大戦たいせんをはさんで1939年ねんから1946年ねんにかけて日本にっぽん陸上りくじょう競技きょうぎ選手権せんしゅけん走高跳はしりたかとび四よん連覇れんぱを含ふくむ優勝ゆうしょう6回かい、これは現在げんざいも種目しゅもく別べつの日本にっぽん記録きろく。走高跳はしりたかとびは自身じしんの日本にっぽん記録きろくを1m63まで5回かいに渡わたり更新こうしんした。戦後せんごの1946年ねんに行おこなわれた第だい1回かい国民こくみん体育たいいく大会たいかいの走高跳はしりたかとびで1m61の世界せかいタイ記録たいきろくを出だす。これは2位い選手せんしゅに31cmの大差たいさをつける圧勝あっしょうであった。

走幅跳はしりはばとびも1942年ねんから1948年ねんにかけて日本にっぽん選手権せんしゅけん四よん連覇れんぱを含ふくむ優勝ゆうしょう6回かい。1947年ねんには走幅跳はしりはばとびで人見ひとみ絹枝きぬえが1929年ねんに出だした5m91を抜ぬき、日本にっぽんの女子じょし選手せんしゅとして初はじめて6mを突破とっぱした。同年どうねんこの年としの世界せかい1位いの6m7まで記録きろくを伸のばしたが、これは2位いの記録きろく5m76を31cmも引ひき離はなすものであった。この年とし5m77以上いじょうを7回かい跳とんでパフォーマンス世界せかいリストの上位じょういを独占どくせんした。

1942年ねんは女子じょし200m、短たん棒ぼう投なげ、1946年ねんは砲丸ほうがん投とう、1947年ねんは五ご種しゅ競技きょうぎでも日本にっぽん選手権せんしゅけんで優勝ゆうしょうした。また女子じょし400mリレーのメンバーとして1938年ねんから1948年ねんまで七なな連覇れんぱ。1942年ねんには800メートルリレーでも優勝ゆうしょうしている。日本にっぽん選手権せんしゅけん通算つうさん優勝ゆうしょう回数かいすうは延のべ24回かいに及および、2012年ねん現在げんざいでも日本にっぽん選手権せんしゅけんの最多さいた優勝ゆうしょう記録きろく保持ほじ者しゃである。 また1939年ねんに京都きょうとで行おこなわれた西日本にしにほん陸上りくじょう競技きょうぎ大会たいかいで久ひさしぶりに三段跳さんだんとびを試こころみ11m48を出だし、渡辺わたなべすみ子この日本にっぽん記録きろく11m41を7年ねんぶりに更新こうしんした。

しかし、1940年ねんに予定よていされて東京とうきょうオリンピックは戦火せんかのために中止ちゅうし。1944年ねんロンドンオリンピックも戦争せんそうのため中止ちゅうしに。特とくに戦後せんごの1946年ねんから1948年ねんにかけて走幅跳はしりはばとび、走高跳はしりたかとびで次々つぎつぎにマークした記録きろくは世界せかい的てきな好こう記録きろくでもあり、1948年ねんロンドンオリンピックには出場しゅつじょうすれば金きんメダルは確実かくじつといわれた。しかし日本にっぽんが戦争せんそう当事とうじ国こくであるとの理由りゆうでドイツとともに出場しゅつじょうできず。このロンドンオリンピックの女子じょし走幅跳はしりはばとびの優勝ゆうしょう記録きろくは5m68。山内やまうちは前年ぜんねん6m7まで記録きろくを伸のばし6m台だいをコンスタントに出だしていた。また走高跳はしりたかとびでも銅どうメダルは1m61と山内やまうちのベスト記録きろくを下回したまわるものであり、日本にっぽん女子じょし陸上りくじょうにとっても惜おしいチャンスであった。結局けっきょく、選手せんしゅとしてピーク時じにあった3度どに渡わたるオリンピック出場しゅつじょうのチャンスは戦争せんそうにより閉とざされた。山内やまうちは後年こうねん、「オリンピックが唯一ゆいいつの励はげみで頑張がんばっただけに、残念ざんねんでたまらない。ただ一ひとつの心残こころのこりです」と話はなした。山内さんないと古橋ふるはし広之進ひろのしんがロンドンオリンピックに出場しゅつじょうしていたら、メダルを確実かくじつに獲得かくとくしていたといわれる。しかし戦後せんごの混乱こんらん期きに悪条件あくじょうけんを克服こくふくしながら次々つぎつぎに樹立じゅりつした好こう記録きろくは、荒廃こうはいした世相せそうに明あかるい光ひかりを投なげかけ、女子じょし陸上りくじょう界かいに与あたえた功績こうせきは大おおきい。

織田おだ幹雄みきおは「山内やまうちさんは人見ひとみ絹枝きぬえ亡なき後あとのわが国くに女子じょし陸上りくじょう界かいが生うんだ偉才いさいである。競技きょうぎ会かいに出でて来きた時ときが悪わるくて人見ひとみさんのように世界せかい記録きろくを作つくったり、国際こくさい競技きょうぎ界かいで目覚めざましい活躍かつやくをするということはなかったが、山内やまうちさんの競技きょうぎ的てき実力じつりょくは人見ひとみさんを凌しのぐものがある。人見ひとみさんに比くらべて遥はるかに小ちいさい身長しんちょうで、あの大だい記録きろくを作つくっているのは全まったく世界せかいの驚異きょういである」と述のべた。

1946年ねん朝日あさひ体育たいいく賞しょう、1949年ねん日本にっぽん陸連りくれん勲功くんこう章あきら受賞じゅしょう。

1947年ねんから1960年ねんまで毎日新聞まいにちしんぶん大阪おおさか本社ほんしゃ運動うんどう部ぶに勤務きんむしスポーツ記事きじに健筆けんぴつを振ふるった。

著書ちょしょ

• 山内やまうちリエ『私わたしの競技きょうぎ史し』京都きょうと日にち日にち新聞しんぶん、1947年ねん。 
• 『あしの歌うた』
• 『仰あおぐ感激かんげきの日章旗にっしょうき』、他た

参考さんこう文献ぶんけん

• 山本やまもと邦夫くにお『日本にっぽん陸上りくじょう競技きょうぎ史し』日本にっぽん陸上りくじょう競技きょうぎ連盟れんめい監修かんしゅう、道和みちかず書院しょいん、1979年ねん。 
• 竹内たけうち虎とら士し・大石おおいし三四郎さんしろう・東京とうきょう体育たいいく科学かがく研究けんきゅう会かい『体育たいいく人名じんめい辞典じてん』、逍遥しょうよう書院しょいん、1970年ねん
• 『広島ひろしまスポーツ100年ねん』、中国新聞社ちゅうごくしんぶんしゃ、1979年ねん
• 河野こうの徳男のりお『広島ひろしまスポーツ史し』 財団ざいだん法人ほうじん広島ひろしま県けん体育たいいく協会きょうかい、1984年ねん
• 『(財ざい)広島ひろしま陸協りっきょう七なな十じゅう年ねんの歩あゆみ』 財団ざいだん法人ほうじん広島ひろしま陸上りくじょう競技きょうぎ協会きょうかい、2003年ねん
• 毎日新聞まいにちしんぶん、2000年ねん10月がつ12日にち

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽん陸上りくじょう競技きょうぎ選手権せんしゅけん大会たいかいの記録きろく一覧いちらん

外部がいぶリンク

• 世界せかいで活躍かつやくした人ひと紹介しょうかい | 至いたり学がく館かん大学だいがく 同窓会どうそうかい
• 至いたり学がく館かん大学だいがく陸上りくじょう競技きょうぎ部ぶの歴史れきし - 至いたり学がく館かん大学だいがく