文献ぶんけん資料しりょう (歴史れきし学がく)

歴史れきし学がくにおける文献ぶんけん資料しりょう（ぶんけんしりょう）とは、史料しりょうのひとつで、文書ぶんしょおよび古文書こもんじょ、個人こじん的てきな日記にっきや備忘録びぼうろくなどの古記こき録ろく、書籍しょせき、新聞しんぶん、雑誌ざっしなど文字もじによって伝達でんたつあるいは記録きろくされた資料しりょうの総称そうしょうである。

概要がいよう

文書ぶんしょとしては廃棄はいきされ、再さい利用りように供きょうした漆うるし紙し文書ぶんしょや紙背しはい文書ぶんしょを含ふくむ。媒体ばいたいは紙かみに限かぎらず、木簡もっかん・竹たけ簡・金石かねいし文あや・甲かぶと骨こつ文ぶん・粘土ねんど板ばん文書ぶんしょ・パピルス文書ぶんしょなども情報じょうほう量りょうに応おうじて文献ぶんけん資料しりょうに含ふくめるが、墨書ぼくしょ土器どきや篦へら書しょ・刻こく書しょ土器どきなどに記しるされた文字もじ断片だんぺんは通常つうじょうは文字もじ資料しりょうと呼よんでいる。

文献ぶんけん資料しりょうは歴史れきし学がく研究けんきゅうにおける根本こんぽん的てきな資料しりょうであり、われわれは歴史れきし的てき事件じけんや人物じんぶつに関かんしての詳細しょうさいを文献ぶんけんを通つうじて知しることができる。ただし、以下いかの点てんに注意ちゅういしなければならない。

1. 当時とうじの人々ひとびとにとって重大じゅうだいで書かき留とめておかなくてはならないと意識いしきされた事象じしょう・事物じぶつのみが記録きろくされ、すべての事象じしょうが記録きろくされるわけではないこと。とくに、あまりにも日常にちじょう生活せいかつに根ねざして語かたるまでもなく当然とうぜん視しされていたような事象じしょう・事物じぶつは記録きろくされず、記録きろくされたとしても廃棄はいきされてしまうケースが多おおいこと。
2. 時代じだいをさかのぼるほど、著述ちょじゅつ・編纂へんさんが為政者いせいしゃ層そう、体制たいせい側がわ、知識ちしき階級かいきゅう、有力ゆうりょく者しゃ側がわ、成人せいじん男性だんせい、都市とし住民じゅうみんに片寄かたよる傾向けいこうがあること。それゆえ、時代じだいが古ふるくなればなるほど、庶民しょみん、女性じょせい、子こども、地方ちほうの実態じったいはつかみにくい傾向けいこうが生しょうじる。また、つかみえた情報じょうほうも著述ちょじゅつ・編纂へんさんにたずさわる階層かいそうの価値かち観かんを反映はんえいしたものになりがちである。
3. 記憶きおく違ちがいによる誤記ごきや写本しゃほんとして流通りゅうつうする過程かていで生しょうじる誤写ごしゃ、また、記録きろく・書写しょしゃの過程かていで作為さくいによる改変かいへんなども考かんがえられること。

それゆえ、歴史れきし事象じしょうの究明きゅうめいのためには、文献ぶんけん資料しりょうを互たがいに付つき合あわせて史料しりょう批判ひはんや文献ぶんけん学がく的てきな検討けんとうをおこなうだけでなく、絵画かいがや写真しゃしんなどの図像ずぞう資料しりょう、考古学こうこがく的てき発見はっけんによって得えられる遺構いこう・遺物いぶつなどの考古こうこ資料しりょう、長ながい間あいだ伝承でんしょうされてきた風俗ふうぞく・習慣しゅうかん・伝説でんせつなどの民俗みんぞく資料しりょう、関係かんけい者しゃからのインタビューによるき取きとり調査ちょうさ（オーラル・ヒストリー）も視野しやに入いれた論考ろんこうが必要ひつようである。

参考さんこう文献ぶんけん

• 青木あおき, 和夫かずお、高木たかぎ, 昭作しょうさく、佐藤さとう, 進一しんいち ほか 編へん『文献ぶんけん資料しりょうを読よむ―古代こだいから近代きんだい』朝日新聞社あさひしんぶんしゃ、2000年ねん10月がつ。ISBN 402257545X。 
• 佐原さはら眞しん「文献ぶんけん資料しりょうと考古こうこ資料しりょう」『歴博れきはく大学院だいがくいんセミナー考古こうこ資料しりょうと歴史れきし学がく』吉川弘文館よしかわこうぶんかん、1992年ねん2月がつ。ISBN 978-4-642-07754-5。 
• 横山よこやま浩一こういち 著ちょ「考古学こうこがくとはどんな学問がくもんか」、大塚おおつか, 初はつ重じゅう、戸沢とざわ, 充たかし則のり、佐原さはら, 眞しん 編へん『日本にっぽん考古学こうこがくを学まなぶ（1）』有斐閣ゆうひかく〈有斐閣ゆうひかく選書せんしょ〉、1988年ねん11月。ISBN 978-4-642-07754-5。 

関連かんれん項目こうもく

• 資料しりょう
• 歴史れきし資料しりょう
• 古文書こもんじょ
• 史料しりょう
• 文献ぶんけん学がく