新しん教育きょういく運動うんどう

新しん教育きょういく運動うんどう（しんきょういくうんどう）とは、「新しん教育きょういく」（英語えいご: New Education）または「新しん学校がっこう」（英語えいご: New School）をキーワードに19世紀せいき末すえのイギリスではじめられた教育きょういく改革かいかく運動うんどうのこと。

新しん教育きょういく（しんきょういく、英語えいご: New Education）とは、20世紀せいき初頭しょとうに始はじまった新あたらしい教育きょういくの考かんがえ方かたを提唱ていしょうする世界せかい的てきな広ひろがりを持もった運動うんどうのなかで、旧来きゅうらいの教師きょうし中心ちゅうしん、大人おとな中心ちゅうしんの教育きょういくを旧きゅう教育きょういくと呼よび、自みずからの児童じどう中心ちゅうしん、自発じはつ的てきな学まなびを良いしとする考かんがえ方かたを呼よんだ呼よび方かたのことである。「新しん教育きょういく」とその具体ぐたい的てきで制度せいど的てきな成果せいかとしての「新しん学校がっこう」を共通きょうつうのテーゼとするこの国際こくさい的てきな新しん教育きょういくの運動うんどうは、その教育きょういく目的もくてき、教育きょういく方法ほうほう、児童じどう観かんにおいて、共通きょうつうの特徴とくちょうを持もっていた。当時とうじ世界せかい的てきに広ひろまっていたヘルバルト主義しゅぎの教育きょういく観かんを乗のり越こえて、現実げんじつ主義しゅぎに根本こんぽん的てきに方向ほうこう転換てんかんを図はかるというのがそれである。教育きょういく形態けいたいとしては、画一かくいつ的てき一斉いっせい教授きょうじゅから個性こせい的てき合ごう科か教授きょうじゅへ、教育きょういく方法ほうほうとしては主知しゅち主義しゅぎ(書物しょもつ主義しゅぎ)・注入ちゅうにゅう主義しゅぎから活動かつどう主義しゅぎ(事物じぶつ主義しゅぎ、ラーニング・バイ・ドゥーイング)・自学じがく主義しゅぎへ、教師きょうし中心ちゅうしん主義しゅぎから児童じどう中心ちゅうしん主義しゅぎへ、階級かいきゅう分裂ぶんれつ的てき複線ふくせん型がた学校がっこうから統一とういつ的てき単線たんせん型がた学校がっこうへ、思弁しべん的てき哲学てつがく的てき教育きょういく研究けんきゅうから実験じっけん的てき科学かがく的てき教育きょういく研究けんきゅうへなど、その運動うんどうの意義いぎと成果せいかは、その後ごの教育きょういく改革かいかくへ進歩しんぽ的てきな遺産いさんとして継承けいしょうされている。

概説がいせつ

19世紀せいき末まつから第だい一いち次じ世界せかい大戦たいせん後のちにかけて、イギリスからフランス、ドイツ、イタリア、アメリカ、ロシア、インド、中国ちゅうごく及および日本にっぽん、並ならびにその他たの国々くにぐにに展開てんかいされた。ただし思想しそうにおいても教育きょういく実践じっせんの手法しゅほうにおいても一様いちようでなく、ルソー、ペスタロッチ及およびフレーベルの思想しそうの継承けいしょう発展はってんにより、書物しょもつを通つうじての主知しゅち主義しゅぎの教育きょういくに対たいする児童じどうの自主じしゅ的てきで、主体しゅたい的てきな活動かつどうを尊重そんちょうするという児童じどう中心ちゅうしん主義しゅぎの考かんがえ方かたに共通きょうつう点てんが有ある。

この運動うんどうは具体ぐたい的てきには1889年ねんイギリスのセシル・レディによって設立せつりつされた学校がっこう、アボッツホルム・スクールに始はじまるといわれる。この学校がっこうはフランスのエドモン・ドモラン、ドイツのヘルマン・リーツらに影響えいきょうを与あたえ、それぞれロッシュの学校がっこう、田園でんえん教育きょういく塾じゅくを発展はってんさせた。そしてこの運動うんどうからグスタフ・ヴィネケンやパウル・ゲヘープらによって生徒せいとの自治じち活動かつどうを尊重そんちょうする自由じゆう学校がっこう共同きょうどう体たいの運動うんどうが現あらわれた。別べつの起源きげんではイギリスのパブリック・スクールの革新かくしんから始はじまりともされる。1900年ねんスウェーデンのスウェーデンのジャーナリストで、女性じょせい運動うんどう家かだったエレン・ケイが自著じちょのタイトルを『児童じどうの世紀せいき』と名なづけ、この新あたらしい動向どうこうに一般いっぱん的てきなタイトルを与あたえたことから、全ぜん世界せかい的てきにこの言葉ことばがあまねく伝つたわるようになった。この運動うんどう全体ぜんたいを新しん教育きょういく運動うんどうと呼よぶ。ドイツでは改革かいかく教育きょういく運動うんどうといい、アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくでは進歩しんぽ主義しゅぎ教育きょういくというい方いかたがあり、それぞれの教育きょういく改革かいかくの動向どうこうや傾向けいこう性せいなどを指さしていうことがある。

新しん教育きょういくの特徴とくちょうとしては旧来きゅうらいの教育きょういくのように記憶きおく力りょく中心ちゅうしんの詰つめ込こみ式しき教育きょういくとは異ことなり、学まなぶ者ものの個性こせいや創造そうぞう力りょくなどいわゆる各自かくじの感性かんせいや思考しこう力りょくが重要じゅうよう視しされる教育きょういく法ほうであり、これまでに無ない発明はつめいをしたり、新あたらしいアイディアやシステムを生うみ出だしたり、自みずから学まなび、実践じっせんしながら新あたらしい分野ぶんやを開拓かいたくしていくための力ちからを培つちかうのに有効ゆうこうな教育きょういく法ほうとされる。

アメリカではその民主みんしゅ主義しゅぎを基礎きそに1883年ねんパーカーによって始はじまり1896年ねんのジョン・デューイのシカゴ大学だいがくの実験じっけん学校がっこうによってさらに前進ぜんしんし進歩しんぽ主義しゅぎ教育きょういく運動うんどうとして展開てんかいされた。この運動うんどうはウィリアム・ヒアド・キルパトリックらのプロジェクト・メソッドを生うみヴァージニア・プランなど徹底的てっていてきな経験けいけん主義しゅぎカリキュラムを採用さいようする数々かずかずの州しゅう教育きょういく計画けいかくを成立せいりつさせコミュニティ・スクール（地域ちいき社会しゃかい学校がっこう）運動うんどうを発展はってんさせていった。

またこの動うごきが単たんに教育きょういく者しゃと学校がっこう改革かいかくの分野ぶんやだけでのものでなかった証あかしに作家さっかや芸術げいじゅつ家かにもこうした運動うんどうに共鳴きょうめいし自みずからも学校がっこうを試こころみる者ものが少すくなくなかった。作家さっかのトルストイ、思想家しそうかのバートランド・ラッセル及および詩人しじんのタゴールなどはその例れいである。

日本にっぽんにおいては大正たいしょう時代じだいに、従来じゅうらいの教育きょういく法ほうを「旧きゅう教育きょういく」として批判ひはんし、子供こども中心ちゅうしんの理想りそうの教育きょういくを求もとめた学校がっこう創設そうせつが行おこなわれた。官僚かんりょうの澤柳さわやなぎ政太郎まさたろうが実験じっけん学校がっこうとして創立そうりつした成城せいじょう小学校しょうがっこうや、自由じゆう主義しゅぎ教育きょういく者しゃ・伊藤いとう長七ちょうしちによる東京とうきょう府立ふりつ第だい五ご中学校ちゅうがっこう（現げん・小石川こいしかわ中等ちゅうとう教育きょういく学校がっこう） での実践じっせんがそれに当あたる。また、鈴木すずき三重吉みえきちは子供こどもの自主じしゅ性せいを育そだてる童話どうわ雑誌ざっしとして『赤あかい鳥とり』を創刊そうかんし、近代きんだい児童じどう文学ぶんがくに大おおきく貢献こうけんした。これらの一連いちれんの動うごきを大正たいしょう自由じゆう教育きょういく運動うんどうと呼よぶ。

関連かんれん項目こうもく

• 児童じどう中心ちゅうしん主義しゅぎ
• 進歩しんぽ主義しゅぎ - 進歩しんぽ主義しゅぎ (教育きょういく)
• 大正たいしょう自由じゆう教育きょういく運動うんどう
• 教育きょういく改革かいかく
• 世界せかい新しん教育きょういく連盟れんめい
• アボッツホルム・スクール

外部がいぶリンク

• ブリタニカ国際こくさい大だい百科ひゃっか事典じてん 小しょう項目こうもく事典じてん『新しん教育きょういく運動うんどう』 - コトバンク