李り珥

李り珥
李り珥の像ぞう（江こう陵りょう）
各種かくしゅ表記ひょうき
ハングル：	호：율곡 자：숙헌
漢字かんじ：	號ごう：栗谷くりや 字じ：叔獻
発音はつおん：	ホ：ユルゴク チャ：スコン（スクホン）
日本語にほんご読よみ：	ごう：りっこく あざな：しゅくけん
ロろーマ字まじ転写てんしゃ：	Ho: Yulgok Ja: Sukheon
各種かくしゅ表記ひょうき（本名ほんみょう）
ハングル：	이이
漢字かんじ：	李り珥
発音はつおん：	イ・イ
日本語にほんご読よみ：	り・じ
ロろーマ字まじ転写てんしゃ：	I I (Yi I)

李り 珥（り・じ、イ・イ、1536年ねん - 1584年ねん）は、李り氏し朝鮮ちょうせんの儒学じゅがく者しゃ。号ごうは栗谷くりや（りっこく、ユㇽゴㇰ）、字じは叔献（しゅくけん、スッコン）。本ほん貫ぬきは徳とく水すい李り氏し。朱子学しゅしがく者しゃとして李り滉ひろし（退すさ渓けい）とならぶ二に大儒たいじゅと称しょうされる。李り滉ひろしの主しゅ理り説せつに対たいし主しゅ気き説せつを展開てんかいした。朝鮮ちょうせん王朝おうちょうに仕つかえていたが、政争せいそうや貧困ひんこんが蔓延まんえんして国防こくぼうが疎おろかになっている国内こくないの様相ようそうを憂うれいていた事ことでも知しられている。

略歴りゃくれき

栗谷くりやの生家せいか・烏竹くろちく軒のき。師し任にん堂どうの家いえでもある

大韓民国だいかんみんこく5000ウォン紙幣しへい。肖像しょうぞう画がとして李り珥が描えがかれている。

李り珥は李り元秀もとひでと申さる師し任にん堂どうの三男さんなんとして江こう陵りょう（江原えばら道みち）に生うまれた。字じは叔献、号ごうは栗谷くりやである。

母ははの申さる師し任にん堂どうは詩文しぶんや書画しょがをよくし、良妻賢母りょうさいけんぼとして評価ひょうかが高たかい。彼かれを産うむとき、母親ははおやの夢ゆめに龍りゅうが現あらわれる奇瑞きずいがあったと伝つたえられている。この母ははの手てほどきで教育きょういくを受うけた李り珥は1548年ねん、わずか13歳さいで進士しんしの初はつ試ためしに合格ごうかくし世間せけんを驚おどろかせた。16歳さいの時ときに母ははと死別しべつして虚無きょむ感かんにとらわれて、金剛山こんごうざんで禅ぜんを学まなんだ。母ははの喪もに服ふくした後のちは学術がくじゅつに専念せんねんし、数々かずかずの文士ぶんしと交際こうさいを結むすんだ。九きゅう回かい受験じゅけんした科挙かきょで全すべて状じょう元もと（一番いちばんの成績せいせき）だったため「九きゅう度ど壮たけし元もと公おおやけ」と称しょうされた。

貢みつぎ納おさめ制せいの改革かいかくに意いをそそぎ、黄海こうかい道どう海うみ州しゅうでは郷さと約やくや社しゃ蔵ぞうの実施じっしに努力どりょくした。

官吏かんりとしては戸と曹佐郎ろう、礼れい曹佐郎ろう、吏曹佐さ郎ろうを歴任れきにん、1568年ねんに明あきら国くにに使者ししゃに立たっている。その後ごも右みぎ副ふく承うけたまわ旨むね、吏曹判ばん書しょに就つき、朱子学しゅしがくに関かんする著作ちょさくをものする一方いっぽう、現実げんじつ社会しゃかいにおける数々かずかずの事項じこうに関心かんしんを持もち、それに即そくした政策せいさく提議ていぎを行おこなっている。

思想しそうと提言ていげん

朱子学しゅしがく者しゃとして、李り滉ひろしと並ならび称しょうされる彼かれは決けっして儒学じゅがくのみならず多種たしゅ多様たようの学問がくもんを積つみ、従来じゅうらいの朱子学しゅしがくをさらに発展はってんさせた。理り気き論ろんでも、必かならずしも朱しゅ熹の説せつに依拠いきょせず、理り通気つうき局きょく説せつを唱となえて合理ごうり的てき解釈かいしゃくを行おこなった。理りの気きに対たいする優位ゆういは認みとめたが、理りの動静どうせいは否定ひていした。徐じょ敬たかし徳とくの気き一元論いちげんろんや荘そう子この哲学てつがくの影響えいきょうを受うけていた。

李り滉ひろしは理り気き二元論にげんろんにおいて、理りと気きは互たがいに独立どくりつして対立たいりつしており、どちらか片方かたがたが欠かけると宇宙うちゅうを構成こうせいできないとした。それに対たいし李り珥は、理りは無形むけい無為むいの存在そんざいであり気きは有形ゆうけい有為ゆういの存在そんざいとして、理りは気きの主宰しゅさい者しゃではあるが気きは理りが乗のるだけであり、一元論いちげんろんでも二元論にげんろんでもなく宇宙うちゅうの構成こうせいは理りと気きがそれぞれ互たがいを包括ほうかつしているという気きを念頭ねんとうに置おいた主張しゅちょうを行おこなった。「四よん端はし七なな情じょう」と呼よばれる人ひとの性せいに議論ぎろんを置おき換かえてもそれは同おなじで、李り滉ひろしは四よん端はしは理りが発はっし気きがそれに従したがい、七なな情じょうは気きが発はっし理りがそれに乗のるという理りと気きの相互そうごの能動のうどう性せいを説といた。それに対たいし李り珥は四よん端はしや七なな情じょうがいずれも、気きが発はっして理りがそれに乗のるという一ひとつの形式けいしきであるという包括ほうかつ関係かんけいを説といた。

彼かれは儒学じゅがく者しゃではあるがその学問がくもんを実際じっさいの社会しゃかいである政治せいじ・経済けいざい・教育きょういく・国防こくぼうなどに対たいしても適用てきようさせ、様々さまざまな施策しさくを提言ていげんした。中なかでも1583年ねんに14代だい国王こくおう宣せん祖そに対たいし、「十じゅう万まん養やしなえ兵へい」を説といたことが知しられる。「このところ国事こくじは、国内こくないにおいては紀綱きこうが崩くずれていて百官ひゃっかんが職務しょくむを遂行すいこうせず、民みんは窮乏きゅうぼうして財物ざいぶつが払底ふっていしていて、それにより兵力へいりょくは弱よわくなっている。無事ぶじに時ときがたてば、ひょっとすると持もちこたえることもできるだろうが、万まん一いち戦せん争そうでも起おきたら必かならずや（朝鮮ちょうせんは）倒たおれ、もはや救済きゅうさいの策さくはないだろう」と朝鮮ちょうせん王朝おうちょうの無能むのうに対たいし苦言くげんを呈ていした提議ていぎをしていた。この提議ていぎは朝鮮ちょうせんが国防こくぼうを軽視けいししている現状げんじょうから、やがて来きたるべき北きた胡えびす（女おんな真しん族ぞく）や南みなみ倭やまと（日本にっぽん）の侵略しんりゃくに対たいする施策しさくとして常備じょうび兵へいの必要ひつよう性せいを説といたものだが、民みんたちに負担ふたんがひどいという理由りゆうで顧かえりみられることは無なかった。

16世紀せいき前半ぜんはんの朝鮮ちょうせんは士し林りん派はと勲くん旧派きゅうはの政治せいじ闘争とうそうが激はげしく、ちょうど李り珥が官吏かんりとなった直後ちょくご、1567年ねんの宣せん祖その即位そくいから士し林りん派はが台頭たいとうする。しかし士し林りん派はの中なかで政策せいさくを巡めぐって東ひがし人じんと西人せいじんの党争とうそうが表面ひょうめん化かし、これらが朱子学しゅしがくの解釈かいしゃくの違ちがいにまで党争とうそうの材料ざいりょうに使つかわれてしまう。東ひがし人じんは李り滉ひろし、西人せいじんは李り珥の思想しそうの流ながれを汲くむ派閥はばつであった。李り珥自身じしんは党争とうそうを仲裁ちゅうさいしていたが、栗谷くりやの死後しごやがて党争とうそうは激化げきかし、内政ないせいや外交がいこうなどの各面かくめんで深刻しんこくな影響えいきょうを及およぼしたまま提議ていぎの11年ねん後ごに豊臣とよとみ秀吉ひでよしの文禄・慶長ぶんろくけいちょうの役えきを迎むかえることとなる。

1584年ねんに逝去せいきょ。大韓民国だいかんみんこくの5000ウォン紙幣しへいの中なかで肖像しょうぞう画がが描えがかれており、2006年ねんに発行はっこうされた新しん貨にはその裏うらに彼かれの母はは（申さる師し任にん堂どう）が描えがいた“草くさ虫むし図ず”が描えがかれている。（旧きゅう貨には彼かれの生家せいかである烏竹くろちく軒のき。）

『箕み子こ實記じっき』を著あらわし、中国ちゅうごく殷いん王朝おうちょうの政治せいじ家か箕み子こが朝鮮半島ちょうせんはんとうを征服せいふく、箕み子こ朝鮮ちょうせんを建国けんこくした過程かてい、箕み子この世よ系けい、暦年れきねんなどを論証ろんしょうした。

紀元前きげんぜん2333年ねんに即位そくいしたとされる檀だん君くん朝鮮ちょうせんの王おうである檀だん君くんについて考証こうしょうし、荒唐無稽こうとうむけいとみなしている。すなわち、「檀だん君くんの首くび出で文献ぶんけん稽うる無なし」として、檀だん君くんを否定ひていした。

著書ちょしょ

• 『聖ひじり学まなぶ概要がいよう』
• 『東湖とうこ問答もんどう』
• 『撃げき蒙こうむ要訣ようけつ』
• 『栗谷くりや全書ぜんしょ』
• 『箕み子こ實記じっき』

参考さんこう文献ぶんけん

• 『朝鮮ちょうせん人物じんぶつ事典じてん』大和やまと書房しょぼう発行はっこう
• 金きむ素す天てん「韓国かんこく史しのなかの100人にん」明石書店あかししょてん 2002年ねん ISBN 4-7503-1607-5

関連かんれん項目こうもく

• 栗谷くりや李り珥 (駆逐くちく艦かん) － 世よ宗むね大王だいおう級きゅう駆逐くちく艦かん2番ばん艦かん

外部がいぶリンク

• 朝鮮ちょうせん儒学じゅがくの巨星きょせいたち、その軌跡きせきとは(朝鮮日報ちょうせんにっぽう日本語にほんご版ばん)