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かく輸送ゆそう

出典しゅってん: フリー百科ひゃっか事典じてん『ウィキペディア(Wikipedia)』

かく輸送ゆそう(かくゆそう、えい: nuclear transport)は、細胞さいぼうしつ細胞さいぼうかくあいだ物質ぶっしつ輸送ゆそうである。てい分子ぶんし調節ちょうせつけることなくかく自由じゆう出入でいりすることができるが[1]RNAタンパク質たんぱくしつのようなきょ大分おおいた輸送ゆそうかくまくあなふく合体がったいによって緊密きんみつ制御せいぎょされており、カリオフェリンのような輸送ゆそう因子いんしとの結合けつごう必要ひつようである。かくないへの輸送ゆそうもちいられるカリオフェリンはインポーチンかくがいへの輸送ゆそうもちいられるものはエクスポーチンばれる[2][3]

細胞さいぼうしつからかく輸送ゆそうされるタンパク質たんぱくしつには、インポーチンが結合けつごうするかく局在きょくざいシグナル(NLS)が存在そんざいしている。NLSはタグとしてはたらアミノ酸あみのさん配列はいれつである。その配列はいれつ多様たようであり、親水しんすいてき配列はいれつであることが一般いっぱんてきであるが、疎水そすいてき配列はいれつ記載きさいされている[1]。エクスポーチンと結合けつごうしたタンパク質たんぱくしつtRNAてられたリボソームサブユニットはかくがい輸送ゆそうされる。エクスポーチンはかくがい搬出はんしゅつシグナル(NES)とばれるシグナル配列はいれつ結合けつごうする。インポーチンとエクスポーチンの輸送ゆそうする能力のうりょくは、Ras関連かんれんGTPアーゼであるRanによって調節ちょうせつされる。

GTPアーゼはグアノシンさんリンさん(GTP)とばれる分子ぶんし結合けつごうする酵素こうそで、その加水かすい分解ぶんかいによってグアノシンリンさん(GDP)をつくしてエネルギーを放出ほうしゅつする。Ranは、GTPとGDPのどちらと結合けつごうしているかによってコンフォメーションことなる。GTP結合けつごう状態じょうたいでは、Ranはカリオフェリン(インポーチンとエクスポーチン)に結合けつごうすることができる。インポーチンはGTP結合けつごうがたRanとの結合けつごうともな解離かいりする一方いっぽう、エクスポーチンは輸送ゆそうするためにGTP結合けつごうがたRanとのさんしゃふく合体がったい形成けいせいしなければならない。Ranのどちらの結合けつごう状態じょうたい優勢ゆうせいであるかは、Ranがかく位置いちしているか(GTP結合けつごうがた優勢ゆうせい)、細胞さいぼうしつ位置いちしているか(GDP結合けつごうがた優勢ゆうせい)によってことなる。

RNAやタンパク質たんぱくしつのような高分子こうぶんしは、Ran-GTPかく輸送ゆそうサイクルとばれる過程かていかくまくえて能動のうどう輸送ゆそうされる。

かくない輸送ゆそう

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インポーチンは細胞さいぼうしつ結合けつごうし、そのかくまくあなふく合体がったい相互そうご作用さようしてチャネルを通過つうかできるようになる[4]。いったんかくないはいると、GTP結合けつごうがたRan(Ran-GTP)との相互そうご作用さようによってインポーチンのコンフォメーション変化へんかこされ、解離かいりする[5]。その結果けっかしょうじたインポーチンとRan-GTPとのふく合体がったい細胞さいぼうしつ移行いこうし、そこでRan結合けつごうタンパク質たんぱくしつ(RanBP)がRan-GTPをインポーチンからはな[4]。この分離ぶんりによってGTPアーゼ活性かっせいタンパク質たんぱくしつ(GAP)がRan-GTPに結合けつごうできるようになり、GTPをGDPへ加水かすい分解ぶんかいする[6]。この過程かていによってしょうじたRan-GDPはかく輸送ゆそう因子いんしNUTF2英語えいごばん結合けつごうし、かくおくかえされる。かくではRan-GDPはグアニンヌクレオチド交換こうかん因子いんし(GEF)と相互そうご作用さようし、GDPがGTPへえられる。こうしてふたたびRan-GTPとなり、あらたなサイクルが開始かいしされる。

かくがい輸送ゆそう

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かくがい輸送ゆそうおおまかにえばかくない輸送ゆそうぎゃく過程かていである。かくないでエクスポーチンはタンパク質たんぱくしつとRan-GTPと結合けつごうし、かくまくあなとおって細胞さいぼうしつ拡散かくさんし、細胞さいぼうしつふく合体がったい解離かいりする。Ran-GTPはGAPと結合けつごうしてGTPを加水かすい分解ぶんかいし、Ran-GDPふく合体がったいかくおくかえされてGDPはGTPへえられる。したがって、インポーチンは解離かいりをRan-GTPに依存いぞんし、エクスポーチンは結合けつごうのためにRan-GTPを必要ひつようとする[7]

転写てんしゃ修飾しゅうしょく完了かんりょうしたのち成熟せいじゅくmRNA細胞さいぼうしつへの輸送ゆそう特別とくべつなmRNAかくがい輸送ゆそうタンパク質たんぱくしつによっておこなわれる。この過程かてい活性かっせいはRanに依存いぞんするが、その機構きこうはあまり解明かいめいされていない。とく転写てんしゃおおおこなわれる一部いちぶ遺伝子いでんしかくまくあな物理ぶつりてき近傍きんぼう位置いちしており、転移てんい過程かてい促進そくしんされている[8]

tRNAのかくがい輸送ゆそうもtRNAがけるさまざまな修飾しゅうしょく依存いぞんしており、それによって適切てきせつ機能きのうしないtRNAのかくがい輸送ゆそうふせがれている。tRNAは新生しんせいペプチドくさりへのアミノ酸あみのさん付加ふかという翻訳ほんやくにおける中心ちゅうしんてき役割やくわりたすため、この品質ひんしつ管理かんり機構きこう重要じゅうようである。脊椎動物せきついどうぶつにおけるtRNAのかくがい輸送ゆそう因子いんしエクスポーチン-t英語えいごばんばれている。エクスポーチン-tはかくないでtRNAに直接ちょくせつ結合けつごうし、この過程かていはRan-GTPの存在そんざい促進そくしんされる。tRNAの構造こうぞう影響えいきょうあたえる変異へんいによってエクスポーチン-tへの結合けつごう阻害そがいされ、したがってこの段階だんかい細胞さいぼうにとってべつ品質ひんしつ管理かんり段階だんかいとなっている[9]上述じょうじゅつしたものと同様どうように、いったんふく合体がったいかくまくえると、tRNAの解離かいり細胞さいぼうしつ放出ほうしゅつされる。

タンパク質たんぱくしつシャトリング

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おおくのタンパク質たんぱくしつがNESとNLSの双方そうほうっており、そのためつねかく細胞さいぼうしつ往復おうふく(シャトリング)していることがられている。特定とくてい場合ばあいには、これらの段階だんかいのいずれか(すなわちかくない輸送ゆそうかくがい輸送ゆそうのどちらか)が翻訳ほんやく修飾しゅうしょくなどによって調節ちょうせつされる。

タンパク質たんぱくしつのシャトリングはheterokaryon fusion assayによって評価ひょうかすることができる[10]

出典しゅってん

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  1. ^ a b Watson, JD; Baker TA; Bell SP; Gann A; Levine M; Losick R. (2004). “Ch9-10”. Molecular Biology of the Gene (5th ed.). Peason Benjamin Cummings; CSHL Press.. ISBN 978-0-8053-9603-4 
  2. ^ Mackmull, MT; Klaus, B; Heinze, I; Chokkalingam, M; Beyer, A; Russell, RB; Ori, A; Beck, M (18 December 2017). “Landscape of nuclear transport receptor cargo specificity.”. Molecular Systems Biology 13 (12): 962. doi:10.15252/msb.20177608. PMC 5740495. PMID 29254951. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5740495/. 
  3. ^ Alberts, Bruce (2004). Essential cell biology (2nd ed.). Garland Science Pub. pp. 504–506. ISBN 978-0815334811 
  4. ^ a b Bruce Alberts; Alexander Johnson; Julian Lewis et al., eds (2002). Molecular Biology of the Cell (4th ed.). Garland Science 
  5. ^ Molecular Cell Biology (5th ed.). New York: WH Freeman. (2004). ISBN 978-0-7167-2672-2 
  6. ^ Izaurralde, E; Adam, S (1998). “Transport of macromolecules between the nucleus and the cytoplasm”. RNA 4 (4): 351–64. PMC 1369623. PMID 9630243. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1369623/. 
  7. ^ Pemberton, Lucy F.; Bryce M. Paschal (2005). “Mechanisms of Receptor-Mediated Nuclear Import and Nuclear Export”. Traffic (Blackwell Munksgaard) 6 (3): 187–198. doi:10.1111/j.1600-0854.2005.00270.x. PMID 15702987. 
  8. ^ Cole, CN; Scarcelli, JJ (2006). “Transport of messenger RNA from the nucleus to the cytoplasm”. Curr Opin Cell Biol 18 (3): 299–306. doi:10.1016/j.ceb.2006.04.006. PMID 16682182. 
  9. ^ Görlich, Dirk; Ulrike Kutay (1999). “Transport between the cell nucleus and the cytoplasm”. Annu. Rev. Cell Dev. Biol. 15: 607–660. doi:10.1146/annurev.cellbio.15.1.607. 
  10. ^ Gammal, Roseann; Baker, Krista; Heilman, Destin (2011). “Heterokaryon Technique for Analysis of Cell Type-specific Localization”. Journal of Visualized Experiments (49): 2488. doi:10.3791/2488. ISSN 1940-087X. PMC 3197295. PMID 21445034. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3197295/. 

外部がいぶリンク

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