樵きこり

きこり仕事しごとを描えがいた1910年ねんの絵画かいが。「受うけ口ぐち」の反対はんたい方向ほうこうから「追おい口くち」を入いれる。こうして切きり込こみは互たがい違ちがいの状態じょうたいになる。

西洋せいよう式しきの伐採ばっさい用よう斧おの。両刃りょうば式しきの斧おのは、硬かたい木きと柔やわらかい木きを伐きり分わけるため、刃はの研とぎ具合ぐあいがそれぞれ異ことなる。

樹木じゅもくに足場あしば用ようの板いたを打うち込こみ、その上うえに乗のって作業さぎょうする。この写真しゃしんで言いうと、人ひとが寝転ねころがっている部分ぶぶんが受うけ口ぐち。

現代げんだいのきこり。チェーンソーを使つかう。

林業りんぎょう用ようヘルメット。チェンソーによる音響おんきょう外傷がいしょう対策たいさくの遮音しゃおん機能きのう、木きくずが顔かおに当あたらないような網あみがついている。

二人ふたり両手りょうて挽鋸の利用りよう。1952

樵きこり（きこり、別べつ表記ひょうきで木き樵きこり）とは、森林しんりんの樹木じゅもくを斧おのなどにより伐採ばっさいすること、もしくはそれによって生計せいけいを立たてている者ものを指さす。樵きこり夫おっと（しょうふ）や杣そま夫おっと（そまふ）、林業りんぎょうを担になうことから林業りんぎょう従事じゅうじ者しゃとも呼よばれる。中世ちゅうせい以前いぜんでは、杣そま工たくみと呼よばれた。

昔話むかしばなしなどにも登場とうじょうする。

江戸えど時代じだいには、木きに登のぼって伐採ばっさいを行おこなう空そら師しも生うまれた。

「木き伐き（こ）る」というラ行ぎょう四よん段だん活用かつよう動詞どうし（「木き」と「伐き（こ）る」との複ふく合あい動詞どうし）の連用形れんようけい「木き伐きり」からの転成てんせい名詞めいしと考かんがえられる。「伐きる」は、「木きを切きる/伐採ばっさいする」の意味いみ。

ごくわずかに名字みょうじとして用もちいられる場合ばあいもある。

伐採ばっさい作業さぎょう

木きを切きり倒たおす作業さぎょうは、かつては斧おのまたは鋸のこを併用へいようして行おこなわれてきたが、現代げんだいではチェーンソーを用もちいることが一般いっぱん的てきである。また、必要ひつように応おうじて鋸のこ、くさび、くさびを打うち込こむハンマー（ヨキ）、ロープ、ウインチ、バールなどを使用しようする。

まず、安全あんぜんに伐き倒たおさせる方向ほうこうを確認かくにんし受うけ口ぐちを切きる。受うけ口ぐちは、直径ちょっけいの1⁄4から1⁄3程度ていどを目安めやすに水平すいへい方向ほうこうから切きり込こみを入いれ、さらに上方かみがたから水平すいへいの切きり込こみ面めんに向むけ30度ど程度ていどの角度かくどをもって、斜ななめに切きり込こみを入いれる。受うけ口ぐちによりできる三角形さんかっけいの木片もくへんは取とり除のぞく。切きり残のこしの部分ぶぶんは、「つる」といい、後のちに倒たおす際さいのスピード・方向ほうこうをコントロールする要素ようそとなる。

次つぎに、つるの部分ぶぶんに反対はんたい方向ほうこうから追おい口くちを入いれる。追おい口くちは、受うけ口ぐちの高たかさの2⁄3程度ていどの高たかさを目安めやすに水平すいへい方向ほうこうに切きれ込こみを入いれる。追おい口くちを入いれることで、つるは立木たちきの自重じちょうで挫くじけ屈くっし、受うけ口ぐち方向ほうこうへ倒たおれるため加減かげんを入いれながら行おこなうことが基本きほんである。切きれ込こみを一気いっきに受うけ口ぐちまで入いれることは、立木たちきの倒たおれる方向ほうこうや早はやさを変化へんかさせることから危険きけんである。直径ちょっけいの大おおきい木きは、適宜てきぎ切きれ目めにくさびを入いれてハンマーで打うち込こむことで倒たおしたり、ロープとウインチを併用へいようして伐き倒たおせ方向ほうこうを制御せいぎょする。こうした作業さぎょうを全すべて高性能こうせいのう林業りんぎょう機械きかい（ハーベスタ）で行おこなうことがある。

間伐かんばつなど立木たちきが密生みっせいして行おこなう場所ばしょでは、伐き倒たおした木きが隣となりの木きにかかり完全かんぜんに倒たおれない「かかり木き」が発生はっせいしやすい。かかり木きは、放置ほうちすると不意ふいに倒たおれることから危険きけんであり、その場ばで対処たいしょすることが必要ひつようである。対処たいしょ方法ほうほうはその状況じょうきょうにもよるが、つるの調整ちょうせいによって伐き倒木とうぼくを回転かいてんさせたり、木き回まわし棒ぼう（フェリングレバー）を用もちいて回まわして落おとす。根本こんぽんにバールなどを当あてて、てこの原理げんりで伐き倒たおした木きを安全あんぜんな方向ほうこうへ根気こんきよく動うごかし、立木たちきから離はなすことが原則げんそくである。また、危険きけんではあるが、かかり木きに向むかって新あらたな木きを当あててその両方りょうほうを倒たおす技術ぎじゅつがある（あびせ倒だおし）。 安全あんぜんに作業さぎょうするためにワイヤーで引ひっ張ぱりながら伐木ばつぼくすることもある（チルホール伐き倒たおせ）。

玉たま切ぎりの様子ようす。シイタケのほだ木きなら1m前後ぜんご、角材かくざいなどは4-5m単位たんいで玉たま切ぎりをして搬出はんしゅつする。

伐き倒たおした木きは、枝えだを落おとし、流通りゅうつうを考慮こうりょした長ながさに切きる（玉たま切ぎり）作業さぎょうの後のち、ウインチやケーブルクレーン、グラップルなどにより引ひき上あげられ、トラックや林内りんない作業さぎょう車しゃによって林はやし外がいへ搬出はんしゅつされる。大だい規模きぼな傾斜けいしゃの緩ゆるい伐採ばっさい地ちであれば、ブルドーザーなど大型おおがた重機じゅうきによる引ひき出だし、奥地おくちでかつ高価こうかな木材もくざいであればヘリコプターによる搬出はんしゅつがごく稀まれに行おこなわれる。

道具どうぐ

伐き倒たおせ

古来こらいは三さんツ紐ひも伐きり（三さんツ緒いとぐち伐きり）と呼よばれる方法ほうほうが使つかわれていたが、チェンソーの導入どうにゅうでほぼ使つかわれなくなった。神社じんじゃなどに用もちいる木材もくざいには三さんツ紐ひも伐きりが使用しようされる場合ばあいもある。

• 斧おの、鉞
• 楔くさび（ヤ）
• 手斧ちょうな
• のこぎり（二人ふたり両手りょうて挽鋸、玉たま切ぎり用よう鋸のこ、チェンソー）
• 鉈

集しゅう材ざい

• 鳶口とびぐち、Cant hook、ガンタ（木き廻まわし）
• 鎹（トチ）
• 木馬もくば（キンマ、キウマ） - 木馬もくば道どうを移動いどうさせるための橇そり
• 修羅しゅら（土ど修羅しゅら、Go-devil）
• Michigan logging wheels

マーカー

間伐かんばつする木きの選定せんてい用よう

• マーキングアックス
• 蛍光けいこうテープ

輸送ゆそう

木材もくざい流りゅう送おくなどの水みずの流ながれを利用りようして送おくり出だされた。

機械きかい化か

材木ざいもくの移動いどうなどに馬うまなどが利用りようされ、内燃ないねん機関きかんの発展はってんによってチェンソーなどが発明はつめいされたが、それらの作業さぎょうを複数ふくすう同時どうじに行おこなえる高性能こうせいのう林業りんぎょう機械きかいが発明はつめいされるようになった。

• フェラーバンチャ
• ハーベスタ (林業りんぎょう)（伐き倒たおせ造づくり材ざい機き）
• プロセッサ（造みやつこ材ざい機き）
• 動力どうりょく式しき枝打えだうち機き
• スタンプグラインダー
• ウッドチッパー - 枝えだなどをウッドチップにする

集しゅう材ざい

• スキッダ(集あつまり材ざい機き)
• ヤーダー（タワーヤーダー）
• スウィングヤーダー
• スチームドンキー
• フォワーダ
• 木材もくざい運搬うんぱん車しゃ

労働ろうどうのリスク

このような作業さぎょうの過程かていは、事故じこが連鎖れんさ的てきに発生はっせいすることが多おおく、熟練じゅくれんの作業さぎょう者しゃが丁寧ていねいに安全あんぜんを確認かくにんしながら実施じっししても、これを完全かんぜんに防ふせぐことはできない。医療いりょうサービスから遠とおく離はなれた足場あしばの悪わるい山やまの中なかでの作業さぎょうがある林業りんぎょう労働ろうどう者しゃの労働ろうどう災害さいがい発生はっせい率りつは、日本にっぽんやアメリカでは平均へいきん的てきな工場こうじょう労働ろうどう者しゃより高たかい割合わりあいで発生はっせいしている。

伐採ばっさい中ちゅうの死亡しぼうが一番いちばん多おおく、次ついで集しゅう材ざい作業さぎょうが多おおい。

花粉かふん・木材もくざい粉塵ふんじん

日本にっぽんにおいては、米べい杉すぎ、ねずこ、ラワン、リョウブ、桑くわ、ほう、白樺しらかんば等とうの木材もくざい粉塵ふんじんが発生はっせいしている現場げんばで起おきるアレルギあれるぎー性せいの鼻炎びえん、気管支きかんし喘息ぜんそく等とうの呼吸こきゅう器き疾患しっかんは職業病しょくぎょうびょうとされるほか、アレルギあれるぎー性せい皮膚ひふ炎えん、塵肺じんぱい、鼻腔びこうがん、副ふく鼻腔びこうがんなどとの関係かんけいもある。

その他た

毒蛇どくへび、クマや蜂はちなどの危険きけん動物どうぶつとの接触せっしょく。

文化ぶんか

1959年ねんにオレゴン州しゅう創設そうせつ100周年しゅうねんを記念きねんして建たてられたポール・バニヤン像ぞう（アメリカ合衆国あめりかがっしゅうこく国家こっか歴史れきし登録とうろく財ざい）

• きこりの与作よさく - エポック社えぽっくしゃカセットビジョンで発売はつばいされたアクションゲーム。新しん日本にっぽん企画きかく（後ごのSNK）が1979年ねんにリリースした『与作よさく』の移植いしょく作品さくひん。

民話みんわ・神話しんわ

• ポール・バニヤン - アメリカの民話みんわに登場とうじょうする巨人きょじんの樵きこり。
• 金かねの斧おの
• 木き樵きこりのオーラヴ
• 覚さとし - サトリ。日本にっぽん妖怪ようかいの一種いっしゅで人ひとの心しんを読よみ、隙すきをついて食ぐい殺ころすとされる。伝承でんしょうの一ひとつに、樵きこりがサトリに狙ねらわれるが、ふるった斧おのの頭あたまが外はずれてサトリに当あたって殺ころすという、心しんに思おもわぬ偶然ぐうぜんにより命拾いのちびろいをする、というものがある。

歌うた

日本にっぽんにおいては、山やまで歌うたわれる歌うたは全すべて山やま歌かと呼よばれ、この中なかに樵きこり夫おっと歌か、樵きこり歌かも含ふくまれる。中国ちゅうごくでは、樵きこり歌か、樵きこり唱とも呼よばれる。アメリカの木きこりの歌うたは、作業さぎょう歌かがなくて娯楽ごらく歌かが歴史れきしに残のこされているが、これは歌うたが下品げひんすぎて20世紀せいき初頭しょとうの歌うたを収録しゅうろくしていた人間にんげんたちがあえて残のこさなかったという説せつが有力ゆうりょくである。

• 与作よさく - 北島きたじま三郎さぶろうの歌うた。
• 木きこりの歌うた(The Lumberjack Song) - テレビ番組ばんぐみ『空そら飛とぶモンティ・パイソン』第だい1シリーズ第だい9話わの中なかで放送ほうそうされたスケッチ、およびスケッチ内ないに登場とうじょうする歌うた。
• 能のう『敦盛あつもり』、和歌集わかしゅう『和漢わかん朗詠ろうえい集しゅう』に樵きこり歌か牧笛ぼくてきという言葉ことばがあり、草刈くさかりの笛ふえと木きこりの歌うたは、古ふるくから歌人かじんの歌うたにも読よまれている。

神事しんじ

• 鳥とり総立そうだち（とぶさだて）- 伐採ばっさい後ごに木きの先端せんたんを切きり落おとして切きり株かぶに立たてる儀式ぎしきを行おこなう。
• 木き祭さい - 木きを切きる前まえに山神さんじんを祀まつる儀式ぎしき。
• 樵きこり初はつ - 年初ねんしょに山やまの神かみにお供そなえして山やまに入はいる儀式ぎしき
• 諏訪すわ御ご柱はしら祭さい - 木きこりは木きの輸送ゆそうなどを管理かんりする実務じつむ能力のうりょくを持もつことから、実行じっこう委員いいんに参加さんかし、総そう斧おの長ちょうを代表だいひょうに斧おの方かた会かいが斧おの方かたとして参加さんかする。

大会たいかい

• World Logging Championship
• Stihl Timbersports Series

ステレオタイプ

ひげ、格子縞こうしじまのシャツ、ワークブーツを身みに着つけた筋肉質きんにくしつな体形たいけいのスタイルが、2014年ねんにランバーセクシャル（lumbersexual）と造語ぞうごされるほどアメリカ男子だんしの間あいだで人気にんきとなった。

プロレス

プロレスラーの設定せってい（盛もり上あげるためのギミック）として「木きこり出身しゅっしん」を名乗なのる選手せんしゅがいた。

また、プロレスの試合しあい形式けいしきで、カナダの木きこりの間あいだで喧嘩けんかが起おこったときに中立ちゅうりつの木きこりが囲かこみ逃にげられないようにしていたという風習ふうしゅうにならい。リングを中立ちゅうりつのプロレスラーが囲かこい場外じょうがい乱闘らんとうに発展はってんさせないようにする形式けいしきをランバージャック・デスマッチ、ランバージャック・マッチと呼よぶ。

関連かんれん団体だんたい

• 林業りんぎょう・木材もくざい製造せいぞう業ぎょう労働ろうどう災害さいがい防止ぼうし協会きょうかい

関連かんれん項目こうもく

• 杣そま工たくみ
• 木挽こびき
• 木き登のぼり - 空そら師しは、昇のぼり柱はしら器きと胴どう綱つなで木きに登のぼって枝打えだうちやロープ掛かけを行おこなう。
• サルベージ・ロギング - 山やま火事かじなどの焼やけ跡あとから木きを採集さいしゅうすること。
• 製材せいざい所しょ、丸太まるた割わり、薪割まきわり