殷いん墟

殷いん墟 （中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく）
殷いん王朝おうちょう首都しゅと（BC1350 - 1046）の遺構いこう
英名えいめい	Yin xu
仏ふつ名めい	Yin xu
登録とうろく区分くぶん	文化ぶんか遺産いさん
登録とうろく基準きじゅん	(2),(3),(4),(6)
登録とうろく年ねん	2006年ねん
公式こうしきサイト	世界せかい遺産いさんセンター（英語えいご）
地図ちず
使用しよう方法ほうほう・表示ひょうじ

殷いん墟
各種かくしゅ表記ひょうき
繁体字はんたいじ：	殷いん墟
簡体字かんたいじ：	殷いん墟
拼音：	Yīnxū
注ちゅう音符おんぷ号ごう：	｜ㄣ ㄒㄩ

殷いん墟（いんきょ）は、古代こだい中国ちゅうごく殷いん王朝おうちょう後期こうきの首都しゅとの遺構いこう。中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこく河南かなん省しょう安陽あんよう市しの市街地しがいち西にし北郊ほっこう、殷いん都区とくに位置いちする。

概要がいよう

殷いん王朝おうちょう後期こうき（BC14世紀せいきごろ - BC11世紀せいきごろ）、竹たけ書しょ紀年きねんによれば第だい19代だい王おう盤ばん庚かのえによる遷都せんとから帝みかど辛からしの時代じだいの滅亡めつぼうに至いたるまでの期間きかん、殷いんの首都しゅとが営いとなまれたと伝つたえられる。

盗掘とうくつされた甲かぶと骨こつ片へんの発見はっけんが契機けいきとなり、1928年ねんより発掘はっくつ作業さぎょうが開始かいしされ、ここがその首都しゅとの遺跡いせき（殷いん墟）であることが確認かくにんされた。

殷いん墟からは深ふかさ20メートルを超こえるものを含ふくむ多数たすうの巨大きょだい墳墓ふんぼが発見はっけんされている。1961年ねんに中華人民共和国ちゅうかじんみんきょうわこくの全国ぜんこく重点じゅうてん文物ぶんぶつ保護ほご単位たんいに、2006年ねん7月がつには世界せかい遺産いさんに登録とうろくされた。中国ちゅうごくの5A級きゅう観光かんこう地ち（2011年ねん認定にんてい）。

発掘はっくつに至いたるまで

真偽しんぎは不明ふめいであるが、金石かねいし学者がくしゃであった王おう懿栄は1899年ねんに、北京ぺきん市内しないの漢方薬かんぽうやく店てんで購入こうにゅうした龍骨りゅうこつ（漢方薬かんぽうやくの一種いっしゅである骨ほね）に金文きんぶん（古代こだいの金属きんぞく器きや石刻せっこくに刻きざまれた漢字かんじ）に類似るいじした古こ文字もじを発見はっけん、これを解読かいどくすべく龍骨りゅうこつを大量たいりょうに購入こうにゅうしたと伝つたえられる。

1900年ねん、義和よしかず団だんの乱らんに伴ともなう八はちカ国かこく連合れんごう軍ぐんの北京ぺきん侵入しんにゅうの際さいに王おう懿栄は自殺じさつ、収集しゅうしゅうした龍りゅう甲かぶとは小説しょうせつ家かである劉りゅう鶚みさごに譲渡ゆずりわたされ、その友人ゆうじんである金石かねいし学者がくしゃ羅ら振ふ玉たまにより龍りゅう甲かぶとは河南かなん省しょう北部ほくぶの小しょう屯たむろ村むらより出土しゅつどしたものであることが判明はんめいした。羅ら振ふ玉たまは甲骨文字こうこつもじの解読かいどくを進すすめ、この村むらは伝説でんせつ上じょうの存在そんざいと考かんがえられていた殷いん王朝おうちょうの遺構いこうではないかと推察すいさつした。その後ご王国おうこく維の研究けんきゅうにより、ここが盤ばん庚かのえが遷都せんとした後のちの殷いん都とである説せつが唱となえられた。

殷いん朝ちょう遺構いこうの調査ちょうさのため、1928年ねんから甲かぶと骨こつの発掘はっくつ調査ちょうさが行おこなわれることになった。中央ちゅうおう研究けんきゅう院いんは考古こうこ学者がくしゃによる発掘はっくつ隊たいを組織そしき、日にち中ちゅう戦争せんそうで中断ちゅうだんする1937年ねんまで15回かいにわたる発掘はっくつ作業さぎょうを行おこない、甲かぶと骨こつだけでなく青銅器せいどうきなどの金属きんぞく器きや墳墓ふんぼなどの遺跡いせきも発見はっけんされた。1950年ねんに発掘はっくつは再開さいかいされ、1986年ねんまでの間あいだに15万まん件けんの甲かぶと骨こつが発掘はっくつされている。

殷いん墟の規模きぼと発掘はっくつ物ぶつ

婦ふ好こう墓はか

点線てんせんで囲かこまれた範囲はんいが殷いん墟。中央ちゅうおうを洹水が流ながれる。右みぎ上じょうにある方形ほうけいの遺跡いせきは洹北商しょう城じょう

現在げんざい調査ちょうさが進すすんだ殷いん墟の範囲はんいは東西とうざい6km、南北なんぼく4kmの地域ちいきで、面積めんせき24万まん平方へいほうメートルにわたる。洹水をはさんで北岸ほくがんと南岸なんがんに分わかれ、南岸なんがんに小しょう屯たむろ村むら（および安陽あんよう市し）などが位置いちし、北岸ほくがんには武官ぶかん村むらなどが位置いちする。

小しょう屯たむろ村むら一帯いったいは22代だい王おうの武たけ丁ちょう以降いこうの甲かぶと骨こつや青銅器せいどうきが集中しゅうちゅうして発掘はっくつされた。小しょう屯たむろ村北むらきた東部とうぶが宮殿きゅうでんなどが位置いちする殷いん都との中心ちゅうしんだったとも考かんがえられ、周囲しゅういからは工房こうぼう跡あとなども発掘はっくつされている。しかし都城みやこのじょう（城壁じょうへき）の痕跡こんせきが見みつかっていないのが疑問ぎもんとされる。

また小しょう屯たむろ村むら北東ほくとう部ぶでは、武たけ丁ちょうの夫人ふじんであった婦ふ好このみの墳墓ふんぼが1976年ねんにほぼ未み盗掘とうくつの状態じょうたいで発見はっけんされ、墳墓ふんぼからは6匹ひきの犬いぬのほか、少すくなくとも16人にんの殉死じゅんし者しゃが発掘はっくつされ、他たに副葬品ふくそうひんとして440以上いじょうの青銅器せいどうき、約やく600もの玉石ぎょくせき器き、石いし彫ほ類るい、骨ほね角かく器き、約やく7,000枚まいの当時とうじの貝かい貨が出土しゅつどしている。

小しょう屯たむろ村むらで出土しゅつどした多数たすうの甲かぶと骨こつ（亀かめの腹はら甲かぶとや牛うしや鹿しかの肩かた甲かぶと骨こつなど）には文字もじが刻きざまれ、合計ごうけいで5,000字じ以上いじょうの文字もじが確認かくにんされ、そのうち1,700字じほどが解読かいどくされている。またこの甲骨文字こうこつもじの研究けんきゅうにより、殷いん王朝おうちょうの存在そんざいが同どう時代じだい資料しりょうを通つうじて確認かくにんされたほか、この文字もじが現在げんざい使用しようされる漢字かんじの祖そ形がたであることが確認かくにんされている。

武官ぶかん村むら一帯いったいには13基きの大だい規模きぼな墳墓ふんぼが発見はっけんされ、そのうち王おう墓ぼの8基き（武たけ丁ちょう以降いこう8代だい）は密集みっしゅうしている。そのなかで遺物いぶつが発見はっけんされていない墳墓ふんぼは、殷いん朝ちょう最後さいごの王おうである紂王のものであり、殷いん朝ちょう滅亡めつぼうにより埋葬まいそうされなかった墳墓ふんぼであると推測すいそくされている。

武官ぶかん村むらの東ひがしの花園はなぞの荘しょう村むらでは殷いん墟直前ちょくぜんの殷いん中ちゅう期きの都城みやこのじょうの遺跡いせきが発見はっけんされている（洹北商しょう城じょう）。陽ひ甲かぶと・盤ばん庚かのえ・小しょう辛からしが首都しゅとを置おいた可能かのう性せいもある。文字もじ遺物いぶつは出土しゅつどしていない。

世界せかい登録とうろく基準きじゅん

この世界せかい遺産いさんは世界せかい遺産いさん登録とうろく基準きじゅんのうち、以下いかの条件じょうけんを満みたし、登録とうろくされた（以下いかの基準きじゅんは世界せかい遺産いさんセンター公表こうひょうの登録とうろく基準きじゅんからの翻訳ほんやく、引用いんようである）。

• (2) ある期間きかんを通つうじてまたはある文化ぶんか圏けんにおいて、建築けんちく、技術ぎじゅつ、記念きねん碑ひ的てき芸術げいじゅつ、都市とし計画けいかく、景観けいかんデザインの発展はってんに関かんし、人類じんるいの価値かちの重要じゅうような交流こうりゅうを示しめすもの。
• (3) 現存げんそんするまたは消滅しょうめつした文化ぶんか的てき伝統でんとうまたは文明ぶんめいの、唯一ゆいいつのまたは少すくなくとも稀まれな証拠しょうこ。
• (4) 人類じんるいの歴史れきし上じょう重要じゅうような時代じだいを例証れいしょうする建築けんちく様式ようしき、建築けんちく物ぶつ群ぐん、技術ぎじゅつの集積しゅうせきまたは景観けいかんの優すぐれた例れい。
• (6) 顕著けんちょで普遍ふへん的てきな意義いぎを有ゆうする出来事できごと、現存げんそんする伝統でんとう、思想しそう、信仰しんこうまたは芸術げいじゅつ的てき、文学ぶんがく的てき作品さくひんと直接ちょくせつにまたは明白めいはくに関連かんれんするもの（この基準きじゅんは他たの基準きじゅんと組くみ合あわせて用もちいるのが望のぞましいと世界せかい遺産いさん委員いいん会かいは考かんがえている）。

関連かんれん項目こうもく

• 殷いん
• 殷いん璽
• 二に里り岡おか文化ぶんか

外部がいぶリンク

• ユネスコによる殷いん墟の紹介しょうかい（英語えいご）
• 考古こうこ用語ようご辞典じてん－殷いん墟遺跡いせき