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理論りろん計算けいさん科学かがく

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理論りろん計算けいさん科学かがく(りろんけいさんきかがく、英語えいご:theoretical computer science)または理論りろんコンピュータ科学かがくは、計算けいさん理論りろんてき研究けんきゅうする学問がくもんで、計算けいさん科学かがくいち分野ぶんやである。計算けいさん数理すうりモデルして数学すうがくてき研究けんきゅうすることを特徴とくちょうとしている[1][2][3]。「数学すうがくてき」という言葉ことば広義こうぎには公理こうりてきあつかえるものすべてをすので、理論りろん計算けいさん科学かがく広義こうぎ数学すうがくいち分野ぶんやでもある。理論りろん計算けいさん科学かがくでは、現実げんじつコンピュータあつかうこともおおいが、チューリングマシンなどの計算けいさんモデルあつかうこともおおい。

この分野ぶんやのテーマのれい以下いかげる(とく意図いと理由りゆうのある選出せんしゅつではない)。

範囲はんい

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正確せいかく研究けんきゅう範囲はんいべるのは容易よういではないが、ACMSpecial Interest Group on Algorithms and Computation Theory英語えいごばん (SIGACT) はどうグループの目的もくてき理論りろん計算けいさん科学かがく振興しんこうであるとしており、その対象たいしょう範囲はんいつぎのように定義ていぎしている[5]

ACMの学術がくじゅつ Transactions on Computation Theory ではこの一覧いちらんにさらに符号ふごう理論りろん計算けいさんろんてき学習がくしゅう理論りろん英語えいごばんくわえ、データベース情報じょうほう検索けんさく経済けいざいモデルネットワークなどの理論りろん計算けいさん科学かがくてき側面そくめんをもふくめている[6]。このように範囲はんいひろいが、計算けいさん科学かがく理論りろんはたけ人間にんげん応用おうようはたけとはちがうという意識いしきっていることがあり、「コンピューティングささえている(より基本きほんてきな)科学かがく」を研究けんきゅうしているという意識いしきをもっていることがある[7]。これはかならずしも対立たいりつ意味いみするものではなく、むしろ協力きょうりょく関係かんけいにあることを意味いみする。

数理すうりろん理学りがく オートマトン かずろん グラフ理論りろん
かた理論りろん けんろん 計算けいさん幾何きかがく 量子りょうし計算けいさん

歴史れきし

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アルゴリズムはなんせんねんまえから存在そんざいしていたが(たとえば、2つのかず最大公約数さいだいこうやくすうもとめるユークリッドの互除ほういま使つかわれている[8][9])、計算けいさんにおけるアルゴリズムの定義ていぎ定式ていしきしたのはアラン・チューリングアロンゾ・チャーチスティーヴン・クリーネで、1938ねんのことである。一方いっぽう二進法にしんほう数学すうがく形式けいしき体系たいけいはそれ以前いぜんからあり、ゴットフリート・ライプニッツが17世紀せいき二進法にしんほう数学すうがくてき定式ていしきし、19世紀せいきジョージ・ブールブール論理ろんり/ブール代数だいすう定式ていしきした。[10]論理ろんりてき推論すいろん数学すうがくてき証明しょうめい古代こだいから存在そんざいしたが、1931ねんクルト・ゲーデル自身じしん不完全性ふかんぜんせい定理ていりで、公理こうり体系たいけいには証明しょうめいできない限界げんかい存在そんざいすることを証明しょうめいした。[11][12][13]

それらの発展はってん論理ろんりがく計算けいさん可能かのうせい現代げんだいてき研究けんきゅうをもたらし、全体ぜんたいとして理論りろん計算けいさん科学かがくという分野ぶんやした。1948ねんクロード・シャノンによる『通信つうしん数学すうがくてき理論りろん』からまれた情報じょうほう理論りろんがこれにくわわった。[14][15][16]おなころドナルド・ヘッブのうにおける学習がくしゅう数学すうがくてきモデル導入どうにゅうした。生物せいぶつがくてきデータがこの仮説かせつ裏付うらづけつつ、若干じゃっかん修正しゅうせいおこなわれていき、ニューラルネットワーク並行へいこう分散ぶんさん処理しょり確立かくりつされた。

20世紀せいき初頭しょとうからはじまった量子力学りょうしりきがく発展はってんにより、量子りょうし波動はどう関数かんすううえ演算えんざん可能かのうではないかという概念がいねんまれた。これはすなわち、複数ふくすう状態じょうたい同時どうじ並行へいこうてき計算けいさんできることを意味いみする。そこから20世紀せいき後半こうはん量子りょうしコンピュータ概念がいねんまれ、1990年代ねんだいにはピーター・ショア量子りょうしコンピュータを使つかえば素因数そいんすう分解ぶんかい多項式たこうしき時間じかんけることをしめし、もし(すうせんまん量子りょうしビットを量子りょうしてきあつかえる量子りょうしコンピュータが)実現じつげんすれば公開こうかいかぎ暗号あんごうシステムも安全あんぜんではなくなることをしめした。[17][18][19][20]

理論りろん計算けいさん科学かがく研究けんきゅうはこれらを基盤きばんとしているが、ほかにもおおくの数学すうがく問題もんだい学際がくさいてき問題もんだいあつかっている。

組織そしき

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脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Hartmanis, A. C. D. H. J., Henzinger, T., Leighton, J. H. N. J. T., & Nivat, M. (2006). Texts in Theoretical Computer Science An EATCS Series.
  2. ^ Hartmanis, A. C. D. H. J., Henzinger, T., Leighton, J. H. N. J. T., & Nivat, M. (2006). Monographs in Theoretical Computer Science An EATCS Series.
  3. ^ Hartmanis, J. (1981). Observations about the development of theoretical computer science. Annals of the History of Computing, 3(1), 42-51.
  4. ^ 横内よこうち寛文ひろふみ. (1994). プログラム意味いみろん. 共立きょうりつ出版しゅっぱん.
  5. ^ SIGACT”. 2013ねん7がつ13にち閲覧えつらん
  6. ^ ToCT”. 2010ねん6がつ9にち閲覧えつらん
  7. ^ Challenges for Theoretical Computer Science: Theory as the Scientific Foundation of Computing”. 2009ねん3がつ29にち閲覧えつらん
  8. ^ 森井もりい昌克まさよし, & 笠原かさはら正雄まさお. (1992). ユークリッド互除ほうもとづく狭義きょうぎ 2 げん BCH 符号ふごう復号ふくごうについて. 電子でんし情報じょうほう通信つうしん学会がっかい論文ろんぶん A, 75(1), 144-147.
  9. ^ 堀口ほりぐち敏男としお. (1995). ユークリッド復号ふくごうほうもちいたリードソロモン符号ふごうの BCH 限界げんかい以上いじょう復号ふくごう. 電子でんし情報じょうほう通信つうしん学会がっかい論文ろんぶん A, 78(5), 626-638.
  10. ^ Goodstein, R. L. (2007). Boolean algebra. Courier Corporation.
  11. ^ Berto, F. (2011). There's something about Gödel: the complete guide to the incompleteness theorem. John Wiley & Sons.
  12. ^ Smullyan, R. M. (1992). Gödel's incompleteness theorems. Oxford University Press on Demand.
  13. ^ 不完全性ふかんぜんせい定理ていり / 菊池きくちまこと ちょ | 共立きょうりつ出版しゅっぱん
  14. ^ Shanon, C. (1948). A mathematical theory of communication. Bell System Technical Journal, 27, 379-623.
  15. ^ Guizzo, E. M. (2003). The essential message: Claude Shannon and the making of information theory (Doctoral dissertation, Massachusetts Institute of Technology).
  16. ^ Gappmair, W. (1999). Claude E. Shannon: The 50th anniversary of information theory. IEEE Communications Magazine, 37(4), 102-105.
  17. ^ Shor, P. W. (1994, November). Algorithms for quantum computation: discrete logarithms and factoring. In Proceedings 35th annual symposium on foundations of computer science (pp. 124-134). IEEE.
  18. ^ Shor, P. W. (2002, May). Introduction to quantum algorithms. In Proceedings of Symposia in Applied Mathematics (Vol. 58, pp. 143-160).
  19. ^ Rieffel, E., & Polak, W. (2000). An introduction to quantum computing for non-physicists. ACM Computing Surveys (CSUR), 32(3), 300-335.
  20. ^ Pittenger, A. O. (2012). An introduction to quantum computing algorithms (Vol. 19). Springer Science & Business Media.

参考さんこう文献ぶんけん

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関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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