男女だんじょ別べつ学がく

男女だんじょ別べつ学がく（だんじょべつがく、英えい: Single-sex education）は、学校がっこう教育きょういくなどにおいて、男子だんしと女子じょしが別々べつべつの場所ばしょ（学校がっこう・校舎こうしゃ・教室きょうしつ）で学まなぶこと。対義語たいぎごは「男女だんじょ共学きょうがく」。一方いっぽうの性別せいべつの生徒せいとのみを教育きょういくする学校がっこう（男女だんじょ別べつ学校がっこう）のうち、男子だんしのみが通かよう学校がっこうを『男子校だんしこう』と、女子じょしのみが通かよう学校がっこうを『女子じょし校こう』と呼よぶ。

概要がいよう

ドイツ（1888年ねん）

オーストラリア（1913年ねん）

ある国くにや社会しゃかい、ある時代じだいの教育きょういく制度せいどを論ろんじる際さいなど、文脈ぶんみゃくによっては単たんに使用しようする施設しせつが異ことなるのみならず、男女だんじょで学校がっこう制度せいどや教育きょういく課程かていが異ことなっており、女子じょしの教育きょういく機会きかいや教育きょういく内容ないように不平等ふびょうどうがある状態じょうたいを意味いみする。この場合ばあい、「男女だんじょ別べつ学がく制度せいど」「男女だんじょ別べつ学がく体制たいせい」といった用語ようごも用もちいられる。近代きんだい学校がっこう教育きょういくの歴史れきし上じょう、初等しょとう教育きょういく段階だんかいでは早はやい段階だんかいから多おおくの国くにで男女だんじょ共学きょうがくの方針ほうしんがとられた一方いっぽう、中等ちゅうとう教育きょういく以上いじょうで男女だんじょ共学きょうがくが導入どうにゅうされるのには時間じかんがかかった。大学だいがくではじめて男女だんじょ共学きょうがくが実現じつげんするのは、19世紀せいきのアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくである（1833年ねん創設そうせつのオーバリン大学だいがく）。

男女だんじょを別べつの場所ばしょで教育きょういくすることの背景はいけいとしては、宗教しゅうきょう的てきな思想しそうや道徳どうとく観かんがあるが（現在げんざいでもカトリックやイスラム教いすらむきょうの国くにでは男女だんじょ別べつ学がくの伝統でんとうが強つよいとされる）、女性じょせいの社会しゃかい的てきな役割やくわりに対たいする考かんがえ方かた（ジェンダー、性別せいべつ役割やくわり分業ぶんぎょう観かん）に基もとづいて、単たんに施設しせつを分わけるだけではなく教育きょういく課程かていに違ちがいを設もうけることもある。こうした考かんがえ方かたは、女子じょしの通かよう学校がっこうを増ふやして女子じょし教育きょういくの普及ふきゅうに貢献こうけんした面めんもあるが、一方いっぽうで女子じょし教育きょういくの内容ないようや水準すいじゅんに限定げんていをもたらしたという面めんもある。

男女だんじょ別べつ学がく制度せいどは、女子じょし学生がくせいの排除はいじょや、教育きょういく機会きかいの不平等ふびょうどうを意味いみする女性じょせい差別さべつのひとつとして、女性じょせいの社会しゃかい的てき地位ちい向上こうじょうを求もとめる運動うんどう（女性じょせい解放かいほう運動うんどう、フェミニズム）から教育きょういく機会きかいの平等びょうどうが求もとめられ、いわゆる主要しゅよう国こくでは男女だんじょの平等びょうどうな教育きょういく機会きかいが制度せいど面めんでは保障ほしょうされるようになった。一方いっぽうで、制度せいど的てきな男女だんじょ共学きょうがくでは必かならずしも教育きょういく機会きかいの均等きんとうが実現じつげんできない（社会しゃかい一般いっぱんのジェンダーや性別せいべつ役割やくわり分業ぶんぎょう観かんが教室きょうしつに持もち込こまれる）として、フェミニズムの立場たちばから男女だんじょ別べつ学がく（男女だんじょが別べつの学校がっこうで学まなぶこと）について積極せっきょく的てきに捉とらえる主張しゅちょうも出だされている。また、近年きんねんにおいては、トランス女性じょせいの学生がくせいを受うけ入いれる女子大じょしだい学がくが増ふえている。

日本にっぽん

近代きんだい

日本にっぽんでは、明治めいじ時代じだいに学校がっこう制度せいどが整備せいびされる中なかで、初等しょとう教育きょういく（小学校しょうがっこう）からの男女だんじょ別べつ学がくが原則げんそくとされた。

1879年ねん（明治めいじ12年ねん）に出だされた教育きょういく令れいは「凡学校がっこうニ於テハ男女だんじょ教場きょうじょうヲ同どうクスルヲ得えス 但ただし小学校しょうがっこうニ於テハ男女だんじょ教場きょうじょうヲ同どうクスルモ妨さまたげケナシ」（第だい42条じょう）と定さだめ、中等ちゅうとう教育きょういく以上いじょうでは男女だんじょ別べつ学がくを原則げんそくと定さだめた。これにより、女子じょしの中学校ちゅうがっこうへの入学にゅうがくは認みとめられなくなり、女子じょし中等ちゅうとう教育きょういくは女学校じょがっこうで行おこなわれることとなった。1891年ねん（明治めいじ24年ねん）の文部省もんぶしょう令れい第だい12号ごう「学級がっきゅう編制へんせい等とうニ関せきスル規則きそく」は、小学校しょうがっこうで学年がくねんの女子じょし児童じどうが学級がっきゅう編成へんせいに十分じゅうぶんであれば、男女だんじょ別べつ学級がっきゅうとするように定さだめた（ただし尋常じんじょう小学校しょうがっこう1学年がくねん・2学年がくねんは例外れいがいとした）。

中等ちゅうとう学校がっこう以上いじょうでは男女だんじょ別べつ学がくの制度せいどが維持いじされ、旧制きゅうせい高等こうとう学校がっこう（卒業そつぎょう者しゃには帝国ていこく大学だいがくへの進学しんがくが保証ほしょうされていた）に女子じょしの入学にゅうがくは認みとめられず、したがって帝国ていこく大学だいがくへの女子じょしの進学しんがくはほとんど認みとめられなかった（1913年ねんに東北とうほく帝国ていこく大学だいがくが3人にんの入学にゅうがくを認みとめたのが最初さいしょ。女子大じょしだい生せいの日ひ参照さんしょう）。女子じょしに対たいする中等ちゅうとう教育きょういく機関きかんとしては高等こうとう女学校じょがっこうなどが規定きていされたが、「良妻賢母りょうさいけんぼ主義しゅぎ」と言いわれるように性別せいべつ役割やくわり分業ぶんぎょう観かんに根差ねざした教育きょういく方針ほうしんが採とられており、高等こうとう女学校じょがっこうと旧制きゅうせい中学校ちゅうがっこう（男子だんし）では修業しゅうぎょう年限ねんげんにも差異さいがあった。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ご

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん後ごの連合れんごう国軍こくぐん最高さいこう司令しれい官かん総そう司令しれい部ぶ（GHQ）による占領せんりょう期き、男女だんじょ別べつ学がくを原則げんそくとしていた日本にっぽんの教育きょういく制度せいどは男女だんじょ共学きょうがくを原則げんそくとするものに改あらためられた（学制がくせい改革かいかく参照さんしょう）。

教育きょういく改革かいかく指令しれいを受うける形かたちで、1945年ねん12月に「女子じょし教育きょういく刷新さっしん要綱ようこう」が閣議かくぎ了解りょうかいされ、女子大じょしだい学がくの創設そうせつ、大学だいがくにおける男女だんじょ共学きょうがく制せい、中等ちゅうとう学校がっこうにおける男女だんじょ間あいだの教科きょうかの平準へいじゅん化かなどの実施じっしが決定けっていされた。これにより、1946年ねんより従来じゅうらい女子じょしの進学しんがくに制限せいげんを設もうけていた高等こうとう教育きょういく機関きかんに女子じょしが入学にゅうがくするようになった。1946年ねんに出だされた第だい一いち次じ教育きょういく使節しせつ団だん報告ほうこく書しょは公おおやけ教育きょういくを男女だんじょ別べつ学がくから男女だんじょ共学きょうがくに移行いこうするよう提言ていげん。1947年ねんに施行しこうされた教育きょういく基本きほん法ほうは「教育きょういく上じょう男女だんじょの共学きょうがくは、認みとめられなければならない」とした。

1947年ねん3月がつ公布こうふの学校がっこう教育きょういく法ほうにより、1948年ねんより実施じっしされる公立こうりつ新制しんせい高等こうとう学校がっこうの設置せっちに関かんする「高校こうこう三さん原則げんそく」のひとつとして「男女だんじょ共学きょうがく」が挙あげられた。ただし、1947年ねんに文部省もんぶしょうは通知つうち・通達つうたつとして「新しん学校がっこう制度せいど実施じっし準備じゅんびの案内あんない」「新制しんせい高等こうとう学校がっこう実施じっしの手引てびき」を出だし、男女だんじょの教育きょういく機会きかい均等きんとうという根本こんぽん原則げんそくを踏ふまえた上うえで、地域ちいきの状況じょうきょうを尊重そんちょうして必かならずしも「男女だんじょ共学きょうがく」にしなくてもよいという方針ほうしんを示しめしており、画一かくいつ的てきな指導しどうは行おこなわなかった。占領せんりょう軍ぐんの地方ちほう当局とうきょくの担当たんとう者しゃによって方針ほうしんに差異さいがあったため、男女だんじょ別べつの旧制きゅうせい中等ちゅうとう学校がっこうを統廃合とうはいごうして男女だんじょ共学きょうがくが徹底てっていされた地域ちいきもあれば、旧制きゅうせい中等ちゅうとう学校がっこうを引ひき継ついで男女だんじょ別べつの新制しんせい高等こうとう学校がっこうが設立せつりつされた地域ちいきもあった。また私立しりつ学校がっこうは三さん原則げんそくの制約せいやく外がいにあったため、男女だんじょ別べつ学校がっこうとして移行いこうしたものが少すくなくない。GHQによる共学きょうがく化かは日本にっぽん列島れっとうの南みなみから進すすめられたが、北関東きたかんとうに到達とうたつする前まえに朝鮮ちょうせん戦争せんそうが勃発ぼっぱつし手しゅが回まわらなくなったことで、埼玉さいたま県けん以北いほくではナンバースクールのような旧制きゅうせい中学校ちゅうがっこうから続つづく男女だんじょ別べつ学校がっこうが多おおく残のこった。

「男女だんじょ共学きょうがく」が原則げんそくとなった戦後せんごも、家庭かてい科かなどでは男女だんじょで異ことなるカリキュラムが設もうけられた（「男女だんじょ別べつ修おさむ」とも呼よばれる）。性別せいべつ役割やくわり分業ぶんぎょう観かんによるものとしてカリキュラムを男女だんじょが共ともに学まなぶように改あらためようという運動うんどうが行おこなわれるなどした結果けっか、1989年ねんの学習がくしゅう指導しどう要領ようりょうで家庭かてい科かの男女だんじょ共修きょうしゅうが示しめされた（男女だんじょ共修きょうしゅう参照さんしょう）。

備考びこう

• 現在げんざいの日本にっぽんでは、小学校しょうがっこうから高校こうこうまでは男子校だんしこう・女子じょし校こうともに存在そんざいしている。
• 戦前せんぜんの日本にっぽんでは大学だいがくは男子だんしのみが通かようという前提ぜんていがあったため、あえて男子だんし大学だいがくは作つくられなかった。戦後せんごになると戦前せんぜんからあった大学だいがくは共学きょうがく化かし、女子じょし大学だいがくも新設しんせつされたが、男子だんし大学だいがくは新設しんせつされていない。東洋食品工業短期大学とうようしょくひんこうぎょうたんきだいがくは2008年ねんまで男子だんし学生がくせいのみを募集ぼしゅうしていた。活かつ水すい女子じょし大学だいがくは男子だんし学生がくせいの受うけ入いれを開始かいししたが、大学だいがく名めいは変更へんこうしないとしている。
• 日本にっぽんでは、男女だんじょ別べつ学がくの学校がっこうは私立しりつ学校がっこうを中心ちゅうしんに多数たすう存在そんざいするが、1990年代ねんだい中頃なかごろからバブル崩壊ほうかいによる長期ちょうきの不ふ況きょうや少子化しょうしかの影響えいきょうによって、共学きょうがく化かする学校がっこうが増ふえてきている。
• 日本にっぽんでは、北関東きたかんとう以北いほくの名門めいもん公立こうりつ学校がっこう、首都しゅと圏けんの名門めいもん私立しりつ学校がっこう、阪神はんしん地区ちくの名門めいもん私立しりつ学校がっこうの多おおくが男女だんじょ別べつ学がくだったが、少子しょうし化かにより共学きょうがく化かが増ふえている。
• 男子だんし・女子じょしとも募集ぼしゅうするが、男子だんしと女子じょしとでは教室きょうしつ（男子だんしクラス・女子じょしクラス）や校舎こうしゃなどが分わけられている学校がっこう（特とくに私立しりつ学校がっこうの一部いちぶ）がある。そういう学校がっこうも「男女だんじょ別べつ学がく（または男女だんじょ別べつ学校がっこう）」の範疇はんちゅうに入いれられるほか、「男女だんじょ併学」と称しょうされることがある。別べつ学がくと共学きょうがくの両方りょうほうのメリットが得えられるとされる。

世界せかい

• アメリカなどでは、古ふるくにできた男子だんし大学だいがくが複数ふくすう存在そんざいしている。
• 中東ちゅうとうのアラブ社会しゃかいでは、イスラム教いすらむきょうの影響えいきょうによって2010年代ねんだいでも男女だんじょ別べつ学がくが当あたり前まえであり、男女だんじょ共学きょうがくは珍めずらしい。例たとえば、サウジアラビアでは2011年ねん5月15日にちに最終さいしゅう的てきに世界せかい最大さいだいの女子大じょしだいになるヌーラ・ビント・アブドゥルラハマン王女おうじょ大学だいがくがリアド郊外こうがいに開校かいこうした。サウジアラビアでの男女だんじょ別べつ学がくは単たんに学校がっこうが別べつであるというだけでなく、女子高じょしこうの運動会うんどうかいを違法いほうとするなど教育きょういく内容ないようも（少すくなくとも部分ぶぶん的てきには）別べつのものになっている。
• 社会しゃかい教育きょういくにおいて、ボーイスカウト（男子だんし）とガールスカウト（女子じょし）とは、男女だんじょ別べつ学がくである。しかし、旧きゅう・共産きょうさん圏けんにおいては、男女だんじょ別べつ学がくの伝統でんとうがないので、ボーイスカウトにおいて男女だんじょ共学きょうがくを実施じっしし、単たんに「スカウト」と呼称こしょうする。ただし、旧きゅう共産きょうさん圏けん以外いがいでも最近さいきんでは、ボーイスカウトで男女だんじょ共学きょうがくを実施じっしする国くにもある。日本にっぽんにおいても、1995年ねん（平成へいせい7年ねん）に、ボーイスカウトにおける全ぜん部門ぶもんへの女子じょしの加入かにゅうを認みとめた（ただし、ガールスカウト自体じたいは残のこっている）。

参考さんこう文献ぶんけん

• 中井なかい俊しゅん已やめ著ちょ『なぜ男女だんじょ別べつ学がくは子こどもを伸のばすのか』（学研がっけん新書しんしょ、2010年ねん（平成へいせい22年ねん）8月がつ3日にち発行はっこう）
• おおたとしまさ著ちょ『男子校だんしこうという選択せんたく』（日本経済新聞にほんけいざいしんぶん出版しゅっぱん社しゃ、2011年ねん（平成へいせい23年ねん）11月8日にち発行はっこう）
• おおたとしまさ著ちょ『女子じょし校こうという選択せんたく』（日本経済新聞にほんけいざいしんぶん出版しゅっぱん社しゃ、2012年ねん（平成へいせい24年ねん）12月10日にち発行はっこう）
• 中西なかにし啓あきら喜き「ジェンダー・トラックの再考さいこう : 私立しりつ女子じょし校こうのカリキュラム再編さいへんの検討けんとうから」『Proceedings : 格差かくさセンシティブな人間にんげん発達はったつ科学かがくの創成そうせい』16 公募こうぼ研究けんきゅう成果せいか論ろん文集ぶんしゅう、お茶ちゃの水女子大学みずじょしだいがくグローバルCOEプログラム「格差かくさセンシティブな人間にんげん発達はったつ科学かがくの創成そうせい」=Global COE Program "Science of Human Development for Restructuring the 'Gap- Widening Society'"、2011年ねん、131-139頁ぺーじ、NAID 120003933064。 

関連かんれん項目こうもく

• 日本にっぽんの男女だんじょ別べつ学校がっこう一覧いちらん
• 男女だんじょ共学きょうがく
• 男女だんじょ共修きょうしゅう
• 女子じょし教育きょういく
• 女学校じょがっこう　
• 女子じょし大学だいがく

外部がいぶリンク

• 学校がっこう基本きほん調査ちょうさ（男女だんじょ別べつ学校がっこう数すう） - 政府せいふ統計とうけいの総合そうごう窓口まどぐち（総務そうむ省しょう統計とうけい局きょく）