鋳造ちゅうぞう

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鋳造ちゅうぞう様子ようす

鋳造ちゅうぞう(ちゅうぞう、えい: casting)とは、金属きんぞく加工かこうほうのひとつで、原材料げんざいりょうおもてつアルミ合金ごうきんどう真鍮しんちゅうなどの金属きんぞく)を、融点ゆうてんよりたか温度おんどねっして液体えきたいにしたのちかたながみ、やして目的もくてき形状けいじょうかためる加工かこう方法ほうほうである。鋳造ちゅうぞうおこな工場こうじょうなどの施設しせつ鋳造ちゅうぞうしょ(ちゅうぞうじょ、えい: foundry)とぶ。

鋳造ちゅうぞう使用しようするかた鋳型いがた(いがた)、鋳造ちゅうぞうしてつくった製品せいひん鋳物いもの(いもの)という。英語えいごcastingといえば、鋳造ちゅうぞう鋳物いもの双方そうほう[1]鋳造ちゅうぞうによる製造せいぞうぶつは、原材料げんざいりょう金属きんぞくにより鋳鉄ちゅうてつ鋳鋼ちゅうこうなどとばれる。

これにたいし、金属きんぞくハンマーなどでたたいて変形へんけいさせる加工かこう方法ほうほう鍛造たんぞうといい、いずれも人類じんるい歴史れきしなかふるくから利用りようされてきたものである。

概要がいよう[編集へんしゅう]

日本にっぽん鋳造ちゅうぞう工場こうじょう

古代こだいからある加工かこう方法ほうほうで、すなかた利用りようしたすながた鋳造ちゅうぞうてら梵鐘ぼんしょう製造せいぞうなどにもちいられていた。現在げんざいでも、大量たいりょう生産せいさんしな鋳造ちゅうぞう幅広はばひろもちいられている。すながた製造せいぞうしたものは表面ひょうめんのざらつきがおおきく、そのまま機械きかい部品ぶひんとして使つかえないため、仕上しあ加工かこうおこなうことが一般いっぱんてきである。

一方いっぽう工芸こうげいひんひとし製作せいさくでは、石膏せっこうかた使つかうことがおおい。石膏せっこうかた鋳造ちゅうぞうでは原形げんけい蜜蝋みつろうひとし高温こうおんける材料ざいりょう制作せいさくし、原形げんけい石膏せっこうがためたのち加熱かねつによって原形げんけい除去じょきょして材料ざいりょうながむ。この方法ほうほうではすながたくらべて表面ひょうめんのざらつきがちいさく、かたわせがないため、後処理あとしょり容易よういになる。

また、かねがたもちいたかねがた鋳造ちゅうぞうもある。かねがた高額こうがくだが、精度せいどたか大量たいりょう生産せいさん可能かのうなため、工業こうぎょう製品せいひん生産せいさんなどにもちいられる。

歴史れきし[編集へんしゅう]

鋳造ちゅうぞうによってつくられた古代こだい中国ちゅうごくてつがたなかんくびがたな

鋳造ちゅうぞう紀元前きげんぜん3600ねんころメソポタミア青銅せいどう利用りようしてはじまったとされる[2]。さらにふいご発明はつめいでよりたか温度おんどられるようになり青銅器せいどうき時代じだい全盛ぜんせいとなった[2]

てつ鋳造ちゅうぞう技術ぎじゅつ紀元前きげんぜん7世紀せいきころ中国ちゅうごく発明はつめいされた[2]。しかし、古代こだい鋳鉄ちゅうてつ黒鉛こくえんをほとんどふくまないかたくてもろ材料ざいりょう加工かこう困難こんなんであった[2]紀元前きげんぜん470ねんころにはそれをやく900から1000℃の酸化さんかてつうちで3日間にちかん加熱かねつして可鍛鋳鉄かたんちゅうてつにする熱処理ねつしょり技術ぎじゅつもちいられていたという研究けんきゅうもある[2]

ヨーロッパでは、18世紀せいきまで鋳鉄ちゅうてつかたくてもろいものとされていたため鍛造たんぞうしたてつ重宝ちょうほうされていた[2]。その1735ねんエイブラハム・ダービー2せい英語えいごばん高炉こうろでの鋳鉄ちゅうてつ製造せいぞう成功せいこうし、シリコン含有がんゆうりょうたか加工かこう可能かのう鋳鉄ちゅうてつ製造せいぞうできるようになったことで、蒸気じょうき機関きかんなどの製造せいぞう可能かのうとなり産業さんぎょう革命かくめいこるにいたった[2]

改鋳かいちゅう[編集へんしゅう]

金属きんぞく製品せいひん長期ちょうき使用しよう保存ほぞんえうる性質せいしつすぐれるが、それでも劣化れっかによりようをなさなくなったときは、既存きそん鋳物いもの原料げんりょうふたた鋳造ちゅうぞうして製品せいひんとすることがよくおこなわれる。これを改鋳かいちゅう吹替ふきかぶ。梵鐘ぼんしょうなど歴史れきしてき鋳造ちゅうぞうひん劣化れっか亀裂きれつ焼損しょうそん)にともないしばしば改鋳かいちゅうされる。

溶接ようせつ[編集へんしゅう]

鋳造ちゅうぞう技術ぎじゅつはまた、破損はそんした金属きんぞく製品せいひん修理しゅうりにも使用しようされていた。修理しゅうりしたい製品せいひん鋳型いがたれ、破損はそん箇所かしょおな材料ざいりょうかしてながむことで接合せつごうさせる鋳掛いかという手法しゅほうがこれにあたる。溶接ようせつ祖先そせんとなる方法ほうほうであり、実際じっさい製品せいひんえん部分ぶぶん溶解ようかいするため「溶接ようせつ」の定義ていぎたしている。

硬貨こうかの「鋳造ちゅうぞう」と「改鋳かいちゅう[編集へんしゅう]

富本とみもとぜにざお複製ふくせいひん貨幣かへい博物館はくぶつかん

硬貨こうか製造せいぞうも「鋳造ちゅうぞう」(えい: minting) と表現ひょうげんするが、これは砂金さきん地金じがね重量じゅうりょうによって取引とりひきする秤量ひょうりょう貨幣かへいたいする、額面がくめん保証ほしょう刻印こくいんゆうする鋳造ちゅうぞう貨幣かへい[3]製造せいぞうす。貨はふるくは実際じっさい鋳物いものとして製造せいぞうされたが、現代げんだい硬貨こうかでは鋳造ちゅうぞう原料げんりょうインゴット製作せいさく工程こうていまり、圧延あつえん円形えんけいき・図像ずぞうプレス加工かこうによって成形せいけいされる[4]

硬貨こうか品位ひんい量目りょうめ変更へんこうも、鋳物いものつくなおしと同様どうように「改鋳かいちゅう」(えい: remint) とばれる。

鋳造ちゅうぞうほう種類しゅるい[編集へんしゅう]

以下いかのようなものがある

教育きょういく資格しかく[編集へんしゅう]

日本にっぽん[編集へんしゅう]

日本にっぽんでは鋳造ちゅうぞう技能ぎのう存在そんざいする。

フランス[編集へんしゅう]

フランスでは以下いか国家こっか資格しかく存在そんざいする。

  • 資格しかくレベル5 - CQP Agent de préfabrication en démoulage différé de l'Industrie du béton
  • 資格しかくレベル4 - TP Technicien (ne) supérieur (e) en conception industrielle, option outillages de moulage
  • 資格しかくレベル3 - 職業しょくぎょう学士がくしLicence ProfessionnelleProduction industrielle, Spécialité DAO/CAO/FAO, moulage des matériaux (plastiques, alliages légers, verre, terre cuite)

脚注きゃくちゅう[編集へんしゅう]

  1. ^ casting”. しん英和えいわちゅう辞典じてん. 研究けんきゅうしゃ. 2020ねん2がつ29にち閲覧えつらん
  2. ^ a b c d e f g 菅野かんのとしたけし. “世界せかい文化ぶんか遺産いさん韮山にらやま反射はんしゃの10だいミステリーを”. 2020ねん5がつ15にち閲覧えつらん
  3. ^ 鋳造ちゅうぞう貨幣かへい. コトバンクより2022ねん10がつ24にち閲覧えつらん
  4. ^ 貨幣かへい製造せいぞう工程こうてい(その1), 貨幣かへい製造せいぞう工程こうてい(その2), 独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん造幣局ぞうへいきょくウェブサイト, 2014ねん7がつ18にち閲覧えつらん.

関連かんれん項目こうもく[編集へんしゅう]

外部がいぶリンク[編集へんしゅう]