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硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)

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硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)
識別しきべつ情報じょうほう
CAS登録とうろく番号ばんごう 7783-36-0 チェック
PubChem 24545
EC番号ばんごう 231-993-0
特性とくせい
化学かがくしき Hg2SO4
モル質量しつりょう 497.24 g/mol
外観がいかん しろ-黄色おうしょく結晶けっしょう
密度みつど 7.56 g/cm3
みずへの溶解ようかい 0.051 g/100 mL (25 °C)
0.09 g/100 mL (100 °C)
溶解ようかい 硝酸しょうさんには溶だがみずには不溶ふようねつ硫酸りゅうさん
磁化じかりつ −123.0·10−6 cm3/mol
構造こうぞう
はい構造こうぞう たんはすあきらけい
ねつ化学かがく
標準ひょうじゅん生成せいせいねつ ΔでるたfHo -743.1 kJ·mol−1
標準ひょうじゅんモルエントロピー So 200.7 J·mol−1·K−1
標準ひょうじゅん定圧ていあつモル比熱ひねつ, Cpo 132 J·mol−1·K−1[1]
関連かんれんする物質ぶっしつ
そのかげイオン フッ水銀すいぎん(I)
塩化えんか水銀すいぎん(I)
におい水銀すいぎん(I)
ヨウ水銀すいぎん(I)
そのイオン 硫酸りゅうさん水銀すいぎん(II)
硫酸りゅうさんカドミウム
硫酸りゅうさんタリウム
特記とっきなき場合ばあい、データは常温じょうおん (25 °C)・つねあつ (100 kPa) におけるものである。

硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)英語えいご:Mercury(I) sulfate)は組成そせいしきHg2SO4あらわされる化合かごうぶつである。イギリスではmercurous sulphate、アメリカではmercurous sulfateとばれている[2]硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)はしろ-うす黄色きいろあるいはベージュしょくの、こなじょう金属きんぞく化合かごうぶつである[3]。また硫酸りゅうさんふたつの水素すいそ原子げんしをどちらも水銀すいぎん(I)イオンで置換ちかんした化合かごうぶつである。毒性どくせいつよく、吸入きゅうにゅうしたり、消化しょうか吸収きゅうしゅうしたり、はだから吸収きゅうしゅうしたりするといたおそれがある。

構造こうぞう

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硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)の結晶けっしょう亜鈴あれいがたHg22+英語えいごばんSO42−という2つのイオンからなる。Hg22+は4つの酸素さんそ原子げんしかこまれており、水銀すいぎん原子げんし酸素さんそ原子げんし距離きょりは2.23おんぐすとろーむから2.93 おんぐすとろーむである。一方いっぽう水銀すいぎん原子げんし同士どうし距離きょりはおよそ2.500おんぐすとろーむである[4] 研究けんきゅうによって硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)では水銀すいぎん付言ふげんしがじゅうかさなり、結合けつごうちょうが2.500Åになるように配置はいちされることがわかっている。かさなった水銀すいぎん原子げんし単位たんい格子こうしじく平行へいこうになっている。そうして結晶けっしょう格子こうしがSO4 - Hg - Hg - SO4 - Hg - Hg - … とつながっていく。Hg - Hg - Oの結合けつごうかくは165°±1°である。このくさり単位たんい格子こうしななめにまじわっている。硫酸りゅうさん水銀すいぎん構造こうぞうはHg原子げんしとO原子げんしよわ相互そうご作用さようによってっている。SO4単一たんいつかげイオンではなく、水銀すいぎんはいとして機能きのうしている[5]

調製ちょうせい

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硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)のつくかたひとつに、硝酸しょうさん水銀すいぎん(I)1とうりょう硫酸りゅうさん6とうりょうぜる方法ほうほうがある[6]

また、過剰かじょう金属きんぞく水銀すいぎん硫酸りゅうさん反応はんのうさせてもられる:

電池でんちでの利用りよう

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硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)は化学かがく電池でんちによくもちいられる[7][8][9]1872ねんジョサイア・ラティマー・クラーク硫酸りゅうさん水銀すいぎん(I)を使つかった化学かがく電池でんち開発かいはつした[10]。それからジョージ・オーガスタス・ハレット(George Augustus Hulett)によって1911ねん製作せいさくされたウェストン電池でんちでも使つかわれるようになった[10]。これは硫酸りゅうさんぎんなどと一緒いっしょにすることで100 °C以上いじょう高温こうおんでよい電極でんきょくとして機能きのうすることがわかったためである[11]が、高温こうおんでは分解ぶんかいする。分解ぶんかい吸熱反応はんのうで、335°Cから500°Cのあいだこる。また、硫酸りゅうさん水銀すいぎん標準ひょうじゅん電池でんちつくりやすい。比較的ひかくてき溶解ようかいちいさいため陽極ようきょくからの拡散かくさんすすみにくく、水銀すいぎん標準ひょうじゅん電極でんきょく電位でんい十分じゅうぶんたかいことが理由りゆうである[12]

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ Lide, David R. (1998), Handbook of Chemistry and Physics英語えいごばん (87 ed.), Boca Raton, FL: CRCプレス, pp. 5–19, ISBN 0-8493-0594-2 
  2. ^ Intermediate Inorganic ChemistryJ. W. Mellorちょロングマン・グリーン・アンド・カンパニー出版しゅっぱん、ロンドン、1941ねん、p.388
  3. ^ http://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_EN_CB0259783.htm
  4. ^ Preparation and Characterization of Dimercury(I)Monofluorophosphate(V), Hg2PO3F: Crystal Structure, Thermal Behavior, Vibrational Spectra, and Solid-State 31P and 19F NMR Spectra by Matthias Weil, Michael Puchberger, and Enrique J. Baran, published by Inorg. Chem. 2004, 43. pages 8330-8335
  5. ^ Dorm, E. 1969. Structural studies on mercury(I) compounds. VI. Crystal structure of mercury(I) sulfate and selenate. Acta Chemica Scandinavica英語えいごばん (1947-1973) 23:1607–15.
  6. ^ Mercurous Sulphate, cadmium sulphate, and the cadmium cell. by Hulett G. A. The physical review.1907. p.19.
  7. ^ Influence of Microstucture on the Charge Storage Properties of Chemically Synthesized Manganese Dioxide by Mathieu Toupin, Thiery Brousse, and Daniel Belanger. Chem. Mater. 2002, 14, 3945-3952
  8. ^ Electromotive Force Studies of Cell, CdxHgy | CdSO4,(m) I Hg2SO4, Hg, in Dioxane-Water Media by Somesh Chakrabarti and Sukumar Aditya. Journal of Chemical and Engineering Data英語えいごばん, Vol.17, No. 1, 1972
  9. ^ Characterization of Lithium Sulfate as an Unsymmetrical-Valence Salt Bridge for the Minimization of Liquid Junction Potentials in Aqueous - Organic Solvent Mixtures by Cristiana L. faverio, Patrizia R. Mussini, and Torquato Mussini. Anal. Chem.英語えいごばん 1998, 70, 2589-2595
  10. ^ a b GEORGE AUGUSTUS HULETT: FROM LIQUID CRYSTALS TO STANDARD CELL by John T. Stock. Bull. Hist. Chem. VOLUME 25, Number 2, 2000, p.91-98
  11. ^ The Behavior of the Silver—Silver Sulfate and the Mercury—Mercurous Sulfate Electrodes at High Temperatures by M. H. Lietzke and R. W. Stoughton. 米国べいこく学会がっかい., 1953, 75 (21), pp 5226–5227 DOI: 10.1021/ja01117a024
  12. ^ Sulphates of Mercury and Standard Cells. by Elliott, R. B. and Hulett, G. A. The Journal of Physical Chemistry 36.7 (1932): 2083-2086.