はたひゃくえつ征服せいふく

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はたひゃくえつ征服せいふく

華南かなんにおけるはた支配しはい領域りょういき
とき紀元前きげんぜん221ねん - 紀元前きげんぜん214ねん
場所ばしょ華南かなんおよびベトナム北部ほくぶ
結果けっか はた勝利しょうり
衝突しょうとつした勢力せいりょく
はた えつぞくひゃくえつ

はたひゃくえつ侵攻しんこうでは、中国ちゅうごく統一とういつして戦国せんごく時代じだい終結しゅうけつさせたのちはたちょうが、現在げんざい華南かなんおよびきたベトナムにあたる地域ちいき勢力せいりょくっていたひゃくえつ侵攻しんこうし、征服せいふくした遠征えんせいについてべる。はた始皇帝しこうていは、長江ちょうこう以南いなんひゃくえつ沿岸えんがん貿易ぼうえききずいたとみけ、すうにわたる遠征えんせいおこなった。この地域ちいき気候きこう温暖おんだんで、土地とちえ、西方せいほう北西ほくせいからの外敵がいてき侵入しんにゅう危険きけん中原なかはらくらべてひくく、さらに東南とうなんアジアとの交易こうえき豪華ごうか南方なんぽう物産ぶっさんはいるとあって、始皇帝しこうていひゃくえつ諸国しょこく征服せいふくつよ意欲いよくった[1][2]始皇帝しこうていは221ねんから214ねんにかけて南方なんぽう遠征えんせいぐん派遣はけん[3][4][5][6]、5遠征えんせいすえに214ねんひゃくえつやぶった[7]

はた遠征えんせい[ソースを編集へんしゅう]

始皇帝しこうてい

223ねんすわえほろぼしたはた始皇帝しこうていは、221ねんみねみなみひゃくえつ、すなわち現在げんざい華南かなんきたベトナムにあたる地域ちいき征服せいふくかった[8]始皇帝しこうていは50まんにん大軍たいぐんを5たいけて南下なんかさせ、こしはた領域りょういき併合へいごうしようとした[9][10]。またべつ記録きろくによれば、10まんにん後方こうほう支援しえん部隊ぶたい物資ぶっし補給ほきゅう道路どうろ整備せいびになった。当時とうじみねみなみはまだ青銅器せいどうき時代じだいはいったばかりで、人口じんこう希薄きはくだったとされる。はた侵攻しんこうみねみなみ人口じんこうおおくても10まんにんほどだった[11]

南方なんぽう莫大ばくだい豪華ごうか物産ぶっさんかれていた始皇帝しこうていは、北方ほっぽう匈奴きょうどたいする戦線せんせんよりも、むしろひゃくえつ征服せいふくするための南方なんぽう戦線せんせん多数たすう兵力へいりょくいた[12][7][2][8][13][14]浙江せっこう南部なんぶの甌越や福建ふっけんの閩越は、まもなくはた属国ぞっこくとなった[15]。しかし広東かんとん広西ひろせでは、しんぐんはげしいゲリラ抵抗ていこうにあった[16]。このころ、華南かなん広大こうだい肥沃ひよくで、べい栽培さいばいてきし、東南とうなんアジアから象牙ぞうげさいかくカワセミはね真珠しんじゅ翡翠かわせみ製品せいひん、そのおおくの豪華ごうか貿易ぼうえきひんがもたらされるとしてられていた[17][7][2][18][19]はたの「中国ちゅうごく統一とういつ以前いぜんは、ひゃくえつ四川しせんだい部分ぶぶん中心ちゅうしん南西なんせい地域ちいき支配しはいしていた。ここにやってきたはたぐんは、れないジャングルにくるしめられたすえに、えつぞくのゲリラ攻撃こうげきけ、主将しゅしょうほふ睢をはじめ1まんにんころされるという壊滅かいめつてき敗北はいぼくきっした[2][13][16][10]。しかし始皇帝しこうてい南方なんぽう進出しんしゅつあきらめず、ひゃくえつ中国ちゅうごくするこころみをつづけていった[14]

南海なんかい進出しんしゅつ[ソースを編集へんしゅう]

れいみぞ建設けんせつされたことで、はた南方なんぽうへの遠征えんせいぐん莫大ばくだい物資ぶっし供給きょうきゅうできるようになった[19]。この運河うんがは、長江ちょうこう支流しりゅうである湘江上流じょうりゅうと、南海なんかいにそそぐ珠江たまえ支流しりゅうである西にしこうむすぶというものである。この建設けんせつ事業じぎょうたんなる軍事ぐんじ目的もくてきにとどまらず、はた南シナ海みなみしなかいつうじてインド洋いんどようまでいた海洋かいよう貿易ぼうえきもう接続せつぞくさせるねらいもあった[20]はたにとって南シナ海みなみしなかいは、東南とうなんアジアやインド大陸たいりく近東きんとう、そして地中海ちちゅうかいローマ世界せかいにまでいたりれる遠大えんだい可能かのうせいをもつうみであった[20]。またれいみぞは、みねみなみから捕虜ほりょ移送いそうし、はた領域りょういきみなみひろげる役割やくわりになった[21][22]最終さいしゅうてきに、しんぐんはその圧倒的あっとうてき兵力へいりょく組織そしきりょくで、ひゃくえつしょぞくやぶった[16]紀元前きげんぜん214ねんまでに、広東かんとん広西ひろせきたベトナムがはた支配しはいはいった[16]。またしんぐんは、広州こうしゅう周辺しゅうへんふくしゅうかつらりんといった周辺しゅうへん沿岸えんがん地帯ちたいさえていった。これらの征服せいふくに、はた南海なんがいぐんかつらりんぐんぞうぐんさんぐんをおいた[19][10]かくぐんには中央ちゅうおうから派遣はけんされた官吏かんりぐん駐留ちゅうりゅうし、はたりょうとなった沿岸えんがん地域ちいき国際こくさい貿易ぼうえき舞台ぶたいとなった[18]。このころ広東かんとんは、亜熱帯あねったい気候きこうのもとで開発かいはつすすんでいないもりやジャングル、沼地ぬまちひろがる地域ちいきであり、ぞうやワニが生息せいそくしていた[16]戦争せんそうとおしたみねみなみ征服せいふく完了かんりょうすると、始皇帝しこうていえつ人々ひとびと中国ちゅうごくすすめた。中国ちゅうごく北部ほくぶから50まんにん人々ひとびとみねみなみ移住いじゅうさせられ、ここを植民しょくみんした[19][16][23][24][25][26][27][28]。このようにして始皇帝しこうてい中国ちゅうごく文化ぶんか華南かなん流入りゅうにゅうさせ、土着どちゃくえつ文化ぶんか排除はいじょし、ひゃくえつさい独立どくりつこころざさないようにした[29]。また始皇帝しこうていは、従来じゅうらいえつ筆記ひっきほう廃止はいししてはた筆記ひっきほう言語げんごみねみなみにも導入どうにゅうした[29]。しかしこうした始皇帝しこうてい施策しさくにもかかわらず、まもなくはた凋落ちょうらくしたすきに、ひゃくえつ独立どくりつ回復かいふくした[30]

南越なんごしこく独立どくりつ[ソースを編集へんしゅう]

はた崩壊ほうかいすると、その将軍しょうぐんだったちょう広東かんとん制圧せいあつして自立じりつし、その勢力せいりょくべにかわまでひろげた。このかわは、はた海洋かいよう貿易ぼうえきようとして獲得かくとくしようとしていた重要じゅうよう戦略せんりゃく目標もくひょうだった[31]紀元前きげんぜん208ねんちょう佗は甌雒首都しゅとにしせま[32]君主くんしゅしょく泮をころして甌雒をほろぼした[33][34][35]ちょう佗はきゅう甌雒りょう交趾ぐんきゅうぐん分割ぶんかつした[36][31]はた農民のうみん反乱はんらんるがすようになると、かれはた圧政あっせいくるしんできた農民のうみんたちをひきいて決起けっきし、はた対抗たいこうした[37]はたおおったのち、すわえかん戦争せんそういたかん中国ちゅうごく支配しはいするようになったとき、すでに華南かなんさい自立じりつたしていた。現代げんだいでは「中国ちゅうごく」の範囲はんいふくまれる華南かなんきたベトナムのは、当時とうじ中原なかはらからはおおくの民族みんぞくむ蛮地であるとみなされていた[38][39][40]ちょう佗は広西ひろせ領土りょうどひろげ、すうじゅうまんにんものかんからの移民いみんれた。そして203ねんちょう佗は南越なんごしこくおうしょうして名実めいじつともに中国ちゅうごくから独立どくりつした[2]かれきゅう南海なんがいぐんばん禺に首都しゅとき、南越なんごしこくを7つの領域りょういき区分くぶんし、漢人かんどえつ地元じもと領主りょうしゅ双方そうほうおさめさせた[2]最盛さいせいには、南越なんごしこく史上しじょうえつじん国家こっか最大さいだい規模きぼとなり、ちょう佗は皇帝こうてい名乗なのって周辺しゅうへん諸国しょこく従属じゅうぞくさせるにいたった[37]。しかし紀元前きげんぜん111ねん南越なんごしかんたけみかど征服せいふくされた(かん南越なんごしこく征服せいふく[31][36]

脚注きゃくちゅう[ソースを編集へんしゅう]

  1. ^ Stein, Stephen K. (2017). The Sea in World History [2 volumes]: Exploration, Travel, and Trade. Greenwood Press. pp. 61. ISBN 978-1440835506 
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  3. ^ Holcombe 2001, p. 147.
  4. ^ Gernet 1996, p. 126.
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  6. ^ Hutcheon, Robin (1996). China–Yellow. Chinese University Press. p. 4. ISBN 978-962-201-725-2 
  7. ^ a b c Stein, Stephen K. (2017). The Sea in World History [2 volumes]: Exploration, Travel, and Trade. Greenwood Press. pp. 60. ISBN 978-1440835506 
  8. ^ a b Holcombe, Charles (2001). The Genesis of East Asia: 221 B.C. - A.D. 907. University of Hawaii Press (May 1, 2001発行はっこう). pp. 147. ISBN 978-0824824655 
  9. ^ Him, Mark Lai; Hsu, Madeline (2004). Becoming Chinese American: A History of Communities and Institutions. AltaMira Press (May 4, 2004発行はっこう). p. 4. ISBN 978-0759104587 
  10. ^ a b c Kiernan, Ben (2017). A History of Vietnam, 211 BC to 2000 AD. Oxford University Press. pp. 64. ISBN 978-0195160765 
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  12. ^ Kiernan, Ben (2017). A History of Vietnam, 211 BC to 2000 AD. Oxford University Press. pp. 61. ISBN 978-0195160765 
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  15. ^ Him, Mark Lai; Hsu, Madeline (2004). Becoming Chinese American: A History of Communities and Institutions. AltaMira Press (May 4, 2004発行はっこう). p. 4–5. ISBN 978-0759104587 
  16. ^ a b c d e f Him, Mark Lai; Hsu, Madeline (2004). Becoming Chinese American: A History of Communities and Institutions. AltaMira Press (May 4, 2004発行はっこう). p. 5. ISBN 978-0759104587 
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関連かんれん項目こうもく[ソースを編集へんしゅう]