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草枕くさまくら

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草枕くさまくら
わけだい Kusamakura
作者さくしゃ 夏目なつめ金之助きんのすけ漱石そうせき
くに 日本の旗 日本にっぽん
言語げんご 日本語にほんご
ジャンル 短編たんぺん小説しょうせつ
発表はっぴょう形態けいたい 雑誌ざっし掲載けいさい
初出しょしゅつ情報じょうほう
初出しょしゅつしん小説しょうせつ1906ねん9月
刊本かんぽん情報じょうほう
刊行かんこう草枕くさまくら春陽しゅんようどう1914ねん12月[1]
収録しゅうろくうずらかご春陽しゅんようどう 1907ねん1がつ
ウィキポータル 文学ぶんがく ポータル 書物しょもつ
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ほんさくなか言及げんきゅうされたジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア

草枕くさまくら』(くさまくら)は、夏目なつめ漱石そうせき小説しょうせつ1906ねん明治めいじ39ねん)に『しん小説しょうせつ』に発表はっぴょう。「古井こい温泉おんせん」(熊本くまもとけん玉名たまな小天おあま温泉おんせんがモデル)を舞台ぶたいに、作者さくしゃ漱石そうせきう「非人情ひにんじょう」の世界せかいえがいた作品さくひんである。

山路やまじ(やまみち)をのぼりながら、こうかんがえた。」という一文いちぶんはじまり、「さとし(ち)にはたらけばかく(かど)がつ。じょうざお(さお)させばながされる。意地いじとおせば窮屈きゅうくつだ。とかくにひとみにくい。」とつづ冒頭ぼうとう部分ぶぶんとく有名ゆうめいである。初期しょき名作めいさく評価ひょうかされている。

あらすじ

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にち戦争せんそうのころ、30さい洋画ようがである主人公しゅじんこうが、山中さんちゅう温泉おんせん宿やど宿泊しゅくはくする。やがて宿やどの「わか奥様おくさま」のう。出戻でもどりの彼女かのじょは、かれに「茫然ぼうぜんたることおおとき」とおもわせる反面はんめん、「いままでおんなのうちでもっともうつくしい所作しょさをするおんな」でもあった。そんな「非人情ひにんじょう」なから、主人公しゅじんこう自分じぶんえがいてほしいとたのまれる。しかし、かれ彼女かのじょには「りないところがある」とえがかなかった。あるかれ一緒いっしょ彼女かのじょ従兄弟いとこ(いとこ)で、再度さいど満州まんしゅう戦線せんせんへと徴集ちょうしゅうされた久一ひさいち出発しゅっぱつ見送みおくりにえきまでく。そのとき、ホームで偶然ぐうぜんに「野武士のぶし」のような容貌ようぼうをした、満州まんしゅうきのための「かねを(彼女かのじょに)もらいにた」わかれたおっとと、発車はっしゃする汽車きしゃまどごしに瞬間しゅんかんつめあった。そのときかおかんだ「あわれ」をよこ主人公しゅじんこうはみてとり、かんじて、「それだ、それだ、それがればになりますよ」と「よしさんのかたはたきながら小声こごえう」というすじ背景はいけいに、漱石そうせき芸術げいじゅつろん主人公しゅじんこうなが独白どくはくとしてぜながら、「久一ひさいち」や「野武士のぶしわかれたおっと)」の描写びょうしゃをとおして、戦死せんししゃ激増げきぞうする現実げんじつ戦争せんそうのもたらすメリット、そのよう戦争せんそう西欧せいおう文化ぶんか、それにたいして、なつにまで山村さんそんうぐいす(ウグイス)、田舎いなか人々ひとびととの他愛たあいのない会話かいわなどをとおして、東洋とうよう芸術げいじゅつ文学ぶんがくについてろん漱石そうせきかんじる西にし欧化おうか波間なみまなか日本人にっぽんじんがつづられている。

芸術げいじゅつろん

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西洋せいようになると、人事じんじ根本こんぽんになるからいわゆる詩歌しか純粋じゅんすいなるものもこのさかい解脱げだつすることらぬ。どこまでも同情どうじょうだとか、あいだとか、正義せいぎだとか、自由じゆうだとか、浮世うきよ勧工場かんこうば(かんこうば)にあるものだけでようべんじている。いくら詩的してきになっても地面じめんうえはせけてあるいて、ぜに勘定かんじょうわすれるひまがない。」 「うれしいこと東洋とうよう詩歌しかはそこを解脱げだつしたのがある。…超然ちょうぜん出世間しゅっせけんてき(しゅっせけんてき)に利害りがい損得そんとくあせながった心持こころもちになれる。独坐どくざかそけたかむらうら(ひとりゆうこうのうちにざし)、弾琴だんきんふく長嘯ちょうしょう(きんをだんじてまたちょうしょうす)、深林しんりんじん不知ふち(しんりんひとしらず)、あきら月来げつらいしょうあきら(めいげつきたりてあいてらす)。ただじゅうのうちにゆうべつ乾坤けんこん(べつけんこん)を建立こんりゅう(こんりゅう)している。…汽船きせん汽車きしゃ権利けんり義務ぎむ道徳どうとくれいつかてたのちに、すべてを忘却ぼうきゃくしてぐっすり寝込ねこよう功徳くどくである。」と芸術げいじゅつ東洋とうよう中国ちゅうごく日本にっぽん)の自然しぜんなか人間にんげん西洋せいようひとなか人間にんげんとしてそれを対比たいひしている。

"The Three-Cornered World" は、アラン・ターニー (Alan Turney) が草枕くさまくら英訳えいやくけた題名だいめいである。ターニーは序文じょぶんで「直訳ちょくやくすると The Grass Pillow になるがそれでは意味いみをなさないためこの作品さくひんのテーマとかんがえられる一部分いちぶぶん題名だいめいにした」といった意味いみこといている。これは「さん」にある「してると四角しかく世界せかいから常識じょうしきのつく、一角いっかく磨滅まめつして、三角さんかくのうちにむのを芸術げいじゅつんでもよかろう」をまえたものである。

日本にっぽん近代きんだい西洋せいよう文明ぶんめい摂取せっしゅ)について

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じゅう世紀せいき睡眠すいみん必要ひつようならば、じゅう世紀せいきにこの出世間しゅっせけんてきあじ大切たいせつである。しいこといまつくひとも、ひともみんな、西洋せいようじんにかぶれているから、わざわざ呑気のんき扁舟へんしゅううかべてこの桃源とうげんさかのぼるものはないようだ。もとより詩人しじん職業しょくぎょうにしておらんから、おうふちあきら境界きょうかいいま布教ふきょうしてひろげようと心掛こころがけなにもない。ただ自分じぶんにはこう感興かんきょう演芸えんげいかいよりも舞踏ぶとうかいよりもくすりになるようにおもわれる。ファウストよりも、ハムレットよりもありがたくかんがえられる。」と批判ひはんしている。

制作せいさく時期じきかんして

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関係かんけいしゃへの書簡しょかんから、くわしい制作せいさく時期じき判明はんめいしている。1906ねん明治めいじ39ねん7がつ26にち執筆しっぴつ開始かいし同年どうねん8がつ9にちだつ稿こう。「吾輩わがはいねこである」のだつ稿こうから10にち執筆しっぴつ開始かいしし、完成かんせいしたのはその2週間しゅうかんであった。

熊本くまもと英語えいご教師きょうしをしていた漱石そうせきは、1897ねん明治めいじ30ねん)の大晦日おおみそかに、友人ゆうじんであった山川やまかわ信次郎のぶじろうとともに熊本くまもと小天おあま温泉おんせんかけ、そのときの体験たいけんをもとに『草枕くさまくら』を執筆しっぴつした[2]作品さくひんなか登場とうじょうする「とうげ茶屋ちゃや」は、熊本くまもと市街しがいから小天おあま温泉おんせんいた途中とちゅうみちにあったとかんがえられており、この当時とうじにあった「鳥越とりこし(とりごえ)のとうげ」もしくは、「野出ので(のいで)のとうげ」にあった茶屋ちゃやが、そのモデルであるとされる[2]現在げんざい鳥越とりこしとうげには1989ねん平成へいせい元年がんねん)に当時とうじあった茶屋ちゃや復元ふくげんしたものがてられており、園内えんない漱石そうせき句碑くひてられている[2]。また、当時とうじ茶屋ちゃや現存げんそんしていないが、野出のでとうげのほうにも茶屋ちゃやあといしぶみ漱石そうせき句碑くひがある[2]

書誌しょし情報じょうほう

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1906ねんに『しん小説しょうせつ』に発表はっぴょうされ、1907ねんに『うずらこめ(うずらかご)』に収録しゅうろくされた。のちの1914ねんに、春陽しゅんようどうから単独たんどく単行本たんこうぼん出版しゅっぱんされた。これは読者どくしゃからの希望きぼうおうじて、単独たんどく書籍しょせきとする許諾きょだく漱石そうせきから刊行かんこうされたととびら記載きさいがある[3]。また、1917ねん漱石そうせき全集ぜんしゅうだい2かんにも収録しゅうろくされた。

脚注きゃくちゅう

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  1. ^ 表紙ひょうしのみ「そうこうまくら」の表記ひょうき使用しようしている。
  2. ^ a b c d ロム・インターナショナル(へん) 2005, pp. 124–125.
  3. ^ 草枕くさまくら - 国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかんデジタルコレクション(5スライド

参考さんこう文献ぶんけん

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  • ロム・インターナショナル(へん)『道路どうろ地図ちず びっくり!博学はくがく知識ちしき河出書房新社かわでしょぼうしんしゃ〈KAWADEゆめ文庫ぶんこ〉、2005ねん2がつ1にちISBN 4-309-49566-4 

関連かんれん項目こうもく

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外部がいぶリンク

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