血判けっぱん状じょう

血判けっぱん状じょう（けっぱんじょう）は、連判れんばん状じょうの一種いっしゅで、誓ちかいの文章ぶんしょうに署名しょめいし、その誓ちかいの強固きょうこさの表あらわれとして指ゆびの一部いちぶを切きり自みずからの血液けつえきで捺印なついんしたもの。

概要がいよう

血判けっぱん状じょうには伝統でんとうに則のっとった正式せいしきな作法さほうがあり、全国ぜんこくに3000社しゃ以上いじょうある熊野くまの神社じんじゃの総本山そうほんざんである熊野くまの本宮ほんぐう大社たいしゃ発行はっこうの「牛うし王おう宝たから印いん（ごおうほういん）」という誓紙せいしを用もちいる。この紙かみは元々もともと護符ごふの役目やくめを果はたしていたが、いつからか血判けっぱん状じょうに用もちいられるようになっていった。この紙かみを用もちいた血判けっぱん状じょうの誓ちかいを破やぶった場合ばあい、熊野くまのの守まもり神がみである八はち咫烏が一いち羽わ死しに、誓ちかいを破やぶった本人ほんにんも吐血とけつして死しに地獄じごくに落おちるといわれている（誓紙せいしにも88羽わの八はち咫烏の文様もんようで描えがかれた鴉からす文字もじ（からすもじ）で「熊野山くまのさん宝たから」と書かかれている）

血判けっぱん状じょうの形式けいしきは、一揆いっきを起おこす際さいのある種しゅの秘密ひみつ保持ほじ契約けいやく、敢行かんこうする覚悟かくごを示しめすための傘かさ連判れんばん状じょうにもよく用もちいられた。

江戸えど時代じだいでは、落語らくごの「三さん枚まい起請きしょう」にもあるように、主おもに吉原よしはらの遊廓ゆうかく等とうで血判けっぱん状じょうが飛とび交かっていた。昔むかしの風俗ふうぞく店みせではある種しゅの「一夫一婦いっぷいっぷ制せい」が敷しかれており、客きゃくが連日れんじつ店てんに通かよっても違ちがう女性じょせいを指名しめいすることは出来できなかった。自然しぜんと男女だんじょの親しん密度みつども増まし、加熱かねつしすぎた男性だんせい客きゃくをなだめる為ために遊女ゆうじょの側がわが血判けっぱん状じょうを発行はっこうし、客きゃく側がわを巧たくみく操あやつっていた。もっとも実際じっさいには一人ひとりの客きゃくのみに渡わたすわけも無なく、遊女ゆうじょ一いち人にん当あたり数すう十じゅう枚まいの血判けっぱん状じょうを出だすことが一般いっぱん的てきな習慣しゅうかんだったという。

近代きんだいでは、日本にっぽんの太平洋戦争たいへいようせんそうの敗戦はいせんによって本土ほんどから分離ぶんりされアメリカの施政しせい下かにあった奄美あまみ群島ぐんとうにおいて、祖国そこく復帰ふっき運動うんどうの一環いっかんとして、小中学生しょうちゅうがくせいによる血判けっぱん状じょうの作成さくせいが行おこなわれた事例じれいがある。

香取かとり神道しんとう流りゅうは、現在げんざいでも入門にゅうもんの際さいには血判けっぱん状じょうを作成さくせいしていることで知しられる。

血判けっぱん状じょうを扱あつかった作品さくひん

• 伊丹いたみ十三じゅうざ監督かんとくの映画えいが『スーパーの女おんな』の原作げんさくの安土あづち敏さとし『小説しょうせつスーパーマーケット』にて銀行ぎんこう員いんからスーパーへ転向てんこうした人物じんぶつに対たいし、寝返ねがえりをしないように誓約せいやくするための血判けっぱん状じょうを作つくらされる記述きじゅつがある。

血判けっぱん状じょうの例れい

• 傘かさ連判れんばん状じょう - 円形えんけいに署名しょめいと血判けっぱんを押おすことで、団結だんけつを固かためるとともに首謀しゅぼう者しゃをわからなくした。こういった取とり組くみは、ヨーロッパでも行おこなわれ、ラウンドロビン（輪わっかになったリボン）と呼よばれる。
• 起請文きしょうもん - 神仏しんぶつに契約けいやくを守まもることを誓ちかうときに血判けっぱんを押おす。坂本さかもと龍馬りょうまが高島たかしま流りゅう砲術ほうじゅつの秘密ひみつを洩もらさない契約けいやくを行おこなった物ものなどがある。墨すみと混まぜたりした血ちを使つかって書かいたものを血書けっしょ（けっしょ）・血ち文ぶん（ちぶみ）という。
  • 菊池きくち武重たけしげ起請文きしょうもん - 最古さいこの血判けっぱん起請文きしょうもん。延のべ元もと3年ねん(1338年ねん)

似にたような例れい

• 血ち书（血書けっしょ） - 中国ちゅうごくで、深ふかい恨うらみ、決意けついを表明ひょうめいする時ときに血ちを使つかって書かかれる。拷問ごうもんの上うえで獄死ごくしした明あかりの時代じだいの政治せいじ家か杨涟の『獄中ごくちゅう血書けっしょ』、大だい英えい図書館としょかん収蔵しゅうぞうのBL, S.5451（906年ねんに83才さいの男性だんせいが写経しゃきょうした書しょ）、孔子こうしが作つくったとする『春秋しゅんじゅう』の解説かいせつ書しょ『春秋しゅんじゅう公こう羊ひつじ伝でん』などに記述きじゅつした様子ようすが見みられる。
• インドでは、インド首相しゅしょうナレンドラ・モディへ「私刑しけいを禁止きんしする活動かつどうを行おこなっている有名人ゆうめいじん」達たちを国家こっかの危険きけん人物じんぶつだとして表彰ひょうしょうの撤回てっかいを求もとめる活動かつどう家かの101通つうの書状しょじょう、中国ちゅうごくとの国境こっきょう摩擦まさつを憂うれう国防こくぼう志願しがん兵へいが血ちで書状しょじょうを書かいている。

関連かんれん項目こうもく

血ちを使つかった文書ぶんしょ

• 霊れい幻まぼろし道士どうし - ニワトリの血ちを墨すみと混まぜたお札さつを使用しようする。
• ダイイング・メッセージ - 死しぬ前まえに被害ひがい者しゃが書かき残のこしたメッセージ。しばしば被害ひがい者しゃの血ちが使つかわれる。
• 崇徳天皇すとくてんのうの書かいたとされる経文きょうもん『血書けっしょ五ご部ぶ大乗だいじょう経けい』
• 旅順りょじゅん口こう閉塞へいそく決死けっし隊たい志願しがん者しゃの請願せいがん書しょ(The Blood-Written Petition RUSSO-JAPANESE WAR, 1904.)
• 1829年ねん1月がつ28日にちにエジンバラで絞首刑こうしゅけいにされた William Burke の血ちで書かかれた手紙てがみ - エディンバラ大学だいがく収蔵しゅうぞう。「何なん年ねんに凶悪きょうあく殺人さつじん犯はんの頭あたまの血ちで書かいた」という内容ないよう。調査ちょうさで血ちが少量しょうりょう検出けんしゅつされた。

血ちを使つかった契約けいやくについて

• 悪魔あくまの契約けいやく書しょ - 西洋せいようで信しんじられた悪魔あくまの契約けいやくにおいて、契約けいやくに書かかれる文字もじを血ち、もしくは赤あかいインクで行おこなうことと信しんじられた。
• 義兄弟ぎきょうだい - 西洋せいようでは、血縁けつえん関係かんけいのない人間にんげん同士どうしが兄弟きょうだいとしての関係かんけいを築きずく場合ばあい、互たがいの指ゆびや手て、腕うでに傷きずを付つけ、傷口きずぐちを重かさね合あわせる儀式ぎしきを行おこなった。

血ちを使つかった作品さくひん

• 体液たいえきを使用しようした芸術げいじゅつ